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勤労感謝の日のルーツ

発行日時: 2005/11/17

今月23日は勤労感謝の休日ですね。この日は、戦前は「神嘗祭(かんなめさい)」すなわち天皇が新穀を天つ神(高天原から降臨した神)と国つ神(降臨以前からこの国に土着し、地方を治めた神)にすすめ、親しくこれを食すという国家神道の祭儀で、やはり国民の休日でした。
このことに関連して、「神道の本(学研)」で日本人の神観について調べているうちに、次のことが分かりました。

日本では、一年を表すトシという言葉は、イネ(稲)と同義でした。万葉集には「年は栄えむ」とあり、これは稲がよく実る豊作を意味します。この「トシ」の神が「歳神(としがみ)」と呼ばれる神で、もとは歳月の神というより、イネの神、豊作の神で、いわゆる穀霊だったそうです。

ところで、この歳神が山にいる期間は、万物がひそかに籠もり、命の再生と増殖を待つときで、フユ(殖ゆ)と呼ばれていました。冬には、死にかけた太陽を復活させる太陽祭祀や日神(ひのかみ)の御子としての天皇の霊力の賦活をはかる儀式が行われていました。
そして冬至を過ぎると、昼間の時間が長くなり太陽は復活し、やがて山に帰っていた歳神が里に降りるハル(春)が来ます。ハルの語源は、木の芽が張る(はる)ことから来ていると言います。
そして同じく山に帰っていた祖霊も迎え、新年の豊作を祈願し、祖霊祭が行われたそうです。

旧暦の正月は新暦では節分ですから、今も正月のことを新春と言いますね。また、正月三か日に日本人の多くが初詣をするのも、多分このあたりから来ているのでしょう。

さて、農作業が始まるまえに、人々は山から下ってきた歳神に豊作を乞う祭りを行ない、八百万の神々に幣吊(神に供える麻の布で、今では紙を用いる)を捧げ、豊穣を祈念して「トシゴイノマツリ」をしたのです。トシは歳神(としがみ)を意味し、この祭りは今日でも神社の春祭りとして残っています。

そして生命は、春から夏にかけて活動のピークを迎え、やがて秋の収穫となって収束すると「神道の本」は述べています。
「アキ(秋)」は「飽(あ)き食い」の「飽(あ)き」であり、収穫したものを神とともに飽きるまで食べる季節の意味だそうです。そして、この「飽き食い」により、穀物に宿る「穀霊」をわが身にたっぷりと引き込み、それによって「御魂の殖ゆ」の冬に備えたと言います。

古代の日本人は、この「トシゴイの祭り」の後、夏にはタマ(魂)マツリと呼ぶ「祖霊祭り」をしました。今日のお盆の行事は、仏教がタママツリを取り込んだもので、もとは土着の祭りだったのです。お盆は仏教の大切な行事だと思い込んでいる日本人が多いですが、実は古代神道の行事だったのですね。

秋が来ると、収穫物を神に捧げ、感謝する秋の「ニイナメの祭り」がありました。先にも述べましたが、新嘗祭(にいなめさい)は天皇が新穀を天神地祇にすすめ、また、親しくこれを食する祭儀でした。敗戦後にアメリカ駐留軍によって国家神道が禁止されたため、11月23日の新嘗祭は、アメリカの感謝祭(11月の第4木曜日)に似せたのでしょうか、「勤労感謝の日」に変え、国民の祝日として残されて今日に到っています。

今日も日本にある正月の初詣、お盆の行事、各神社の春と秋のお祭り、勤労感謝の日などは、いずれも日本の古代神道にその起源があることが分かります。その意味で日本は神国ですが、かって軍部が支配していた日本政府は、この古代神道を国家神道に作り変えました。天皇を神格化して、天皇のために死に、自らも軍神として靖国神社に祀られることを最高の名誉とし、国民を侵略戦争に向かわせたという歴史があります。今日残っている靖国神社もそのためのものでした。

「神道の本」は次のように解説しています。
日本の古代神道は、こうした四季の循環と自然という大生命に抱かれた魂の循環・再生を軸に展開され、発達してきた。自然の営みは神の営みであり、その神の営みを神の教えのままに実践することが「マツリ」であった。祭りは、このように、神によって生かされ、神とともに生きるすべての生命の輝きの発露であり、自然のサイクルの表現そのものでもあった。

そこには、神を人間とは隔絶した超越者とし、神との契約関係によって社会が維持されるといった欧米流の考え方はない。神を外に置けば、神は渇仰の対象、救いを求める対象として、先鋭に意識化される。しかし、神の営みそのものの結果として人間がおり、死ねば人も神となる日本では、外にいる神を渇仰の対象とする必要はなかった。そこに日本人の魂の底に刻み込まれた宗教観があり、祭りの意味があったのである。(解説終わり)

日本人の神は祖先神であり、五穀豊穣を助ける神であり、分霊(わけみたま)である人間も死ねば祖霊となり神となる・・それが古代の信仰だったのです。その神は人間に対して水平面にあったと言えますが、その後、天皇を頂点として日本を統一支配する階層によって、高天原(たかまがはら)神話が作られ、それまでの国つ神に対して、天つ神(高天原から降臨した神)が垂直面に存在する神として与えられたのです。アニミズムと神話の習合すなわち折衷・調和がおこなわれたと言えるでしょう。

しかしこのような日本人の神々(gods)は、クリスチャンの神である、絶対的・超越的存在者で、全知全能の「義と愛の神」(God)とは、あまりにもかけ離れた存在です。

神道は、仏教と比較してもイスラム教やキリスト教と比較しても、教義や教説を持ちません。また日本の神道が、はたして日本特有のものかは疑問です。記紀神話には、アジアや中国のものに類似点が多く見られるからです。

遊牧しながら季節的・周期的に移動する遊牧民族は一神教で、農耕生活を営む定着民族は、多神教であるとするうがった見方もありますが、農耕と牧畜とに区別できなくなった日本民族が、なぜ今も古代の多神教に固執するのでしょうか。

 
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