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花岡信昭メールマガジン569号

発行日時: 2008/5/16


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★★花岡信昭メールマガジン★★569号[2008・5・16]


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<<「馬英九の台湾」とどう付き合うべきか>>
【「カレント」5月号】再掲


 台湾総統選(3月22日)は国民党の馬英九氏が圧勝した。「親中・反日」の権化のようにいわれてきただけに、日本の保守層には落胆の色が濃い。だが、政治の現実は冷徹、非情であって、情緒的反応に陥ってしまっては日台関係の今後にかえって悪影響をもたらす。

 「馬英九の台湾」とどういうスタンスで付き合っていくべきか、ここは冷静な政治的英知をめぐらすべき局面である。

 それにしても、総統選の結果は歴然としていた。馬英九氏が765万票、対する民進党の謝長廷氏は544万票。得票率は58%対42%だ。200万票の大差となったのは、事前の予測を超えるものであった。

 1月の立法院選挙でも国民党が圧勝した。小選挙区制が導入されたため、得票数に比べて議席差が出る。国民党は500万票、得票率51%、民進党は360万票、37%だったが、獲得議席は国民党が全体の72%、81議席を占めた。民進党は24%、27議席にとどまった。李登輝氏が率いる台湾団結連盟は議席を獲得できなかった。

 この結果によって、総統選では「揺り戻し」が生ずるのではないかと見られた。沈黙を保っていた李登輝氏が投票日直前に謝長廷氏支持を打ち出し、チベット騒乱も民進党優位に働くのではないかと見られた。

 だが、結果はそうした「淡い期待」を無残にも打ち砕くものであった。民進党の完敗といっていい。

 この結果に対して、さすが李登輝氏は卓抜した現実的な政治感覚を持つ存在であることを改めて認識させる行動に出た。総統選直後に馬英九氏と会談、一気に関係修復を印象付けたのだ。

 この李登輝氏の政治センスをとことん学ぶべきであろう。民主主義体制にあって、有権者の審判は最大限に尊重されなければならない。たとえ、選挙結果が今後、台湾に苦境をもたらすものであったとしても、それは台湾の人たち自身が甘受しなくてはならない。

 ここは厳粛な気持ちに立ち返って、台湾人の選択を見つめなおすべきであろう。日本の保守論壇に馬英九氏の当選を快く思わぬ意識が強いことは十分に承知しているが、日本の国益を踏まえ、今後の中国、台湾との関係をどう位置づけていくか、国家戦略として再構築する構えが必要だ。

 筆者の経験を披露すると、台北市長時代の馬英九氏に会ったことがある。政界や企業人らの訪台団とともに歓迎レセプションに出席した。馬英九氏が歓迎スピーチに立ったが、話を進めているうちになにやらおかしな雰囲気になった。

 日本の「過去」を持ち出し、反省と謝罪を迫り始めたのである。なにやら中国の要人から責め立てられているようで、日本側の出席者がざわざわとしてきた。かなりの人が「聞いてはいられない」とばかりに、スピーチ中は遠慮すべきであるのだが、飲食物が並べられたテーブルを取り囲み、勝手に食べ始める始末であった。

 以来、筆者も馬英九氏に対するイメージは「親中・反日」の頭目といった印象がぬぐえないままであった。馬英九氏も最近は日本側のそうした反応を十分に認識しているようだ。昨年の訪日のさいには、同志社大学で講演しているが、「東アジアの平和と繁栄のためのビジョン」と題して、日台関係の強化を訴えた。反日めいた発言はいっさいなかった。

 民進党の敗北は、陳水扁政権の経済失政と周辺のスキャンダルに尽きる。李登輝氏がバックアップしていた時期の陳水扁氏は、政権運営も安定しており、日本側のイメージも悪くはなかった。

 日本側にとって、李登輝氏は特別な存在である。数年前に別荘を訪問したことがあるが、帰りがけに「地下室を見ていってほしい」と案内された。広大な地下室には木製の本棚がまるで図書館のように整然と配置されており、日本の書籍であふれていた。

 日本の書店で見かけるような近刊本もずらりと並べられていた。未開封のダンボール箱がいくつもあり、すべて日本から送らせた書物だという。岩波文庫はすべてそろっていた。

 李登輝氏によって日本人は「武士道」の気高さを改めて教えられた。日本人が忘れていた「日本的資質・美徳」を李登輝氏が日本の論客以上の迫力を持って伝えてくれたのであった。日本国内で最も信頼されている台湾要人は李登輝氏であるといって過言ではない。

 李登輝氏は「台湾人」というアイデンティティーの貴重さを台湾内部に根付かせた。これを香港生まれの外省人である馬英九氏が巧みに取り入れたのである。総統選の底流に流れていた重要なテーマは、「台湾人」意識であったといっていい。

 馬英九氏は中台関係について、「統一せず、独立せず、武力行使せず」を基本としている。中国傾斜が強いことは事実だが、これは現状維持政策である。馬英九氏の時代になれば、一気に中国との同化が進むと見る向きもあるが、そこは周到に判断していくほうがいい。

 台湾海峡で武力衝突を起こさないようにすること。これが日本の国益に直結する。台湾海峡は日本の重要なシーレーンなのだ。

 つまりは、馬英九氏も謝長廷氏も突き詰めれば現状維持派なのである。中国側は謝長廷氏が勝てば、独立志向が強まると警戒していたが、両氏とも練達の政治家なのであって、現状を激変させるような政治行動を取るわけがない。

 いってみれば、馬英九氏は「親中の現状維持派」、謝長廷氏は「反中の現状維持派」なのだ。であるならば、日本が取るべき道ははっきりしている。「馬英九の台湾」の今後をきっちりと見据え、中国傾斜が過ぎるようだったら、これを牽制していくことだ。

 さらには、韓国に対北太陽政策を放棄する新政権が生まれたことも重視しなくてはならない。「馬英九の台湾」を必要以上に中国寄りにさせないよう、日韓台の連携を一段と強めていくことだ。そこには、経済交流と同時に、自由と民主主義、人権を至高のものとする価値観の共有化という接着剤がある。これは中国とは相容れない基本スタンスである。

 馬英九氏はアメリカのグリーンカード(永住権)を取得しており、選挙戦で攻撃を受けたが(大きなマイナスにはならなかった)、ここは、馬英九氏の「親米度」に注目すべきである。馬英九氏は「親中」以前に「親米」派といっていいのではないか。

 となれば、「馬英九の台湾」は、日米韓台の連携を強める契機として位置づけることも可能だ。これこそが価値観を共有する仲間同士である。価値観同盟と言い換えていいかもしれない。

 これを強化していくことだ。そこに、対中関係で日本が新たな「カード」を握る可能性が見えてくる。福田政権はいたずらに親中姿勢を強めることしか眼中にないようだが、これでは日本の外交パワーは生まれない。

 チベット騒乱への武力弾圧などに対して、前期の価値観同盟の基本姿勢を踏まえ、中国を厳しく牽制する。そうでなくては日本外交はあなどられるだけだ。「馬英九の台湾」は日本の国家戦略の再構築につながるのである。






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<<読者から>>

★ 先の「政論探求」について。
<福田氏はそこを読み切って早々と転出したのである。自民党執行部が、次期衆院選で比例上位へのランクを「密約」するなど、市長選出馬を食い止めていたら補選はやらずにすんだ>

ここは違うのではないか。反基地が売り物の井原市長が突然辞職して市長選になったのであり、福田代議士以外に勝てるタマはいなかった。よく出馬して僅差ながら勝ってくれたと見るべき。
その反動というか、有権者のバランス感覚で補選はああいう結果となったのであろう。 
市長は保守、国政はヒダリという困難な状況が岩国には存在しているので、今後とも注目してください。(Nさん)

[花岡コメント]
 なるほど、地元の事情もよく分かります。福田氏は幌田晃氏の学生秘書から、市議選、県議選と連続トップ当選、その勢いで郵政総選挙も勝ち抜き、すさまじいばかりの勢いがありました。岩国には大変よかった市長選でしたのでしょうが、補選をやらなくてはならなくなったのは、政局上、自民党には痛かったですね。ならば、ここは参院議員(林芳正、岸信夫両氏のいずれか)を出して衆参ダブル選挙にできなかったのか。そこが自民党のパワー不足を象徴しているような気もします。


<<重要注目記事>>


★「人民日報」08/05/15

日本人が南京大虐殺の現場写真を寄贈

  神奈川県在住の岡崎俊一さんは14日、侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館(南京大虐殺記念館)に足を運び、父親の堀越文夫さんが中国侵略戦争中に残した白黒写真100枚余りと戦時中の勲章を自らが寄贈した。うち、一部の写真は旧日本軍の兵士による南京大虐殺の現場を自らが撮影し保存してきた真実の記録で、旧日本軍の大虐殺を確証する動かぬ証拠がまた新たに発見されたことになる。専門家はこれらの写真の史料的価値は非常に高いと検証する。




<<産経新聞コラム>>
 花岡のコラム『政論探求』は原則火曜付ですが、紙面の都合でときどき水曜付となります。
<<SAFETY JAPAN>>(日経BP社サイト)
<http://www.nikkeibp.co.jp/sj/>
花岡のコラム『我々の国家はどこに向かっているのか』連載中。毎週木曜更新。

<<Janet>>
 時事通信サイトJanetの花岡コラム『官邸ウオッチ・風測計』。月末に更新。
<http://janet.jw.jiji.com/apps/do/auth/login.html>

<<知的空間・人形町サロン>>
<http://www.japancm.com/sekitei/>
若手研究者らによる「知的空間サイト」。花岡の政治コラム連載。月初めに更新。


<<そのほか花岡の論文・コラムなど>>
★正論6月号 「総力特集 胡錦濤訪日で問われる日本の「覚悟」 福田さん、それでも“熱烈歓迎”ですか」
★カレント(潮流社)5月号 「『馬英九の台湾』とどう付き合うべきか」
★WiLL3月号 「民主党の腫れもの小沢一郎」
★Voice4月号  渡辺喜美行革担当相インタビュー「霞が関との戦いに勝つ」
★道経塾(モラロジー研究所)50号 「国家としての汚名を晴らせ」
★激論ムック「反日マスコミの真実2」(オークラ出版)
★コメントライナー(時事通信)4月25日付 「問われる『胡錦濤来日』への対応」
★政経往来5月号 「政局展望 不透明政局の行方を追う」
★交詢雑誌(財団法人交詢社) 507号「当面の政局動向と日本の行方を考える」
★季刊・現代警察(啓正社)120号 「セレクト情報・国内政治・この不毛政局をどう見るか」
★JAPAN TAIWAN(日華文化協会)158号 「『大連立』は必ずよみがえる」
★時事評論(647・8合併号) 「自民党の手のひらの上で踊らされる民主党」


 
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日米韓台の価値観同盟の意味とその必要性がよく理解できました日時:2008年5月16日


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