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葵マガジン*山に坐す神 5

発行日: 2005/7/5


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      ◇◆◇◆葵マガジン 2005年7月2日号◆◇◆◇

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【Macky!でご購読いただいていた皆様へ】
このたび、配信サイトがRanStaに移行し、それにともない7月2日号の配信が本
日5日に延期となりました。
先週6月25日号でお知らせすべきところを忘れてましてすみませんでした。
RanStaに変わりました後も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
                        葵むらさき

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          ◇◆◇◆山に坐す神◆◇◆◇

             第5話(全19話)


             えめらるどの海 2


 天帝は、私にお怒りになっているのだろうか?
 私は、もはや天帝の寵愛の対象とは見なしてもらえないのだろうか?
 天帝は私を、天界から追放なさるだろうか?
 私の愛する神は、けだるそうにまたごろりと、さっきとは反対の側へ体の向
きを変えた。
 そうしてさっきとは反対の手を、水の中へ差し入れた。
 するとそれまではえめらるど色をしていた水が、みるみるすみれ色に変化し
ていった。
 それは天帝の寝台を中心にして、遥か悠久の彼方にまで広がっていった。
 それを目で追う私は、やはり絶句していた。
「神よ――」
 私が弁明を始めようとした時、遣いの精が現れた。
「天帝様、山の神が参りました」
 遣いの精はそれだけを告げてふっと消えた。
 傍目には、白い光が一瞬輝いて消え失せたようにしか見えなかった。
「来たか、山神」
 天帝は、すみれ色の水に手を突っ込んだまま呼び掛けた。
 すると水の上に、山の神が現れた。
 山の神は、水の上を音もなく歩いて、天帝の許へ近づいて来た。
 私はその褐色の姿を、目の端には捕えていたけれども、真っすぐに見ること
はできなかった。
 なぜ奴は突然天界にやって来たのだろうという懸念もあった。
「天帝様、ご無沙汰いたしております」
 山の神は、黄金の寝台から少し離れた位置に立ち、静かにそう告げた。
 その両手には、甘く香る白い花の束が抱えられていた。
「何か用か?」
 天帝は、山の神に訊ねた。
「うん」
 山に坐す神は、水の上にどっかと胡座をかいた。
 私は思わず、顔を奴の方に向けて凝視した。
 神をも恐れぬ神とは、奴のことだ。
 その神は――つまり神をも恐れぬその山神はにっこりと破顔した。
「作物の植えつけが終ったんで、お礼にね」
 そう云うと山の神は、手に持っていた真っ白な花々を、頭上に投げ上げた。
 百合、ヒメジョオン、クチナシ、シャガ、シロツメクサ──
 花は驚くほど高く舞い上がり、花の雨となってすみれ色の海に舞い降りた。
 そしてそのひとつひとつが触れたその水面は、その花の色、乳の様な純白に、
ふわりふわりと染まっていった。
 やがて海は、一面乳の色、花の色となった。
 私の目には、それはどう見ても不遜としか映らなかった。
 天帝は必ずや、雷の刃でもって奴を罰するだろうと、私は確信した。
 けれど天帝は、乳白色の海をけだるげに眺めた後、ふっと笑みを洩らした。
「好い匂いだ」
 私の神は低く呟いた。
 私は唖然としたけれども、すぐに天帝の御心の寛大さに、頭を垂れる思いに
なった。
 それにしてもこの山の神の、何といけ図々しいことか。
 早く帰ればいいのに、と私は思った。
 確かに、辺りにえも云われぬ甘い花の香りは漂っていたけれども。
「今年も豊作になって人間達が安心して暮らせるようにしてやって欲しいんだ」
 山の神はそう天帝に頼んだが、気の所為かどこかはにかんだような、改まっ
てそんな頼みごとをするのが照れ臭いとでも云うような、おずおずとした話し
方だった。
 それを聞いて天帝は、相変らずけだるげに横たわった体勢のままで、にやり
とした。
「そう私も願いたいな。何しろ山の天気は難しい」
「だろうな」
 天帝の言葉に、山の神も顎を撫でながら同意した。
「ちょっと油断するとすぐに毒虫達が大勢生まれてしまうからな」天帝はまた
云った。
「うん」
「もしそうなっても、お前の裁量で奴らを殲滅させてやってくれれば好い」
「そうはいかないさ」
 山の神は苦笑して頭を掻いた。
「たとえ毒虫といえど、この世に生れ出てきたからには、俺には生かしてやる
義務がある」
 それを聞いて、天帝は仰向けに転んで大笑した。「義務か」
「そう笑わなくたっていいだろう。あんたにも判るだろ、そういうの」
 そう反論する奴の口調は、いよいよ弛緩して打ち解けたものになっていた。
 私はそれでも、それは奴の罠なのではないかという疑念を捨てきれずにいた。
 天帝が気を許した隙にその喉笛を掻き切ろうという奴の腹黒い企みではない
かと思っていたのだ。
「まあ精々、ばら撒く氷の粒の数を間違えぬよう心掛けておくさ」
 ひと頻り笑った後、天帝はまたけだるげに両手足を投げ出して云った。
「うん。頼みます」
 山の神は、ようやく立ち上がった。
 そしてくるりと無造作に、天帝と私に背を向けた。
 次の瞬間には当然のこととして奴の姿は雲散霧消するのだろうと思い、私が
その背を見ていると、奴は不意に振り向いた。
「烏の死体を有難うな、リ=リ=ツェル」
「──」
 私は思わず、音を立てて息を吸い込んだ。
「烏を殺したのか」
 天帝の静かな声に、私の体はびくりと慄え、私は恐る恐る目を我が神に戻し
た。
 天帝は、私から見ると逆さまの位置に在る蜜色の瞳で、別段表情もなく私を
見ていた。
「あれは正当防衛だったよな」
 山の神は、私に云っているのか天帝に云っているのか彼自身のひとり言なの
か判然としないが、そう云った。
「そうしないと、リ=リ=ツェルの身が危なかったから」
 私は、どうしてなのか自分でもよくわからないが、顔から火の出る思いで俯
いてしまった。
 ほんの一瞬、沈黙が流れた。
「それじゃあ」
 山の神はするりと水中に沈んだ。
 地上へ戻って行ったのだ。
 私の鼓動は激しく高鳴っていた。

                      
                       ◇◆◇◆次号へ◆◇◆◇


ひとこと感想ノート
http://blue.candybox.to/murasaki/phello/phello.cgi

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 さっきから幾度となく思うことは、お茶が飲みたい、だ──おお神よ、もし
私を愛して下さっているならば、今ここに、私のためにお茶を入れてくれる人
物を派遣してください──心の中でひざまずきながら、デュケルスは紙に印刷
された主語と述語を拾っていく。

●長編SF小説「闘人サヴィニウス 〜紫焔フィリア2〜」第32話UP
http://aoi.peewee.jp/long_story/phyria2nd/phyria2nd32.htm

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         ◇◆◇◆葵マガジン文庫◆◇◆◇
         
私は我が脳内におけるドーパミンの大量一斉放出を感知した。
「ちょっと、坂本」ルルドールが横目で私を睨んだ。「あんたすごい、嬉しそ
うな顔してるわよ。いい加減にして」

平和な銀河に突如として現れた謎の怪物。生き物が、ヒトが次々に襲われ始める。
そして宇宙の運送屋・坂本たちに、その捕獲が依頼されたのだった──
長編スペースドライヴアクションストーリー。

●「スペースドライヴァー坂本」(2004年6月〜2005年5月連載)

http://aoi.peewee.jp/aomagabunko/sakamoto/sakamoto.htm

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         ◇◆◇◆BOOK in POCKET◆◇◆◇

塩村麻由は、インターネットで知った「ダイエット・バトル」に参戦すること
を決めた。期限は10ヶ月。彼女の、見えぬ敵たちとの闘い、そして自分との闘
いが始まった──だが麻由の知らないところで、そんな彼女をじっと見つめる
存在があった──

●葵むらさき著「Dying for Diet」掲載中

            EZweb公式コンテンツ
EZトップメニュー>カテゴリで探す>TV・メディア>マガジン>ブック in ポケット
            http://www.bookin.jp/

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       ◇◆◇◆葵のおすすめメールマガジン◆◇◆◇      

■■■■猿まじの自作小説!!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
●作者(sarumaji)が書いている小説をお送りするメルマガです!!
●連載されている小説は現在『ラブラルの狩人』と『神崎物語』です!
○2004年4月より、新連載『戦国傭兵譚』!!
●今回の一言コーナーでは日頃考えている事や神話に出てくる神様などを掲載!!
●気の向いた人!読んでやってください!!
●登録用URLは http://melten.com/osusume/?m=6120&u=11489
▲▲▲▲皆で読もう!!▲▲▲▲

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            ◇◆◇◆後記◆◇◆◇

葵むらさきです。ご購読ありがとうございます。

先週、バスケ関係資料を読んでいると申しましたが、小学生向け入門書に引き
続いて、今度は「ジョーダン」(デイウィッド・ハルバースタム著・鈴木主税
訳・集英社)を読んでいます。

ピューリッツァ賞受賞の元ニューヨーク・タイムズ紙記者が書いたものだけに、
内容も充実していて面白く、訳者の文もとても読みやすくて、バスケが一気に
好きになれる本です。

マイケル・ジョーダンとその周辺にいたたくさんの人物たちを、ただ褒めそや
すだけでなく彼らの性格の欠点や批判点なども率直に書いていて、それでも、
どんなにイヤな嫌われ者であっても、その人の生い立ちとか、親はこういう人
でこんな教育環境で育った、とか、じつに緻密に調べて書いてあり、すげー!
と頭の下がる思いがするとともに、やっぱり、面白〜い! と思います。

例えば、スパイク・リーがエア・ジョーダンのCMを撮ることになったいきさつ
とか、バスケそのもの以外の興味あるエピソードなんかもたくさん盛り込まれ
ていて、読み応え充分です。

書かれてあるのはいきおい1980〜1990年代のことになりますが、読んでいてふ
と「ああ、これもひとつの、歴史書なんだなあ……」と気付きました。

さて自分を振り返ってみて、我がバスケ小説なんですが……
もちろんジョーダンみたいなプレーをする高校生なんか出てきやしませんが、
ジョーダンと共通するところは、一生懸命バスケにがんばりながらも、あれや
これやの人間カンケイに悩んだり救われたり、している点です(笑)。

つーか、全然書き進んでません……

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           それでは次回をお楽しみに。

             発行者:葵むらさき
             aoi@xi.peewee.jp
       ◇◆◇◆葵むらさき言語凝塊展示室◆◇◆◇
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