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創刊日:2000-08-22
最新号:
2009-11-06
発行周期:日刊
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最新号のみ
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あり
《俺はもう半歩ばかり常軌を逸してもいけそうかな》
■映画と夜と音楽と…[440]
ヘンな顔の男たちが好きだった
十河 進
■Otaku ワールドへようこそ![106]
祭りは出たもん勝ち:デザインフェスタに出展した
GrowHair
■アンケート
ソフトウェアのバージョンは何を使っていますか?
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■映画と夜と音楽と…[440]
ヘンな顔の男たちが好きだった
十河 進
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20091106140300.html >
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死の接吻/深夜の歌声/拾った女/ワーロック/アラモ/馬上の二人/秘密諜
報機関/ニュールンベルグ裁判/刑事マディガン/オリエント急行殺人事件
●手塚治虫キャラクターが登場するスターシステム
手塚治虫さんのマンガには、いろんなキャラクターが登場する。実に多彩だ。
手塚さんは一種のスターシステムをとっていて、共通したキャラクターが様々
な物語に別の役を振り当てられて出演する。初期の作品によく登場したクール
な美少年ロック、陰険なアセチレン・ランプ、正義派のひげオヤジ、悪役専門
のスカンク草井…、それにコメディリリーフ的な「ひょうたんつぎ」もいた。
手塚さんはヘンな顔の男たちが好きだったのかもしれないなと、それらのキャ
ラクターの元になった映画スターたちを思い浮かべた。映画好きだった手塚さ
んは、映画スターたちをモデルにしてキャラクターを創った。それが、耳の上
にランプのように火が燃えているアセチレン・ランプや、フランケンシュタイ
ンのモンスターのような顔をしたスカンク草井などだった。
以前にも書いたけれど、アセチレン・ランプのモデルは我が愛するリノ・ヴァ
ンチュラである。おそらく「彼奴を殺せ」(1959年)のリノ・ヴァンチュラが
モデルだろう。この映画のモノクロの陰翳の中に現れるリノ・ヴァンチュラは、
ライティングのせいかアセチレン・ランプにそっくりだ。ちなみにタイトルは
「きゃつをけせ」と読んでください(いいですねぇ、この言語感覚)。
さて、スカンク草井のモデルは誰だと思いますか? 手塚さんは青年マンガを
手掛けるようになった中期以降は、あまり共通キャラクターを出さなくなった
から、わからない人も多いだろうなあ。それに、もう今ではモデルになった映
画スター自体がわからない。50年代から60年代にかけて、よく登場していた人
たちなのである。
リチャード・ウィドマーク。僕はこの俳優が大好きなのだが、あるとき「スカ
ンク草井のモデルは、リチャード・ウィドマーク」と言われて、少しショック
を受けた。そう言われてじっくり見ると、確かにリチャード・ウィドマークの
特徴をよくつかんでいる。とびだした額、眉がなく三白眼の陰険な目、痩せて
いるようだが妙にむくんだ顔である。
いくら何でも、こりゃウィドマークが可哀想だと思った。それに、アセチレン・
ランプには妙なユーモアが漂っていて愛嬌もあったのだが、スカンク草井には
愛嬌なんかこれっぽっちもなく、非情な殺し屋みたいな役ばかりだった。サデ
ィスト・キャラクターである。ネーミングだって、あんまりだと思う。当時、
「スカンクくさい」と言われていじめに遭っていた小学生は、全国にけっこう
いたのではないだろうか。
リチャード・ウィドマークは、「死の接吻」(1947年)のクールでサディスト
の殺し屋役で注目された人だから、そのキャラクター・イメージを手塚さんは
スカンク草井に付与したのだろう。その映画で、リチャード・ウィドマークは
甲高い声で笑い、「ハイエナ・ラフィング」と名付けられ評判になった。怖い、
狂気を秘めたキャラクターだった。「深夜の歌声」(1948年)でも、次第に狂
的な本性を現していく敵役が怖かった。
しかし、その後、リチャード・ウィドマークは主演あるいは準主演作品が増え
る。サミュエル・フラー監督の「拾った女」(1953年)あたりでは、主役とい
っても電車の中のスリという半端な役(よく似合った)だったが、「ワーロッ
ク」(1959年)ではヘンリー・フォンダとアンソニー・クインをおさえ、後半
になってからはリチャード・ウィドマークが真の主人公だったのがわかる。
ジョン・ウエインが自ら制作し監督した西部劇大作「アラモ」(1960年)では
二番目に名前がクレジットされ、ナイフ使いの名人でテキサスの英雄ジム・ボ
ウイを演じている。僕は、小学生のときに「アラモ」を見て、ヘンな顔のヒー
ロー、リチャード・ウィドマークのファンになった。ヘンな顔の男たちが好き
という僕の癖は、どうも昔からのことらしい。
●アリステア・マクリーン原作の最初の映画化作品
アリステア・マクリーンは、60年代に矢継ぎ早に質の高い冒険小説を発表し続
けたイギリスの作家で、当時は愛読者も多く、出す小説が次々に映画化された。
最初にヒットした映画は「ナバロンの要塞」(1961年)だが、初めて映画化さ
れた小説が「最後の国境線」であることは、あまり知られていない。邦題が
「秘密諜報機関」(1961年)だったからかもしれない。
この映画をリチャード・ウィドマークは自ら制作し、主演している。僕はマク
リーンの小説の中では、冷戦時代の緊張感にあふれた「最後の国境線」が最も
好きで、登場人物が語る「最後の国境線は…人間のこころ」というフレーズに
は、いたく感銘した。さすがマクリーンは、元教師だと思った。「秘密諜報機
関」は、リチャード・ウィドマークのフィルモグラフィの中では珍しいスパイ
ものである。
同じ年、リチャード・ウィドマークは代表作になる二本の映画に出ている。ジ
ョン・フォードは「アラモ」を監督するジョン・ウエインに頼まれて、現場で
アドバイスしたという話だが、そのときにウィドマークが気に入ったのだろう
か。「馬上の二人」(1961年)でリチャード・ウィドマークをジェームス・ス
チュアートと組ませた。
また、社会派監督スタンリー・クレイマーの「ニュールンベルグ裁判」に連合
軍側の検事として出演し、実力派の性格俳優としての地位を固めた。この映画
で目立ったのはリチャード・ウィドマークと、ドイツ側の弁護士を演じたマク
シミリアン・シェルだった。スペンサー・トレイシーの判事、告発されるドイ
ツの教育者バート・ランカスターなど、オールスター・キャストの中でリチャ
ード・ウィドマークは演技的に高い評価を得たのだ。
リチャード・ウィドマークは善人役も悪人役もこなせる映画スターになり、複
雑なキャラクターも演じられるようになった。「ニュールンベルグ裁判」の検
事役では、自己の権力欲も見せながらナチス・ドイツの残虐さを暴いていく役
だった。ときには卑怯なテクニックを駆使し、卑劣な罠も仕掛ける。あるとき
は正義派であり、あるときは被告に同情する真摯な姿を見せる。
リチャード・ウィドマークの映画で僕が最も思い入れがあるのは、「刑事マデ
ィガン」(1967年)だ。中高生の頃、ウィドマーク・ファンだった僕は、彼の
映画は欠かさず見にいっていた。「シャイアン」(1964年)「アルバレス・ケ
リー」(1966年)などである。その中で僕は「刑事マディガン」に出合ったの
だ。それは、またドン・シーゲル監督との出合いでもあった。
●ベテラン刑事の哀愁が漂うリチャード・ウィドマーク
「刑事マディガン」は拳銃を奪われた刑事が執念で犯人を追うストーリーで、
黒澤明の「野良犬」(1949年)の影響を指摘する人もいる。黒澤映画は世界中
の映画人に影響を与えているから、おそらくドン・シーゲルも意識したのは間
違いないだろう。ただし、刑事が拳銃を奪われる設定だけが同じで、黒澤映画
とはまったく違うテイストの作品だ。
もう若くはないマディガンは、相棒の刑事とふたりで犯人逮捕に出かけ、部屋
に踏み込むが一瞬の油断につけ込まれて銃を奪われ、犯人を取り逃がす。刑事
が主人公の映画としては間抜けな話で、これはウィドマークだからやれる設定
である。彼は刑事という仕事に疲れ、ある部分では嫌気がさしている。ベテラ
ンといわれる歳で、いつものように片づければいいと思っていた簡単な仕事を
しくじるのだ。
この仕事に疲れているベテランの刑事、という哀愁が漂うリチャード・ウィド
マークがいい。彼の家庭生活も描かれるが、万年刑事の貧乏さを感じさせてい
るのもいい。ベテランの刑事が貧乏なのは、彼がワイロを一銭も受け取ってい
ないからだ。刑事という仕事に倦んでいても、彼はかつて自分が理想を抱いて
就いた警察官の仕事に誇りを持っているのがわかる。
彼は執念に突き動かされるように、犯人を追う。その姿から次第に悲壮感が伝
わってくる。悲劇の予兆が漂い始める。何かが起こるのではないか、と物語の
圧倒的なドライブ感に浸りながら、どこかギリシャ悲劇を見ているような気分
にさえなってくる。同時並行で描かれる警察機構の頂点にいる総監(ヘンリー・
フォンダ)の物語と、どこで交わるのかという興味も湧く。
監督のドン・シーゲルは、この作品の前に快作「殺人者たち」(1964年)があ
り、「刑事マディガン」の次にクリント・イーストウッドとの「マンハッタン
無宿」(1968年)「真昼の死闘」(1970年)を撮り、不滅の刑事映画「ダーテ
ィハリー」(1970年)に到達する。「ダーティハリー」の原型は「刑事マディ
ガン」にあると僕は思う。
「刑事マディガン」のオープニングタイトルの背景に流れる夜のニューヨーク
は美しい。「ダーティハリー」では銃弾を浴びて飛び散る赤や青のネオンを美
しいシーンにしてみせたドン・シーゲルだが、その原点はここにあったのだ、
と思わせる美しいオープニングシーンだった。
「刑事マディガン」でもう一本の代表作を得たリチャード・ウィドマークは、
その後、大物ゲストスター的な存在になってゆく。たとえば、往年の大物スタ
ーたちが顔を揃えた「オリエント急行殺人事件」(1972年)では、殺される富
豪の役を演じた。
この映画、「一体、出演料はいくらかかった」と思うほどの顔ぶれだったけれ
ど、雪で閉ざされたオリエント急行の車内だけでほとんどすんでしまうので、
セットにあまりお金はかからなかったのかもしれない。しかし、そんな顔ぶれ
と一緒に出演するほどリチャード・ウィドマークは大物扱いなのだと、殺され
る役とはいえ僕は少し嬉しかったのを憶えている。
リチャード・ウィドマークは、その後も様々な映画に出演し、昨年春に93歳で
亡くなった。大往生である。日本の俳優で言えば、森繁久彌より一歳年下であ
る。若い頃のハイエナ・ラフィングから中年期の「ニュールンベルグ裁判」
「刑事マディガン」、老年になってからの大統領役などを続けて見ると、男の
顔の変遷がよくわかる。実に味のある顔だ。悪党面でも、こんな風に歳を重ね
たいと思う。
歳を重ねたときの顔は、自分で責任をとらなければならない。長い年月が老人
の顔には顕れる、と僕は若い頃から思っていた。それは顔の造作の問題ではな
く、表情に何が顕れるかということだ。卑しい顔にだけはなりたくない。いわ
ゆる悪相になるのはイヤだ。喜怒哀楽を出すのはいいけれど、そこには品のよ
さが存在し、穏やかな心根と落ち着いた感情をうかがわせる顔でありたい。
リチャード・ウィドマーク以外に僕が好きになったヘンな顔の男たちは、「穴」
(1960年)「ラ・スクムーン」(1972年)のミッシェル・コンスタンタン、
「火の接吻」(1949年)「いぬ」(1963年)「冒険者たち」(1967年)のセル
ジュ・レジアーニ、「ストリート・オブ・ファイヤー」(1984年)のウィレム・
デフォー、「レザボアドッグス」(1991年)「ファーゴ」(1996年)のスティ
ーブ・ブシェミなどである。
ジャン・ギャバン、リノ・ヴァンチュラ、ハンフリー・ボガート、リー・マー
ヴィン、ハーヴェイ・カイテルなどはヘンな顔というより「シブい顔」と言う
べきなのだろうなあ。いや、リー・マーヴィンは「ヘンな顔の男たち」にジャ
ンル分けしても文句は出ない気がする。「キャット・バルー」(1965年)でア
カデミー主演男優賞を獲得したが、あのときの酔っ払いガンマン役が一番ヘン
な顔だった。世の中には、案外、ヘンな顔好きの人が多いのかもしれない。
【そごう・すすむ】sogo@mbf.nifty.com
暮れに発売予定の三巻目「映画がなければ生きていけない2007-2009」の初校
が出て、休日に校正しています。すでにデジクリに書いたもので、何度も読み
返しているのですが、やはり筆が入ります。今年の連載分もすべて書き終えて
出版社に渡したので、休日の原稿書きは少し休めるのですが、自分で書いたと
はいえ、三年二ヶ月分の原稿の多さにまいってます。
●305回までのコラムをまとめた二巻本「映画がなければ生きていけない1999-
2002」「映画がなければ生きていけない2003-2006」が第25回日本冒険小説協
会特別賞「最優秀映画コラム賞」を受賞しました。
< http://www.bookdom.net/suiyosha/1400yomim/1429ei1999.html >
受賞風景
< http://homepage1.nifty.com/buff/2007zen.htm >
< http://buff.cocolog-nifty.com/buff/2007/04/post_3567.html >
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■Otaku ワールドへようこそ![106]
祭りは出たもん勝ち:デザインフェスタに出展した
GrowHair
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20091106140200.html >
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8割が石からなる玉石混交状態の中に、ひとつの石ころとして自分も入ってみ
たところで、それを人生の汚点だの末代の恥だのと気に病む必要もなかろう。
そう開き直って、さる10月24日(土)、25日(日)に東京ビッグサイトで開か
れた「デザインフェスタvol.30」に出展者として参加してきた。
●とにかくなんでもオリジナル作品さえあれば、出せばよい
デザインフェスタとはどんなイベントか、については、3年前に吉井さんが
見物レポートを書いていて、今、あらためて読み返してみると「まさにまさ
に」と思うことばかりなので、全文ここに引用したいくらいである。
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20061206140000.html >
失礼ながら、「デザインフェスタ」は、テレビやチラシから受ける印象か
ら、最も嫌いなものの一つだった。基本的に「学園祭ノリ」は苦手なので
す。面白いと思い込んで他の観客と同化しなければ疎外感を感じてしまい
そうな、「場のノリ」が苦手なのです。
そうそう、一言で言っちゃうと「美大の学園祭をでっかくしたイベント」です
ね。東京ビッグサイトの西展示棟の上の階と下の階ほぼ全域に約2,700ブース
が設けられ、展示された作品を約5万人の来場者が見にくるというイベント。
出展条件は「オリジナル作品であること」がほぼ唯一の縛りで、出展者の年齢、
プロ・アマの別や、表現形式などは一切問わない(もちろん危険だったり著し
く反道徳的なのは駄目でしょうけど)。
吉井さんは、見た後の印象として「僕が苦手な『学園祭ノリ』とはちょっと違
った。個々のブースがそれぞれ独立した他人の集合体なので、変な連帯っぽい
感じは薄い」とも言っていて、その側面もまた然りと思う。とにかく、なんか
作ったものを各自それぞれ見せびらかして、多くの人に見てもらって自己顕示
欲を満足させる場とも言えるだろう。
いい作品に出会ってはっとさせられることよりも、変なもの、異様なものが目
に飛び込んできてぎょっとさせられることのほうが多く、あの程度の変さが許
容範囲内ならば、俺はもう半歩ばかり常軌を逸してもいけそうかな、ってな相
乗効果でエスカレートしていくという側面はあるかもしれない。もちろん、変
なものがまず目立つってだけで、全部が全部そういうもんで占められてるわけ
はない。
服飾やインテリア装飾品など、商品クオリティに達した実用品もあり、まじめ
なアート作品もあり、まあ、全体的にカオスな空間である。このイベントに費
やされた(人的および精神的)エネルギーの総量はいかほどであろうか、と考
えると気が遠くなりそうだ。
何千組の出展。最小で畳一畳のスペースだけに、本当に数え切れないほど
のブース。絵、写真、造形、工芸、服飾、パフォーマンス、音楽……など
など、あらゆる表現の見本市。まあ、完成度やプロ的な視点で見れば「し
ょーもなく」「安っぽく」「イタい」「勘違いな」「若気の至り」が大半
で、「どこに出しても恥ずかしくなさそうな、ちゃんとしたもの」はせい
ぜい2割程度。でも、審査や権威付けなど一切のフィルタを通さずに見れ
るのは貴重な機会。
わははー、的確すぎて、刺さりますな。アイテテテ...。ばかだねぇ、と笑う
方もいらっしゃるけしょうけど、ケバヤシごときが何か出してへらへらしてら
れるような敷居の低いイベントだったら、俺が自分の作ったものをここへ出品
するのに何の気後れも感じる必要はないではないか、と半分ケツが浮きかけた
方もいらっしゃるのではなかろうか。どーぞどーぞ、ささご遠慮なく。次回は
5月です。
●ドラえもぉぉん、なんか出してくれよぉぉ
まだまだ先だとのほほんと構えていたら、ふと気がけばすんげ〜目前に迫って
た、っていうのはこの種の出展作品作りの常なんだろうけど。前日の金曜日に
会社を休んで、フォトショップで画像を加工したり、どれを出そうかと選んだ
りしてるってのは、さすがに危機感なさすぎた。メディアに焼いて、夜までに
ヨドバシカメラに持っていって、展示用と販売用の写真を一時間仕上げでプリ
ントしてもらって、10時の閉店までには受け取る、と。それが間に合わなけれ
ば、出すものがひとつもないぞ。
まあ、その最悪の事態はなんとか避けられたけど。展示や販売に必要な材料や
道具を東急ハンズで買い集めておくとか、販売用には一枚一枚OP袋(※)に入
れるとか、展示用には両面テープを裏張りしておくとか、作業がいっぱいあっ
て、結局、夜を寝ずに当日を迎えることに、まあ、なりますわな。
※OPはオリエンテッド・ポリプロピレンの略。要は透明袋。
いつもお世話になっている人形作家の美登利さんが作品を出展するのに便乗し
て、美登利さんの人形を被写体とした写真に限定して私も展示・販売させても
らおうという経緯で、私はデザフェス初参加。ブースの位置は主催者が決める
ので出展者は選べないのだが、西ホールの入り口のひとつから中へ伸びる広い
通路と、ホール内を横に貫く広い通路とが交差する角地の、しかも入ってきて
右手に見える側という、絶好の場所に当たった。
当日朝6時に会場入りして、設営を始める。11時が開場だが、美登利さんが来
るまでに写真の展示を終えておかないと、人形の設営が始まらない。オプショ
ンの白塗りベニヤ板はすでに立てられている。あっちこっちから釘を打つ力強
い音が響いてくる。すんごい凝った、過剰なまでの装飾で人目を引けるのなら、
そうしたい。けど、私にそんな才能あるわけがなく。
アート界のプロフェッショナルな方々も多数来場するのに、幼稚園のお遊戯会
の飾りみたいなもんになってはいくらなんでも痛々しすぎるぞという程度の自
覚はあり、下手な小細工は避けて徹底的にシンプルなディスプレイをしようと
覚悟を決めた。これは正解だったと思う。
白壁を黒の模造紙で覆い、その上に両テで写真を直接ぺたぺた貼っていく。そ
れだけ。額装も透明カバーもない、むきだしのまま。これなら一時間ぐらいで
仕上げて、新宿まで戻って写真を追加プリントして戻ってくるぐらいの時間は
作れそうだ。…とんでもなかった。平らな壁に紙を貼るだけがこんなに難しい
とは! 小さいのを継ぎはぎしてはカッコ悪いと思い、ロール紙を用意したの
だが、延ばしても延ばしてもくるんと丸まっちゃうし。端を仮止めして、すす
すと延ばしていっても、最後のところで平らにならず、ぼわんと山ができちゃ
うし。あれえ?
すぐ後ろのブースは、人形界では名の知れた西條冴子さん。手の込んだディス
プレイがどんどん形になっていく。こっちは紙一枚貼るのにひーひー言ってい
る。なさけない。おぉぉい、ドラえもぉぉん。やっぱ俺、こんなところに出て
くるの間違ってた。最初から気がつけよ。思えば高校を卒業する時点で、これ
で美術からは永久におさらばだ、せいせいしたって言ってたんじゃないか。苦
手中の苦手科目だった。社会科と国語もひどかったけど。
だいたいこっちは勉強する気満々で、教わったことはみんな覚えてやるぞと身
構えているのに、何一つ教えてくれないうちから、何か描けとか作れとか。だ
から、「何を」と「どうやって」をまず先に教えてくれよぉ。意地悪じゃない
かぁ? って、まわりはどんどん何かできてるし。俺の知らない間にどこで誰
から習ってきたんだよぉ。ずるいぞ。しかも、俺よりずっと頭悪いと思ってた
子がなんかいい成績取ってるし。おもしろくないぞっ! これ、今にしてみる
と言ってて恥ずかしいけど、そのくらい素養皆無の子でした。
なんで忘れてたんだろ? アートのイベントに出展なんて、根本から間違って
るじゃないか。東京フィルハーモニー交響楽団に混ざって、ひとり縦笛持って
舞台に立っている小学生の気分。このイベントは玉石混交だから気分的に多少
は救われるとはいえ、場違いなまでに箸にも棒にもって人が、出てくるってこ
とはまずないわけで。うっかり出てきたら、いたたまれなさに耐え忍ぶだけだ
わな。参った。人生最大の恥。人間、失格。
まあ、10時ぐらいには、どうにかこうにか仕上げたけど。黒が幸いしてさほど
目立たないながら、しわだらけ、折り目だらけ。貼りなおし貼りなおしの奮闘
を物語る惨状。あーあ、もう知らね。二度と出てこないから、みなさん今回だ
けは許してちょ。
●たくさんの人に立ち止まってもらえて、ほくほく
泣いたカラスがもう笑った、ってフレーズがあるけど。開場してみれば、足を
止めてじっくり見ていってくれる人が多くて、すっかり気分ほくほく。もちろ
ん美登利さんの人形がスゴいおかげなんだけど。ちゃんと新作持ってきてるし。
急遽作ってこのクオリティか、と人形作家さんも驚くほど。被写体のおかげで
写真もぼちぼち売れていく。田園調布に家が建つほど(←いつのギャグだ?)
飛ぶようにってわけじゃないけど、ハガキの機能すらない、ただ2Lサイズにプ
リントしただけの写真が、その絵柄を所有したいという動機だけで買っていた
だけるのは、奇跡を見るような気分。さっきまでの悪夢が、いきなりいい夢に
転じた感じ。
「被写体は変わったけど、写真は変わってないね」と英語で話しかけてくる人
がいる。金髪の男性。えーっと見覚えある顔だぞ。誰だっけ? あ、スティー
ブン! 2000年ごろ、毎週のように日曜日に原宿の「橋」へ行ってヴィジュア
ル系のコスの人たちを撮ってたことがあって、そこでよく会った人だ。あのこ
ろは髪が鮮やかな青に染められてて、幼稚園生が持つようなショルダーバッグ
をたすきにかけて歩いてた。
日本のサブカルチャーを研究してるとかで、コミケでも会ったことがあったな。
BL系の同人誌を手にとって、エッチなシーンの絵を指して、たどたどしい日本
語で「これは痛いです」とかツッコミ入れてたりしたっけな。スティーブン・
シュルツ。あらためて名刺をもらったのでホームページを見に行ってみたけど、
なんだか意味不明のページだなぁ。
< http://www.hellodamage.com/tdr/ >
目の前を「犬夜叉」の殺生丸が通る。あれ? 詩音(しおん)? 以前、よく
撮らせてもらってたコスプレイヤーで、駒沢公園で個人撮影して子供たちの大
の人気者になってたり、愛知万博開場での世界コスプレサミットで日本代表と
して舞台に立って度胸のすわったいい演技を見せてくれたりと、古い思い出が
よみがえる。やっぱりそうだった。あんな見事な殺生丸はそうなかなかいない。
今は悠羽司恩と名前を変えているそうだけど。長いこと会ってなかったのは、
こっちがコスプレイベントにあんまり行かなくなっちゃったからで、彼は相変
わらず活動しているそうだ。なぜデザフェスで? と聞くと、コスプレイベン
トに限らず、クリエイティブなイベントにはよく出向くのだそうで。
英語で、私の写真をほめてくれる人がいる。プロっぽかったので、聞いてみる
と、やはりそうだという。フィンランド出身で、国にいたときは新聞社で働い
ていたという。今は東京に長く滞在して美術学校に通っているのだとか。どん
な写真を撮るのか見たいと言ったら、ちゃんとポートフォリオを持ち歩いてい
る。おっ! 原宿のビジュアル系のコスプレイヤー。明治神宮の森を背景にす
るとカッコよく撮れるのは私も知ってたけど、彼のは、背景を完璧に黒つぶれ
させている。しかも、屋外なのに、人工光を複数使って美しくライティングし
ている。コントラストの強烈な、緊張感ある写真だ。小さな発電機と二つの光
源を持っていって撮ったのだそうで。
それと、闘鶏の鶏とか。こっちの思い通りには動いてくれないだろうに、ポー
ズも構図もライティングも完璧だ。やはり黒い背景に、バックライトが羽の一
部を強く照らし、はっとする美しさだ。さらに、老人たち。見ていてこっちが
ひるんでしまいそうな重厚さ。顔のしわに人生が深く刻まれている。サウナで
人に声をかけ、撮らせてもらうのだそうで。表情など特に注文をつけるわけで
はなく、ありのままの自分でいてくれ、とだけ言うのだそう。私の撮ったのを
3枚買っていって下さった。「いいと思うからだ」と言い添えて。いやもう、
神の声を聞いた気分です。Kenneth Bambergさん。
上の階を見て回っていると、見慣れた赤いワンピースドレスの後ろ姿が! あ
れ? キャンディ・ミルキィさん? 女装界のカリスマといわれるお方だ。原
宿の橋で以前よくお見かけした。通行人が通りすがりに「テレビ見ましたよー」
などと声をかけていく有名人だ。女装雑誌「ひまわり」の編集長だった人であ
る。なぜここに? 聞くと、知り合いの出展者の応援で、客寄せ役を務めてい
るのだとか。
その出展者さんと私とは一面識もなかったのだが、私を見て「セーラー服の写
真、見ましたよ」と声をかけてくださった。え? なぜそれを? mixiでキャ
ンディさんの日記につけた私のコメントを見て、こっちのページへ見に来てく
ださって、見つけたのだとか。いやいやどうも、知らない人からセーラー服姿
が知られているというのは、ちょっと驚きですな。
「え? 目覚めてしまいましたか?」とキャンディさん。はいというのもおこ
がましいような気がして、「あ、いや、まあ、たわむれに」。「そのたわむれ
が危険なんですよ」。この道には、戻る道はあるのかと聞いてみれば、はっき
り「ない」という答え。ありがとうございます。おかげさまで迷いが吹っ切れ
ました。精進しますです。ブースは安達加工所。
< http://adachi-kakoujyo.com/ >
……という具合にいろんな方々にお会いすることができて、幸せ感いっぱい。
やはり、作ったものが何かしらあるのであれば、迷わず怯まず、出展してみる
に限る。出展者という立場で来場者を眺めてみるのも、なかなかおもしろい経
験で。どの写真が売れ行きがいいかは、まったく予想がつかなかった。一番売
れたのと、一枚も売れなかったのと、被写体は一緒なんだけど。売れなかった
ほうだって、自分としては、出来のいいほうだと思ってたのに。
午後には睡魔に屈し、パイプ椅子に腰掛けたまま、ついうとうとと。ふと顔を
上げると、目の前に人がいっぱい。人形や写真をじっくり見ている。もしかし
て起きてるときは、あたりを睥睨する私の姿が恐くて近づいて来られなかった
のか? 果報は寝て待て、ということか。
非常に多くの方々に写真を見ていただけた。お褒めの言葉をたくさん頂戴した。
楽しく言葉を交し合うことができた。イベント終了が近づいてきたころ、熱い
思いのうちに、迷わず次回参加を決めた。
【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
前々回、写真撮影のロケーション探しのことを書いたが、その後もこつこつと
継続中。さまざまな趣きのある場所を見て回るのは楽しいけど、撮影までなか
なかすんなりとは事が運ばず、根気が試される。産業遺産探訪倶楽部「首都圏
歴史を巡る近代化遺産ベストガイド」(メイツ出版、2008/09)は非常に参考
になるが、ここに載ってるようなメジャーどころは、撮影許可取るのが大変。
横浜山手地区に7つほどある洋館は、明治末期から昭和初期にかけて建てられ
たもので、近代化の香りに満ち満ちて、ハイカラ気分に浸らせてくれる。けど、
オブジェ持込み撮影には市の許可が必要で、しかも平日午前中の一時間以内に
限定されてる。見たい人、撮りたい人がたくさんいる中で、調整してこうなっ
たわけだから文句は言えないけれど、一時間じゃ無理。大正時代の建物で、屋
内撮影の許可申請に実印と印鑑証明が要るなんてところもあり。なんのなんの、
実印作って、印鑑証明発行してもらったさ。結婚にも離婚にも要らなかったも
んが、意外なとこで要るもんだ。
埼玉県川口市に今年9月にオープンしたばかりの撮影用スタジオ"OKS COMPANY"。
がっしりした巨大工場跡あり、傷み放題荒れ放題の工場跡あり、洋館あり、レ
ンガ造りの小さな建物あり、錆び錆びの焼却炉あり。すげーや。童心に返って
遊べそう。11月3日(火・祝)にコスプレイベントがあった模様。11月22日
(日)、12月13日(日)にも予定あり。ここ、人気出そう。「廃墟」、「洋館」
のキーワードにぴくっと反応する人、きっと多いぞ。けど、個人で借りるには、
ちとお値段張りすぎ。この種のスタジオの相場からすりゃ決して高くはないが。
< http://www.oks-j.com/ >
12月に銀座の「Gallery 156」にて人形作家10人展を開く予定。実はそのため
の準備でロケハンしているわけで。このコラムのネタも、今後しばらくは、思
索的なのよりも行動的なのが多くなりそう。うーん、あんまりオタクっぽくな
いか。
< http://yahiro.genin.jp/rougetsu.html >
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■アンケート
ソフトウェアのバージョンは何を使っていますか?
< http://blog.dgcr.com/mt/dgcr/archives/20091106140100.html >
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吉田印刷所の笹川です。
吉田印刷所では毎月DTPに関するアンケートを行っております。周りの皆さん
がどのような環境で制作されているのか、なかでも気になるのはソフトウェア
のバージョンではないかと思います。そこで、今回は「ソフトウェアのバージ
ョンは何を使っていますか?」にさせていただきました。
DTPで使用される・Illustrator・Photoshop・InDesign・Acrobat
・QuarkXPress でよく使用されるバージョンをお答えください。
ご回答は以下のページよりお願いいたします。
なお、現在の投票状況などもリアルタイムに見ることができます。
◎DTPでよく使用されるソフトのバージョンは何?(2009年末版)
< http://blog.ddc.co.jp/mt/dtp/archives/20091103/160000.html >
アンケート期間:2009年11月03日〜2009年12月31日
アンケート方法:ウェブサービスによる回答(無記名回答)
皆様からのご回答をお待ちしております。
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■編集後記(11/6)
・この前、大学駅伝の中継を見ていたら、やたらに入るCMが「JAバンク」だっ
た。ドラマ仕立てで、ちょっとうっとうしい。いや、相当うっとうしい。田中
直樹の熱血キャラがうっとうしい。おしつけがましい。さしでがましい。暑苦
しい。むかつく。それだけではない。和久井映見、渡瀬恒彦、余貴美子、遠藤
憲一らはうまい。うますぎるからますますうっとうしい。「豪華なキャストに
より、親しみやすくストーリー性あふれた内容です」とJAバンクは自慢してい
るが、俳優の芝居がうまいからなおさらリアルなストーリーは全然楽しくない
し、親しみやすくなんかない。こんなあざといドラマを何度も見せられると、
ほんとうに気がめいってくる。「私は時々この先輩が苦手だ」と心の中でつぶ
やく後輩の前田亜季だけが救いだ。/料理関係のバラエティで、シェフが「お
すめし」と言っていた。お酢とは言うが、お酢飯はないと思うが。業界ではそ
う言うのかよ。/昨日、平野官房長官は記者会見で「(沖縄の基地問題は)総
理のご判断を仰ぐ時期に来ているのかなと」と言っていた。ご判断を仰ぐ、っ
てアンタ身内だろ、そこまで奉るのかい。おっと、総理じゃなくて小沢幹事長
だったら「ご判断を仰ぐ」は正しいわな。 (柴田)
< http://www.jabank.org/campaign/cm/ > JAバンクCM
・上原ゼンジ氏の展覧会に行ってきた。ナダール大阪。ナダールに足を運ぶの
ははじめてじゃないかなぁ。実験写真と写真集「うずらの惑星」の写真が並ん
でいた。若い学生さんらしき女性二人がいて、ゼンジさんの本やレンズに興味
津々。「こうやって撮るのね」「思ったより簡単そう」「こっちのも面白い」
というようなことを話してた。DTP Booster絡みでチラシを置いてもらったの
で、ナダールのHさんにそのお礼と初対面の挨拶をすると、姉妹誌「写真を楽
しむ生活」のことはご存知で、Twitterもされてますよね、と。めちゃくちゃ
嬉しい。「うずらの惑星」の写真はとても綺麗で、身近にあるもののように思
えない。8日まであるのでぜひ見に行ってくださいまし。遠方の方は写真集を
見てね! (hammer.mule)
< http://www.zenji.info/profile/book/uz.html > うずらの惑星
< http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844135104/dgcrcom-22/ >
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