アラブからこんにちは〜中東アラブの知られざる主婦生活 |
この記事の発行者<<前の記事
|
次の記事>>
|
最新の記事
◆━━☆アラブからこんにちは〜中東アラブの知られざる主婦生活☆━━◆
マガジンID m00139263
WebページのURL http://www.geocities.jp/naokomai41/index.html
Vol.85 それぞれに国を想う(3)
話は少し遡って、去年の12月のことです。
12月2日はUAEの独立記念日(連邦結成日)でした。当日は公休日に
なるので、どの学校もその前日に、愛国的なステージや記念行事を
催してお祝いします。
長男の学校は、アルアインという内陸の街(ラッセルハイマからは
250キロ。車で3時間半もかかる)のサッカースタジアムで、
UAE全5校から生徒が集まって、大イベントを行いました。
もともと長男の学校はUAEの教育改革の一環として、
科学に強い生徒を育み、国の将来を担うエンジニアを育てる
という目標の元に、3大企業がスポンサーとなってつくられた
科学技術高校です。UAEの子弟のみが対象で、英語教育をするので
入学試験があり、全国に4校(2年目からは5校)設立
されています。
この日のイベントはUAEでも初めての試みで、いろいろな
学校対抗試合が用意されていました。
各学校から選ばれた優秀な生徒が、物理と化学と数学の
教科テストで競い合い、また語学が得意の生徒は
ステージの上で瞬発能力を試す英語テスト、即興詩を創る
アラビア語テストに参加します。
手先が器用な生徒は電気学の実験テスト、コンピュータが
得意の生徒は早く正確に図面を引くAuto-CADのテスト。
頭よりも芸のある生徒は伝統舞踏のヨーラ(男性が伝統音楽に
合わせて銃を高々と放り投げて踊る)を競い、
体力勝負の生徒はもちろんサッカーとバレーボールです。
各学校ともスタジアムの四方に陣取り、自分のスクールカラーの
旗を立てて応援合戦となりました。
何といっても愉快なのは、教科テストの合計点が、
最後のサッカーの勝敗で覆されるかもしれない得点配分に
なっていることです。年間通して2ヶ月毎に
成績順で組み分けされる生徒たちは、ここぞとばかり
自分の能力を出しきって学校に貢献したのでした。
それにしても興味深いのは、同じUAEでありながら、各学校に
よって生徒の性質が違うことです。
例えば息子の学校が在るラッセルハイマ校は、遊牧民族ではなく
山岳民族の子どもたちです。彼らの先祖は岩山に住み、
短気で気性が荒く、道理や理性があまり通用しない。
のんびりした漁港の町ウンムアルクエイン(60キロ離れた
隣の首長国)からも生徒が通いますが、地域によっては
あまりに方言が違うので、友だち同士しゃべるのにも
通訳が必要な場合さえあります。全体的に負けず嫌いで、
負けると理由もなく腹を立てて、周りの物を壊したりする。
その代わり応援合戦には気迫があって、競技にも燃えています。
それに比べて、東部インド洋に海岸線を持つフジャイラ校の
生徒は、もともと農耕民族でおっとりしている。
学校対抗競技にもさほど対抗心を燃やさず、負けてもあぁ残念
という程度。けれど生徒はフジャイラ首長国の子どもだけなので
団結していて愛校心はたっぷりあります。
反してドバイ校の生徒はいつも無関心とシラケムード。
ドバイ校には近隣のシャルジャやアジマーン首長国からも
生徒が通っていますから、一枚岩とはならないのでしょうが、
(ドバイのローカルは5割以上がイラン系移民で、
イスラーム教シーア派もいる。自分をUAE人というよりは、
民族の混じったドバイ人だと考えている人が多い。)
それにしても勝とうという気持ちがない。都会の子ども
だけあって当然英語はトップの得点でしたが、それ以外では
あまり高得点を取りませんでした。応援合戦なんか
アホらしくて出来ない様子で、陣地も静かなもの。
けれども“カッコイイ青年”の代名詞ともなった
流行のヨーラに勝てなかったことには、大変怒っていたそうです。
どこの国でも都市部は同じですね。
アルアイン校は唯一内陸にある砂漠の都市にあり、
つまりほとんどの生徒がもと遊牧民の孫たちです。
彼らのプライドときたら遥かに高く、また部族主義が
いまだ浸透しているのか団結力も強い。最後に優勝をかけた
フジャイラ校とのサッカー試合は燃えに燃えて、
ものすごい応援を見せたと息子は話していました。
アブダビ校はまだ設立1年目で、10年生しかいません
(他の4校は10年生と11年生がいる)。そのせいで
勝てないと思うのか、「応援合戦!」と言われれば
最初の2分くらいは応援するけれど、あとが続かない。
都会の子どもはどうしても一枚岩とはならないようで、
本来ならアブダビ特有の部族主義で団結しそうなものなのに、
得点に結びつかないのでした。
スタジアムに散らばるテントでは、世界中から集められた
教師たちが教科テストの採点をします。その得点と
スポーツ競技の結果は、スタジアムの大きな掲示板に
合計されていきます。
その間に各学校の代表が自分たちの進めているプロジェクトの
説明をし、実験室で作られたさまざまな作品を展示します。
(例えばコンピュータ操作で動く交通信号機のモデルとか、
太陽電池を用いた水ポンプ、金属を溶かして新しく鋳造した
チェス台と駒など。)
さらにスポンサーの1つであるUAE軍隊が、楽団と
パラシュート部隊を送ってきてイベントを飾りました。
学校対抗といっても全校生徒がUAE子弟だから、
対抗心より愛国心で結ばれているようなものです。
イベントの最後は詩を朗読し、国歌を歌い、固く手を
握り合って分かれてきたそうです。(このイベントは
教育改革の成功例のひとつとして、新聞でも報道された。)
学年が始まってからというもの、迷いに迷ってこの学校を
選びましたが、私たち夫婦が決断した最後にして最大の理由は、
この学校が全首長国と連動したUAE子弟のための国立高校であること。
つまり長男が成長して「コイツは俺の学友だ」と言える仲間が、
ここから全国に何百人も育つことです。
(ラッセルハイマ校は1学年200人。全国5校の生徒数は
11学年で1000人余り。2学年合わせると2200人以上となる。)
少人数制の私立学校に入れれば(ほとんどが外国人生徒)、
もっと学力レベルは高いかもしれない。多様なクラブや
アクティビティーを選べるかもしれない。卒業後の進路は
いいかもしれない。けれど何百人もの学友を、
いずれ国を離れるわけでもない同胞を、将来の地位や名誉に
関係なく生涯にわたって心を許せる友達を、他のどの学校も
決して息子に与えてくれはしないのです。
高校3年間というかけがいのない人生の時間に、
学校から期待する最も大事な要素――それは学友と、
UAE人として生きる心構えだ、という単純な答えに、
私たちは行き着いたのでした。
それぞれに国を想う(4)に続く
ハムダなおこ
この記事の発行者<<前の記事
|
次の記事>>
|
最新の記事
