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甦れ美しい日本 第173号

発行日時: 2008/4/8

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2008年4月8日 NO.173号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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☆文化・芸術・映画・味覚などは水曜日発信となりました。

< 目次 >
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◎奥山篤信の映画評論 

1.フランス映画「ランジェ公爵夫人 原題: NE TOUCHEZ PAS LA HACHE/LA DUCHESSA DI LANGEAIS/DON'T TOUCH THE AXE」☆☆☆
2.ロシア映画「モンゴル 原題MONGOL」☆☆

◎奥山篤信のDVD映画評論 

1.アメリカ映画「メッセージ・イン・ア・ボトル 原題 MESSAGE IN A BOTTLE 1999 ☆☆☆☆
2.アメリカ映画「レディ・キラーズ」(The Ladykillers) 2004☆☆☆☆
3.アメリカ映画「ビッグ・リボウスキ The Big Lebowski 」1998 ☆☆
4.アメリカ映画「ショートカッツ Short Cuts」1994 ☆
5.カナダ映画「ビデオドローム)」(Videodrome) 1982 ☆

◎阿嶋彩子の料理つれづれに (32)<中華料理雑感>

◎読者の書評 超☆映画評 愛と暴力の行方」扶桑社
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超・映画評 愛と暴力の行方 奥山篤信著 扶桑社 発売中 http://www.strategies21.org/leonessa.htm
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◎奥山篤信の映画評論 
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1.フランス映画「ランジェ公爵夫人 原題: NE TOUCHEZ PAS LA HACHE/LA DUCHESSA DI LANGEAIS/DON'T TOUCH THE AXE」☆☆☆
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フランス映画の醍醐味はこれである。フランスの恋愛ゲームほど面白いものはない。究極の性愛を求め、男女が繰り広げる駆け引き、力関係、そして悲劇などこの映画の面白さは文豪バルザックの原作にあるに違いない。

ナポレオン軍の英雄モンリヴォー将軍(ギョーム・ドパルデュー)は、ナポレオンがセントヘレナに送られた途端、手のひらを返したようにナポレオンに見切りをつけた将軍たちに愛想を尽かし、ひとりアフリカの奥地で冒険し手柄をたて凱旋する。誇り高き軍人である。

一方ランジェ公爵夫人(ジャンヌ・バリバール)は落ち目にあるものの誇り高き最高位の貴族であり、偽善に満ちた舞踏会に出入りすることが唯一の楽しみである。ただし上流階級にありがちな、自分の世界にない英雄への憧れがあり、無骨で無口なモンリヴォー将軍を手玉にとった恋愛ゲームに誘い出すのである。

軍人はまさにYES OR NOの世界で、勝つか負けるかの頭しかない。元々恋愛ゲームといった軟(やわ)なプロセスには全く不向きであり、毎日夫人の宅を訪づれ愛を迫るのである。呼び鈴も鳴らさず、ノックもせず夫人の寝室まで土足で上がる猛者(もさ)である。

こんな将軍をからかうように媚をみせながらも、絶対に最後の線は越えさえない夫人に将軍は怒りをこめていうのが原題のNE TOUCHEZ PAS LA HACHE(チャールズ一世の斬首に使った斧を触るなとウエストミンスター寺院の守衛が将軍の友人に言ったことを、引用して、夫人はすでに斧に触れたのだから“性愛をOKしているはずだ(隠喩)”と怒りをこめて言う舞踏会の二人の会話がある。)のエピソードである。

その夜将軍は仲間を使って夫人の馬車を襲い自宅に拉致する。そして真っ赤な焼き鏝で夫人の額に十字の刻印を入れると脅すのである。ここが映画の最大の山場であるが、夫人はO嬢のごとくマゾヒズムに満ちた感極まりと是非刻印を入れてくれと懇願する。ここで夫人は女の習性で圧倒的な男性のパワーにひれ伏すのである。ここからが面白い。将軍は復讐心から焼き鏝でもレイプでも何でもできる状態で、夫人には一切手を触れず舞踏会に送り届けるのである。これこそフランス恋愛ゲームの極限の面白さである。

そして将軍への思いを毎日恋文にして将軍宅に届ける夫人。一切返事はなく、ついに夫人はこっそりと将軍の書斎を訪問し、22通の恋文が封を切らず放り出されていることを発見し悲嘆にくれるのである。そして今度は公爵身分も忘れ夫人の馬車を将軍宅に公衆にこれみよがしに横付けする思い切った打開策をとる。しかしこれでも反応はなく、空っぽの馬車(夫人は実際には訪問していない。)ではあるものの夫人は社交界の噂と顰蹙の的になってしまう。

そしてついに最後の手紙を尊敬する貴族(ミッシェル・ピコリ)に託し、面前で将軍に読ませ三時間以内に夫人宅に現れなければと最後通告をする。将軍はこの手紙に感動し涙するが運悪く悪友が突然の訪問で夫人宅に行けない。そして待ちわびた夫人は意を決し失踪してしまうのである。将軍はありとあらゆる手を使うが見つからなく失意のどん底に陥る。

力関係は今度は夫人に移り、冒頭のマジョルカ島の修道院で偶然夫人の歌を耳にした将軍が面会するのだが、夫人は一切の俗世から縁を切り、将軍への愛は語るものの、神を通じての愛だと語り環俗を拒否する。そして回想場面が上記のように始まるのである。

遂に将軍は仲間と力の奪還を目指してマジョルカ修道院に乗り込むのだが、皮肉にも夫人は同じ日神に召されたのであった。傍らで涙ぐむ将軍、人生の一瞬の手違いが悲恋を生んでしまったと悔いても悔やみきれない切なさが何とも言えない。

遺体を船に積んでフランスに向かうが「前は女だったが、今は何の価値もない。両足に重石をつけて海に投げ込もう」という仲間に将軍は「ああもはや一篇の詩にすぎない」と海に虚ろな目をやるのである。
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2.ロシア映画「モンゴル 原題MONGOL」☆☆
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本年度第80回アカデミー賞外国語映画部門にノミネートされ、浅野忠信 が主演を演じ、話題を呼んで上映中である。

ロシアのセルゲイ・ボドロフ監督がチンギス・ハーンの半生を描いたものであり、スペクタクルの迫力が素晴らしい。美しいモンゴルの荒野での合戦場面の敵の2本の槍のついた鍬との騎馬の戦い、鍬がぐさっと刺さる肉感と音のリアリズム、血が飛び散るのが噴霧のように画面にまかれる手法が見事である。すべてモンゴル語である。

浅野の演技もすばらしく、堂々として品格あるチンギスを演じて日本人としても嬉しい限りである。中国の名優スン・ホンレイの悪役ぶりも迫力がある。

命を助けられた西夏まさにチベットの僧侶が寺院を絶対に破壊しないでくれと頼むシーンが感慨深い。ハーンはその約束を守るのである。中国とは大違い!
「敵であっても女子供は殺すな」「最後まで勇敢に戦え」「ハーン(あるじ)への忠誠は尽くせ」まさにモンゴルの系統が武士道につながっていくのではないか。
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◎奥山篤信のDVD映画評論 
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1.アメリカ映画「メッセージ・イン・ア・ボトル MESSAGE IN A BOTTLE 1999 ☆☆☆☆
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  ニコラス・スパークスの原作は170万部売れたベストセラー、これをスーザン・サランドン主演の「僕の美しい人だから」のルイス・マンドーキ 監督が映画化した。

僕はアメリカ映画でこれほど繊細で美しい愛を情緒を籠めて描いた恋愛映画はあまり知らない。 ケビン・コスナー 、 ロビン・ライト・ペン 、 ポール・ニューマンの三大俳優が見事な演技で物語の節を要所要所で締める。ポール・ニューマンが渋い父親役で出てくるが、この優しく厳しい包容力こそが、この二人の愛をほのぼのとした上品で高潔なものとしてくれるのである。

ロマンチックで少女的と言われればそれまでだが、愛する妻(画家)を失ったギャレット(ケビン・コスナー)はその妻への思いを手紙にして瓶の中に入れて海に流した。その瓶を浜辺で拾ったシカゴ トリビューンのコラムニストとして働くシングルマザーのテリーサ(ロビン・ライト・ペン)はその手紙の文面に魅せられる。そして調査部を動員してその男をつきとめる。

シカゴのミシガン湖畔の肌を切り裂かれるような極寒それと対照的にノースカロライナの松林の浜辺の佇まい、これが男と女のロマンを美しく、そしてそのサントラが数々の悲恋の作品を扱ったガブリエル・ヤレドの切ないメロディが舞台の雰囲気を駆り立てるのである。

男は死んだ妻への想いが捨てられない。そして妻の残した絵を妻の実家に、暴力沙汰にもなるほど頑として渡さないのである。妻への愛の忠誠は、死んだところで変わるものではない。その想いが瓶の中に秘められていたのである。

女は男を訪れる。男は女に惹かれ、父親は何とか息子を前向きな人生を歩ませるために炊きつけるのであるが、男は亡き妻への貞節の思いからふっきれない。だから女が妻の仕事場に手を触れたことでも神経を荒立てる。父親がうまくとりなし事なきをえたのである。

今度は男が女のいるシカゴを訪れる。事の後、そこで男は見てはならない自分の流したボトルや手紙を引出しの中に発見し、結局女が好奇心だったのかと怒りを爆発して土砂降りの雨の中を飛び出していくのだったが、女がいう三つの瓶の言葉にひっかかり、二つの瓶だと言い、三つ目を見せてくれと一旦家に戻るのである。それは死を予感した妻が死の三日前に悪天候の中男への愛を籠めた手紙を入れて、海に流したものであった。

男は妻の死以来自分の精魂を込めたヨットを作るのを中断していた。ふっきれたようにヨット作りを再開し、妻の絵を実家に返す男。そして男は妻への思いを込めてヨットを完成した。その進水式があることを父親より知って、女は当日遠くよりそれをそっと見るのである。船の名前は妻の名前クリスティーヌ、親類一同を集めた進水式。いたたまれない嫉妬心と男の妻への変わらぬ忠誠を見せつけられ、傷つけられた思いに泣く女。そして追う男を振り切りシカゴに帰ってしまう。父親は男にいまこそ女をシカゴまで追いかけ掴まえろと叱りつけるのである。

男は妻への変わらぬ愛の確認ともう一人の女への愛に対する妻の赦しを求め瓶に手紙を入れて海に流すべく、自分を痛めつけるように暴風雨の中ヨットで漕ぎ出すのである。そして遭難した親子3人を助けだそうとして、溺れ死んでしまう。

シカゴで父より悲報を聞いた女、そして弔いのために父を訪問する女、その瓶と自分への愛を込められた男から妻への愛の手紙を見せられ泣崩れるのであった。

貞節な愛とはなんと美しいものか、この男の愛こそ、汚れなき美しい愛であり、女が嫉妬心を抱きながら男のひたむきな妻の思いに感動し男の愛を受け入れるという、でもその途端に悲劇が、なんというむごい神の仕打ちが。
二つの愛を両立させるデリケートなシナリオ運びが見事である。

このころのケビン・コスナーは素晴らしい味があったと思う。それに上品で切ない思いをあの独特のまなざしと顔の動作で演じる ロビン・ライト・ペンの気高い美しさは絶品である。
この映画は隠された名作であると僕は思うのである。心が洗われるような感動で、涙が涸れてしまうのは僕だけではないだろう。
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2.アメリカ映画「レディ・キラーズ」(The Ladykillers) 2004☆☆☆☆
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鬼才コーエン兄弟監督のコメディである。1955年製作のイギリス映画「マダムと泥棒」のリメイクらしい。舞台はロンドンからミシシッピ州に移る。僕はトム・ハンクスの女性にもてる話かと思いきや、まさにそのまま女性を殺す人たちの意味合いが正しい訳なのである。

この映画はカソリックとユダヤ教、人種問題、を絡めてコミカルな強盗団5人と敬虔なキリスト教徒(バプティスト)の家主である黒人夫人との間のリズム感あふれ、それでいてサスペンスも十分な傑作といえる。

この映画で家主を演じたイルマ・P・ホール がカンヌ国際映画祭審査員賞に輝いた。強盗団が見事計画を成功したが、思わぬところで唯一の目撃者となった家主を殺さねばならない羽目になるが、だれもが躊躇するほど愛される真面目なアメリカの典型的な善人を見事に演じている。

最後の顛末が見事であり、そこには悪いことをしたものには「罰が当たる」という神の力を感じさせ、勝利する者はこの真面目人間の黒人夫人として、実に後口のよいコメディを完成させている。

ミシシイッピ川をごみ処理船が走る、そこに掛った橋の上から処理船を狙ってリズミカルに砂やゴミや死体を落下させるリズム、あの映画「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」が床仕掛けでナイフで首を掻き切った犠牲者をリズミカルに真っ逆さまに落下させるシーンがあるが、これにヒントを得たのではないかと思ってしまう。それとこの映画アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」の筋書きも彷彿させるのである。

商業主義も根底にあるものの、人生の悲哀をいつも描くこの兄弟は只者ではない。
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3.アメリカ映画「ビッグ・リボウスキ The Big Lebowski 」1998 ☆☆
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ジェフ・ブリッジス演じるリボウスキは浮浪者のような生活をしているが、ある時同姓同名の大金持ちと間違えられ、誘拐事件に巻き込まれてしまう話である。

コーエン兄弟のコミカル映画の典型であるが、ほかのに比べてやや荒削りである。
注目は空中の遊泳の特殊撮影など面白い場面もあり、ジュリアン・ムーアが活発な演技力を見せてくれるのと、いまや名優引っ張りだこのフィリップ・シーモア・ホフマンのこの頃の演技も光っている。

ジェフ・ブリッジスというのはいつも映画を見ていて鼻についてくるのは、この人の演技力がいまいちだということであろう。
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4.アメリカ映画「ショートカッツ Short Cuts」1994 ☆
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ロバート・アルトマンは2006に亡くなったが、アメリカミズーリ州出身の、まさにアメリカを代表する映画監督である。

ちなみに『M★A★S★H マッシュ』(1970年)がカンヌ国際映画祭でグランプリ(パルム・ドール)を受賞(カンヌでは『ザ・プレイヤー』でも監督賞を受賞している)。1976年にはベルリン国際映画祭で『ビッグ・アメリカン』が金熊賞、1993年には『ショート・カッツ』がヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞と、三大国際映画祭の最高賞を全ての栄冠に輝いている。アカデミー賞だけは皮肉にも逃した。

僕は遺作ともいえる「今宵、フィッツジェラルド劇場で」A Prairie Home Companion (2006)
を観たが、全く退屈な代物であり、この映画をDVDで観たが同様全く退屈な3時間であった。

アメリカのロスの普通の9家族をめぐる日常のエピソードを描きつつ、それらを収斂させ最後はロス地震で締めくくるのであるが、全く散漫であり集中力が持たないのである。それも吐き気を催すようなアメリカ社会の上っ面の物質主義、セックスなどがあからさまであり、それを通しての哲学がアルトマンなりにあるのかもしれないが、全く観るものを感動させないのである。下品な主婦の会話、下劣な男性陣まさに欲望とセックスのアメリカであり、アルトマンがかかる社会を皮肉で描いているとも思えないところに、僕はアルトマンという監督が根底ではあのバカバカしいウッディ・アレンと同レベルの監督としか思えないのである。

大衆作家レイモンド・カーヴァーの9つの短編をアルトマンが全く自分の考えで映画にまとめたといわれる。Short Cutsたはそれぞれのエピドードが破たんを起こして「フューズた飛ぶ」という意味合いであろう。

俳優だけは豪華版である。アンディ・マクドウェル、ジャック・レモン 、ジュリアン・ムーア  、ティム・ロビンス、フランシス・マクドーマッド、マデリーン・ストーなどを配している。
こんな映画がヴェネチア国際映画祭の金獅子賞とは驚きである。
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5.カナダ映画「ビデオドローム)」(Videodrome) 1982 ☆
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デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は誠に素晴らしい名画であった。その前作「クラッシュ」(アカデミー賞受賞のクラッシュではない)で強烈な交通事故マニアの姿を描いていたが、この初期の作品は、僕に言わすれば「クラッシュ」を通して「ヒストリー・オブ・バイオレンス」の境地にいたるまで(この夏公開の「イースタン・プロミス」も含め)の、彼の実験的映画として捉えたい。

完全なオカルト映画であり、人間の肉と血がどろどろと粘液質にぬるっとした感触で観る者に伝わり嘔吐感さえ与えるほどの気持ちの悪さである。

何を表現したかったのか必ずしも読み取れないが、テレビを見て堕落していく大衆の危険性を打破するために、暴力とセックスの過激性を流すことにより大衆を救うというモチーフに、鬼才監督は民主主義の退廃とそれに代わるファッシズムの危険性をこの映画で訴えたかったのかもしれない。テレビを人間の心の網膜への刺激として捉え、「哲学があるから危険なのよ」と「暴力と拷問」の過激なビデオドロームについて語らせるくだりがあるのでふとよぎった次第である。

主演のジェームズ・ウッズの腹に突然巨大なヴァギナが生じ、そこにテープや拳銃をどろどろした血と粘液の中を出したり入れたりするシーンは不快感と吐き気のみ残る。元東大総長の蓮実重彦の苦手の監督にデヴィッド・クローネンバーグを挙げているが、きっとこの時代の胸の悪くなる作品「裸のランチ」などの作品群を示しているのではないだろうか。ぜひ生まれ変わったような監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を観ていただきたいものだ。
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◎阿嶋彩子の料理つれづれに (32)<中華料理雑感>
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中華料理は私にとって、一番と言っても過言でないほど頂き易い種類の料理である。味も好みであるが、何よりも消化がよく、食後が楽なのである。一言で中華料理と言っても種類は大変多いが、主に四種に分けられる。香港が本場で日本でも多く食されている広東料理、上海蟹に代表される上海料理、エビチリや麻婆豆腐のピリカラな四川料理、北京ダックが代表的である北京料理があり、又昼食に頂く点心、マンゴプリンや杏仁豆腐などのデザートも楽しい。

中華料理というと広東料理が主であった30年位前の横浜中華街が懐かしい。特に均昌閣が印象に残っており、玄関に何時も大きなヒスイの指環をして凛とした雰囲気で座っていたお婆さんが華僑らしさを多分に漂わせていた。このお婆さんはNHKの行く年来る年に度々映っていた人である。ここの料理は当時としては八角のスパイスが効いていて、牡蠣油のにおいもきつく特徴のある味付けで小さなお皿にこぼれそうに盛り付けられていた。今になって思い返すと、新しいビルに建て替えられてからの味とは大いに異なり、平凡な野菜炒め料理にもこの店独特の味があった。

同じ頃の赤坂の楼外楼の胡麻油のきいた味も素晴らしかった。ここのフカヒレは殊の外大きく、今様とは異なり、黒い中華醤油味でボリュームたっぷりであった。当時としては珍しく器を持参すると持ち帰り用にもしてくれ、私達一家の大好物の一品であった。ここのお店の香りの良い胡麻油で作った中華ユリの炒めや魚貝炒めは素晴らしく、又魚のいしもちの汁ソバは食事の締めくくりとして欠かせない品であった。

お店の建物が新しく建て変わると共に、このような懐かしい中華の味が変貌を遂げ、今は全て西洋料理と隣り合わせの様相を呈している。食する側の感覚がサラリと淡白な中華味を好む傾向にあり、これは時代の変化なのであろう。昔の中華料理を懐かしんでいる私も一方では時代に毒されていて、上海蟹を頂くにしても自分でむしるのが面倒になり、何度か行ったことがある浜松町の専門店ではなく、蒸し蟹を食べやすいようにお皿に盛り付けてくれる店に行く。そして美味しいタレをつけて手を汚さず食するのである。北京ダックも綺麗にまいてくれるサービスのある店で食するのである。

北京料理の代表のように思う北京ダックも店によって味が夫々であり、私は皮の内側に油っぽさがないようにカリット焼かれている事が基本的な条件である。北京料理は中国の王朝が現在の北京に首都をおいた頃から食されている宮廷料理である。明・清期に確立されたと言われているが、宮廷料理は手の込んだ繊細な料理で見た目も美しい料理である。典型的な宮廷料理を食したいと思い六本木にある!)家菜〔レイカサイ〕に出かけた。この店は清王朝時代の宮廷家常菜であり、オーナーの清族出身である!)善麟は祖父が西太后の高級官僚であった。西太后が大変な美食家で、その日常の食事を管理する係りだった祖父から受け継いだ門外不出の清王朝時代の家常菜料理の真髄であると聞く。

お料理はコースのみで15皿が前菜、その後に6種類ぐらいのお料理とデザートが運ばれ、高価な食事であるだけに、食材が素晴らしい上に丁寧な料理は驚くばかりであった。味はごくシンプルで食材の味を生かすことに重きをおき、種類を多くすることで栄養バランスも考えている。全ての料理の一つづつの皿は小さいのだが、食材がそのものズバリ、という感じなので満腹になる。丁寧な作り方の一例をあげると、インゲン豆が出た時のこと。お店の説明では箱で買ったものから綺麗な品を一本ずつ丁寧に選び、太さまで揃えると、随分使えない材料がでると説明を受けた。あまりに極端な料理方法だとは思うが当時の西太后は専用コックを128名も抱えていたという事から当時の生活ぶりが偲ばれる。

お昼に頂く点心も楽しく、ショウロンポウや春巻き、エビ蒸し餃子、ダイコンモチなど皆に好まれている品は何時頂いても、食し易く美味しい。先日香港に行った折、立ち寄った飲茶の店では腸粉と言って柔らかい餃子の皮のようなものにエビなどをまいて蒸したものが人気であった。東京でも『糖朝』(東京店)などで食すことが出来、口あたりも良く飲茶らしい味である。

中国に比べ国土が狭い日本でさえ、食材の使い方が土地により色々異なるのであるから、中華料理と一口で言っても国土も広く民族の多様である中国は地方独特の料理が一杯存在していることだと思う。そして、その民族だけが理解し美味しいと思う伝統の味を守っている事だと想像する。しかし、本当に美味しいものは皆に好まれて受け継がれると思うので、今私たちが頂いている代表的な数種類の中華に練りあがったのだと私なりに理解している。
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◎読者の書評 超☆映画評 愛と暴力の行方」扶桑社
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最初に目に飛び込んできたのはタイトルの星であった。タイトルに☆がつくのはユニークだし目立つ。例えば各国の国旗では☆は様々な意味をもつが、奥山氏はこのタイトルの☆に何か意味を込めたのだろうか。
「超」に「☆」だから「スーパースター」にもなるぞ。と、そんなことを言ったら怒られてしまいそうだがついつい頭に浮かんでしまった。
 
他の読者の方々がそうであるように私もこの本を読み進めるほどにそのストレートで躍動感のある文章に爽快感を感じつつ惹きつけられ、途中で読むのを中断するわけにいかなくなった。
 
それにしても、この本は100以上もの映画に対する批評がそれぞれに完結する形でまとめられていて実にいろいろな読み方ができる。前から順に読むもよし、観たことのある映画の批評を選んで読むもよし。観たい映画を探すもよし。どの読み方も奥山氏独自の鋭い視点を楽しむことができると思う。
 
それだけではない。この本は奥山氏の深い知性、知見、国際感覚やビジネス経験をもとにした教養本にも思えた。社会に対し問題意識をもち、物事の本質を捉えるための考える材料を与えてくれるからだ。
 
平和ボケ、能天気、危機意識が低いと言われる日本、そうした日本への危惧と叱咤激励。何よりもこの本には奥山氏の日本に対する「愛」がたくさん詰まっている。
(公務員 MT)
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次回の配信は4月12日(土)を予定しております。どうぞお楽しみに!
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