国際結婚して15年。中東アラブのとある首長国に住んでいます。結婚前は世界を股にかけて自由奔放な生活をしていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。
- 最新号:2008-09-26
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アラブからこんにちは〜Vol.127 サプライズ(4)
発行日: 2008/3/14Vol.127 サプライズ(4)
さぁ今度は夕食の準備です。
1メートルほどの中華皿2枚に、オーブンで暖めておいた
食事を山盛りに盛ります。サラダ、タッブーレ、ホンモス、
ムタッバルを並べ、ナプキンを美しく飾ります。
ダイニングが整うと、廊下と窓のカーテンを閉めて
(つまりどこからも見られないような状態にして)、
女の子たちを呼びました。
全員が席に着くと、娘はひとりひとりの皿に食事を
盛り付けます。
日本のようにスプーンや菜箸で客自身が皿に取るのではなく、
必ずもてなす主人が盛り付けます。私がナイフで肉を
切るはしから、若い娘が食べるはずない程の量を、
過分に盛り付けていきます。皿に隙間が残っているような
盛り付けでは失礼。残すことを前提にした大盛りです。
全員の皿が整うと、ようやく長女も座って食べ始めました。
時間を見たらすでに9時半。
アラブの少女は目鼻立ちがはっきりしているので、
皆とても大人びて見えます。15、6歳ともなると背丈は
私より高いし、皆一様にアバーヤとシーラを着ているので、
パッと見には年齢がわからない。
豊かな髪と彫りの深い顔、小麦色の美しい肌に、長い睫。
化粧などしなくとも目を見張るほど美しい少女たちばかりで、
鏡に映る自分の顔がひどく凡庸に感じられます。
彼女らはおしゃべりしながら長々と食事をし、冗談を言って
しだれかかり、からかわれると相手のシーラを引っ張り、
ビデオを取り合い、写真を写し合い、笑って笑って、
ようやく食事が終わったのは10時半でした。
それからあっという間にお迎えが来て、娘たちは次々に
帰っていきました。
残ったケーキは量にして半分。30センチくらいに切り分けて、
就寝前のご近所に急いで配りました。それでも家には
明日と明後日の分くらい残っています。
息子たちは大皿に残った食事にありつきます。
それでもまだ残るので、近所の雑貨屋に電話をかけて、
インド人従業員たちに持っていってもらいました。
このように、アラブのお祝い事は派手に充分な余裕を持って
準備され、主人たちが去った後にも、こうして隅々に
お裾分けされていくのです。
その夜、娘は興奮して「ママはいつから知っていたの」
「今日急に言われたの。それともずっと前から計画していたの」
「今日は学校でみんな何か変だったのよ。人の顔を見て
こそこそしゃべって。」
「何かを箱に詰めているような感じだった。あれがプレゼント
だったのね。来なかった人からのもたくさんあるんだって。」
「そういえば、あなたのママって何語をしゃべるのなんて
訊かれた。それも計画のうちだったのね」
待ちきれずに妹や弟は「はやくプレゼントを開けて」と
せがみます。長女はもったいぶって、
「あんたたち、私がさわる前に絶対に手を触れないんだからね」
と約束させました。
プレゼントは「つづら」という表現がぴったり合うほどの
大きな箱に、たくさん入っています。その箱もきれいに飾られて、
大きな造花とリボンが糊付けされている。
おもむろに開けると、中からふわ~と花の匂いがたちました。
まずは開きかけのバラ(生花)の大きな花束。
その下にひとつひとつが美しい紙に包まれて、香水、乳香、
石鹸、ローション、アクセサリー、髪飾り、鏡などが
詰まっています。大振りなカードには美しい飾り文字で、
友情や学校生活を謳った自作の詩が書かれています。
香を焚き染めたシーラやブラウスまで入っていて、
箱の隙間を埋めるようにポプリが敷き詰めてある。
娘はひとつひとつを丁寧に読み、床に並べて、
感動しています。
「いいねぇ、カルサムはいいねぇ、私もカルサムだったら
良かったなぁ」と次女は言い、
「女っていいものをたくさんくれるんだねぇ」と驚く次男。
長男は「このうち何を僕にくれるの」と調子のいいことを言い、
「随分お金がかかったろうね」と3男。
そうです。女の子たちはきっとお金と時間をたくさん
かけたでしょう。
10kgのケーキがいくらするか、私にだってわかりません。
プレゼントもこんな田舎町では手に入らないものばかりで、
きっとドバイへ行った時に買っておいたものでしょう。
包装もカードも飾りつけも、1日やそこらではできないもの
ばかりです。彼女たちはそれを秘密に計画し、
時間をかけて周到に準備し、ようやく今日という日を
迎えたはずです。
それを知って初めて、私は夫が準備しようとしたおもてなしが、
どれだけ理にかなっているか気がついたのです。
サプライズ(5)に続く
ハムダなおこ
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