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国際結婚して15年。中東アラブのとある首長国に住んでいます。結婚前は世界を股にかけて自由奔放な生活をしていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。

  • 最新号:2008-09-26
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アラブからこんにちは〜Vol.31 喜捨の心得(5)

発行日: 2005/11/30

◆━━☆アラブからこんにちは〜中東アラブの知られざる主婦生活☆━━◆
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WebページのURL   http://www.geocities.jp/naokomai41/index.html


今年のラマダーンは10月4日に始まり、11月3日に終わりました。
田舎のラマダーンはとても大変で、朝から晩まで食事の世話をして、
昼夜がひっくり返り、終わったら腑抜けのようになってしまいました。
それもようやく過ぎて、これからは静かな秋がきます。

では今回は耳慣れない「喜捨」についてのお話です。



Vol.31 喜捨の心得 (5)

ラマダーンの最後の週、夫は自分がコンサルティングしている会社の
同僚から大金を渡されて帰ってきました。札束で1万ディラハムが
無造作にポケットにねじ込んであります。きけば、
「これはウンム・アル・クエインの貧しい人々に配るように」と
サダカを預かったのだそうです。お金の出所をきくと、名乗らないが多分
その会社の社長(シェイク)だろうと。その時居合わせた3男によると、
その同僚は分厚い札束からちょっと(1万ディラハム=30万円)だけ
抜き取って渡したのだそうです。たぶん札束のすべてがサダカでしょう。
はじめはその話は信じがたく、「ねぇ、それ本当の話なの」としつこく聞くと
「何をそんなに驚いているんだ」と夫に諌められました。
生活に困っている末端の人々に届くよう、サダカを信頼する部下に渡す
篤志家がいる。またそれが信頼する友人(ひとりではない)に託され、
またそれが誰かに託され、、、。そんなことをしている間に
なくなってしまうのではないかと考えるのは貧しい想像で、
実際にそんなことにはならないのだそうです。
「すべてはアッラーが見ておられるから」という一言で説明は終わりです。
私の驚きをよそに、夫は手早く貧しいUAEローカルの家族をさがしあて、
千ディラハムずつのサダカを渡してきました。もちろんそうした家族は
誰からのサダカか知る由もありません。すべてアッラーのお恵みとして
受け取ります。夫に同行したとき、貧しい家の前にしばし車を止めていると、
わずかの間に次々と車が来てサダカを渡している様子が見えます。
私はため息をつき、慈善の営みがこうも自然に行われている社会に感動し、
人を信用してサダカを託す人々の素朴さに驚き、自分の想像力の貧しさを
改めて考えさせられたのでした。

自分の行うささやかな喜捨が、どのように廻り活きていくかを想像するには
訓練が要ります。常に自分が世界ではどの立場にいるか、自分より
恵まれない人の規模や状況がどうなっているかを認識していないといけない。
そのためには広く世界を計る視野が必要になります。家の中に閉じこもり
子どもたちの世話だけしていたら、決して想像力は育たないのです。
思えば日本で生活しているときの私は、自分が人生でどれだけ多くのものを
得ることができるか、という考えを基本的に持っていました。
(きっと若い頃は誰でもそうなのかもしれませんが。)
どれだけ自分が伸びていけるか、そのためにはどれだけ努力すべきか、
そしてその結果としてどれだけ(成果・収入・自由・機会などを)
得る事ができるか、それが最大の関心事でした。
ところがUAEに来て、アラブ・ムスリムの人々の意識が根底から違うことに
気付きました。人々はいつでもどれだけ自分が与えることができるかを
考えている。神に感謝し、いとも当然に喜捨し、誰かを助ける精神的な
用意が常にできている。それでも彼らに言わせると、
現代社会に生きるムスリムはその習慣を忘れがちなのだそうです。
そしてイスラームの教えを改めて確かめるのは、やはり毎年くる
ラマダーンの時期なのだと。
私もそれにあやかって、ラマダーンが来ると少しでも彼らの意識に
近づこうと、日頃の心を入れ変える決心をします。
ところが癖とは恐ろしいもので、スークに行くとあっという間に
決心を忘れ、「高いわね。もうちょっと負けなさいよ」
と口をついて出てくる。
そしてはっと夫の言葉を思い出し、
「値段は言う通りでいいから、いいもの選んでね」と言い直し、
頭の上までぎっしり荷物をしょったポーターのおじさんに、
「今日はラマダーンだから」と15ディラハム渡すのです。
毎年がその繰り返しで、いつか自然に自分にとって十分な喜捨が
できるようになるには、私の前にはまだまだ遥かに長い道が
延びていることを感じるのでした


喜捨の心得(了)


ハムダなおこ

 
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ペンネーム : ハムダなおこ

  • 国際結婚して17年。アラビア湾岸にあるアラブ首長国連邦に住んでいます。結婚前は自由奔放に世界を駆け巡っていたのに、ひょんなことから戒律の厳しいアラブの生活に。5人の子どもをアラブ流に育てながら、湾岸中東の風習・文化・生活をエッセイで紹介します。

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