創立35年の老舗「三島由紀夫研究会」の会報を兼ねた、あらゆる角度からの総合研究メルマガ
- 最新号:2008-10-11
- 発行周期:半月刊
- 読んでる人:519人
- 創刊日:2006-01-12
- Score!:88点
- コメント数 : 8
- メルマガID:149567
- バックナンバー:全て公開
- 発行者サイト:あり
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三島由紀夫研究会メルマガ
発行日: 2006/11/11
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『三島由紀夫の総合研究』
三島由紀夫研究会 メルマガ会報
平成18(2006)年11月12日(日曜日)
通巻第84号 (11月11日発行)
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(トピックス1)
ちくま文庫から『文化防衛論』が復刊
待望久しかった「文化防衛論」が文庫版でリニューアルされ、店頭に並んでいる。
ちくま文庫版『文化防衛論』である。
「反革命宣言」と「文化防衛論」に学生らとのティーチインを収録、当時、新潮社から軽装版で出版されて以後、新潮文庫には入らず、ながらく若いひとの間でも「文化防衛論」を読んだことがない、という声が聴かれた。定価780円。
(トピックス2)
テレビwowowで、「名作日本映画館」の「三島由紀夫特集」。
11月12日(日)午前8:15〜10:00
再放送(デジタルwowow)25日(土)午前6:20〜8:00
「からっ風野郎」(1960年 三島主演映画)
11月19日(日)午前8:15〜9:44
「お譲さん」(1961年)
11月26日(日)午前8:15〜10:00
「獣の戯れ」(1964年)
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(読者より その1)
映像サイトとして有名になっております「YouTube」に、三島事件の映画ニュースがアップされています。参考までにお知らせ致します。
http://www.youtube.com/watch?v=o2IVg9D8LMQ
他にも三島関連の映像もあるようです。
(MT生、東京)
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(読者より その2)
前事務局長だった三浦重周さんの一周忌も近づきましたね。
「献歌欄」に、凡作追加一首。
かきくらす雲ちらす風ふかざるやかなしき命かさねずにして
(石渡寿哉)
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書評
読み始めて酩酊、魂が漂いだした
宮崎正弘著『三島由紀夫の現場』(並木書房)
評 西法太郎
『三島由紀夫の現場』を早速、手に取りうっとり、巻頭グラビアにくらくら、読み進めて目は吸盤に吸い付けられたようになり、魂は体から漂い浮遊しているように酩酊し、一気呵成に拝読致しました。
次の週末あたりには熊本に飛んで新開皇大神宮の神風連所縁の地を見てみたいと心が急かされています。
さて心に留まりましたいくつかの件りを引いてみます。「三島はギリシアへ行って、人生観を改め、まずは自らの肉体をギリシア化する決意をしたわけだが、その決意、その強い動機の一つとなったのがバチカンのアンティノウス像だった」(43ページ)。
この像が三島に命より大事なものがあると呼び掛けていた!ウーン・・と唸ってしまいます。この基督教の洗礼を受けなかったギリシアの最後の花アンティノウスが三島を市ケ谷自衛隊駐屯地に誘った?
「ムッソリーニも、ダヌンツィオも、日本の武士道を高く高く評価した」(47ページ)。数年前ロマノ・ブルピッタ氏からムッソリーニの偉大さ、ダヌンツィオの栄光を半日学びました。
日伊は政治軍事で結託するのでなく貴著のとおりローマ神話と古事記で結ばれるべきでした。パリでトラベラーズ・チェックを盗られ余儀ない長逗留を強いられた「三島はパリになじまなかった」(51ページ)。
「私は・・『ドルヂェル伯の舞踏会』に、完全にイカれていたのであるから。それは正に少年時代の私の聖書であった(旧全集三一巻)」。
「(ラディゲとコクトーの)二人は・・同性愛の関係にあった。三島はそのことに気づき始め盲目的なラディゲ信仰が納まると源流を研究し、・・」(54ページ)。
私は、二十歳で決闘死しその前夜を徹して五次方程式の解を書き残したガロアにイカれ、学生時代最後の春休みにアルバイトで稼いだ金で安い学生向けヨーロッパ旅行でパリに立ち寄り、ガロアが入学を果たし得なかったエコール・ポリテクニク(パリ理工科学校)をパリの街中に見つけました。
仏文学者で小説「背教者ユリアヌス」を物した辻邦生がフィレンツェの大聖堂ドゥオモに登り橙色の屋根の連なる街を見渡し興奮の余り鼻血が噴き出したというエピソードを思い出しました。
私もそこで死んでもいいくらいの酩酊感を覚え鼻血が噴き出そうでした。
「実物のコクトーを見てから十年後の三島事件を、自己正当化、自己神化と解釈する向きにはこの言葉から心理分析を割り出してゆく必要があるのではないか?」(57ページ)。
三島の言葉の詳細は本文に譲りますが、深く頓首する御示唆です。
昭和三十二年二回目のニューヨークで期待した近代能楽集の上演が儘ならず、手持ち資金が乏しくなり「そろそろ私の倹約生活がはじまったと三島はその日から日記を家計簿代わりに克明な支出を記録始める。夕食が八ドル、お茶が二ドル五十セント・・」(67ページ)。
三島は大学時代の精神状況が苦しくノイローゼ気味のときも一年余り詳細な家計簿メモ兼日記を残しています。
窮状に追い詰められると人間は瑣沫に拘るものですが、三島の場合は家計簿を付けたようです。
「なんと私はヘミングウェイを学ぼうと入学した早稲田大学英文科で、担当教授の瀧口直太郎は講義のたびにカポーティ、カポーティを連呼、すっかり白けてしまった。奇を衒うことの多いカポーティは、好きになれない作家だった」(76ページ)。
私にとり瀧口直太郎は懐かしい名前です。同氏の名を冠した参考書「現代高等英文解釈」はなかなかのすぐれもので瀧口門下のレベルの高さを覗わせる出来でした。隅から隅まで読み込み、下線を引っ張りました。
ポピュラーな英米作家の作品のさわりが例文に採りあげられていて田舎の高校生にいい刺激を与えてくれました。
「マルロウの若き日は謎だらけで『人間の条件』や『希望』などの作品は、上海や広州に行ったこともない時代に想像で書いた作品であることが今日の研究で明らかになっている。・・もっともマルコ・ポーロにしても日本に来ないのに福建省の泉州あたりで仕入れた噂話や風聞をもとに黄金の国・ジパングと書いた。ジャパンの語源となるジパングは福建語のジーッベンから来ている」(114ページ)。
聖徳太子は天武朝の都合での偽存だという説がありますが、マルコ・ポーロの偽存説は欧米の学会では通説とか。マルロウの若い時分の盗掘や密輸のヤンチャ放埒ぶりは後年の彼からは想像の難いことですが君子は豹変するものなのでしょう。
三島も傍目には晩年豹変していますがマルロウみたいにいかがわしいことには手を染めていません。そのマルロウは三島のハラキリ自決の報に震えました。
「聡子の出家を受け入れた月修寺のモデルは奈良郊外にある円照寺、・・この寺は由緒正しき門跡寺で、天皇家につながる聖域である。三島由紀夫がどうしてこの寺院を選んだのかは今も謎である。」(141ページ)。
「それにしても三島さん、誰に聞いてあの寺をモデルとしはったんやろと保田が言った台詞をいまも耳元に記憶している。」(143ページ)。
明治大帝の双子姉妹の御一方が初代御門跡なら三島がこの寺に興味を惹かれ小説の重要なモデルにしたのは頷けます。
保田輿重郎も端倪すべからざる三島のおそるべき情報力です。
「林桜園は、世の中はただなにごともうちすてて神にいのるぞまことなりける、と詠んだ。太田黒伴雄は、起きていのり伏してぞ思う一筋は神ぞ知るらむわが国のため、と詠み、同じく首謀者の加屋霽堅も、八百万神にぞ祈る一筋は世にこそかかれ身をば忘れて、と詠んでいる」(150ページ)。
襖に残された加屋霽堅の墨跡は『奔馬』のカバーに移され、同本を手に取ると三島の熱い想いが今も伝わってきます。
「三島は金閣を取材するにあたって花園の妙心寺の御坊に滞在した。同じ禅寺といっても宗派が違うが、何かの事情で宿泊先が妙心寺となったのだろう。」(166ページ)。
金閣寺側が三島の取材に協力しなかったのですね。
「・・生命だけが価値観ではない、という考え方が拡がった功績は、ひとえに三島が『葉隠』を伝統的で同時に現代的な解釈をほどこして、現代日本人に訴えかけ、血書のごとく綴ったからである。」(179ページ)。
同感です。
山本常朝は先先代の遺徳が忘れ去られ忠が廃れ孝が行なわれない元禄の世を嘆き悲しみ、鍋島の武士よ、かくあれと叱咤したのが武士道の聖典となった『葉隠』です。
「三島由紀夫の文学的出発は、この日本の主権喪失の時代にぴたりと重なっており、三島文学が価値紊乱の真っ只中で誕生している点に留意したい。その無力感を如実に表したのが『鍵のかかる部屋』である」(195ページ)。
三島の中短篇には山椒のようにじわりとそしてピリッと刺激してくるものがあります。
極上の文学的毒素を読者に吐きつけてきます。
三島はなぜか天皇制という用語を使って文化概念としての天皇を主張しました。
立論が甘いと橋川文三や元共産党員の谷沢永一らに攻撃されました。
「その真意は日本の精神復興にあったのには疑念の余地がないだろう」(200ページ)。
その通りです。だからそれらのチャチャはどうでもいいのです。
「日本の浪曼派はロゴスよりパトスを重要視するのだが・・」(208ページ)。
伝統回帰派、体制保守派、保守と称する改革派などそれぞれのロゴスとパトスを持ち二者の比重が違うなら保守の大同団結はまさに幻想で、互いに言い合ってこそ健全なのでしょう。
示唆に溢れる貴著は三島論三部作の掉尾を飾る力作と観じ入りました。
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●このメルマガは昭和46年に結成された老舗「三島由紀夫研究会」の会報を、一般の読者にも開放する新編集方針のもと、メルマガとしてリニューアルしたものです。メルマガのため、横組みであることをご了解ください。
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三島由紀夫氏第三十六回追悼会
『憂国忌』
日本を代表する文豪、三島由紀夫氏が「楯の会」学生長の森田必勝とともに、憂国の諫死をとげてから早くも三十六年の歳月が流れました。
北東アジアの軍事・政治の緊張を眺めると、三島氏が予言したように我が国の将来が暗澹たる事態は些かも減じていません。
憂国忌は「三島由紀夫氏の作品と訴えを通して日本の将来を考える機会」とするものです。
(代表発起人)井尻千男、入江隆則、桶谷秀昭、嘉悦康人、小室直樹、佐伯彰一、篠沢秀夫、竹本忠雄、中村彰彦、細江英公、松本徹、村松英子ほか発起人二百数十名。
記
とき 十一月二十五日(土曜日) 午後六時半(六時開場)
ところ 池袋東口「豊島公会堂」(別名「みらい座いけぶくろ」へは、JR、メトロ「池袋」駅東口、三越裏。豊島区役所隣り。電話は3984―7601)
会場への地図は下記
http://toshima-mirai.jp/center/a_koukai/
会場分担金 おひとり千円(学生五百円)
プログラム 村松英子「三島由紀夫”演劇の河、行動の河”――『薔薇と海賊』を軸に」。
この戯曲「薔薇と海賊」は舞台をみにきた三島氏が泣いていた。公演終了から二日後に、あの事件はおきたという因縁経緯があります。
ほか著名人による追悼挨拶など。参加者には小冊子を差し上げます。
さらに詳しくは http://www.nippon-nn.net/mishima/annai/
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宮崎正弘『三島由紀夫の現場』
(並木書房、1700円+税)
全国一斉発売!
本書は宮崎正弘が35年の歳月をかけて三島事件の自決現場のみならず、三島が描いた『潮騒』『金閣寺』『剣』『春の雪』など名作の国内舞台、そのモデルを訪ね、その場所に立って、三島が何を考えたかを半ば紀行風に、そして半ば三島の哲学探究の旅です。
とくに「記憶もなければ何もない」月修寺の庭は『天人五衰』の最後の場面。『奔馬』で飯沼勲の自決する伊豆の海岸などのモデルを特定しております。
事件前夜、三島が「楯の会」の四人と「最後の晩餐」を摂った新橋の料亭を再訪したり、波瀾万丈の記念碑的労作となりました。
また海外の舞台へ飛んで『暁の寺』のタイ、インド。『旅の絵本』や『鏡子の部屋』に描かれたNY、アポロの杯にでてくるギリシア、ローマ、そしてパリ。
圧巻は『らい王のテラス』のカンボジアをめぐる旅。補遺には筆者が招かれて講演した「ローマ憂国忌」に関しての考察など。
グラビア8ページ、本文中にも写真が十数葉、挿入されております。
(宮崎正弘の三島由紀夫関連三部作)
『三島由紀夫“以後”』(並木書房)
『三島由紀夫はいかにして日本回帰したのか』(清流出版)
『三島由紀夫の現場』(並木書房、11月10日発売)
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◎小誌の登録は下記で
http://www.melma.com/backnumber_149567/
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(編集部から)小誌は「三島由紀夫研究会」および「憂国忌」の賛助会員だけに限定せずに一般読者の皆さまからも、三島研究の論文、エッセイをつねに募集しております。
作品論、作品感想、読後感、政治論、芸術論。分野を問いません。ご投稿をお待ちします。原則として実名。簡単な肩書きをつけて下さい。原稿料はありません。三島文学批判も構いませんが誹謗中傷のたぐいの投稿は採用しません。ゲスト寄稿者コーナーも常設しております。ご投稿をお待ちしております。
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三島由紀夫研究会 HP http://www.nippon-nn.net/mishima/contents/
メール yukokuki@hotmail.com
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(C)三島由紀夫研究会 2006 ◎転送自由
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