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創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ




三島由紀夫研究会メルマガ

発行日: 2007/11/5


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『三島由紀夫の総合研究』 
  (三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
   平成19(2007)年11月5日(月曜日)貳 
           通巻 第187号   
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((( 随筆 )))
  サイデンステッカーさんの時計
    追悼会で半年止まっていた時計の針が進んだ
宮崎正弘
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 憂国忌発起人でもあったサイデンステッカー氏の追悼会が開催された。

 エドワード・サイデンステッカー氏といえば、『源氏物語』の名訳家として世界的に名高い。
また川端康成『雪国』『山の音』や、三島由紀夫『天人五衰』などを翻訳、とくにノーベル文学賞授賞式には川端氏に同行して記念講演の草稿、「美しい日本のわたし」を直前まで訳出に追われた逸話は有名だろう。
 江戸情緒と下町を愛した。湯島のマンション近くでは下駄履きのことも多かった。
湯島から上野公園を散歩中、不忍池で転んで、そのまま意識を失い、四ヶ月入院したが、帰らぬ人となった。

 転倒したのは四月二十六日の午後六時半で、時計はそのまま止まっていた。
 半年が経った。

 11月4日の日曜日は、そよ風と太陽に恵まれ、上野公園は家族連れ、アベック、行楽客にごったがえしていた。
公園のなかにある上野精養軒は、ちかくに住んだサイデンさん(誰もがサイデンステッカーという名前が長いので、こう略した。本人もそう呼ばれることを喜んだ)が、好んだレストランだったが、同時に式場を兼ねた由緒のある建物。ここで、八月になくなったサイデンさんをしのぶ集いが行われた。すぐ真下の不忍池で転んだからだろう。

 参加者ひとり、ひとりが入り口で遺影に献花した。会場には静かな音楽が流れていた。『雪国』の英語の朗読もあった。
 遠く米国からは甥と姪にあたるピートとパトりシアから長いメッセージが届いた。多くの教え子、文学の友人、学者が詰めかけた。

 舞台はおおきな花々で遺影を取り囲み、スクリーンには在りし日のサイデンさんのスナップが多彩に映し出された。
愛猫は「はなこ」だった。日本にいる間、サイデンさんの傍を離れなかった。スナップのなかには見覚えのある友人達との笑顔がいっぱいだった。

 サイデンさんを最後まで介護したのは山口徹三氏だった。彼が追悼会の準備をこなした。緊急に編まれた随筆集(私家版『サイデンステッカー』)も配られた。
 故人が締めていたネクタイは百数十本。陳列後、希望者に形見分けとして配られた。わたしは“サイデン・ネクタイ・コレクション”のなかから一番派手なものを選んだ。
そうだ。サイデンさんは、ネクタイが好きで、一度、或るパーティでネクタイ論議をやった。私がまだ三十そこそこの頃で、派手なネクタイをしていたのをサイデンさんがめざとく見つけ、「このデザインは何ですか」と絡みだしたのだ。
喧嘩早い人だった。

 最初に友人だった高橋治(詩人、直木賞作家)氏がサイデンさんとの想い出を、ぼそりぼそりと語った。
 献杯は加瀬英明氏が音頭をとった。会場には知り合いの編集者や石原萌記『自由』社長、村松英子さんの顔もあった。

 僚友だったドナルド・キーン氏の弔辞。
 「いまから六十五年前にコロラドの海軍日本語学校で知り合った。三回生下だったのがサイデンさんだった。頭脳明晰で会話も弾み、仲良くなり、一緒に日本語を勉強した。戦後、赴任地が異なっていた間は、文通をしていた。
 その後、わたしは京都へ留学、サイデンさんは東京の下町(文京区林町)の小さな家だった。京都に来たときはサイデンさんが私の家に、わたしが東京へ行くときは彼の家に泊まった。しもた屋で朝、「納豆ぅー」と叫ぶ声がした。豆腐を売る声もあった。下町で庶民の生活の臭い、サイデンさんは、もっとも好きだったのだ。
 京都は綺麗だが、活気がない、とサイデンさんは言っていた。好きではなかったのだろう。
 古典落語が好きだった。わたしは京言葉を勉強していた。お互いに『蜻蛉日記』などの訳語のことで議論しあった。
 よくわたしとサイデンさんを「ライバル」と言うマスコミがあったが、わたしは全然、そんな風に認識したことがなかった。お互いに日本文学を志しても、カバーする分野が違った。別の分野だった。
 その後、コロンビア大学で空席ができたので、サイデンさんと交替で受け持った。毎年春(1−5月)をわたしが、秋(9−12月)をサイデンさんが担当した。だからコロンビアでは同じ家に住んで、お互いに家具を置きっぱなしにしていた。近年、日本文学を志した同士らは、随分と不在になって、その不在は、深いところで物足りない。サイデンさんの追悼会に、こんなに多くの人にきていただいて、私にとっても慰めになる。」


 ▼志賀直哉、小林秀雄を認めなかった

 文壇を代表して丸谷才一氏が挨拶した。
 「サイデンさんの功績は川端、谷崎、太宰を海外に認知させたこと。その選び方、訳しかたが、読者を豊かにした。源氏物語を世界にしらしめた。往時の日本の文檀は、志賀直哉が谷崎潤一郎より上という位置付けだった。私小説優位を覆して、文学のレベルの領域を確立した。漱石を絶賛し、小林秀雄を認めなかった。その点でわたし(丸谷)とサイデンさんは共通していた。荷風には批判的でもあったが、サイデンさんの死に方は荷風より荷風らしい。人生そのものが文学的である」。

 しかし、サイデンステッカーは志賀直哉『城の崎にて』を訳している。丸谷氏もキーン氏も意図的にか、三島由紀夫の名前を出さなかった。
 
 生花と好きだったお酒に囲まれたサイデンステッカー氏追悼会は会場がぎっしり満員になった。

 会場には田中健五、粕谷一希氏ら懐かしき編集者も大勢いたが、知らない顔も多い。
下町の散歩仲間、居酒屋の常連、そして落語の常連だという。
なかにテレビ朝日外報部の知り合いがいるので、「?」。
「上野の居酒屋でよく一緒になり飲んだ仲ですよ」と自らの解説があった。小生自身は学生時代にやっていた『日本学生新聞』や、その後、雑誌『浪漫』に寄稿してもらったり、憂国忌第一回のときはハワイに電話をかけて、メッセージを頂いた。一昨年は花見で屋形船に揺られた。九段会館のシンポジウムでは壇上にも昇ってもらった。

 途中で騒ぎが持ち上がった。
 サイデンさんの翻訳本や写真が展示された陳列台におかれた時計が動きだしたのである。
 最初に発見した人に誰もが「嘘だろ」と言った。会は四時半から始まり七時十五分ごろ終わった。六時半でとまっていた時計が、六時半に動き始め、7時十五分をさして止まった。
 
追悼会のあいだ、まちがいなくサイデンさんは、あの会場に居たのである。
帰宅後、私家版のサイデンさんの随筆(原文は93年11月号の『うえの』)を読んだ。「わたしは幽霊の存在を信じる。」と書かれていた。

 (この文章は「宮崎正弘の国際ニュース早読み」より転載しました)

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(読者より)『諸君』十二月号の目次を見て、そそっかしくも『正論』に対抗して三島さんを取り上げた連載を始めたか!と思ってしまいました。
モデルの女将は長野県出身のようですが本名の“畔上”という姓からすると中・南信あたりの出でしょうか。国会図書館にあるという『般若苑マダム物語』は手にとってみたいものです。
有田の堪忍袋の緒を切らせたのは、単行本化を引き受けた新潮社の新聞広告だったのでしょう。ご当人たちに「モデル小説」の惹句は煽情的と写ったのでしょう。
竹内氏の論の冒頭にある有田、吉田、重光の三人を比較した月旦評は愉快です。引用されている清沢洌の有田評も秀逸です。
ところで同号にある伊藤隆氏の「吉田茂新発見書簡と自衛隊の誕生」では、自由党の吉田と改進党の重光葵との鞘当てぶりが、吉田の松野鶴平宛の新発見書簡から炙り出されていて興味深いものがあります。
宮沢喜一を、酒癖が悪く優柔不断で、事務所に来た酌婦を部屋に閉じ込めソファーに押し倒すような輩と見下げていますが、若い頃は自由党の池田勇人のもとで、山本勘助・雪斎ばりに重光改進党を取り込む策を熱く循らしていたとは以外です。ほかに同号では西尾幹二と川口マーン恵美氏がドイツ型教育を論じていて、これも興味深く読めました。
  (西法太郎)
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 村松英子主宰の「サロン劇場」
   三島由紀夫原作『薔薇と海賊』
いま、やってます!

 主演 村松英子  出演 大出俊、伊藤高、若柳汎之丞、村松えり他
 新宿紀伊国屋ホール
 11月9日まで。(一般料金 6000円)

 上演スケジュール
 11月6日(火曜) 昼 1400−
    7日(水曜) 昼 1400−
    8日(木曜) 夜 1830−
    9日(金曜) 昼 1400−
  詳しくは下記
http://mishima.xii.jp/annai/index.html
   ◎
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劇団四季
  自由劇場で「鹿鳴館」を公演中 
    憂国忌の日までつづくロングランです!

http://www.shiki.gr.jp/applause/rokumeikan/
(くわしくは上記サイトに)

((((((鹿鳴館によせて))))))
 「時は明治、文明開化華やかなりし頃。絢爛豪華な鹿鳴館の夜会を舞台に、社交界に渦巻く謀略、愛憎そして欺瞞を描いたこの悲劇は、1956年の文学座創立20周年を記念して、三島由紀夫によって書き下ろされました。
その頃、劇団四季は旗上げより間もない3年目、アヌイ、ジロドゥ作品を主として上演していた時期。初演を客席で観ていたという浅利慶太は「日本人の作家がよくぞここまでのものを書いた」と大きな感銘を受けたその日を振り返ります。
美文で名高い三島文学ですが、こと『鹿鳴館』においては本人が「筋立ては全くのメロドラマ、台詞は全くの知的な様式化」を狙ったと述べています。

この作品の魅力を存分に引き出すには、戯曲に書かれた言葉を余すところなく観ている者に響かせることが必要。それでこそ作品本来の姿がくっきりと浮かび上がってくるのです。朗誦術に卓越した方法論を持ち、熟練の演技陣がそれを奏でる劇団四季の『鹿鳴館』に、どうぞご期待ください。
     (鹿鳴館のパンフレットより)
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 三島由紀夫原作

「朱雀家の滅亡」(佐久間良子・金田龍之介主演)は12月4日から
  宮田慶子演出の「朱雀家の滅亡」は、池袋の「あうるすぽっと」、12月4日から16日まで。
 観劇料 7000円
 詳しくは下記サイトに。
http://www.theaterguide.co.jp/pressnews/2007/09/21_2.html
   池袋の「あうるすぽっと」は、地下鉄「東池袋」駅の上に新築のビルです。
      ◎ ◎
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「憂国忌」
@@@@@

 三島由紀夫氏が憂国の諫死を遂げる直前、開催された「三島由紀夫展」は「書物の河」「演劇の河」「肉体の河」「行動の河」と四つに展示が分けられた。そこで憂国忌も一昨年は肉体をテーマに細江英公氏の「薔薇刑」を、昨年は「演劇」で村松英子さんに「薔薇と海賊」の予告上演をしていただいた。

ことしは「行動の河」に焦点をあてて次の要領で開催します。
        記
と き     11月25日 午後二時(一時開場)
ところ     豊島公会堂 (池袋東口、三越うら)
http://www.toshima-mirai.jp/center/a_koukai/
        ことしのテーマは、『行動の河』です!
会場分担金  おひとり千円)
 
   第一部  1400−1530
シンポジウム「あれは楯の会事件ではなかったのか」
       パネリスト 堤 堯(元文藝春秋編集長)
             中村彰彦 (直木賞作家)
       司会    花田紀凱(WILL編集長)
         (休憩)
   第二部   1540−1710
       檄文朗読(日本保守主義研究会)
       記念講演 「武士道の悲しみ  最後の特攻としての三島由紀夫」
       評論家 井尻千男(拓殖大学日本文化研究所所長)

 代表発起人 井尻千男、入江隆則、桶谷秀昭、嘉悦康人、小室直樹、佐伯彰一、篠沢秀夫、竹本忠雄、中村彰彦、細江英公、松本徹、村松英子。
 (当日、会場では入手しにくい奇観本などの頒布会も行われます)。

もっと詳しくは発売中の『WILL』12月号、『正論』12月号(11月1日発売)をご覧ください。
 また三島研究会の下記サイトにも詳しい案内があります。
三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
         ◎ ◎ ◎
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  ◆
(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」(昭和四十六年創設)の会員に限定せず、三島研究の論文、エッセイを常時募集しております。
 比較文学論(たとえば「吉本隆明と三島」とか)、作品論(たとえば『仮面の告白』に新解釈)、読後感、政治論、芸術論。まるで分野を問いません。三島先生自身が古典から前衛まで、映画からシャンソンまで万能の作家でしたから。
 「憂国忌」や「公開講座」への希望講師、御感想も歓迎です。
 皆さんからの御投稿を広くお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。ただし三島文学批判も構いませんが誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。
 一部の原稿は年二回発行のメルマガ合本に掲載することがあります。
       ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
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三島由紀夫研究会 HP URL http://mishima.xii.jp/
      メール  yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2006―2007  ◎転送自由
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ペンネーム : 宮崎正弘

  • 文豪三島由紀夫は「死後も成長する作家」といわれ、今日も文学、芸術、思想のあらゆる分野に亘っての研究成果が紹介される

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