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【きゃりあ・ぷれす】vol.234「MINOHODOism」レポート vol.4-3《二日目》「ブータン雑記」その3

発行日: 2006/10/26

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   仕事と社会のこれからを考えるリポート&アクションマガジン
         「きゃりあ・ぷれす」vol. 234
            2006・10・26(木)発行
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【特集企画】「MINOHODOism」レポート vol.4-3 《二日目》       

            ◆GNPからGNHへ。        
              GNH(国民総幸福)を国の指標とする        
              小国ブータンの壮大な試み         

              <「ブータン雑記」その3>       宮崎郁子     
…………………………………………………………………………………………  
 
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鎖国によって守られた自然や文化を資産として充分認識し、誇りとする国 
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以前にも書いたように、ブータンは約30年前1974年までは鎖国状態に
あった。日本も江戸時代の300年鎖国をしていたので、共通点があるよう
に思える。しかし一方、時代的背景という点では、相違がとても大きいと感
じる。少し整理してみた。 
日本が鎖国を解いたのが日米和親条約が結ばれた1854年だとすると、日
本とブータンは、鎖国を解いた時期にちょうど80年の開きがある。
 この1854年から1974年までの80年という時間は、文明史上では
大変大きな意味をもっていると思われる。西洋科学文明が「いけいけどんど
ん」であった19世紀半ばと、その限界がかなりはっきり見えてきた20世
紀後半という時代背景の大きな違いだ。  

日本が80年前、西洋科学文明の申し子であった蒸気船の到来によって鎖国
を解かざるを得なかったのは、やむを得なかっただろう。また、長い時間を
かけて独自に発達させた社会や文化に比べ、あたかも限界を知らないような
パワ−や早さなど分かりやすい魅力をもった西洋科学文明に驚嘆し、すっか
り心酔してしまったのも、あの時代背景の中ではしかたがないことだったと
思える。80年前は、そういう時代だった。  

しかし、今は全く状況が違う。「ブータン雑記」その1にも書いたように
「経済的、物質的には驚くほどのレベルに達した国々であっても、幸福はそ
れほど大きくなっていない」ということに多くの人が気づき始めている時代
だ。  

この80年の間の人々の価値観の大変化が、今ブータンを大変希少で重要な
国、地域として世界中から注目させているのだと思う。また、ブータン人自
身の西洋的社会とは異なる自国の文化や自然に対する誇りと自信を強靱なも
のにしているのだと感じる。 
ブータンがGNHというコンセプトを広く世界に掲げることを可能にしている
のは、こうした時代的背景が大きい。それは、西洋科学による移動手段をも
ってしてもアプローチが困難な秘境としての地形が幸いしたといえるかも知
れない。もちろん、そのなかでしっかりとした営みを積み重ねてきた人々に
よる社会や文化あってこそなのだが。この80年という猶予をもてたことは


ブータンの人々にとって大変幸運なことだったのだが、それだけでなく、私
たちブータン人以外の地球人にとっても大きな幸運だったと思える。  

前置きが長くなってしまったが、ブータンがどのように時間をかけて培って
きた自然環境や文化、そして独自性を守り育てているかを、いくつかの例で
お伝えしてみたいと思う。   


■日常の中の民族衣装  

バンコクからブータンに向かう国営航空会社ドゥク・エアの機内で、まず初
めに民族衣装を着た客室乗務員の女性に出会うことができるが、これは他の
国の飛行機でも珍しいことではない。やはりまず驚くのは、パロの空港に到
着してからである。パスポートチェックや様々な仕事をしている空港係員全
員が、日本のかすりの着物に似た柄の衣服を着ていることだ。これは、男性
ならゴ、女性ならキラとよばれる民族衣装である。男性は、ゴの下にハイソ
ックスと革靴といったいでたちだ。ゴの柄はいろいろなので、別に制服とい
うわけではないようだ。 
そしてロビーに出ると、同じような姿のガイドが出迎えてくれる。ロビーに
は沢山のガイドがゴに革靴姿でそれぞれの担当旅行者を出迎えている。 
さらに、私たちを乗せてくれる車のドライバーも同様。それからは、出会う
人出会う人全員がゴかキラ姿である。  

ブ−タンでは、民族衣装の着用が義務づけられているということはガイドブ
ックなどで知っていたのだが、実際に誰も彼もがそのいでたちで普通に日常
生活を送っているのを見るのは、とても新鮮である。特に学生らしい坊主頭
の男の子たちがふざけ合っているのを見ると、顔だちが私たちにとても似て
いることもあって、何だかすごく懐かしい気持ちになる。といっても、実際
に日本でそのような光景を見た訳ではなく、「伊豆の踊子」とか、そのよう
な映画の感じなのだ。 
建物も全て伝統的デザインで統一されているので、たとえて言えば太秦の撮
影所の大大拡大判といったところか。  

大変残念なことに、江戸の下町的な発展をとげた場所はブータンにはないの
で、それはかなわないが、明治時代くらいまでの農村地域の日常はかくあっ
たであろうと想像できる光景が目の前に広がっている。作り物でないタイム
トリップ感がある。ドゥク・エアの飛行機は、いわばタイムマシーンなので
ある。  

とはいえ、時代はもちろん今である。開国前のブータンでは、それぞれの家
族の中に女性が手織りで家族のためのゴやキラの布を織っていたのだが、今
は女の子たちが学校に通っていて、母親から織りの技術を学ぶ時間がなくな
っている。そのため、インドからブータンの伝統柄を機械織りした布が安く
流入していて、日常着にはそれが使われているらしい。  

一方、伝統的な手織り技術の継承・向上については、政府の重要な仕事にな
っている。首都に織物博物館をつくり、見事な歴史的布地を展示したり、全
国から応募作品を募り、毎年織物コンテストを開催するなどの振興策が強力
に進められているようだ。  

ここでもブータンは、近代化と伝統文化の伝承と向上の推進という難しいか
じ取りを行なっているといえるだろう。  

(明日に続く)    




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