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政治ジャーナリスト・花岡信昭が独自の視点で激動の政治を分析・考察します。ときにあちこち飛びます。




花岡信昭メールマガジン573号

発行日: 2008/5/24


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★★花岡信昭メールマガジン★★573号[2008・5・24]


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<<消費税がいよいよ俎上に>>
【日経BP社サイト「SAFETY JAPAN」連載コラム「我々の国家はどこに向かっているのか」弟110回・22日更新】再掲

 基礎年金の財源を来年度から税でまかなう方式に改めた場合、消費税を3.5−12%引き上げる必要があるという試算を政府の社会保障国民会議が発表した。全額税方式への移行を盛り込んだ試算を政府が打ち出すのは初めてだ。

 これによって、いよいよ消費税の税率アップ問題が政治の主要テーマとなった。衆参ねじれによる国政停滞に直面している福田政権が、この難問にどれだけ真っ向から取り組むことができるか。道路特定財源の一般財源化と併せて、税制のあり方を巡る政治の力量と見識がいよいよ問われることになるのだが、政治の現実はなんともおぼつかない。

 日本政治にとって、消費税は「鬼門」であった。大平政権で一般消費税が浮上したのが1978年。それから88年に竹下政権下で消費税法が成立するまで、4内閣、10年かかった。中曽根康弘氏(中曽根内閣当時は売上税と呼ばれた)が、後継者として大方が予測していた安倍晋太郎氏ではなく竹下登氏を指名したのは、消費税導入を確約したことが決め手となったともいわれている。89年4月から実施された消費税の税率は3%だった。

 その後、細川政権で7%にする国民福祉税構想が突如浮上し、撤回のドタバタ劇を演じたのもいまとなっては懐かしい。現行の5%にアップされたのが、97年、橋本内閣当時である。その後、民主党が8%論を打ち上げて引っ込めたこともある。自民党も民主党も本音では消費税の大幅アップは避けられないと分かっているのだが、政治事情が真正面からこれを打ち出すことを阻んできた。

 「1%引き上げでも内閣がつぶれる」といわれるほど、消費税の引き上げは厄介である。それもこれも、政治への信頼が落ち込み、国民に高齢社会への不安感が極度に高まっている現状を指摘しないわけにはいかない。説明責任をとことん果たすことが政治行政の要諦であるはずなのだが、ストンと胸に落ちてこない。

☆もっと分かりやすいプレゼンを

 今回の社会保障国民会議の試算発表を伝える主要各紙の見出しを見ると、その不徹底ぶりが分かる。

•朝日 消費税9.5〜18%の試算 国民会議 年金、税方式なら 
•毎日 基礎年金「税方式」なら 国民負担24兆円増も 政府試算来年度で 消費税率14.5%に 
•読売 年金改革 税方式「消費税上げ13%も」 政府試算 読売案なら2% 
•産経 基礎年金「税方式」負担は・・ 消費税 最大18% 政府試算 
•日経 基礎年金、保険料やめ税方式なら 消費税3.5−12%上げ必要 社会保障会議試算 来年度移行で4例 
•東京 年金「税方式」分の消費税 3.5−12%上げ必要 政府試算 

 見出しだけ見ていると、各紙が取り上げている数字はバラバラである。現行の給付水準のままにするか、2倍に引き上げるか、未納の人をどうするか、といったケースによって違ってくるわけなのだが、一般にはどれほど理解できるか。

 年金5000万件の記録漏れ、後期高齢者医療制度、それに今回の年金負担試算などを見るに付け、厚生労働省が中心となる福祉、医療、年金などを巡るプレゼンテーションはいかにも拙劣だ。

 もっと簡潔に、短い表現で分かるような工夫をしないと、「理解度の齟齬(そご)」からくる誤解、誤認にまず追われることになってしまう。コミュニケーションの本来の意味は「意思の共有」である。データや考え方、情報の伝達方法を徹底して考え直してもらわないと困る。ここはプレゼンテーションの民営化、つまりプロのPR会社に依頼するといった手法も必要になるのではないか。

 政治行政サイドと国民との間で「情報の共有化」が前提になければ、とてもではないが、消費税を中心とする論議が建設的なものになるとは思えない。消費税には、年金生活者や低所得者の負担が重くなるという現実がついてまわる。ここをどう克服していこうとするのか、その点に関する懇切丁寧な説明と具体的な対応策を常に提示しないと、入り口の部分で拒否反応にぶつかってしまう。

 つまりは、「お上」が作成した「役所文章」を、いかに政治家が咀嚼(そしゃく)し、国民の目線に立った次元で打ち出すことができるかということになる。これが政治の本来の役目である。政治は必ずしも詳細な数字データの細部まで掌握している必要はない。もっと、大きな構えでばさっと網をかぶせる感覚でとらまえ、小泉元首相ではないが、短い言葉で示さないと、訴求力が出てこない。


☆「消費税20%時代」の青写真を描け

 EU諸国などには消費税20%程度のところが珍しくない。今回の試算は年金だけの話だから、医療や介護といった部分まで消費税でまかなうということになれば、日本もいずれ「消費税20%時代」が現出するのであろう。そのとき、どういう社会になっているか、どういう国柄を目指そうとするのか、そこを語るのが政治である。税制は社会構造や国民意識を変えていく力を持つのだ。

 筆者は「消費税20%」の国家に転換していくことが望ましいと感じている。むろん、その前提として、社会保険庁の例に示されるようなおかしな役所は全廃し、行財政改革を徹底させねばなるまい。法人税、所得税、相続税といった直接税の大幅な引き下げによる「直間比率の変革」がまず前面に出ないと、消費税の引き上げなどできるわけがない。社会的弱者への手当ても当然である。

 消費税を主体とした税制への抜本改革が実現すれば、企業の税負担は縮小し、サラリーマンの可処分所得は増える。高齢化社会への不安も解消する。企業にもサラリーマンにも活力が出る。あらゆる消費活動には20%の税金がかかるが、その一方でほかの税金は極端に低くなるのだということが常識化していけば、日本社会は変わる。

 税制の基本は「簡素、公平、安定」だ。消費税はまさにこれに適合しており、景気動向に左右される法人諸税とは異なり、安定した税収入が見込める。膨大な国家と地方の借金をどうするか、財政の健全化にも寄与する。

 消費税を巡るこれまでの推移を見ても分かる通り、つまみ食い的に引き上げ案をポーンと打ち上げるだけでは、国民の理解など進みようがない。消費税20%時代の青写真を描くこと。これが政治に課せられた目下の急務である。


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<<読者から>>

★ いつもいつも蒙を啓くご意見に、時に膝を打ち、時に襟を正しております。
おっしゃるように、『「国民の生命・安全を守る」が国家の至高の役割』であります。であればこそ『日本版NSC(国家安全保障会議)の創設』が急がれる所以でありましょう。
「消費者庁の創設」も悪くはないけれど、福田総理の思い入れに、国民はいまいち気乗りせぬ様子。私もそうですが、また役所を作って役人の権限を増やすのか、プライオリティは何か、今いちばん大切なものは何か、よく考えてくれよと、われわれ国民は考えている。
だから、消費者庁構想を、みな冷めた目で見ているのだと思います。優先順位を間違えると、せっかくのいい政策も、「KY(空気が読めない)総理のKY政策」となり、役人増殖構想に過ぎぬことになる良い見本のように思えます。(会社経営・KIさん)

[花岡コメント]
 福田さんは消費者庁を政権浮揚の最大のポイントとしたいのでしょうが、仰るように、なんだか先行きはあやしいですね。


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★カレント(潮流社)5月号 「『馬英九の台湾』とどう付き合うべきか」
★WiLL3月号 「民主党の腫れもの小沢一郎」
★Voice4月号  渡辺喜美行革担当相インタビュー「霞が関との戦いに勝つ」
★道経塾(モラロジー研究所)50号 「国家としての汚名を晴らせ」
★激論ムック「反日マスコミの真実2」(オークラ出版)
★コメントライナー(時事通信)4月25日付 「問われる『胡錦濤来日』への対応」
★政経往来5月号 「政局展望 不透明政局の行方を追う」
★交詢雑誌(財団法人交詢社) 507号「当面の政局動向と日本の行方を考える」
★季刊・現代警察(啓正社)120号 「セレクト情報・国内政治・この不毛政局をどう見るか」
★JAPAN TAIWAN(日華文化協会)158号 「『大連立』は必ずよみがえる」
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この記事へのコメント

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消費税率20パーセントを視野に入れた社会変革,全く同感です。日時:2008年5月25日

これまでの報道記事で、消費税についての
意見は最もよく分かる。
日時:2008年5月24日

消費税の役割を拡大すべしとの論に賛成です。国民年金の徴収に、社会保険庁は徴収金額の約8%もの膨大なコストを浪費しています。彼らは去年、徴収を民間に委託すればそのうち何割かを削減出来るなどという試算を出していますが、そんな小手先の対策をするよりも消費税方式に切り替えれば全て解決する話です。日時:2008年5月24日


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  • ジャーナリスト花岡信昭(元産経新聞論説副委員長、日本の新聞社で戦後生まれの政治部長第1号)が現代政治、メディア、世相などを独自の視点で分析・解読、この国のありようをさぐる。

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