食品偽装に消えた年金!「人気メルマガ発行者」が鋭く斬り込むNEWS評論!【投票は28日迄】
トップ > マネー・政治・経済 > 政治・経済 > 甦れ美しい日本

甦れ美しい日本 第183号

発行日時: 2008/5/14

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2008年5月14日 NO.183号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆文化・芸術・映画・味覚などは水曜日発信となりました。

< 目次 >
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──────────────────────────・・・・・☆

◎奥山篤信の映画評論

1.韓国映画「光州5・18」☆☆☆☆ 
2. アメリカ映画「ミスト The Mist 」 ☆
3.アメリカ映画「最高の人生の見つけ方 THE BUCKET LIST」 ☆☆☆
4.アメリカ映画「ハンティング・パーティ  THE HUNTING PARTY」☆

◎奥山篤信のDVD映画評

1. アメリカ映画「恋愛小説家 AS GOOD AS IT GETS」 1997年 ☆☆
2.アメリカ映画「ダンディー少佐MAJOR DUNDEE」1964年 ☆
3.アメリカ映画「マグノリアMagnolia」1999 ☆
4.フランス映画「アメリLE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN/AMELIE/AMELIE FROM MONTMARTRE」2001年☆☆   
5. 日本映画「ゆれる」2006年☆☆☆

◎阿嶋彩子の料理つれづれに (37)<葛>

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
超・映画評 愛と暴力の行方 奥山篤信著 扶桑社 発売中 http://www.strategies21.org/leonessa.htm
大書店・アマゾンでお買い求めできます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-----------------------------------
◎奥山篤信の映画評論 
------------------------------------
-----------------------------------
1.韓国映画「光州5・18」☆☆☆☆
-----------------------------------
光州で起きた1980年の518より527の10日間の出来事ほど闇に包まれたものはない。
前年の10月朴正煕大統領が暗殺され韓国は自由化の動きが、独裁政権時期、民主化闘争を進めた野党を中心に進んだが、同年1212の、全斗煥の粛軍クーデタによる権力掌握により自由化が押しつぶされて行った。翌年5月17日全斗煥は全国に戒厳令をひき、それに抵抗する全羅南道光州でおきた民主化闘争がこの事件の発端である。

朝鮮半島はもともと新羅、高句麗、百済、任那など歴史的な民族の対立感情がある。同じ朝鮮民族同士で血なまぐさい殺戮があるのは、僕たち大和民族には考えられないことだが、現代史においても朝鮮戦争しかり光州事件しかりである。それはこの民族対立が根底にあるからである。人事面に置いても朴政権以来嶺南(慶尚南・北道)派が政治の中枢を占めた。一方冷や飯を食ったのは、金大中など湖南(全羅南・北道)派である。この怨念の対立が光州に置いて根強く残った反政府運動といえる。
この事件の真相は、金大中以下北朝鮮の示唆による蜂起と純粋な学生・市民の怒りが絡み合ったものというのが通説だ。この映画に関する限り、学生・市民の軍事弾圧に対する英雄的抵抗として描かれている。

この映画が、選挙に備えてのノムヒョン的色彩すなわち北朝鮮派の謀略映画としては、僕の見る限り、当たらないと思う。勿論ノムヒョン政府がこの映画を援助したことは間違いないだろう。
キム・ジフン監督は「埋もれていた事件の真実を国民に知らせ、自分の無知を犠牲者の方々に懺悔する映画を作りたかった」と話しているように、当時の軍事圧政に闘った勇気ある光州市民へのレクイエムとして受け取るのが正しいと考える。

映画は実に良くできている。人間社会の基本である親子愛、兄弟愛、友情、師弟愛、キリストの愛、職業倫理、祖国愛などを見事に絡ませながら、自らの死に代えても守るべき価値を求めて、壮絶に死んでいった人々を感動的に描いているのである。このあたりの倫理観は、そのまま日本社会にも取り入れたいほどである。
韓国の名優アン・ソンギが光州出身の退役将軍として、軍の暴虐に怒り、市民を組織し最後まで市庁舎に籠って闘う指揮官として尊敬を集める役を演じる。主人公キム・サンギョンも好演である。とに角銃弾戦でも兵役を経験しているだけに、構え方や眼光が日本映画とは違うのである。

アン・ソンギの初老の惚れぼれするような、無言の男の愛の眼差が、市民に勇気を与える。「今からお互い助け合って闘おう。横にいる友を見よ。そして自分は友を鏡としてみよう。怖れを見たら、取り除こう!」同じ韓国内の戦いであるのに、ソ連侵攻に抗議した1956年のハンガリー動乱下のブタペストを思い出す高揚感である。

女優は指揮官の娘で看護婦に扮するイ・ヨゥオンなかなか別嬪である。

こんな悲劇を経験した光州の人々には哀悼の意を捧げたくなるが、男も女も私情を捨てて大義の為に命を捧げた崇高な史実は子々孫々まで英雄として祀られる栄誉もあることも確かである。こんな物語を持った光州の人々は幸せである。
-----------------------------------
2.アメリカ映画「ミスト The Mist 」 ☆
-----------------------------------
ベストセラー作家スティーヴン・キング原作の映画は「ミザリー」のように背筋が冷やっとさせるものや、「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」のように普通の社会問題を含んだ名作がある。とくに「ショーシャンクの空に」などは救いがあって素晴らしい満足感がある映画である。

この映画も同じコンビで監督フランク・ダラボンが描いたもので楽しみに出かけたが・・・軍隊が創造した生物群に対して制御が利かなくなった近未来のホラー映画である。成程そこに宗教、人間の集団悪、狂信カルトなど社会問題を混ぜ合わせながら描いて行こうという姿勢は評価されるが、あまりに生物群がグロテスクで観客で吐き気を催すのは僕だけであろうか!
ショッキングで心臓に応えるのは、その弱さであり、むしろ映画の面白さとも言えるかも知れないが、この映画は全く僕は評価しない。エンディングが余りにも救いがないからである。観客を緊張と恐怖のどん底に陥れるなら、せめてエンディングは爽やかであって欲しい。惨たらしい、後味悪い、これが二つの名作を生み出した監督とは思えないのである。
なるほどこのエンディングは監督の創作であってスティーヴン・キングではないそうである。

嗚呼気色悪い!爬虫類のような触手を踏みつぶしぐじゃっと内容物が出てくる風景、蟻のような細かい昆虫が人間を食いつくす!これほどまで気色の悪い生物を次から次と創る、悪夢でも見そうな不快感が残る映画である。

監督の趣旨はこの映画に出てくる閉ざされた空間で次第にシンパを増やし場を支配していく狂信的な女性こそが、まさに閉塞空間の人間という動物こそが、この異常な生物群より危険だとのメッセージがあるという。僕は全く理解できない。それならこの生物群は余りにも存在感が強すぎるからである。
-----------------------------------
3.アメリカ映画「最高の人生の見つけ方 THE BUCKET LIST」 ☆☆☆
-----------------------------------
病室で知り合った二人の死期が迫った男が互いに惹かれ、死ぬまでにやりたいリストを作り、それを実行する。ジャック・ニコルソン扮する病院経営者はたたき上げで資産十億ドルの富豪、モーガン・フリーマン扮する自動車修理工は慎ましく信心深い愛妻家。原題は棺桶リストという意味。
御互い全く普通なら接点のない境遇・性格だが、男同士がトコトン心で結びつき、生涯の親友となるのに4か月でも短すぎることはない。

この映画は二人の名優が演じているからこそかもしれぬが、僕たち棺桶に近い世代は特に楽しく愉快に見れる映画である。人間もし寿命を宣告されたら、何をするだろうか!日本映画の「象の背中」のような、明るいようで何か暗い生き方の押し付けがましさがあったが、ここはアメリカ映画、大富豪が金に任せて世界を駆け巡るこのスケールのでかさは、見ていて痛快なのである。

そして最後の〆が見事である。こんな映画でもニコルソンが実の娘と孫に会って、「世界一美人とキスをする」願いが孫の額にキスができて成就できたと、リストに棒線を引く。中々ほろっと泣かせる映画でもある。エベレスト頂上にニコルセンがその死後の遺灰を、その願いである「天国の門に入れてほしい。その可否の証言はすでに天国にいるフリーマンに証言させてほしい」との嘆願書とともに登山家に運ばせる。無神論者でも天国が気になるのか、あるいはその境地に達したのかとの可笑しさよりも、精力的に無慈悲に事業に生きてきた男の反面の可愛らしさは、古今東西共通であるとの微笑ましさを感じた次第である。

ニコルソンは灰汁が強く役柄が限定されるところがあるが、この映画の演技の見事さはまさに芸術の域といえる。最後の涙のシーンに至る、金の亡者の厭らしさ、無神論者、人間の弱さ、包容力に満ちた優しさなど場面、場面の葛藤を見事にこなす演技である。フリーマンが冗談で自分の棺桶リストにニコルソンとの共演があったが実現したのだと。
是非50以上の男女にはお勧めの楽しい爽やかな映画である。
-----------------------------------
4.アメリカ映画「ハンティング・パーティ  THE HUNTING PARTY」☆
-----------------------------------
駄作である。ユーゴスラビア内乱のボスニアでの民族浄化の戦争犯罪人である実在のセルビア将軍ウドヴァン・カラジッチをイメージし、それを追い詰めるジャーナリストの実話に基づく。リチャード・ギア扮するレポーターとテレンス・ハワード扮する戦場カメラマンの活躍を描いた活劇である。監督・脚本とも「人質」のリチャード・シェパードである。

リチャード・ギアはチベットの人権で戦うハリウッドの代表である。この映画もセルビアのブッ
チャーを執念で追いかける役を演じている。愛する身ごもったイスラム地区の恋人を殺戮された個人的復讐劇であり、単なる正義でもないところが人間臭いのであるが、スケールの小さな陳腐さが退屈感を催す。
-----------------------------------
◎奥山篤信のDVD映画評
------------------------------------
1.アメリカ映画「恋愛小説家 AS GOOD AS IT GETS」 1997年 ☆☆
------------------------------------
第55回ゴールデン・グローブ賞で主要3部門に輝いた、ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント共演の恋愛映画である。この映画でアカデミー賞主演男優賞を獲得したジャック・ニコルソン扮する恋愛小説家は空想の中で甘い恋愛を描いているが、自分自身は極度の潔癖賞であり、偏屈で人間嫌い、犬嫌いである。

ロビーで小便をひっかけた犬をごみ入れシューターに投げ捨てるほどの犬嫌いの小説家はある日事情があってその犬の面倒を見るように強いられ、渋々部屋で飼ううちに犬を通じての人間の優しさや思いやりといった人生の機微を実感することになる。

どこに行ってもトラブルメイカーのこの男、カフェテリアの病気の子持ちのヘレン・ハント扮するウエイトレスに惹かれるが、恋愛小説家にも拘わらず一々理屈っぽく照れ屋でもありその毒舌に総スカンで誤解されてしまう。

喜劇的要素の強いドタバタ劇ではあるが、実際の職業と自分の私生活とにギャップのある人格が多く存在するこの世の中での物語である。しかし人相の悪いニコルソンはいつも思うが余りに灰汁が強すぎて演技は上手いが役柄が限られてしまう。
ヘレン・ハントは独特の声で魅力的な中年を演じる。
------------------------------------
2.アメリカ映画「ダンディー少佐MAJOR DUNDEE」1964年 ☆
------------------------------------ 
サム・ペキンパー監督ということで初期の作品を観たが、全くの駄作である。
チャールトン・ヘストン 、 リチャード・ハリス、  ジェームズ・コバーンが出演の南北戦争時代の北軍のアパッチ狩りの話である。主人公であるはずのヘストン扮する ダンディー少佐が下に命令する割に、女に弱く、自分に甘く、これがヒーローとして「主人公」として位置付けられているところにまず大いなる疑問がある。むしろ南軍捕虜をアパッチ狩りに利用するためにその南軍のリーダーであるリチャード・ハリス扮するタイリーンの方がよほどまともで骨がある。憎くくきアパッチの首領を倒すスペクタクルが中途半端でその意味でもスリルがないダラッとした映画である。サム・ペキンパーは何か自分に気に入らないとやっつけ仕事をする性格らしく、何かが気に入らなくて放り出した映画に違いない。勿論1964年の映画のタッチが僕たちには古すぎて陳腐なのかもしれないが。センター・バーガーの谷間と野生の女性美だけは光っていた。
------------------------------------
3.アメリカ映画「マグノリアMagnolia」1999 ☆
------------------------------------
最近のあの傑作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の監督 ポール・トーマス・アンダーソン の作品でベルリン映画祭で金熊賞受賞の大成功といわれる映画である。

あるサンフランシスコの街での一日の出来事を9つの逸話を描きながら、その関連性を描いたもので、あのアルトマン監督の「ショート・カッツ」を連想してしまう。この監督は通りでアルトマンを崇拝しているようである。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」はそのアルトマンに捧げられたという。

トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、フィリップ・ベイカー・ホール、フィリップ・シーモア・ホフマン、ウィリアム・H・メイシー、ジョン・C・ライリー など名優を配している。その9つの逸話に共通・類似する、いわば取るに足らない人間の心を傷つけたり、不倫をしたり、子供を虐待したり、そしてその後悔を紡いでいるようで、余りに思わせぶりで内容が全く感じられない映画で失望した。アルトマンの映画もそうであったが、こういうタイプの映画は見ていて気が散って、それでいて内容がないものが多い。

世の中の偶然性の追求は結構なのだが、最後は蛙が天から散ってくるカルト性には旧約聖書「出エジプト記」8.2が絡めているのであろうが、唐突である。モーゼの下、エジプトで奴隷として迫害されていたユダヤ人をエジプトから出国させる際、ファラオに無事出国させない場合、蛙の雨を降らせると預言しエジプト中を蛙で覆った話である。最後に天才クイズ少年がつぶやく“This happens”が、親にクイズ天才と期待されいわば「虐待」されていた少年をモーゼに譬えているのである。尚この映画には82という番号が出てくるが、これは監督の悪戯である。

そんな映画だが、色んな場面をつなぐのに軽快なタッチのサントラは耳障りに良いことは公平に言って評価できる。

アンダーソンも、この映画の興行的成功が一層の邁進に繋がり、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」に結晶したとみるが・・・どうだろうか!
------------------------------------
4.フランス映画「アメリLE FABULEUX DESTIN D'AMELIE POULAIN/AMELIE/AMELIE FROM MONTMARTRE」2001年☆☆   
------------------------------------
冷めきった両親それに母親の自殺の環境下で育ったアメリは自閉症的にうちに籠った性格であるが、並はずれた空想力を持っていた。まさにファンタジーの世界に育った。

そのアメリも22歳となりモンマルトルのカフェに働きながら、周囲の人々を想像たくましく見つめ、そして悪戯をしながら生きていた。
おせっかいで悪戯なセットアップを楽しむうちに、アメリはファンタジーの世界から徐々に現実の社会へと育まれていくのである。そしてある日青年ニノにあったアメリは、悶々とするが、やがて大人として自分を適応させていくのであった。

「ダビンチ・コード」のオドレイ・トトゥが主演している。ジャン=ピエール・ジュネ監督のフランス人ならではのシナリオと演出であるが、男性である僕にはなかなか理解しがたい女性の心理である。
------------------------------------
5.日本映画「ゆれる」2006年☆☆☆
------------------------------------
監督の西川美和は1974年生まれ広島県浄土真宗(安芸門徒)の多い地方に生まれたが、中高はミッション・スクールそして早稲田大学文学部で美術史、卒論は「東西の地獄絵比較」とあるが、彼女の宗教観や死生観を垣間見るようである。

この映画も夢で観たものを脚本化したという。テーマは稔と猛の兄弟と幼馴染千恵子が渓谷に遊びに行った際の千恵子の吊り橋よりの転落死をめぐり、兄弟の心の襞を描いた映画である。裁判劇が絡んでいてサスペンス色も豊かである。

西川はなかなか美的意識が高く、そのカメラアングルも唸らせるものがある。

この映画で描くのは兄の住む田舎と弟の住む都会の対比が背景にある。田園は豊かな自然に恵まれ、人間に嘘がない。人間は表現形態そのままの姿で捉えられ、疑いの念がない。
弟はまさにフリー・ランサーという都会を相手に、生き馬の目を抜くような競争社会に生き、自分の才能のみ頼りのエゴイストである。兄が弟に言うセリフ「お前は疑いの心を持って以外、今まで人を信じて生きたことがない。」こそ、西川の描く弟の人間象である。

弟の千恵子との束の間の性愛もいわば遊び以外何物でもない。田舎娘の千恵子は、そんな弟の遊びなど分からず本気になってしまう。

そして悲劇は翌日吊り橋で起こった。ここからは実は真相は藪の中なのである。
兄が突き落したのか、事故なのか?この映画は最後まで明らかではない。
二人の兄弟の愛憎のアンビバレンスを法廷と被告面会所を舞台に心理の揺れ動きを細やかに描いている。

この映画を☆三つとしたのは、表面的に観た場合この映画の後半が大変奇異に映るからである。

面会所で先ほどの兄のセリフに弟は激昂する。そして翌日の裁判で兄が突き落したと証言するのである。それは真の兄、真の自分を取り戻すためだというのであるが、僕はここは、最後まで前夜の睦事を隠し通す弟の卑劣さと解釈せざるを得ないのである。自分というエゴイストは変わらないままである。
兄は自分が殺していなくても、自分がいなければ転落死は起こっていないとの、日本特有の誇るべき責任の取り方であり、最初誤解を生んだ発言で被告となってしまう。そして弟の決定的「証言」で有罪となり7年の刑に繋がれるのである。兄はその性格から、故意であっても事故であっても自分の責任であるから、弟の証言に反論もしない。

監督の意図は分からないが、僕のそのままの受取がそうであるとするなら、余りにも下らない顛末といえる。
他方、兄の腕に残された傷をズームアップする。これが事故で転落し助けようとした兄の腕に残った千恵子の爪痕とするならば(この映像も夢か真か分からないのである。)弟の偽証あるいは思いこみである。

折角良い材料で独創性があるのに、ここのところが釈然としないのが僕の感想である。そしてわざとらしい最後の場面も和解か離別かも不可解である。

人間という存在を「ゆれる」ような不安定なものとし、この映画に観客として思いのままに解釈させるのが西川の意図だとしたら、それはそれで良いのかもしれないが。
------------------------------------
◎阿嶋彩子の料理つれづれに (37)<葛>
------------------------------------
奈良県吉野の千本桜の美しい時期に桜山を愛でながら頂いた葛餅の喉越しの良い美味しい味は忘れられない。吉野山の下千本から上千本に上っていく途中に多くのお土産店や茶店が並んでいて、どの店にも特産品である葛に関係した葛餅とか葛きりとかの品書きが貼ってある。葛の製造に適している大峰山脈からの水に恵まれ、『八十吉』という老舗の葛製造店が作るお土産の葛湯の固形になったものは滑らかで味に葛特有のクセがなく素晴らしい。葛粉を求めて家で葛湯を作ったが、何時もの品とは一味上等な味わいであった。

葛根は漢方薬でもあり発汗や解熱作用があると言われ、幼い頃冬になると風予防にと夜寝る前に作ってもらい、甘く美味しかった事が懐かしく思いだされる。

私は吉野の茶店で葛餅を食したが、これが、又ふんわりとした弾力がある美味しさで黒蜜をかけてゆっくりと桜を眺めながら味わった。葛餅は川崎大師の住吉屋も有名であるが、吉野の品は川崎大師とは異なり透明で本当に綺麗である。葛の澱粉からできたものとは到底考えられない程の純な味と綺麗さである。このように真っ白で味の面でも純粋な葛粉が出来ることが奈良の都の素晴らしい和菓子を作り出しているのだと思う。葛の中に餡が入った葛桜というお饅頭を頂いても、餡のもったりとした感触と葛の口当たりの良さが調和し又洋菓子のゼリーのように保冷でなくても常温で溶けないという素材の持つ素晴らしさと相まって和の食文化の一端を担っていると言っても過言ではない。冷蔵という事は料理には大変大きな制約になるので、常温で扱える素材という点からも色々なお菓子や料理の場面に登場できたのであろう。

綺麗な会席の先付けの盛り合わせを見ると、その中に必ずと言って良い程葛固めの品が登場している。常温でも融けない葛は早く食さなければならない時間的制約がなく、見た目も涼やかで美味しく何よりの食材である。白く固まった葛粉を眺めていると、この澱粉を水で溶かして火に掛けると透明になることすら不思議な気がするのであるが、誰がこのような食品を開発したのか先人の知恵には驚かされる。

葛きりも好む私は京都祇園に行くと、鍵善という葛きりで有名な店に立ち寄る。ここの葛きりは柔らかいのであるが、どういう訳かコシが強く他店と比べると格段に美味しい。私も家で乾燥葛きりを求めて作るが、なかなか思うようにいかない。水に浸しておく時間や一時間位茹でた後の蒸らす時間のタイミングは本当に難しい。ちょっと油断をして蒸らす時間が長くなると、葛きりがのびてしまってボソボソになってしまうし、早めに湯から上げるとふんわりとした風合いがなくなる。黒蜜を付けて和食の後に食する時の美味しさはこの面倒な苦労を忘れさせる。又鍋物にいれ溶けない間にさっとお皿に取って頂くと、鍋料理特有の穏やかな気持ちが増す。

精進料理の一つである胡麻豆腐は奈良や和歌山の郷土料理であり、吉野葛に恵まれた地の産物である。
私は夏になると、胡麻のペーストを使って葛粉と共にねり合わせ流し箱で冷やし固めて胡麻豆腐を楽しむが、葛粉は良質なものを求める事が本当に味の決め手になるといつも思い、吉野地方で胡麻豆腐が出来た事を納得する。

この葛という食材が日本の食文化と暮らしに深く根ざしている事を何よりも表わしているのが『家紋』に葛の葉を意匠的に図案化したものが多く存在している事だ。家紋に見られる事から考えると、古くから生活の中で大切な存在であったと考えられるし、又美しく透き通る涼感は奈良の都の雅な絵に似合うように思う。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回の配信は5月17日(土)を予定しております。どうぞお楽しみに!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
登録内容(メールアドレス等)の変更、メールニュース配信の停止は、
こちらからお願いします。
<http://www.melma.com/backnumber_133212/>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有限責任中間法人 平河総合戦略研究所< http://www.hirakawa-i.org >
発信元:< info@hirakawa-i.org >
掲載された記事を許可無く転載することを禁じます
Copyright(c)2005 Hirakawa Institute

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万4千部突破!
週刊アカシックレコード
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
頂門の一針
急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
花岡信昭メールマガジン
政治ジャーナリスト・花岡信昭が独自の視点で激動の政治を分析・考察します。ときにあちこち飛びます。


おすすめキャンペーン

おすすめカードローン!
オリックスVIPローンカードなら

<<年率5.9%〜15.0%、利用可能枠最高500万円>>
ゆとりのカードローンです。
お申込みはこちら⇒

はじめようメルマガ生活
メルマガを読むには
メルマガを出すには
約64000誌から検索

メルマガデータ

  • メルマガID : 133212
  • 創刊日 : 2005-02-04
  • 最新号 : 2008-07-22
  • 発行周期 : 週間
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 6144人
  • コメント数 : 37
  • Score! : 94点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス