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花岡信昭メールマガジン491号

発行日: 2007/11/9

★★花岡信昭メールマガジン★★491号[2007・11・9]

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<<「大連立」頓挫は残念無念>>

小沢一郎氏の「辞任表明ー撤回」騒動の余波はなお続いている。

 それにしても、「大連立」がこうしたかたちでつぶれたのは残念無念という以外にない。

 大連立というのは、競合関係にある大政党同士が連立を組んで、国家的課題に立ち向かうというものだ。日本ではなじみがなく、政治評論家などにも「戦争に突入する基盤をつくった大政翼賛会だ」といった程度の認識を示す人がいたのには、まいってしまった。

 戦争などに直面したときには挙国一致内閣ができるが、これが大連立の究極の姿といっていいかもしれない。イギリスではかつて自由党、保守党、労働党がこれをつくった。

 1960年代、西ドイツの大連立が最も有名だ。キリスト教金主同盟・キリスト教社会同盟とドイツ社会民主党が大連立を組んで、増税などの国家的施策を成し遂げた。最近でも2005年に双方の大政党が過半数に至らなかったため、大連立によってメルケル政権が発足している。

 日本では衆参ねじれ構造によって、政策遂行が進まないという事態に直面している。これに対応する新体制を、という発想は国家に責任を持つ立場としては当然のことだ。

 だから、2ヵ月ほど前から、大連立構想が自民、民主双方でひそかに検討されてきた。それが顕在化したのが福田首相と小沢代表の党首会談だった。

 今回の騒ぎで最も指弾されなければならないのは、大連立構想を提起されて、これを即座に理解できなかった民主党役員会の面々のお粗末さだ。勉強不足といっていいかもしれない。あるいは政治的センスの欠落か。

 小沢氏の説明不足はいまに始まったことではない。まして、大連立となると、党内でおおっぴらに論議して決まるものでもない。

 まあ、この歴史的な大構想をつぶした民主党役員会の人たちは、次期総選挙で自民党を打ち負かす自信があるのであろう。であるならば、どうぞ、おやりなさい、と言う以外にない。

 それにしても、と思う。あの役員会で小沢氏の大連立構想を支持した幹部が1人もいなかったというのは、なんたること、と暗澹たる思いにかられる。この程度の認識の政党が2大政党時代の一翼を担えるのか。

 大連立の話は中選挙区制への復帰と一体のものとして論じられているが、かならずしもそうではない。

 小沢氏は構想の具体的な中身を明らかにしていないから、予断は避けたいのだが、、こういうシナリオは十分に考えられる。

 2年間なら2年間という期間を設定する。この間に、大連立を組んで、国家的課題をことごとく片付ける。その後、その時点での政治情勢を見極めて2大政党時代を現出させるための一大決戦を展開する。これは小選挙区制でなければできない。

 大連立の間に、比例代表部分をなくして、完全小選挙区制への移行をはかることも可能になる。300小選挙区では足りないというのなら、400にすればいい。

 いま、口を開けば、だれしも、日本は危機的状況にあるといった論評がまかり通っている。その認識は正しいのだろう。産経の長期連載企画は「やばいぞ、日本」というタイトルである。

 日本がぎりぎりの局面に来ているというのであるならば、これを克服するために、政治の役割と責任はどこにあるか。そこを考えれば、大連立というのは、まさに当然過ぎるほどの装置である。

 大連立期間中にやるべきことは山積している。自衛隊の海外派遣を軸とする国際貢献のあり方が入り口となったが、これを整理して、恒久法でも安全保障基本法でもつくったらいい。

 小沢氏の国連至上主義を福田首相が受け入れたといった話もあり、その点への危惧を強調する向きもある。その疑念はたしかにあるのだが、これは、政治の世界の話である。

 まず、大連立の大舞台に乗ること、そこから始めないと政治は動かない。国際貢献策、安全保障論は、今後の議論の中でいかようにも変わり得る。小沢氏の考え方が危険だから大連立に反対というのは、政治の実態を知らない論評といわなくてはならない。

 そんなことばかり言っていたら、ダイナミックな政界再編など起きようがない。われわれは現実政治を相手にしているのである。理念だけで政治が動くのではない。

 大連立の舞台では、年金制度、消費税、教育改革、道州制、さらには憲法などなど、国家の基本にかかわるあらゆるテーマを自在に扱っていくことが可能になる。

 さらに、大連立構想に隠されていることがある。社民党や共産党など守旧的左派の切り捨てだ。国会の9割を占める大勢力が舞台となるのだから、マルクス主義のしっぽをつけている勢力はもはや相手にされなくなる。このことの効果は大きい。

 辞意表明を撤回した小沢氏のことをあれこれおもしろおかしく批判するのはたやすいことだ。だが、小沢氏のことだ。大連立へのアレルギーが薄れたころを見計らって、再びこれを出してくる可能性もある。

 再度の挑戦に期待しようと思う。


<<ネット時代のありがたさ>>

  日経BP社のサイト「SAFETY JAPAN」で「我々の国家はどこに向かっているのか」という連載コラムを書いている。昨年3月からで、現在は毎週木曜更新だ。これがそのサイト。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/


 そこで実におもしろいことに遭遇した。すでに80回を超えているのだが、昨年4月11日に更新した記事が、いまごろアクセス数急上昇となったのだ。

 このサイトでは毎日、「もっとも読まれた記事ベスト10」を掲載していて、ここに入ると、なんともうれしくなるのだが、この数日の間に、1年半前の記事の閲覧が急に増えだし、7日にはついに1位にランクされた。

 「小沢一郎とはどういう政治家かー壊し屋イメージの先にあるもの」というタイトルである。

 過去記事のタイトル一覧がついているから、クリックすれば簡単に読める。ここ数日の動きで、「小沢もの」が一気に読者をひきつけることになったのだろう。

 これは「ものかき」としてはありがたい発見であった。活字媒体とネットの融合がいわれているが、なるほど、こういうかたちであれば両者は十分に両立する。

 紙媒体だけであったのなら、とてもではないが1年半前の記事など見向きもされなかったに違いない。探そうとしても、やたら手間がかかる。

 ということで、宣伝めいて恐縮だが、その記事を以下に再掲する。自分でいうのもなんだが、小沢氏は今回なぜこういう行動を取ったか、その背景の一端が分かるような気もする。

【日経BP社サイトSAFETY JAPAN】
我々の国家はどこに向かっているのか<4>06、4、11
「小沢一郎」とはどういう政治家かー「壊し屋」イメージの先にあるもの

 
 小沢一郎氏が民主党の代表になって、このところの政治論議は「小沢論」に集中している。筆者の個人メルマガ・ブログへの意見やコメントも、小沢氏に関するものが格段に増え、それも「否定論」が大半である。
 
 読者には保守派が多いから、小沢氏が主張する靖国A級戦犯分祀論、在住外国人参政権付与などをめぐって、厳しい意見がどうしても多くなる。「靖国」を持ち出したのは、小泉首相との違いを鮮明にするための政治的戦術であるようにも思えるのだが、これが当たるのかどうか。保守派の離反を覚悟のうえでの言動なのだろうから、小沢氏なりの成算があるのだろう。
 
 とにかく、「小沢一郎」という政治家ほど、見方が二分される人も珍しい。熱狂的な支持者がいたかと思うと、蛇蝎のごとく嫌う向きもある。それだけ、政治的パワーを秘めた存在であるといえることだけは確かだ。
 
 「小沢本」がかなり出回ったとき、筆者もある出版社に請われて、「小沢新党は何をめざすか」という本を書いた。その出版社はまもなく倒産してしまい、裁判所から書類が来た。あなたは債権者だが、いくら請求するかという内容である。印税額の確定を求めてきたわけだ。どうしようかと迷ったが、一生懸命に筆者に付き合ってくれた若い編集者を思い出すと、請求する気にはなれず、そのまま放っておいた。
 
 あのとき、本を出す前に小沢氏に「仁義」を切った。こういう本を出しますという予告である。小沢氏は「オレの本なんか売れないよ」と笑いながらも快く許諾してくれた。別にこういうことはご当人の許可が必要というものではないのだが、政治記者としてお付き合いしている以上、黙っていきなり出版するのは礼を失していると思ったのだ。
 
 出来上がった本を10冊ほど持って行ったら、えらく喜んでくれた。だが、そこまでだった。出版社は小沢氏が相当部数を「買い取り」してくれることをひそかに期待していたらしい。政治家を対象とした本というのは、そういうものなのだ、といった「慣行」みたいなものがあるらしく、出版社はそこを当てにして刊行したのである。
 
 本が出来たあとで、そういう事情を知った。出版社側が、もごもごと口にし始めたので、「小沢さんはそういったことが通用する政治家ではない」と断った記憶がある。小沢氏が最も嫌う「スジが通らない」ことだという点だけは確信があった。
 
 小沢氏は「原理主義者」と称される。政局を動かす局面では振幅が大きい半面、主義主張では原理原則にこだわる。「剛腕」「壊し屋」「シャイで説明不足」「人間嫌い」など、さまざまにいわれてきた。そのどれも、小沢氏の一面を言い当ててはいるのだろう。だが、テレビでしか見たことのない人が、パーティーの席などで小沢氏と名刺を交わし、その腰の低さに驚いたといった話はよく聞く。これは、野中広務氏や鈴木宗男氏の評価と似ている。
 
 長い間、小沢氏を見てきて、やはり最大の「ナゾ」は海部政権崩壊時の対応だろう。あのとき、金丸信氏は確かに小沢氏を後継首相にしようと動いた。小沢氏が首を縦に振れば、「小沢政権」が誕生していてもおかしくはなかった。当時49歳。心臓病が理由だろうという人もいるが、「まだ若い。いま政権についてもやりたいことはやれない。短期政権に終わっては何にもならない」という心境だったと、あとで周辺から聞いた記憶がある。
 
 そこで宮沢喜一、渡辺美智雄、三塚博の後継候補3氏を自分の事務所に呼んで「首実検」したことが、あしざまに伝わっている。なぜ、批判が出ることを承知で、こういうことをやったのか。自身の権勢を誇示しようとしたのか。
 
どうも、伝えられていることとは違っていて、大安で結婚式が集中し都心のホテルの部屋が取れなかった(ワンフロア押さえないと対応できない)、自分が相手の事務所へ出向くとそれぞれに取材が殺到し整理が大変だと判断、3氏とも小沢事務所へ行くことを了解した、といった事情があった。「向こうがこっちへ来てくれたほうが、いっぺんですむだろ」と、えらく簡単に言ってのけたものだ。これも小沢氏の合理主義的側面なのだが、とかく説明不足だから、傲岸不遜の意味合いだけが残ることになる。
 
 小沢氏が最も激しい政治行動を敢行したのが1993年である。宮沢政権崩壊、新生党結党、8党派による細川連立政権発足・・。55年体制崩壊という日本政治史上のエポックを演出したのであった。
 
 小沢氏は何をめざしたか。「5年でやりたいんだよな」とぼそっと漏らしたのを覚えている。日本の政治構造の大変革である。つまり、政権交代可能な2大政党(あるいは政治ブロック)時代の現出だ。そのための核心が小選挙区制の導入であった。これは郷土の大先輩・原敬、さらに政治の師・田中角栄、実父の小沢佐重喜各氏が挑戦したテーマでもあった。
 
 小選挙区比例代表並立制を導入する公選法改正案は衆院で可決、参院で社会党の造反によって否決という展開になった。最も抵抗するであろうと思われた土井たか子氏は、すでに衆院議長に「祭りあげ」られていた。その土井氏が議長斡旋というかたちで、細川―河野(自民党総裁)トップ会談を設定した。土井氏の狙いは「先送り」にあったのだが、深夜のトップ会談に小沢氏が乗り込んで、小選挙区300、比例代表200(その後180に削減)でまとめてしまった。土井氏は怒りまくったが、まさに後の祭りであった。憲法の規定により衆院で3分の2の賛成があれば再議決できる。かくして、現行の衆院選挙システムは、小沢氏の「腕力」で成立したのである。
 
 政治改革は選挙制度改革に矮小化された、と批判する向きもある。これは基本的に間違いだと思う。世界のどこにもない中選挙区制は日本的な談合なれあいの風土にはなじむシステムといえたが、これに風穴を開けること、政治改革の原点はそこにあった。小選挙区制は2大政党を導きやすくし、政権交代可能な政治構造をつくる。米英型の議会制民主主義の導入である。
 
 昨年の郵政総選挙では、中選挙区制維持論者であった小泉首相が小選挙区制のメリットを存分に発揮して自民圧勝を実現させるという皮肉な結果となった。小沢氏は次の総選挙で、その逆をやろうとしている。比例代表部分をさらに削減していって、いかに単純小選挙区制に近づけるか、それが今後の焦点となる。

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<<読者から>>

★ <辞任表明から撤回にいたる経緯は、たしかにどたばた騒ぎではあったが、そんなものは1週間もたてば消える。残されたのは、大連立に踏み込めなかった「力量不足の」党幹部陣と、「オレしかいない」ことを立証した小沢氏という構図である>

 貴見、冴えにさえまくっていて、痛快の極みです。
 さて、ドタバタ劇がおわって、貴台指摘の通り一週間も経ってからでいいですから、この一連の報道の中で強いてか触れられていなかったと思われる、顔色無かった共産党と公明党の反応についての調査報道か解説報道を願う次第。蒼くなっていたはずですから。面倒なら、誰か若手にさせて発表された以後、このブログで紹介してくだされば幸いです。(Rさん)

[花岡コメント]
 恐縮です。ご指摘の点、きょうのコラムで若干触れました。さらに当たってみます。仰るように興味のあるポイントですから。



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この記事へのコメント

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花岡さんの一連の記事で小沢一郎の持つ政治的な実力、荒唐無稽のように思われた大連立の意味、大半のマスコミ論評のいい加減さ、民主党政治家の感覚ズレがよく分ったように思います。日時:2007年11月10日

花岡さんは常に自民の立場から書いていらっしゃるが、法案が通らなくて困るのは自民じゃないですか、民主は高みの見物、連立する必要ないと思うが。日時:2007年11月9日

川越俊夫貴殿の視点、考察に敬意を表します。
 在職中の体験から小沢氏の行動はよく理解
できます。今回の件で社民共産の解党は読めてきました。公明党の今後を考察下さい
日時:2007年11月9日

国民が蛇蝎のように嫌う開戦直前の体制についてあなたの考えをどこかで聞かせて下さい。今回の記事については大変評価点を高くしたいと思います。日時:2007年11月9日

花岡さんの視点の確かさから、本当の政治とは何かが、よくわかります。朝日新聞がなぜ駄目なのか、あれはただの外野に過ぎないこともよくわかりました。もう、購読やめます。

また、花岡さんのコラムが1位になったというのは、たぶん日本のビジネスマンがいかに本当の情報、価値ある情報を望んでいるかを示すものです。これからも、おおいに
期待します。
日時:2007年11月9日


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