国際結婚して15年。中東アラブのとある首長国に住んでいます。結婚前は世界を股にかけて自由奔放な生活をしていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。
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アラブからこんにちは〜Vol.90 希望のすれ違い−One Side Story(2)
発行日: 2007/4/8◆━━☆アラブからこんにちは〜中東アラブの知られざる主婦生活☆━━◆
マガジンID m00139263
WebページのURL http://www.geocities.jp/naokomai41/index.html
最初にお断りしておきますが、
今回の内容は、One Side Storyです。
つまり、私が得た情報を基にして
私がいる立場から見た一考察です。
出てくる数値は出来うる限り確認を取りましたが、
すべてが正確とは限りません。
確認が取れないものは、私が耳にした数値をそのまま書きました。
また素人の意見ですので、
実際仕事で関わっているなかで、
違う意見を持っている方もいらっしゃると思います。
ただこのような考え方もあるという風に、
読んで解釈してくだされば嬉しいです。
Vol.90 希望のすれ違い−One Side Story(2)
もともと日本人学校は日本人の子弟を対象に、数年間
駐在したあと帰国し、日本の学校に無理なく復学できるよう、
日本語のレベルを落とさないため教育するのが目的で
設立された学校です。日本と同じ年間スケジュール、教材、
カリキュラムを使い、外務省から派遣された教師が
日本にいる時と同じように授業をする。
日本語を覚えたい、日本の高度な教育システムで子どもを
育てたいと単純に思っている、外国人の子弟が対象では
ないのです。
ところがUAEの父兄は、ブリティッシュスクールに入れるのと
同じように、「日本カリキュラムを使った」現地校であることを
期待します。つまり、日本の高度な教育システムを導入した、
現地児童のための学校を期待しているのです。
具体的な例を挙げれば、国語・算数・理科などは是非日本語で
教育して欲しい。きちんとシステム化された美術や音楽や
体育の授業も経験させたい。クラブ活動も委員会活動も、
計画通りに進行する各行事も素晴らしい。
けれどもUAE人として育つためには、アラビア語の授業を
やらないわけにはいかない。日常生活の細かい規範や
道徳概念を教えるイスラームの授業も欠かせない。
小学1年生に始まる「国家」という社会の時間も必要だし、
5年生に始まる地理や歴史はまずUAE・中近東について
学ばなければ意味がない。さらに英語を日本語から習う必要は
ないし、コンピュータも英語がもはや共通語である。
語学習得のために何から何まで日本語で習えば、
儒教を基礎とする日本の道徳教育がいずれイスラームの
道徳概念と矛盾してきます。「アダムとイブが人間の祖」
と説くコーランに矛盾する進化論を歴史の授業で教えることは、
この国では禁止です。
どれだけ日本語が上達しても、親からしてみれば
日本そのままの教育を受けさせるのはあまりにもリスクが多く、
UAEの子女としての教育は失敗です。
自分を反対の立場に置いてみれば、簡単に納得がいかれると
思います。日本人の子どもを育てている親としては、
いくらアラビア語を覚えるためでも、UAEの教科書をすべて
使って教育されたら、日本人としての知識や意識が欠落して、
教育は片手落ちとなってしまいます。
また、そうした教育内容だけの問題ではありません。
UAE児童にとって低学年以上は男女が同じクラスでは困るし、
高学年は男女別棟の校舎を使用するのが当然です。
隔離された体育館も更衣室も用意しなければならないし、
スクールバスも男女別を要求してくるでしょう。
ラマダーンだって短縮時間を採用しなければなりません。
UAE人にとって譲ることの出来ないこうした事項は、
幼稚園である限りは問題ありません。UAEの幼稚園でも
男女同クラスだし、バスにも男女一緒に乗るし、
ラマダーンでなくても授業時間は3時間半ですから。
しかし小学校に上がるとき(日本人学校では、UAE児童が
小学校に入学するためには、幼稚園で日本語を習得していないと
受け入れないと条件を出した。)現在の日本人学校のシステムが、
UAE家庭にとって譲れない部分を持ち合わせているとしたら、
生徒は学校を諦めるしかありません。
「それならわざわざ日本学校に来る必要はないだろう」
と単純に考えるのは驕りです。それでも日本の高度な
教育システムから習いたい、そのためにはどんな協力も
惜しまないという国家相手に、日本側が協力できないことは
ないはずです。そしてそれにはまず、日本側の発想を
変えることが必要なのです。
それにしても、今年から日本人幼稚園に入学した2名のUAE児童が、
まるで貴賓扱いを受けているのは驚きました。
1月の運動会に参加したとき、UAE児童の母親はテントの下で
大使婦人と大使館つき通訳に挟まれて座り、私や子どもたちは
遠めに見ながらシェイクの子どもが入学したのだろうと
思っていました。(実際は一般家庭の子だった。)
UAEでは、貴賓席(どの催しでも後方は女性席、前方は男性席、
その最前列に貴賓席が置かれる)は必ず、シェイクか、
教育省の役人か、校長の座る場所と決まっています。
身分の違う人をその席に招くことは、身分のある人への侮辱と
受け取られます。かつて我が家の子どもたちが首長国でも有数の、
あるいは全国大会で一位というメダルを取った時でさえ、
私は一度も貴賓席には招かれませんでした。
さらに驚いたのは、この児童2人は日本人幼稚園のバスが使えず、
日本の石油会社のドライバーが送り迎えしているというのです。
日本人学校では日本児童の母親が順番でバスに乗り、
送迎の確認を取ることになっています。男性と同じバスに
乗ることのないUAE婦人に、バス送迎のアシスタントは
出来ないだろうということで、この児童2名はバスに
乗れないのです。それなのに学校とも児童とも関係ない
日本の石油会社のドライバーが、その子を送り迎えしている。
たぶん日本人社会の一部の人たちは、この児童を
ムハンマド皇太子からの大事な預かりものと捉えているのでしょう。
その後ろには単に国際交流という目的だけでなく、
石油利権の延長を見据えた「日本の協力」という姿勢が
うかがえます。
明日にも気が変わって学校を辞めるかもしれない、この3歳の
UAE児童2名が、無事に日本人幼稚園に通ってくれることが、
ムハンマド皇太子の要請に応えた実績として、つまり日本が
経済だけでなく文化的にも貢献したという事実として
評価されるのだと、一部の人は考えているのかもしれません。
希望のすれ違い(3)に続く
ハムダなおこ
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