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記者コラム「インターネットで読み解く!」

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「インターネットで読み解く!」hyoron2

発行日: 2004/10/13

┏━◆◇━━━━━━━━━━━━by mag2/Macky/melma!/Kapulight/E-mag━

┃  記者コラム「インターネットで読み解く!」2004/10/13号 (隔週木曜刊)

┣━━━━━━━━━━━━━━━━ 独立刊 No.128━ 発行部数15,161部 ━

┃ ※「ネット接続に群がる日本の光景」後半。中間部の英訳版も出ました
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     ------ 評論「ネット接続に群がる日本の光景」(後半)------


 神奈川大学評論第48号
https://secure.educe.jp/jindai/hyouron/view_hyouron.php?HRID=48.html
の特集「欲望の社会風景」に執筆した評論を、なるべくオリジナルのスタイル
で収録しました。各節は以下の通り。

 ●人口統計を動かすネット出会い●日本以外では立ち上がらない●ネット発
信文化が曲がり角に●ネット・ジャーナリズムも生む(以上が前号に掲載)

(今回配信分は以下)●ニュースサイトは選別に問題意識●自然発生で進んで
きた限界●商業主義へ反発から巨大水脈●日本的なものが世界を変える

                     (英訳版の情報は編集後記で)



   ●ニュースサイトは選別に問題意識

 米国を中心に流行のブログに似ている面もあるが、個人ニュースサイトも日
本独自で発達した。関心を持ったニュースのリンク先と簡単なコメントを並べ
て構成される単純さ、誰でもが手を出して長期に続けられる手軽さが受けて、
どんどん増殖している。いつから始まったと言える存在ではないが、メールマ
ガジンと前後して力を持ってきた。先駆と言われる「ムーノーローカル」は一
九九九年に当時の個人サイトとしては記録的な百万ページビューを達成した。
ただ、日本のニュースサイトは政治的なコメントも多い米国のブログと違って、
趣味のゲーム系やコンピューター系、社会ニュースでも面白い軟派系のニュー
スを主に扱う。
 ニュースサイトはマスメディアがウェブで流すニュースを中心に1日に何回
も更新する。最大のものになると毎日のアクセス数が十五万くらいになり、以
下数万、数千、数百と続き、全体でいくつあるのか新旧交代が激しくてつかめ
ない。他のサイトが取り上げたニュースに面白いものがあれば自分のページの
リンクに直ちに追加するので、カスケード効果が生まれ、まるで津波のような
膨大な短期集中アクセスが発生する。
 私が二〇〇二年に「音楽産業は自滅の道を転がる」を書いた際、ウェブ公開
から三十時間で一万のアクセスを経験した。それ以前にも津波アクセスの経験
はあったが、大きすぎてアクセス記録を急ぎ破棄する必要に迫られ実態をつか
みきれなかった。一万アクセスの内訳は最大サイトから四千、二番手から千、
その他二百余りのサイトから五千であり、カスケードが目に見えるようだ。も
っと面白いと感じられるニュースなら、一日で十万、二十万の津波が毎日のよ
うに起きている。

 運営当事者は何を考えているのか、自ら評論している「破竹と死守と」(注
1)から概略まとめるとこうなる。「我々は長い間、受動的な情報手段しかも
たなかった。人は物事を知ると本質的に他人に教えたくなる性癖があり、それ
が個人発信の波になった。『情報を処理する』とは事の真意を確かめ適切な意
見・考察を述べることだ。処理されていない情報は独り歩きし、勝手な推測を
生んでしまう。マスコミがこの作業を怠りすぎたから個人ニュースサイトの隆
盛を生んだ、と考えられよう」
 ここでもメディアの死角になっている所で、市民の問題意識が働いて自然発
生的な運動が起きていた。もちろん津波アクセスの対象にはメディア発だけで
なく、名も無い市民がウェブに書いたニュースも含まれる。

   ●自然発生で進んできた限界

 拡大一途だったメールマガジンに変調が感じられるようになったのは、二〇
〇三年半ばだった。大部数を持つマガジンは成長が止まり、やがて減少傾向に
転じた。二〇〇四年の五月初めと三月初めの二カ月間で比べると、成長してい
る例外もあるものの三%、四%の減少が当たり前になった。これは硬派ものも
軟派ものも同じだ。いや、実用情報や趣味情報の方が減少速度は速く、中身の
ある硬派ものマガジンはゆっくりと落ちている。
 減少原因ははっきりしていて、メールマガジン購読に新規に参入する読者が
ほぼ枯渇したことにある。「まぐまぐ」が読者向けに発行しているウィーク
リー誌の部数が読者数の動きをほぼ反映している。順調に伸びていたのに、二
〇〇三年初めで頭打ちになり、以後四百四十万部前後でほとんど変わらぬ状態
が続いている。メールマガジンの読者は、気に入ってずっと固定読者になる層
と、一定期間読んで止めていく層に分かれる。やめていく数に見合った新規読
者が生まれて、横這いになる。現状はやめていく数に新規が全く追いついてい
ない。
 新規読者はどうして枯渇しまったのか。平成十五年「通信利用動向調査」に
ある「世代別のインターネット利用率の推移」を見れば事態が理解しやすい。
世代別利用率は一〇、二〇、三〇代でもう九〇%に達し、四〇代も八四%であ
る。ここからは新たな利用者は出なくなっている。残る未開拓層はデジタル・
ディバイド傾向が強い五〇代以上でしかない。

 一方、個人ニュースサイトを眺めると、かっての超有力サイト「バーチャル
ネットアイドル・ちゆ12歳」や「俺ニュース」などが休止してしまい、その
穴が埋まっていない印象がある。残っているサイトはアクセス数を伸ばしてい
るものの、かつて見た活気に乏しい。燃え尽き現象だろうか。
 その物足りなさを読み解くカギが身近な所にあった。「大学改革は最悪のス
タートに」を二〇〇四年五月半ばに公開した際、二つの個人ニュースサイトに
紹介を頼んだ。硬い話だからと遠慮していたのだが、一つが応じてくれた。そ
こから二十四時間に千八百人もやって来た。そこの一日アクセス数の一二%に
当たり、前に述べた「音楽産業」の時の一〇%より多かった。私も意外だった
が、サイト運営者も「若い読者が多いから大学改革に関心があったのか」と驚
いていた。
 ニュースサイトに活気がない一番の原因は良いニュースのネタが無いことに
あるのではないか。いや、ネタは存在しているのに、サイト運営者たちが過去
の経験に捕らわれて自分の読者のニーズを見落としているのかも知れない。ニ
ュースを選別するだけで生み出していないニュースサイトの限界だろう。とす
れば、ブログとの組み合わせが新たな展開を開く可能性がある。二〇〇三年末
頃から日本でもブログが台頭してきたが、影響力や動員力はメールマガジンや
ニュースサイトには、まだ比べるべくもない。しかし、ブログの運営者が切れ
味がある良質のコメントを生み出して、ニュースサイトがそれに飛びついて広
めるようなら事態が一変する。現状ではブログ側の質と、ニュースサイト側の
選別眼がいずれも足りない、と私はみている。

 メールマガジンについては、電子メール離れを引き起こしているスパムメー
ル騒ぎに区切りがついてから、マガジン発行側の一人として再生策を見つける
つもりだ。通過していった人たちは個人ではせいぜい数十種のマガジンを経験
したに過ぎず、メールマガジンが開いた膨大な世界がそれで尽きようはずもな
い。

   ●商業主義へ反発から巨大水脈

 音楽ソフトを始めとした様々なファイルの違法な交換は、インターネットが
存在する社会の原罪とも考えられる。世界のファイル交換ソフト利用者は五千
万人以上に上ると言われる。その一種である国産ソフトWinnyの利用者は
二百万人以上とされ、数だけなら驚くほどではない。しかし、その成り立ちか
ら開発者逮捕に至る流れと背景には日本独特のものがある。
 二〇〇二年初めはファイル交換ソフトの利用者と業界関係者にとって非常に
悩ましい時期だった。海外では、現在までのダウンロード本数が三億本を超え
る、世界最大のファイル交換サービス「KaZaA」に対して、オランダの裁
判所が前年十一月に「著作権侵害に対して責任がある」との判決を出した。
(これは後に控訴審の判決で覆る)
 国内でも同じ十一月に、米国生まれのソフト「WinMX」でパソコンのビ
ジネスソフトを交換出来るようにしていた疑いで大学生と専門学校生が京都府
警に逮捕された。ファイル交換ソフト利用の責任を問われた世界初の刑事摘発
だった。このソフトを使う限り使用者の特定は可能で、著作権関係団体から警
告メッセージが送られたりした。

 参加者にアウトローの気質が強い、有名な掲示板「2ちゃんねる」で「Wi
nMXの次に来るものはなんなんだ」がテーマになって話し合われた。四十七
番目の発言者が「暇なんで2chネラー向きのファイル共有ソフトつーのを作
ってみるわ」と言い出したのが四月一日。ゴールデンウィークが終わる五月六
日には、Winnyの最初のバージョンが公開された。
 WinMXのように中央管理サーバーを必要とせず、ファイル交換参加者が
各自のパソコン・ハードディスク内に提供したスペースに、誰かが流したファ
イルが暗号化されて漂流していく仕組みだった。キーワード検索で欲しいファ
イルを見つけ請求しておくと自分のパソコンに落ちてくる。全く管理者がいな
いのだから流出したら削除は不可能。後に生まれたウイルスの悪さで京都府警
の捜査資料や芸能関係者のチャット内容が永遠の漂流物になってしまった。

 KaZaAなどには広告を表示する仕組みが組み込まれており、ファイル交
換自体が事業になっている。Winnyには商業要素はなく参加者がいっしょ
になって育てた。開発者がソフトを無料ホームページに置けば、使い方は周囲
のユーザーが理解して解説し、宣伝していく。瞬く間に広まり参加者一人が一
ギガバイトを提供するだけでも、通常のサーバーにファイルを置くのとは桁違
いな巨大水脈が形成された。
 徹底した匿名性について開発者は掲示板上で「著作物に対する課金システム
はもう古いのではないか。遠隔地まで劣化がないデジタルコピーが送れるのに
中間マージンを取りすぎだ。全く新しいシステムが必要であることを示すため
に匿名性を実現してみた」との趣旨と受け取れる発言をしている。(注2)

   ●日本的なものが世界を変える

 しかし、Winnyの匿名性は解読された。二〇〇三年十一月にユーザー二
人が逮捕され、今年五月には開発者である東京大学助手も著作権法違反幇助の
容疑で逮捕された。著作物コピーについては中立的なソフトウエアの開発者ま
で刑事摘発するのは行き過ぎであり、今後のソフト開発にまで影響するとの批
判も出されている。ここまで警察権力を行使するのも、また極めて日本的なの
かも知れない。
 Winnyが合法的なファイルを流している限りではインターネットを大き
く変質させたとも言える。高価な接続料を払う大サーバーでなければ出来ない
ファイルの流通を、一般大衆がバケツリレーで実現してしまった。大衆による
大衆のネットワークが成立した。その結果として、国内のインターネット・ト
ラフィックの三割はWinny利用で占めるとの推定があるほどだ。ネット利
用者の半分はADSL回線などブロードバンド回線を使うに至った現状が可能
にした。
 適度な知的レベルと財力と規範にとらわれぬ好奇心を持った人間が多数存在
する実験場は、世界にそうそう無い。ネット上には確かに日本語の壁や倫理観
の差があって、日本独特の動きがそのままは広まっていかない。しかし、一度
達成されたことは時を経れば確実に世界に広まり、世界を変えていくと考えね
ばならない。ちょうど自動車業界で生まれた「看板方式」が「ジャスト・イ
ン・タイム」として業界標準になったように。

注1=http://kahoo.cside4.com/nero/inf05.html
注2=http://winny.info/2ch/47.html



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◆◇編集後記

 今回の評論の中間部分に当たる、メールマガジンと個人ニュースサイト隆盛に
見る「個人対大衆」のところをPHP国際本部が出している「JAPAN CLOSE-UP」
10月号に掲載しています。掲載の英訳版も本日、私の英語版ページでリリースし
ました。

"Net-Based Cultures Have Reached a Turning Point"
http://dandoweb.com/e/netculture.html

です。全部でないのが残念ですが、日本について関心がある外国の方には良い情
報源になると思います。身近に外国の方がいらっしゃれば、是非、ご紹介下さい。
英語版ページ"Japan Research and Analysis"
http://dandoweb.com/e/
はこれで収録12編になり、英語での情報発信の形が整ってきました。日本語版に
ならい"Industrialized Society","Health & Tobacco","University & Education"
の3分野別に整理しています。



┏━━━━━━━━━━◇発行 団藤保晴  dando@dandoweb.com    ◇━━━━

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