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インターネットの水先案内をして10年の実績。全国紙の科学記者として鍛えた目利き力を駆使し本音で語る鮮烈時事コラム。「インターネットの使い方がわかった」と評判です。「ブログ時評」として岩波書店の月刊誌『世界』で連載中。




「インターネットで読み解く!」No.140

発行日: 2003/12/11

┏━◆◇━━━━━━━━by mag2/Macky/Pubzine/melma!/Kapulight/E-mag━

┃  記者コラム「インターネットで読み解く!」2003/12/11号 (隔週木曜刊)

┣━━━━━━━━━━━━━━━━ 独立刊 No.115━ 発行部数19,438部 ━

┃ ※今回は環境・経済・科学がキーワードの燃料電池がテーマです
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     ------ 第140回「燃料電池離陸と自動車産業の興亡」------


 遠い夢の技術と感じられていた燃料電池が、来年には身近な存在になってし
まいそうだ。昨年初めに持ち運べる超小型燃料電池開発のニュースがドイツか
ら入ったのに続き、国内でも東芝がノートパソコン用やモバイル機器用を開発、
2004年から商品化するという。一方、燃料電池車は昨年末から試験的な販売が
始まった。将来の本命と考える国内の自動車メーカーでは今年になって、海外
に頼っていた中核部品を自社開発する態勢がそろい、いよいよ実用化に本腰が
入ったとみてよい。


 ┗┗┗┗ 身近にはアルコール燃料型が ┛┛┛┛


 Hotwired Japanの「超小型燃料電池、早くも商品化へ」
http://www.hotwired.co.jp/news/news/technology/story/20020125301.html
を昨年1月に読んだときは、そう簡単にいくのかなとまず思った。このモバイ
ル電源システムを開発したスマート・フュエル・セル社のウェブを訪ねてみる
と、さらに進歩したらしく「50 % smaller - new innovative features」
http://www.smartfuelcell.de/en/presse/c021119.html
で屋外でノートパソコンに繋いでいる写真まで掲示されていた。出先でパソコ
ンの電池がもつかどうか、はらはらした経験者なら直ぐにでも買いたいだろう。

 スマート・フュエル・セル社のページでは細かな仕様が読めない。東芝が開
発した燃料電池と型も中身は似ているようなので、そのプレスリリース「ノー
トパソコン用小型メタノール燃料電池の開発について」
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2003_03/pr_j0501.htm
で、どんな電池か見よう。

 自動車用に考えられている電池は固体高分子型燃料電池(PEFC)で、固体で
あるため振動が大きい場所でも安定して使える。ダイレクトメタノール型燃料
電池(DMFC)はそれほど大きな出力は得られないもののメタノールを直接電池
に供給し、化学反応を起こして発電する。「固体高分子型燃料電池では改質器
でメタンやメタノールから水素を取り出し、燃料として利用しています。ダイ
レクトメタノール型燃料電池ではこの改質器が不要となり、直接燃料を供給で
きるため、小型化することが可能」になった。加えて「発電時に反応生成され
る水を利用し、最適な濃度に自動調整するシステム」にしたので、薄める前の
高濃度メタノールで燃料タンクも小型化できた。

 東芝はさらに小型化を進め、10月に「手のひらサイズで1Wの出力を実現し
たモバイル機器用小型燃料電池の開発について」
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2003_10/pr_j0301.htm
を発表している。手のひらに納まる小判型電池で、携帯電話でテレビ放送を長
時間、視聴するといった用途が想定されている。こちらは2005年の商品化とい
う。他社にも追随する動きがある。

 固体高分子型燃料電池は自動車向けに使われることから、本格的な量産に入
れば大きくコストダウンできると期待される。家庭用にもと思われていたが、
最近、別の型が有力になっている。「ダークホースの固体酸化物型(SOFC)」
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/r_f_cell_h/273611
である。固体高分子型と違って、高価で資源量に限りがある白金を触媒に使わ
なくてよく、作動温度が800〜1000℃と高いため炭化水素系燃料から水素を取
り出す改質が容易であり、排熱利用を含めたエネルギー効率が極めて高い。

 「従来、SOFCの最大の課題は、電解質のセラミックが温度変化を通じた伸縮
により、割れてしまうという点にあった。そのため、稼動停止の少ない数百kw
から数千kw規模の中規模発電用に開発が進められてきた」「しかし、『セラミ
ック材料の開発や電解質の形状の工夫により、割れるという問題はほぼ解決さ
れた』(住友商事)ことから、北米ベンチャーを中心に家庭用など小型発電用
への応用が見えてきた」

 この他にも開発されている型はいくつかある。自動車の固体高分子型がもた
ついていると、思わぬ展開になるかもしれない。空想の段階は終わり、商品と
して本物になってきたと言える。なお、歴史や基礎知識、応用例など全般的情
報を仕入れるにはナノエレクトロニクスの「燃料電池」
http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/fuelcells/index.htm
あたりを見て欲しい。


 ┗┗┗┗ 自動車業界、21世紀の帰趨 ┛┛┛┛


 資源エネルギー庁長官の下に置かれた私的研究会「燃料電池実用化戦略研究
会」は2001年初めに意欲的な「報告」
http://www.meti.go.jp/report/data/g10122aj.html
を取りまとめている。期待される導入目標は、導入段階の2010年で「自動車用
約5万台、定置用約2.1百万kW」、普及段階の2020年では「自動車用約5百万台、
定置用約10百万kW」である。

 「燃料電池車試乗レポート--米カリフォルニアで世界の燃料電池車に乗る」
http://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf/CID/onair/biztech/flash/276056
は今年9月の一線の状況を、現地の集合した各メーカー、車種の写真付きで報
じる。ガソリン車を追い越す走行ぶりなど、日本勢の意欲、頑張りぶりは明ら
かだ。その最後でホンダがこれまで使っていたカナダ・バラード社電池から踏
み出したことを伝えている。

 「2週間後、ホンダはこれまで市販車に採用していたカナダのバラ―ド・パ
ワー・システムズ社製の燃料電池に比べて出力密度が上回る燃料電池を開発し
たと発表した。この新型燃料電池を搭載することで、FCXの航続距離は従来の
355kmから395kmに伸びるという。加えて、燃料電池の材料の一部を炭素製から
金属製にかえたことで、生産性も飛躍的に高まるメドがついたという」

 トヨタは既に自社開発に踏み切っていた。バラード社電池はブラックボック
スで中身が見えない。燃料電池車の中核部分を海外に依存していては、パソコ
ンのCPUをインテルに依存しているのと同じで、出来上がった製品に差が出
にくい。米国勢が頼るバラード社と切れる意味は大きい。

 日米メーカーともに燃料電池車に熱心に見えるが、実は私は米国勢に本当に
やる気があるのか疑っている。トヨタやホンダはハイブリッド車の技術を応用
して蓄電池と組み合わせ、最も効率的に燃料電池を働かそうとする。ところが、
GMなどは燃料電池単体で済ませる姿勢だ。長時間、高速走行することが多い
米国では、ちまちまと蓄電したりする必要が無いと彼らは主張する。

 そうだろうか。経済産業研究所・政策シンポジウムでの大聖泰弘・早稲田大
学教授の発表「日本における燃料電池自動車の開発の現状と課題」
http://www.rieti.go.jp/jp/events/03091201/daisho.html
はこう述べる。「燃料電池は効率が高いと一般に考えられているが、実際には
低負荷の時に最も高い効率を示し、負荷が大きくなるとむしろディーゼルエン
ジンの方が効率が良くなってしまう。加えて化学反応なので環境の変化に非常
に弱い」「ハイブリッド車の発想というのはエンジンを最も効率の良い状態で
動かし続けることにあり、改良の余地は大きい」

 米ビッグ3には他にも問題山積なのだ。同じシンポでの米国側研究者による
発表「アメリカ経済の健全性と自動車業界の現状、業界構造について」
http://www.rieti.go.jp/jp/events/03091201/fine_panel.html
は米国自動車業界の問題点を語っている。「GMは、30年前と比べて垂直分業
等を大幅に推し進めたことで生産性も大きく上がっている」「フォードは財務
的問題に加えて本業も危ない。ボルボやジャガーに金を使いすぎており、工場
への投資をあまり行っていなかったためである」「ダイムラークライスラーの
合併はミスだったとしか言いようがない。移行期に何も進歩がなかったのが致
命的である」

 最も健全なGMがしていることは、従来のように部品を7割も8割も内製化
するのを止め、日本勢に習って外注部品で済ませ、効率化する改革である。過
去の何でも抱え込んでいた経緯から、GMには従業員1人当たり2.5人の退職
者がいて、年金等負担が膨大になっている。米国アナリストによれば、ビッグ
スリーが公表している数字よりも年金資金の不足は400億ドルも多いという。

 ビッグスリーは現在、本業よりも財テクで稼いでいるありさまだが、乗用車
で押されまくってもピックアップトラック部門だけは独占的な収益源にしてい
る。そこに日本勢が次々に参入を表明した。現地生産が定着した今、昔のよう
に遠慮する必要はなくなったのだ。技術的に何の問題もなく、ビッグスリーの
市場を奪うのは確実だろう。そして、このままなら未来の燃料電池車でも勝負
は見えつつある。

 ニューヨーク・タイムズの女性記者ミシェリーヌ・メイナードは新著「デト
ロイトの終焉」で、2010年にトヨタがGMを抜いて世界一になるとの未来予測
を描いているという。私の連載第68回「日本の自動車産業が開いた禁断」
http://dandoweb.com/backno/990415.htm
と続編
http://dandoweb.com/backno/990422.htm
で日産が挫折した99年を描いて4年余り、またも勝者と敗者が入れ替わろうと
している。日本が開いてしまったパンドラの箱「競争社会化した地球」では、
一時の勝者に永遠の安穏は保証されない。米国での日本車現地生産が拡大し続
けてビッグスリーが衰えるのなら、摩擦となる雇用問題は発生しない。99年な
ら、まさかと思える近未来がそこにあるのかも知れない。




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◆◇編集後記

 年の瀬が近づいてきました。今年の紅白歌合戦には、中国から女子十二楽坊
がやって来ます。中国古楽器を使ったテクノサウンドに私もはまってしまいま
した。個々の奏者の腕は、例えば二胡で既に来日している名手ほど超一級では
ないのかも知れませんが、確かな腕をしていて嫌みが無く、日本のメロディー
を奏でても違和感が少ない。作編曲、プロデュース側の才能もなかなかのもの
です。

 実は多数でてくる楽器のうち「楊琴」に特に魅せられています。胡蝶琴とも
いい、187本の鋼線を張って竹のバチで打ちます。何とも言えぬ華麗な響きが
します。同じ構造の仲間楽器にトルコのカーヌーンがあり、学生時代に聞いた
レコードの音がずっと耳に残っています。鋼線を叩く構造ですから、ピアノの
遠い祖先に当たります。

 安価な製品ばかりでなく、こうしたソフトでも中国の力が侮れなくなってき
ました。もう少し「ひねり」があれば欧米でも売れる存在になるのではないで
しょうか。先日の日経新聞は中国が独自にハイビジョン並の高画質DVDを開
発して国際規格化を売り込むと書いていました。いろんな分野で今後の展開は
予想を超えるものになりそうです。




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