国際結婚して15年。中東アラブのとある首長国に住んでいます。結婚前は世界を股にかけて自由奔放な生活をしていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。
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アラブからこんにちは〜Vol.130 育てる努力と難しさ(1)
発行日: 2008/4/25
Vol.130 育てる努力と難しさ(1)
3月の後半唐突に、噂には聞いていた大統領のスカラーシップが、
新聞紙上で発表されました。
この奨学金は特別ハードルが高いことでも有名で、
今までは限られた地域に限られた期間だけ募集されていたので、
世間にあまり知られていませんでした。それが今年から、
全国のUAE子弟も対象に含まれることになりました。
実は去年の11月頃、その事務所から電話がきて、
日本に留学生を送る場合どれくらいの生活費を見込んだら
いいのか相談を受けたのです。その折に、夫は今年から
この特別優待生の奨学金が全国規模になることを知り、
正式発表を心待ちにしていたようでした。
UAEは1971年に連邦として建国され、国民の半数以上が
20歳以下という非常に若い国です。教育に対する熱意も高く、
1996年に先進国の仲間入りをしてから、豊富な石油収入を背景に、
若年層を育てる教育プログラムを盛んに実行してきました。
実際、全体人口のわずか20%だけが自国民で、労働人口の
90%以上が外国人であることは、この国の脅迫的な現実です。
それを踏まえて10年ほど前から、国が総力を挙げて
自国民育成に力を入れ始め、高等教育・大学院教育、
幼児教育、少年少女スカウト・職業訓練・天才児教育など、
さまざまな試みをしてきました。
奨学金制度もそのひとつで、各省庁、大企業、シェイク個人
などによって多数が設立され、若い世代の国民に投資されて
きたのです。
ここで少しこの国の大学進学システムについて説明
しましょう。
UAEの教育課程は、幼稚園2年、小学校は5年、中学校4年と続き、
高校は3年、つまり12年間の基礎教育があります。
高校まではすべてアラビア語教育をしていながら、
大学に入学すると英語教育にかわるので(特別な学部を除く)、
ほぼすべての学生たちは約2年間の英語教育期間を経て、
専門学部に入学していきます。もちろんその間に
TOEFL試験で高得点を取り、大学教育に進めると判断された学生は、
2年を待たずして入学が許可されます。
つまり元から英語が得意で大学にストレート入学すれば、
3年あるいは4年(学士)で卒業できるけれど、
普通の学生は英語教育期間を含めると6年くらいは、
大学に通わなければならなくなるのです。
12年生(高校3年)になってひと月もすると、どの高校でも
大学説明会が開かれ、各大学の学生が勧誘に来ます。
その後11月までに、生徒は国内にある志望大学を提出。
その時もちろん就職を希望する人もいるし、海外留学を
希望する人もいます。それを基に各大学は入学者を振り分け、
3月頃までに本人に入学許可を通知していきます。
年が明けて後期になると、今度は奨学金の説明会が
始まります。
奨学金もさまざまで、国の奨学金は医学・技術系学部を
すべて網羅していますが、私企業となると当然、通信関連の企業は
IT技術志望の学生のみ、交通庁は土木系志望の学生のみ、
建設会社は都市工学系志望の学生のみと、奨学金の対象を
絞ってあります。
(教育学部以外の文科系学部に進学する学生は
奨学金制度がない。技術を学んで将来は国に還元してくれる
学部だけを対象としている。ビジネス・商学部系は
個人的な利益をもたらすので、自費で行ってもらう。)
こうした私企業の奨学金は、できるだけいい学生を集めようと、
政府の国費留学制度よりも前倒しで生徒の募集を始めます。
(奨学生は当然、その企業に最低5年くらいは勤めることが
条件となる。でないと奨学金返還を迫られる。
ひとつの奨学金制度に合格すると、他には申請できない。)
春からはそうした奨学生試験が次々行われ、私企業、
大企業、半官半民企業、各省庁、そして大統領の奨学金と
続いていきます。
3月に発表された大統領の奨学金は、DSS (Distinguished
Student Scholarship) と呼ばれ、9年ほど前に
設立されました。
申請時の条件が特別高いかわりに賞与も高く、
大学4年間の全学費の他に、語学研修費、大学受験費、
渡航費、さらに毎月の生活費も支給されます。
申請の条件は、UAE国民であること、高校3年間の学業成績が
平均90点以上あること(特に理数は必ず90点以上)、
TOEFLで高得点をとること、大学は医学・技術系の学部に
進むこと、国に戻って就職すること、犯罪歴がなく
品行方正であること、インタビューにパスすることなどです。
大統領はアブダビ首長なので、去年まではアブダビ子弟だけの
特別優遇制度だったのですが、今年は全国公募になるという
新聞記事を読んで、夫は翌日、さっそくアブダビまで出向いて、
長男を申し込んできました。
育てる努力と難しさ(2)に続く
ハムダなおこ
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