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花岡信昭メールマガジン511号
発行日: 2007/12/22★★花岡信昭メールマガジン★★511号[2007・12・22]
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<<首相官邸は「ねんきんと特別便」を見たのか>>
厚生省(現在、厚生労働省)はかつて国内行政全般に通暁した旧内務省の中核部隊であった。それがいまに受け継がれ、内閣官房副長官は厚生事務次官経験者がよく起用された。それほどの伝統と権威を保っていたはずの厚生省は、なぜここまで情けない役所に成り下がってしまったのか。
年金問題が騒がれるたびに、そうした思いが強まる。年金を担当する社会保険庁は厚生省の外局である。幹部は厚生省の出向者で占められ、2年ほどで本省に戻るから、「大過なく過ごす」ことが彼らの生きる知恵となった。
社保庁の組合は自治労系が9割以上の組織率を誇り、地方の社会保険事務所の現場を仕切っていた。社保庁労使が交わした100件を超える労働協定の存在が明らかになり、いまはすべて破棄されている。端末を45分間操作したら15分休むといった常識外れの内容だったのだから、それも当然だ。
宙に浮いた年金記録5000万件は、こうした環境下で生まれた。幹部たちは出向期間を問題を起こさずに過ごせればそれでいい。一般職員はいかにずさんな仕事をしていようと、組合によって守られているから、これまた緊張感を欠いた。
およそ民間企業では考えられない社保庁の体質が「5000万件」を生んだ。長期にわたる「サボリの蓄積」の後始末に追われている現在の職員の多くは真摯にまじめに取り組んでいるのだと思いたい。しかし、どう人海戦術を使おうと、5000万件の壁はあまりに高かった。
舛添要一厚生労働相は、ついに来年3月末までの記録照合作業のギブアップを宣言した。5000万件のうち今後、解明が必要な記録は38・8%の1975万件にのぼり、そのうち945万件(全体の18・5%)は統合困難であるという。
年金制度は加入者7000万、受給者3000万、合わせて1億人がかかわる国の基幹政策である。それが「5000万件」によって、国民からかつてない不信感を突きつけられる結果となった。
7月参院選での自民惨敗の最大の要因がこれであった。選挙戦で安倍晋三前首相は「最後の1人まで記録をチェックし、正しい年金をお支払いする」と絶叫したが、多くの国民には通じなかったことになる。
年金問題は政権の危機管理が問われる重要課題となった。そのことを福田康夫首相は忘れてしまったのか。「3月末まで」の公約に違反すると質されて、「公約違反というほど大げさなものかどうか」「公約でどう言っていたか、頭にさっと浮かばなかった」などと述べてしまったのだ。
その結果、各メディアの世論調査で内閣支持率は10ポイント以上も落ち込み、30%台に急落した。20%台になると政権の危険ラインといわれており、首相の不用意な発言はなんとも深刻だ。
つまりは、厚労省、社保庁の基本認識が首相発言に反映されてしまったのではないか。行政上の感覚でいえば、5000万件の処理を3月末までに行うのはとてもではないが無理な話であったろう。だが、それは役人の発想であって、政治的には「最後の1人まで、最後の1円まできちんとさせるように全力を尽くす」と言い続けなければいけない。それが政治だ。
5000万件が安倍前首相に報告されたのは昨年暮れの段階であったという。そのさい、これは事務処理上の問題で、受給開始段階で申請が行われ過去の記録を調べるから、欠落があれば分かる、といった説明を受けていたらしい。これも役人ベースのものの言い方であって、政治的には通らない。
厚労省が5000万件の事実を公表したのはことし2月である。その時点で多くのメディアは敏感に反応もせず、問題追及を続けてきたはずの民主党もとくに騒ぐことはなかった。
5月後半、社保庁解体法案(2010年に非公務員型の日本年金機構に改組)の審議が大詰めにきた時点で、「5000万件」は一気に政治問題化した。その経緯の不可解さに、自民党内から「社保庁改革を潰そうとして、社保庁労使と民主党が組んだ謀略だ」といった声もあがったが、「5000万件」の事実の重みの前には防戦一方に追い込まれた。
自治労は民主党の有力な支持母体である。自治労系組合が「働かない体質」を生み出す元凶であったという側面は無視できず、その意味では民主党も一定の責任を感じていいはずであった。だが、そういう攻防の構図にはならなかった。
そう考えると、年金問題を取り扱う上で、政権の危機管理態勢の欠落という重大な視点が浮上する。「5000万件」に対して、役人ベースとは別の政治判断が働いていいはずであった。そこにも「官僚主導」のこの国の政治行政の欠陥が浮かび上がる。
厚労省、社保庁は12月から来年3月まで、5000万件の記録と結びつく可能性がある人に対して「ねんきん特別便」を郵送する。それ以外のすべての人たちにも来年4月から10月までに送ることにしている。
だが、その特別便の内容を見ると、これまた驚かざるを得ない。それぞれの加入記録が記載されているのだが、「消えた記録」で結びつく可能性のあるものを記載していないのである。
受け取った人は、加入記録がつながっているかどうか確認し、欠落があれば、その間の勤務先などを思い出して照会票に記入するという仕組みだ。社保庁側の調査結果と合致すればオーケーということになる。
「消えた年金記録」は社保庁のずさんな対応によって生じたのだが、その後始末を個々の加入者にさせるということにはならないか。未統合記録を記載しないのは、もし違っていた場合、その人になりすましたり、個人情報が漏れる恐れがあるためだという。
これこそ、まさに役人的発想であって、国民側の受け止め方を踏まえていない。厚労省、社保庁に任せておくからこういうことになる。首相官邸は「ねんきん特別便」のサンプルを見たのだろうか。
舛添厚労相が照合作業の現状を開示したのは、説明責任の観点からすれば評価できる。だが、官邸や自民党との事前のすり合わせがなかったのだとしたら、政権の危機管理上、重大な疑念も残る。「5000万件」には、現在の日本の政治行政が抱える問題のすべてが詰まっているように見える。
【日経BP社サイト[SAFETY JAPAN]連載コラム「我々の国家はどこに向かっているのか」第90回・20日更新】再掲
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<<読者から>>
★ SKさんが本メルマガ509号の小生の意見に「具体的な根拠、データを提示せずに論理展開」していることに違和感を覚え、特に「根拠薄弱で、非論理的と思ったくだりとして、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)において世界中の科学者が集まり、議論し、科学的なデータを基にスーパーコンピュータによりシュミレーションした結果、90%の確率で地球温暖化の原因は人為的なもの、すなわち産業活動及び日常生活から排出される炭酸ガスをはじめとする温室効果ガスであると、結論付けています」をあげられています。
ご指摘有難うございます。小生は科学者ではありませんのでこの結論に反論する根拠はありません。ご指摘のとおり根拠薄弱で、非論理的です。しかし、科学的なデータを基にスーパーコンピュータを駆使した結果の結論であっても、入力するデータは広範な範囲におよぶ膨大な量となるであろうことは予想がつきます。いかなるコンピュータの結論も入力データにより左右されます。大自然の未来予測に対する信頼は人により異なるものと思います。小生は気象庁が大型コンピュータを導入した結果の天気予報がいまだに明日の予報も外していることを肌で感じていることから、科学的な技法には全幅の信頼がおけなく懐疑的な見方をしております。
環境を保全し、化石燃料を節約しつつ新エネルギーを開発・努力することは大賛成で異論はありません。今回愚論を寄せたのは507号の「シンガポールのじいさん」のご意見を拝読し、日本国民の生活は危殆に瀕しているとの危機感から、限られたエネルギー資源、食料資源を求めての厳しい国際情勢のもと、わが国のぎりぎりの生き残りの国家戦略に関する議論が必要ではないかと、思考要素の優先順位として地球温暖化防止問題を持ち出しました。世界的な趨勢に反する面もあり違和感を持たれる読者もおられるであろうことは予想しておりました。要は限られた日本の資源をどちらに優先して配分し、対処するかであろうと思います。ご指摘、有難うございました。 (外房の爺さん)
[花岡コメント]
日本の今後について、真摯なご意見の応酬が拙メルマガ上で展開されるのは、まことにありがたくお礼申し上げます。ささやかなメルマガですが、日本の現状と未来をさまざまな角度から考えていきたいと思います。多様な言論こそが民主主義の基盤であると確信しております。
★ 年金問題での福田さんのあまりにも軽率な発言が飛び出し、国民の怒りを買いました。一国の宰相としてあまりにも情けないです。政府の責任で起きた不祥事です。しかも、選挙で、来年3月までにすべて明らかにするといったわけですから、今回の事態は公約違反であることは明らかです。しかも件数が膨大な数字です。まず謝罪ありきでしょう。厚生労働大臣の更迭ぐらいはあってしかるべきではないでしょうか。福田さんをはじめ、政治家の責任、厚生労働省の責任、社会保険庁の責任、それぞれ明確にして目に見える形で責任をとってほしいと思います。(HIさん)
[花岡コメント]
ご指摘のように、年金問題は政権の行方を左右しかねませんね。この問題では当初から感度の鈍さが気になっていました。役人的な発想だと「事務処理上の問題」になってしまうのですが、政治は、それではすみません。
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<<Janet>>
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