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三島由紀夫研究会メルマガ

発行日時: 2008/5/6


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  『三島由紀夫の総合研究』 
     (三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
        平成20(2008)年5月7日(水曜日)  
              通巻第233号
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百瀬博教さんが三島由紀夫を偲んだ日に
―― 再度百瀬博教氏を偲ぶ ――
                秋山大輔
 
  ▽
 今日、百瀬博教著の『裕次郎時代』を再読した。
そしてテレビを眺めていたら今年の成人した若者が生まれた時のニュースを流していた。その年に「石原裕次郎死去」のニュースが画面に刻まれていた。以前書いた文章と多少重複する点があるがご了承頂きたい。

最近、職場で最近「キムタクよりも俺は裕ちゃんが好きだ」と酒を呑みながら話していたら二十歳の後輩から「ユウちゃんって誰ですか?」と質問されて面食らった物だった。無論三島さんの事を語っても詮無き事だった。
 
 百瀬さんと私は不思議な縁で結ばれた。最初にお会いしたのはあるスノードームについての講演会であった。僕にとっては「スノードーム」(入れ物に水と置物が入っていて振ると雪が舞うあれです)なんてどうでもよくて裕ちゃんの話を拝聴したかったが最後まで出なかった。面白かったのは「いや、俺、オネェ系にモテるんだよ。サイデンステッカーでしょ、金子国義に、杉村ジュサブローに・・・」
 など、危ない話も連発していた。
ある青年が「百瀬さん、本物の男ってどう言う男ですか?」という質問に、「きちんと挨拶できる男ですよ」 
 と答えていたのが印象的だった。
講演会も終り最後に著書『不良ノート』にサインを求めた。すると、敬語で「よく買って下さいましたね」と話しかけてくださったのだった。
 
 百瀬博教氏は、昭和15年2月20日に任侠の家に生を受けた。立教大学在学中に「ニュー・ラテン・クォーター」という伝説のナイトバーで用心棒をつとめ、その時に生涯の兄となる石原裕次郎と邂逅するのだ・・・。
その後、作家や格闘プロデューサーとして名を馳せる。アントニオ猪木を「猪木」と呼びつけにしたのは、氏以外私は知らない。
 
 二回目の百瀬さんとの出会いはあのサイデンステッカー氏追悼会であった。
 やっぱり、体が大柄な人で、何となく話しかけ辛かった。なぜなら百瀬氏との邂逅はあの時一回のみだったし、絶対に忘れ去られていると思ったからだ。
 石原裕次郎と邂逅が会った人物として様々な書物で書かれている人物。僕には雲の上の人だ。それに色々な人とお会いしているだろう。僕なんて塵みたいな者だから忘れ去られているだろうと思ったのだ。
百瀬さんと距離をとりつつも、なんと、百瀬さんから私に近づいて来たのだ。私はとっさに頭を下げた。「百瀬さん、憶えてらっしゃいますか?」と話しかけたら、「ええ、憶えてますよ」と答えて下さった。
終始敬語で、秘書の方に食事を持って来させて「これ、食べて下さい」といってお皿を差し出した。私がビールを呑んでいると、百瀬さんはオレンジジュースを呑んでいて、「私はお酒が飲めないんですよ」と気さくに答えてくれました。
 
 いろいろ聞きたかった・・・。裕さんとの事、山本健吉先生に褒められた詩集について。あまりに大きい人物過ぎて聞けない。最後に握手して
 「またお会いしましょう・・・。」
  そして別れた・・・。
  さまざまな写真や、DVDを送りながら交流が続いていたのに・・・。電話で「1月10日以降にお会いしましょう」
人間はその人と会いたいと念じれば会えるものだ。裕さんも百瀬さんの大らかで人を包み込む包容力に魅了されたのではないかと思う
 
 僕は一期一会という言葉が大好きだ。
しかし会う事も叶わない人も入れば、別れる事になる人もいる。様々な人との出会いは記憶に残り、愛すべき思い出に昇華される。百瀬さんとの再会は叶う事はなかった、2008年1月27日に自宅のお風呂場で天に召されたのだ。
 
 私は永遠に百瀬さんと再会する機会を失ってしまった。私が一番百瀬さんと語り合いたかった三島由紀夫の話も宮崎先生の言葉や百瀬さんの書物から、しか知る事が出来なくなった。
  百瀬さんが三島への尊崇の念を書き綴ったエッセイがある。本の題名も『三島由紀夫の首』で題名も同様である。
 
 三島由紀夫が自決した時に百瀬さんは銃刀法違反で、秋田刑務所にいた。単調な刑務所の生活の中で突然、その事件は百瀬さんの耳に飛び込んで来た。少し長いが引用する。
 
「この夜も、日課としている腕立て伏せに熱中していると、突如、これまでラジオから流れてきたことのない、何かこちらの気持を不安にさせる音楽が聞こえてきた。腕立て伏せを続けながら、不吉な予感のするメロディに耳を澄ましていると、
 「特別番組。三島由紀夫が割腹・・・・・・」のアナウンスが耳に入った。次いて沈んだ調子の声で
 「三島由紀夫、45歳。ノーベル賞候補作家であり・・・・・・。楯の会会長・・・・・。本日、四人の楯の会会員と共に・・・・・・・(この間よく聞きとれない)・・・・・・
 と割腹して果てました」
 
 この言葉を聞いた瞬間、発条のように立ち上がった。机の上の読み差しの本を払い落とし、日記帳に使っている大学ノートを拡げると、これからラジオから流れるアナウンサーの言葉の一語をも漏らすまいと、正座し、鉛筆を握って身構えた。
ラジオからは何の言葉も出ない。先刻の、人の気持を不安にする戦慄だけが流れている。
 割腹して果てた。確かにそう言っていた。
 三島由紀夫が切腹したのか。
 どうして・・・・・・。何故だ。
 本当に死んだのか。そうじゃあるまい。
 祈りにも似た願いは、再び流れて来たアナウンサーの静かだがつよい言葉で弾き飛ばされた。
 
「三島由紀夫は、本日、四人の楯の会の会員と共に市ヶ谷自衛隊に押し入り、自衛官を傷つけ、楯の会会員一名と共に切腹して果てました」
 畜生。
 ガーンと殴られたように躰が痺れた。胸の底からこみあげてくる切ないものを抑えることが出来ない。動悸が激しくなるのが判る。落ち着かなくてはいけない。
 アナウンサーの声がまた跡切れ、少し間があり、御手洗辰雄、村上兵衛、佐々木基一、小中陽太郎という四人の評論家たちの声もうつろに聞こえる。話しているのが誰なのかも聞き分けられない。
 「死を知らない物は生を知らない・・・・・・」
  ネールの言葉を援用して、誰かが切腹の原因について論じると、それを受けてもう一人が、
 「今日の行動が現代社会においてどのような意味があったか、切羽詰まったものが感じられないのだが・・・・・・」と喋り出した。
 如何なる理由で死んだか判らないが、死者に何が言えると言うのだ。三島由紀夫を思うのならば、ひたすら切腹して果てた死者の霊を弔えばいいのだ。
  彼等が喋れば喋るほど虚しかった」(引用止め)
 
 そのあと百瀬さんは褌一つで三島由紀夫の名前を繰り返し唱えて冥福を祈った。百瀬さんなりの三島に対する喪の服し方であった。
私は平成二十年の二月二十日。百瀬さんの68回目の誕生日になる筈の日に青山斎場に一人佇んでいた。その日の主人公は小さな箱の中に納まり、友人が大勢駆けつけていた。番組で共演した浅草キッド、アントニオ猪木、鹿島茂、安西水丸・・・。様々な有名人を眺めたが虚しさしか心に去来しなかった。
 これが本当の百瀬さんの誕生日ならどんなに素晴らしかっただろうに。
 他者に対して純粋であった三島の精神と百瀬さんの魂が融合した様に思えた。
 いや、そうであって欲しいと願うしかない。生者は死者に対しては安寧をひたすら祈るしか術はない。この日、改めて百瀬さんの『三島由紀夫の首』の一節を思い起していた。
冷たい風が吹きすさぶ冬の一日の出来事だった。


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横浜の「港の見える丘公園」に隣接された「神奈川近代文学館」で開催中の『澁澤龍彦回顧展』を覗いて参りました。

先日、お会いした龍子夫人が「自宅の品々を回顧展に供出してしまったから、家は空っぽ、何もないもぬけの殻のようなのよ」とおっしゃっていたことを思い出す仕儀に至る、盛り沢山な資料と遺品を集成した不世出の快男子の大回顧展でした。
澁澤龍彦の出自は澁澤栄一に連なる深谷血洗島の一族。
戦前の小学校時代はただ独り丸刈りを厭い坊っちゃん刈りで通す反逆児。旧制浦和高校時代は出口裕弘、野沢協らと篤い交友を切り結ぶ文学愛好の徒。仏文学への湧き立つ意欲を受け止めてくれた仏語の師平岡昇からの学び、そしてコクトーへの傾斜。

大学浪人時代に知り合った秘田余四郎、吉行淳之介から得た知遇。大学時代のシュルレアリスムの巨魁ブルトンを通してのサドとの邂逅。小説家を目指した同人誌時代の修養と無邪気な乱痴気ぶり。
そして翻訳家としての自立。

『大胯びらき』・『さかしま』・『オー孃の物語』・『奇妙な死』・『ポトマック』・『エロティシズム』・『ジャン・ジュネ全集』・『美神の館』・『ひとさらい』・『超男性』・・などの奔放不羈な作品群を邦語に移す未踏の難業。

サド作品の翻訳本を発禁処分とされて最高裁まで八年間争い戦い続けたサド裁判での不屈。その特別弁護人となった埴谷雄高。その証人に立った大岡昇平、遠藤周作、中村光夫ら。
三島由紀夫との親しくさわやかな遣り取り。
加藤郁乎、土方巽、稲垣足穂、金子國義、瀧口修造、細江英江、高橋睦郎、種村季弘、池田満寿男、横尾忠則、唐十郎、野中ユリ、松山俊太郎、四谷シモン、厳谷國士、各士との楽しい交わり。

龍子夫人との欧州ハニームーンの幸せに満ちたスナップも数多く飾られ、澁澤が愛した身の回りの調度や絵画、オブジェ、小物も夥しく展示され、咽頭癌を手懐けながら完成させた遺作『高丘親王航海記』。

展示されている著作を眺め渡していましたら、中学時代入り浸っていた街の書店の棚から何気なく引き抜いて手に取っていた書が幾冊か。澁澤訳のアルフォンス・サド作『悪徳の栄』・『(続)悪徳の栄』・『ジュスチイヌ 美徳の不幸』や『澁澤龍彦集成』の数冊を買い求めたことを懐旧。
 思いみれば三島由紀夫の作品世界に誘い込まれたのも、澁澤作品を通してでした。
 会場入り口で流されていたビデオの中で高橋睦郎氏は、澁澤龍彦をイノセントの人と評していました。
イノセントとは無垢という意味ではなく何ものにも染まらない“無染”ということである、と語っていました。
なかなかうまいことを云うものです。

私が澁澤龍彦に想ったのは“無染”というより、その真逆にあらゆるものに染まり、しかしそのどれにも浸からずとどまらないでそれらをすべて透過してしまうしなやかで軽やかな感性です。
その意味において高橋氏の云う“無染”の人と理解されます。
澁澤は最晩年日本国内の地蔵巡りに没入していたと聞きます。
澁澤の研究、興味の対象は多岐に亘りました。
そしてそのどれにも捕らわれることのない、明澄闊達で軽やかな心持ちの才人だったのでした。
       (西法太郎)

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(((((( 三島由紀夫画像 ))))))
 動画投稿サイトのYouTubeで三島由紀夫関連の動画や画像を閲覧していたところ、The Life And Death Of Yukio Mishimaという動画の中で三島事件直後の追悼集会の映像(無音声)がありました。

全体で約6分間の映像ですが、5分28秒過ぎのところで画面右端で三浦代表(前三島研究会事務局長)らしき人物が遺影に向かって手を合わせているシーンがあります。短いシーンのため、はっきりとは分かりませんが、とりあえずお知らせしておきます。 
http://jp.youtube.com/watch?v=1WhSRHhaE9E&feature=related
 

(編集部より)画像を確認しました。間違いなく三浦重周(重遠社代表)です。
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 三島由紀夫原作『鹿鳴館』
こんどは新橋演舞場です

   6月6日―29日 夜の部(午後四時)
   水谷八重子、西郷輝彦、市川團十郎、波乃久里子、英太郎ほか
   詳しくは、下記サイトで。
  http://www.shochiku.co.jp/play/enbujyo/0806/index.html
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(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」(昭和四十六年創設)の会員だけに限定せずに、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。
比較文学論(たとえば「吉本隆明と三島」とか)、作品論(たとえば『仮面の告白』に新解釈)、読後感、政治論、芸術論。まるで分野を問いません。三島さん自身、古典から前衛まで、映画からシャンソンまで万能の人でしたから。
 「憂国忌」への御感想、御希望でも構いません。皆さんからの御投稿を広くお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。
ただし三島文学批判も構いませんが誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。一部の原稿は年二回発行のメルマガ合本に掲載することがあります。
       ◎ ◎ ◎
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  三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
      メール  yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2008  ◎転送自由
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  • 最新号 : 2008-07-25
  • 発行周期 : 半月刊
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ペンネーム : 宮崎正弘

  • 文豪三島由紀夫は「死後も成長する作家」といわれ、今日も文学、芸術、思想のあらゆる分野に亘っての研究成果が紹介される

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