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花岡信昭メールマガジン517号

発行日時: 2007/12/30

★★花岡信昭メールマガジン★★517号[2007・12・30]

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<<今年のキーワードは「内向き」〜政治もメディアも>>
【日経BP社サイトSAFETY JAPAN連載コラム「我々の国家はどこに向かっているのか」弟91回・27日更新】再掲


 ことし最後のコラムとなった。暮れも押し迫って、感じるままに、脈絡のないコラムを書くことにする。年末版としてお許し願いたい。

7月参院選の自民惨敗による「衆参ねじれ」、安倍政権から福田政権への交代、さらに「大連立」浮上と、あわただしい1年だった。「年金5000万件」「薬害肝炎」、そしてインド洋での海上自衛隊の支援活動再開を目指す「新法」の越年、防衛省の汚職と機密漏洩。暮れに来て考えるのは、なんとも「内向き」の課題に追いまくられる日本政治の実態である。

 韓国では新政権が誕生した。年が明けると、台湾、ロシア、さらにアメリカと政権交代が相次ぐ。イラク情勢の先行きも不透明だ。激動の国際社会にあって、日本の国家戦略が見えてこない。国際政治の有力なプレーヤーになろうという気概がない。

 安倍前首相は「戦後レジームからの脱却」を掲げ、保守らしさを鮮明にした国家像を打ち出したが、病に倒れた。そうした政治信条では無色透明ともいえる福田首相の登場で、安倍カラーを盛り込んだ課題はすべて棚上げとなった。集団的自衛権の見直し、日本版NSC(国家安全保障会議)の創設、国会の憲法審査会での本格論議など、いまや影も形も見えない。

 もっとも「衆参ねじれ」克服の切り札として打ち出された「大連立」は、皮肉にもというべきか、福田首相だからこそ可能になった。安倍前首相のままだったら、民主党が連立の誘いに乗るのはもっと難しくなっていたはずだ。

 大連立はかなり前から水面下の工作が進んでいたようで、福田首相が安倍前政権の閣僚をほぼ「居ぬき」で残したのは、大連立に備えての配慮だったという。民主党にいくつか閣僚ポストを渡す必要があるためだ。

 大連立構想は消えてはいないと見る。今後の政治展開によって、再燃のタイミングはいくらもある。結果的に「中連立」ぐらいになるかもしれないが、自民、民主両党が中心になって、新しい政治を構築していく構えを示さないと、「内向き」政治からの脱却は無理だ。

 ドイツの消費税引き上げは大連立だからこそ、可能になった。与野党とも選挙を意識して腰が引けている状況が続いていては、日本改革の核心である消費税主体の税制への大転換などできようがない。野党は政権与党を攻撃していればいいという体質から脱皮しない限り、日本政治の成熟は望めない。

 まして、「外交・安保は水際まで」という精神が日本の野党には欠落している。とくに政権を目指すという民主党には、その基本的たしなみをわきまえてもらわないと困る。インド洋での海自支援は、新年早々に新法が再議決規定によって成立する見込みだ。となると、11月1日の期限切れで海自補給艦を撤収させ、3ヵ月の空白をつくってしまった責任を民主党はどう取ろうというのか。

 国内政治の次元だけの攻防戦が先行するから、こういう次第になる。海自撤収で、日本は対テロ国際包囲網から脱落し、日米関係にきしみを生じさせた。民主党にはそれなりの理屈があることは分かるが、結果的に支援再開となるのであれば、民主党の態度は無責任きわまりないということになる。6年間続いてきた支援活動をストップさせ、二度と派遣させないということならば、それを可能にする政治行動を貫かなくてはいけない。

 政治が内向きならば、メディアも内向きである。国際的な事件が起きたりすると、CNNやBBCを見ることにしている。日本のテレビはニュースでちょっと流すだけだが、米英のテレビは延々と現場中継を続ける。日本語の同時通訳でやってくれるから、たいていのことが分かる。

 主要な新聞にしろテレビにしろ、米英は世界に向けて発信している。日本のメディアは国内の読者、視聴者しか眼中にない。これだけの経済大国でありながら、日本のメディアでは国際ニュースが後回しにされる。国際社会への発信力もきわめて乏しい。

 NHKは経営委員会の内紛を経て、経済人を新会長に迎えるようだ。ここも経営問題が先行して、「世界のNHK」という視点が欠落している。

 暮れには紅白歌合戦が話題となるが、ことしはいよいよ「まったく見ない」ことになりそうな予感がする。かつては、こたつでみかんを食べながら、家族そろって紅白を見るというのが日本の大方の家庭の姿だった。それがほぼ消えた。

 それも当然だ。視聴率維持に汲々として、民放で売れているタレントを総動員し、つまらぬドタバタショーを演じられては、しらけるだけである。だいたいが、日本の大衆音楽のレベルを大晦日にすべて見せようという本格的なエンターテインメントの精神が完全に欠落している。世界に向けて「日本のうた」の水準をあますところなく示すといった壮大な意識はないのか。ちまちまと縮こまってしまったNHKの体質が紅白に象徴されている。NHKは視聴率より「質」をどこまでも追求すべきだろう。

 NHKを公共放送として立て直すには、CNNの日本版をつくることだ。あれだけいくつもの波を持っているのだから、ひとつぐらいこれに充ててもいい。世界中に取材網を張り巡らしているNHKでなくては、日本版CNNは無理だ。NHKの資金力と取材網を24時間のニュース専門局に集中させてはどうか。それなら視聴者も満足だろう。そこからNHKの再建がスタートするように思える。

 新聞の世界も風雲急を告げている。紙媒体の活字が読まれなくなった。いくつかの大学でジャーナリズム論などを講義しているが、100人、200人の教室で「新聞を毎日読んでいる人は」と聞くと、ゼロであったりする。

だから、講義のときは駅で何部か買っていき、せめて授業中だけでも新聞に親しむようにと配布することにしている。家では仕事柄、全紙購読しているが、これを持っていって戻ってこなかったら困るからだ。もっとも、そのまま持ち帰ってくれるほうが少しでも新聞を読む気が出てきたかとうれしい気持ちになるのだが、たいていは一番うしろの席にそのまま放置されていて、講義終了後にうしろまで回収に行く。

 某新聞社の幹部からこういう話を聞いた。就職試験の面接で「新聞は要らない。ニュースはヤフーで読めるから」と大胆なことを述べた学生がいたという。逆説的なことを言って受けをねらおうとしたらしいが、「そのニュースはだれが取材し、だれがヤフーに配信しているか、知っているのか」と尋ねると、絶句してしまったという。

 新聞の価値は、その豊富な記者集団にある。訓練を受け、取材、記事化の研鑽を積んだプロ集団である。「市民記者」なるボランティアによってつくられているサイトがいくつもあるが、社会的影響力を持ち得ないのは、国民が知るべきニュースとは何か、これをどう取材し、編集し、報道するか、という視点と能力に欠けるからだ。素人に「記者」をやらせること自体が無理なのである。

 政治とメディアの復権、成熟といった課題を考えると、「内向きからの脱却」がキーワードになるような気がしている。新しい年は、そのあたりをさらに追い求めてみたい。



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この記事へのコメント

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一年間ご苦労様でした。来年も期待しています。大阪・黙山人より日時:2007年12月30日

いまの日本人は、日本人らしさを表に出すことに非常に躊躇している人たちが多い。これを意見表明すると途端に右翼呼ばわりをする人たちがいる。それでいて周辺国の影響下に置かれている現状を何ら関心も持たず、なすがままにされている。こういう人たちを覚醒させるにはどうしたらよいのか?つねにそれを感じています。日時:2007年12月30日

私の思いを代筆いただいたような内容で、大変評価しております。来年も期待しております日時:2007年12月30日

世間ではマスコミ批判を繰り返すが取材の能力は素人では出来ない記者集団があるからであるとのこと同感です。日時:2007年12月30日


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  • ジャーナリスト花岡信昭(元産経新聞論説副委員長、日本の新聞社で戦後生まれの政治部長第1号)が現代政治、メディア、世相などを独自の視点で分析・解読、この国のありようをさぐる。

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