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甦れ美しい日本 第171号

発行日時: 2008/4/1

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2008年4月2日 NO.171号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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☆文化・芸術・映画・味覚などは水曜日発信となりました。

< 目次 >
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◎奥山篤信の映画評論 

1.日本映画「≒(ニアイコール)草間彌生 わたし大好き」☆☆☆
2.アメリカ映画「悲しみが乾くまで  原題: THINGS WE LOST IN THE FIRE」 ☆☆☆

◎奥山篤信のDVD映画評論 

1.アメリカ映画「さよならゲーム 原題Bull Durham」1988 ☆☆☆
2.アメリカ映画「チョコレート 原題Monster's Ball」 (2001)☆☆☆
3.アメリカ映画「ミラーズ・クロッシング 原題Miller's Crossing 1990年」☆☆☆☆
4.アメリカ映画「バーバー 原題THE MAN WHO WASN'T THERE 2001年」☆☆☆☆☆
5.アメリカ映画「わが命つきるとも 原題A Man for All Seasons 」 (1966) ☆☆☆

◎阿嶋彩子の料理つれづれに (31)<弁当というもの>

◎廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」
其の十七「続・桜、桜・・・のお話」

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◎奥山篤信の映画評論 
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1.日本映画「≒(ニアイコール)草間彌生 わたし大好き」☆☆☆
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1929年松本市生まれた草間 彌生は、日本よりむしろ欧米で高く評価されている世界的前衛芸術家である。画家だけではなく彫刻家でもあり、詩人としても優れている、現代日本が生んだ天才といえる。

この映画は1年半にわたり草間の日常に密着して追い続けたドキュメンタリー映画であり、絵に熱中する姿、瞑想にふける姿、スタッフととりとめない話をする姿、それに過去の生い立ちなどを含めて、天才の素顔が描かれているとともに、最新作となる100号の黒色のマジックペンでの作品シリーズ「愛はとこしえ」50作の制作過程をクローズアップする。

監督は、ドキュメンタリー番組を多数手掛けている松本貴子で、カメラワークや会話が自然でなかなかの作品だと評価できる。

松本駅近くで種苗業を営む裕福な家に生まれたが、養子である父親は家業を顧みず女郎屋通い、そんな崩れるような家庭環境で育った草間は孤独と絵画に没頭した。そして何ども自殺未遂を。医学的に言えば統合失調症と称し、繰り返し襲う幻覚や幻聴から逃れるために、それら幻覚や幻聴を描きとめる絵を描き始めるということらしい。

映画で彼女の生い立ちの詩が出てくるが、その研ぎ澄まされた感性は、彼女の内面の真実を物語っている。

彼女がニューヨークでまさに競争社会に揉まれながら、日々の食いぶちをもとめ死に物狂いの生活が紹介される。今の寸胴のオバタリアンの様相とは想像もつかない、当時の過激な「ハプニング」など、引き締まった東洋的裸体の写真もでてくるが、僕は今の草間はニューヨークの苛烈な競争社会を貨幣経済と闘い続けたことに大きな躍進のカギがあると思う。

あの堕落しきった平山芸大学長をはじめ閉鎖的ギルド社会が支配する芸術院会員こそに、日本芸術の衰退があるといっても過言ではない。その中でニューヨークという毎日が競争であり、刺激であり、進化であり、創造である、世界に類のない場所で芸術を育んだところに草間の世界的評価があることは間違いない。

草間は言う、自分が書いた詩も忘れ、こんな素晴らしい詩はない。自分が書いた絵を見て、素敵ね。自分の顔ですら素敵ね。誰かの文学や詩や作品に草間が感動して影響を与えたのかとの質問に、何の意味か分からない、自分のやっていることが全てであり、世界を包み込むのであると。天才はここまで自分の能力に確信をもってこそ天才に違いない。
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2.アメリカ映画「悲しみが乾くまで  原題: THINGS WE LOST IN THE FIRE」 ☆☆☆
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デンマークのスザンネ・ビア監督のデンマーク語ではないシアトルが舞台のアメリカ映画である。この監督は昨年末封切の「ある愛の風景」で僕を感動させた女流監督である。今回は主人公の妻に『チョコレート』でアカデミー主演女優賞に輝いた、褐色の肢体でセクシーな黒人女優ハル・ベリー、ドラッグにおぼれる夫の親友を『シン・シティ』のベニチオ・デル・トロと2大アカデミー賞受賞スターを配した。

「ある愛の風景」ではアフガンで捕虜になって死亡と通告された妻と夫の弟、そして奇跡的生還を遂げたが、すっかり人格まで変わってしまった夫、その三人の関係を見事に描いた。今回は突然の夫の死、夫が最後まで友人として見捨てなかった親友と妻とその子供たちとの物語である。

ベニチオ・デル・トロの演じる夫の親友は元売れっ子弁護士だが、あるとき麻薬に溺れ、薬漬けの自暴自棄の日々であったが、誰もが見捨て、嫌がる妻の制止にも拘わらず夫は変らぬ友情を持ち続ける。
そしてある日、夫は見知らぬ男女の暴力沙汰の仲介に入ったところ逆に男に殺されてしまう。不慮の死である。

突然失った最愛の夫の葬式に現れた麻薬漬けの親友、日頃夫の友情を嫉妬するほど憎んでいたその親友を妻は暖かく迎えるのであった。

そして妻はその親友を自宅に受け入ることになる。麻薬を止め子供の面倒を見る親友には子供たちも喜ぶのだったが、妻には最愛の夫との家族生活、教育など幸せな思い出から抜けきれず、逆にそんな親友の好意や存在に腹立たしくなり身勝手にも追い出すことになる。

そして再び麻薬漬けに逆戻りした親友、麻薬から立ち直る会の女性会員の通報から、妻は自分の身勝手を恥じ、「阿片窟」から親友を救いだすのである。そして麻薬リハビリ病院に自らの費用で入院させることを決意する。そんな好意を自尊心ある親友は拒否するのだが、必ず立ち直って、働いて更生治療費を返済するということで決心する。accept the good善は受け入れよ がこの映画のキーワードとして使われる。

言葉で述べると簡単すぎてニュアンスを伝え難いが、二人の名優がデリケートな心理の綾を見事に演じて感動させる。いかに落魄れて麻薬漬けになっても、人間としての自尊心を失わない親友、自分勝手で迎え入れたり追い出したり多少ヒステリックな妻、二人の間には性愛は存在しない奇妙な緊張、これらが映写と演技で表現される。

このデンマークのスザンネ・ビア監督の演出は、前作と同様本当に女性特有の木目が細と細かさと新鮮味がある。映像も美しい。
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◎奥山篤信のDVD映画評論 
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1.アメリカ映画「さよならゲーム 原題Bull Durham」1988 ☆☆☆
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アメリカの国技ともいえる野球はアメリカ社会そのものの縮図といっても良いだろう。それほどアメリカ社会に根付いているのである。

この映画はマイナーリーグのチーム「Bull Durham」を巡って、ベテラン捕手クラッシュ(ケヴィン・コスナー)と若手投手のエビー(ティム・ロビンス)さらには町の野球を仕切っている学校の先生アニー(スーザン・サランドン)の三人の三角関係、師弟関係、恋愛関係を実にアメリカそのものの健全さで描いている。

生意気な若手投手になんと今や名優のティム・ロビンスが青ちょろい若者を演じ、その教育係りには,当時絶好調の俳優ケヴィン・コスナーが爽やかな兄貴分的存在を演じている。スーザン・サランドンは毎年,一人の選手をくわえ込むことにより選手に大リーグの夢を託し、同時に自らの獰猛な性欲を満たす姉御役を演じる。

晴れて大リーグ入りするエビーへの複雑な気持ちを八つ当たり気味に爆発させるクラッシュ(月に吠えたいときがある。)、そしてそのクラッシュに大人の愛を捧げるアニー、アメリカ映画の典型的ハッピーエンドで疲れない映画である。

クラッシュのエビーへのはなむけの人生訓の言葉が良い。
 
Be cocky and elegant!     (逆境にあっても)攻撃的に対応同時に品格を保て!
Have fear and arrogance! 傲慢さと同時に怖れを常に持つこと!

僕は今の去勢された日本の若者特に男性にこの言葉を投げかけたい。
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2.アメリカ映画「チョコレート 原題Monster's Ball」 (2001)☆☆☆
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原題は怪物の舞踏会と直訳されるが、Monsterとは中世英国で死刑囚のことをそのように呼んだ。死刑の執行前に看守たちの死刑囚への送別会を意味する。
映画の日本語題名が程遠いチョコレートであるが、肥満児がこっそり食べるチョコレート類そして感動的なラストシーンでのチョコレートアイスに因んだものと思うが、観客を動員するための「迎合商戦」ともいえる。

ジョージア州で州立刑務所に勤めているハンク(ビリー・ボブ・ソーントン)は、人種差別の権化のような父親バック(ピーター・ボイル)の家庭で人種偏見と父と同じ看守の仕事をしている。息子のソニー(ヒース・レジャー)も看守であるが、黒人の死刑囚マスグローヴ(ショーン・コムズ)の刑執行の日、気弱で任務を満足にこなせないソニーを殴りつけ罵倒する。自信を喪失したソニーは自宅で、父への尊敬を唱えながら彼の目の前で拳銃自殺してしまう。そして失意のハンクは、看守を退職する。一方、処刑されたマスグローヴの妻レティシア(ハル・ベリー)は、夫を処刑されその上、肥満児の最愛の一人息子タイレル(コロンジ・カルフーン)を目の前で交通事故でなくしてしまう。

黒人嫌いのハンクはたまたま通りかかった事故にあった親子二人を病院に運ぶ。二人は愛する者を失った共通の心の傷を舐めあうように、愛を育んでいく。
ある日チョコレートアイスを買いに行ったハンクの書斎で「Monster's Ball」の際に処刑された夫のハンク親子の似顔絵を発見する。夫を処刑したハンク、ショックで泣き叫ぶレティシア、愛と憎悪の混乱の中で、そんなことも露知らずハンクはチョコレートアイスを持って帰ってくる。

ベランダで星空を眺めながらアイスを食べようと提案するハンク!やさしい眼差しのハンク!そしてアイスを舐めながらレティシアはハンクへの愛と信頼を噛みしめるのであった。

ハル・ベリーは第74回アカデミー賞 主演女優賞、第52回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(女優賞)に輝いた。彼女の真正面からの真摯な演技力はリアリズムに満ちていてその賞に値すると感心した。最近の「パーフェクト・ストレンジャー」ではセクシーが売り物の高慢さが目立つ。そして「悲しみが乾くまで」でもこの演技に比べるといまいちである。初心に戻ってもらいたいものである。美貌やセクシーな肢体に頼るとハングリー精神を失ってしまう。

「バーバー」で絶妙の演技をしたビリー・ボブ・ソーントンがこの映画でも抑制した演技力を発揮し、心優しい男のまなざしを演じている。
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3.アメリカ映画「ミラーズ・クロッシング 原題Miller's Crossing 1990年」☆☆☆☆
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コーエン兄弟による監督・製作・脚本で一般的に最高傑作と評価の高い映画である。

1929年、禁酒法時代のシカゴあたりを念頭に入れたマフィア間抗争の中で頭脳プレーによりアイルランド系とイタリア系の二人のボスを手玉に取ってパーフェクト・プレーを完遂するガブリエル・バーン扮する情報屋トムの物語である。やはりこれだけ複雑で緻密なシナリオが、映画を完璧なものにしている。天才コーエン兄弟の真骨頂であろう。

ただし余りに隙がなく完璧なので驚くが、この作品にはコーエンの哲学性が見いだせない、まさに最高級の娯楽ドラマとしての位置付けではないだろうか。
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4.アメリカ映画「バーバー 原題THE MAN WHO WASN'T THERE 2001年」☆☆☆☆☆
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この映画を観てもジョエル・コーエンは、単なる映画監督だけではなく、人生を見透かした哲学者のレベルにあると思うのである。それほどこの映画のシナリオは人生そのものを語っているのである。僕はコーヘンの作品で犯罪の完璧性などを求める作品、例えば「ミラーズ・クロッシング」なども見事だが、この手の作品をより好む。

1949年、カリフォルニアの片田舎の無口で平凡な理髪師のエド・クレインはあるとき妻ドリスと彼女の上司デイブの浮気を疑い始める。しかしそこには全くの嫉妬や感情の怒りなどない、それほど冷めた毎日であった。そんなとき詐欺師が理髪店に現れ時代の先駆ともいえるドライクリーニング事業資金を求めていると聞かされ、日常性から脱却しようとその話に乗る。必要な資金は妻ドリスとの不倫をネタにその相手デイブを恐喝することで得るのだが、事態は予想もしない方向へと突っ走って進んでいく。

コーエンの映画の一つの特徴は、魔が差した人間の行為が予想外な方向に発展していくテーマが多い。人間のご縁というか、その繋がりが宇宙の中で稀有な確率で進んで行く神秘性とそのリアリティがいつも緻密なシナリオで描かれているのである。そしてそのシナリオにいかにもアメリカという国の土臭さと楽天さと気短さが、チェインスモーキングの青色のもうもうたる煙とバーボンの臭いが伝わってくるような郷愁を以て描かれる。これが何とも言えない魅力であり、コーエン兄弟の作品に虜になってしまうのである。

エドに扮するビリー・ボブ・ソーントンの抑制された無口な渋い演技が、平凡な生活から逃れるためにインチキ事業に騙される(いや騙されると確信しているにも拘わらず敢えてという方が正しいかもしれない)、そして殺人、無実の妻の裁判・自殺を経て、今度は若い美しいピアニスト(なんと若いスカーレット・ヨハンセンが出ているではないか)を育てることで人生にスパイスを求めようとするのだが敢え無く失敗、そして交通事故。今度は無実の殺人の容疑で死刑判決、電気椅子と運命は回転する。

この平凡でいて怠惰の中にスパイスを求める男が、最後電気椅子に座る前に語る言葉は、あのカミュの「異邦人」のムルソーを連想させる。それどころか海辺の平凡なムルソーの衝動的かつ連発の銃弾こそが、脅迫・殺人といったエドの姿と重ね合うのである。
自分が招いた結果についての不幸の思いとある意味でスパイシーな出来事を人生で経験できた不幸とは言えない思い、それは電気椅子であろうと死を笑いながら受け入れるムルソーと同じような人生の不条理かもしれない。
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5.アメリカ映画「わが命つきるとも 原題A Man for All Seasons 」 (1966) ☆☆☆
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大法官の地位にまで昇りつめながら、最後まで信念を曲げず死を選んだ16世紀初頭のトマス・モアを通じて、イギリスの民主主義の基盤の強さを強く印象づける映画である。時のイギリス国王ヘンリー8世は不倫のアン・ブーリン(エリザベスの母親)と結婚するため、王妃キャサリン・オブ・アラゴンと離婚し、みずから英国国教会の長となろうとしていたが、モアはローマ法王の正統性を主張して最後まで反対した。その高潔さは人々の信頼を集めており、国王も一目も二目も置いていたが、アン・ブーリンの戴冠式、祝宴にも姿を見せなかったため、権謀術数のトマス・クロムウェルの政治的陰謀もあり査問委員会にかけられ、同年ロンドン塔に幽閉、1535年7月に断首された。

ちなみにモアは自然主義者であり、私有財産を持たない共同社会が実在しうる事を確信しており、「ユートピア」という架空の国を舞台に、自由、平等で戦争のない共産主義的な理想社会を描いた共産主義の先駆者ともいえる。
その「ユートピア」の中で、イギリスの地主や貴族がフランドルとの羊毛取引のために農場を囲い込んで羊を飼い、村落共同体を破壊し、農民たちを放逐する現状を憂慮し、「羊はおとなしい動物だが(イギリスでは)人間を食べつくしてしまう」と述べている。マルクスは『資本論』にモアを引用している。

16世紀にこのような高潔で孤高の人物が国王や議会や教会と憤然と理路整然と法論理を元に言論で戦ったこと自体、イギリスの民主主義の奥深さを、だからこそイギリスの現在の成熟度あるものと感動する。
断頭台での祈りでモアのキリスト教への信仰心が国家や国王を超越することを吐露するが(沈黙を守りきれず諮問委員会でも爆発してしまい完全に退路を断ってしまうことになる。)、神への帰依こそが人間の強さとなることを、現在の神無きがゆえの日本の混乱・不道徳な社会問題がそこにあるのではないかと重ねて考えてしまう。

映画はジャッカルの日 (1973) 、地上(ここ)より永遠に (1953) 、真昼の決闘 (1952)
の監督 フレッド・ジンネマンで第39回アカデミー賞を6部門で受賞した。
映画のタッチは勧善懲悪的なアメリカ映画のかっての典型であるが、今見ても違和感はそれほどない。この監督のすぐれているのは、その後  ジャッカルの日やジュリアで時代の流れを組んで作品に工夫を加えていることである。日本映画が未だに旧態依然のマンネリの淀んでいるのとは大違いである。
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◎阿嶋彩子の料理つれづれに (31)<弁当というもの>
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弁当作りが好きな私はお弁当と言うと家族に持たせる為に作る弁当のことを思ってしまう。しかし「弁当」という言葉にはたくさんの種類がある事に気が付き、ここで考えてみたい。

弁当というものの起源は平安時代で、その頃は干し飯と呼ばれる調理済みの乾燥米を携帯用の食料としてそのまま食べ、又は水に入れて煮たりしていた。安土桃山時代になり漆器の弁当箱が出来て花見や茶会の場で食べられるようになり、今の弁当の様相を呈した。江戸時代になり能や歌舞伎を鑑賞する人が幕間に特製の弁当を食べた為これに幕の内弁当の名がつき、現代でも好まれている。又相撲茶屋が出す弁当が幕の内力士に因んで幕の内弁当と言われたという説も納得できる。旅行者などが持つおにぎりを竹の皮で巻いて竹篭に入れて持つ腰弁当もこの頃に出来た。天下泰平の時代には花見弁当や雛祭弁当など優雅で楽しいお弁当が繰り広げられたらしい。明治時代になって鉄道の駅に駅弁が売り出され、二つのおにぎりと沢庵を竹皮で包んだ簡単なものだったが、宇都宮駅が最初だった。昭和に入リ、アルマイト加工の弁当箱が開発され、学校や職場で弁当箱のまま冬にはストーブの上で温めて食すようになった。

私の学校でも冬はお弁当を温めてもらい、そのお弁当箱がアルマイトなので熱くて持てなかった事を思い出す。しかし、冬の寒い日に母親が持たせてくれたお弁当がホカホカしているのは幼な心に身も心も温まる思いだった。そしてお弁当のフタを開けた時、自分の好物の品が入っていたりすると、嬉しくなり大切に頂いた。今になって思うと、お弁当も只空腹を満たすだけではなく、親子の繋がりを確認しあうような素晴らしい行為だと思う。土木工事などに従事する日雇いの人が持っていた梅干だけの日の丸弁当とよばれたものでも、貧しい生活の中で、ぎっしり詰まった御飯を持って現場で働く人が家人との繋がりを感じていたのであろう。

駅弁は豪華なものから簡単なおむすびまで多種であるが、私はその土地に古くから伝わる軽井沢の峠の茶屋弁当、宇都宮のだるま弁当など昔ながらの駅弁に好感を持つ。昔の典型的な幕の内弁当は蒲鉾、焼魚、玉子焼きが必ず入っており、野菜の炊き合わせや揚げ物、漬物、黒胡麻を振りかけた型押し俵型の御飯があった。今は中華料理の幕の内や、ハンバーグやソーセージが入った洋風幕の内もあり、多種である。

弁当の中でも上等なのは松花堂弁当である。お昼に有名料亭で出される事が多い松花堂弁当は、吉兆の創始者が京都の石清水八幡宮で十字型の仕切りが中にあり植物の種入れにしていた箱をヒントにして作ったものらしい。十字型のしきりで互いの味やニオイが移らないと考えたのである。松花堂弁当をお昼に頂くのは本当に美味しく、お昼の一番のご馳走であり、又一緒に食する人とゆっくりと話をしながら色々な品を目でも楽しむところが楽しい。

この頃デパートの地下食品売り場やコンビニエンスストアーで多くの種類の弁当が売られ、良く売れている。勤め人がランチに買うのかと思ったら、今では夕食にも求める人が多いらしい。これらの弁当も食中毒に気をつけて24時間体制で作っていると思うが、作りたてと言ってもやはり防腐剤を使わざるを得ないだろう。買う側として、多忙なときには強い味方かもしれないが家で作る野菜の煮物などのようなおふくろの味といわれているような味わいは少ないかと思う。

アレコレ買い集めなくても、1つの箱の中に全部揃っていて買う手間も価格も楽で、その上容器を捨てたら食器洗いせずにすむと買う側の人の話が雑誌に出ていた。確かにその通りであるが、便利な中に大きな忘れ物があるように思うのは私だけではないと思う。
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◎廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」
其の十七「続・桜、桜・・・のお話」
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 昨日は冷たい雨でした。風も無く、今年の桜をもう少し楽しませてくれる為の、自然の粋な計らいの様で喜んで居りましたら、今日は朝から春の嵐のような風。ハラハラと散り始めた桜も風情があって美しいものですが、もう暫く春爛漫を楽しみたいと思うのが正直な気持ちです。
先週に引き続き今回も桜の話題で甚だ恐縮ですが、毎年桜の咲いているこの時期はちょっと普通でないテンションの私です。期間限定ですのでもう暫くお付き合い下さい。

 「桜」といえば当然の事ながら日本舞踊にも、物語の題材、歌詞、大道具等に頻繁に登場し、切っても切り離せないものです。代表的なものに、満開の桜の咲く和歌山県紀州の道成寺を舞台にした長唄「京鹿子娘道成寺」や、小町桜の精の薄墨が登場する常磐津「関の扉」、江戸吉原仲ノ町の桜の植え込みの前で繰り広げられる清元「吉原雀」「土佐絵」、常磐津「三ツ人形」、長唄「女伊達」「供奴」等々何れも春らしい華やかな演目が勢揃いしています。また、春の長閑な明るさが、死んだ恋人を追い求め正気を失くした主人公の悲しみを反対にくっきりと浮き彫りにする、清元「保名」や、源義経の形見の鼓と供に旅する静御前と忠信が花盛りの吉野山で源氏の悲運を嘆く義太夫・清元「吉野山」という演目も有ります。いずれにしても「桜」には「生」に光と「死」の影の両方の要素を感じてならないのは私だけでしょうか?きっと春の明るい日差しが濃い影を作るせいなのでしょう。

毎年見事に咲いた桜の樹の下でお酒を飲んだり、歌を歌ったり踊ったりする人々の姿を目にしますが、花見はもともと奈良時代の貴族の行事が起源だと言われています。奈良時代には中国から伝来したばかりの「梅」が鑑賞されていたそうですが、平安時代から「花見」といえば桜という風に変わってきたそうです。その移り変わりはその頃の歌にも現れていて、『万葉集』で桜を詠んだ歌は40首、梅を詠んだ歌は100首程度だったのが、平安時代の『古今和歌集』になるとその数が逆転していて、この頃から日本で「花」といえば桜を意味するようになったようです。一説には『日本後紀』に記されている、嵯峨天皇が812年(弘仁3年)神泉苑で「花宴の説」を催したのが記録に残る最初の桜の花見だといわれていますが、その後831年(天長8年)から天皇主催の定例行事として行われ、その様子は『源氏物語』の「花宴」にも描かれてるとおりです。当時「藤」を鑑賞する宴会もあったのですが、この頃にはすでに「花=桜」と同義に使われるようになっていた為か、桜の花を観賞する宴のみを「花見」「花宴」と云っていたそうです。

吉田兼好の『徒然草』の時代には貴族風の花見とそうでない庶民の花見の違いが描かれており、室町初期には貴族から地方の武士階級にも花見の宴が広がって行ったことが伺えます。その後、野外に出て花見をしたことがその頃の絵画からも見て取れますが、この時期のもっとも大規模な花見は豊臣秀吉の行った「醍醐の花見」でしょうか。私も過去に和歌山県吉野の桜を見にその場所に訪れましたが、見事な桜の春景色でした。目前に広がる山肌の総てが濃淡織り交ぜた何種類もの桜の色で覆い尽くされ、その優しい色合いは恰も春霞のようでした。一瞬、その時代の同じ空気を感じた気がし、同時にそのずっと前の時代の静御前の悲しみが今もそこ此処に残っているような、そんな不思議な感覚に捉われたことを覚えています。
この花見の風習が広く庶民にまで広まっていったのは江戸時代でした。時の将軍徳川吉宗が江戸の各地に桜を植えさせて花見を奨励した事により、庶民にとって無くてはならないイベントとなりました。特に江戸吉原仲ノ町の桜の植え込みは圧巻で、毎年染井村(現在の東京都豊島区駒込)から運んだ桜の木をわざわざ植え、花の時期が過ぎると取り払っていたと言うのです。今の金額に換算してもかなりの額だった事が予想されます。その桜こそが今では「桜」といえばその桜を指すというほどの、染井村で品種改良され桜の名所「吉野」に因んで名付けられた「染井吉野」なのです。

「花見」に限らず季節を愛でて楽しむ行事を含む多くの伝統文化の殆どは五節句を始め、奈良時代や平安時代の貴族の風習だったものから時代を経るごとに武士、庶民へ広がるという経緯を辿っています。まるで水が高いところから低いところへ流れるように、自然の流れの中で文化は広がり伝わっていったのです。それを思う時、今後庶民が風流を愛で文化を伝えていく事の出来る世の中にする為には、それを保存、継承していく役割を担う立場にいる者が自国の文化を正しく理解し、その枯渇した日本文化の水源に対する責任を深く認識する事に他ならないと強く思うのですが、皆さんはどのようにお考えでしょうか? 


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時 間  !)13:00 〜 15:00 !)16:00 〜 18:00
場 所  〒102-0073東京都千代田区九段北4-3-6
(JR中央線、新宿線、有楽町線、南北線市ヶ谷下車徒歩約5分)
受講料   正 会 員   1回 ¥2,000
賛 助 会 員  1回 ¥2,500
一   般  1回 ¥3,000

お申込/お問い合わせ 
NPO法人日本人のアイデンティティを育む会紫(し)薫(くん)子(し)の会(かい)事務局
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-9-8パレロワイヤル永田町203
TEL 03−3500−2533 FAX 03−3500−2206
E-MAIL  shikunshi21@dream.com

花柳廸薫(はなやぎ みちかおる);
NPO法人日本人のアイデンティティを育む会・紫薫子の会 代表理事 
社団法人日本舞踊協会正会員。
兵庫県神戸市出身。三歳より花柳流日本舞踊の手ほどきを受ける。宝塚音楽学校首席入学。宝塚歌劇団退団後、花柳流師範資格を取得。歴史街道推進協議会、関西フォーラムに参加したことを機に、アメリカ(ワシントン、ミネアポリス、ニューヨーク)東南アジア(インドネシア、シンガポール)にて舞踊公演を行うなど、ワークショップや文化交流、結婚式、祝賀会、レセプション等の舞踊活動を中心に、古典に基づく独自の舞踊活動を国内外で行う。平成十七年NPO法人日本人のアイデンティティを育む会・紫薫子の会(しくんしのかい)を設立。日本舞踊のみならず、日常生活から消え行こうとしている日本伝統文化に警鐘を鳴らし、啓蒙普及活動をライフワークとして本格的な取組みを始動。                                        
ご意見箱アドレス; michikaoru@hotmail.com 
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次回の配信は3月29日(土)を予定しております。どうぞお楽しみに!
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