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甦れ美しい日本 第167号

発行日時: 2008/3/18

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2008年3月19日 NO.167号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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☆文化・芸術・映画・味覚などは水曜日発信となりました。

< 目次 >
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◎奥山篤信の映画評論 

1.アメリカ映画 「ノーカントリー 原題NO COUNTRY FOR OLD MEN」☆☆☆☆ 
2.フランス映画「譜めくりの女 原題LA TOURNEUSE DE PAGES」☆☆☆
3.日本映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」☆☆☆☆

◎奥山篤信のDVD映画評論 

1.アメリカ映画「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 原題The Royal Tenenbaums2001」☆☆☆☆☆
2.アメリカ映画「ライフ・アクアティック 原題The Life Aquatic with Steve Zissou2005」☆☆☆
3.スペイン映画 「オール・アバウト・マイ・マザー 原題Todo sobre mi madre 1999」☆☆☆☆

◎阿嶋彩子の料理つれづれに (29)<私流・肉の煮込み料理>

◎廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」其の十五「雨の名前・・・のお話」

◎読者の書評 超・映画評 愛と暴力の行方」扶桑社
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◎奥山篤信の映画評論 
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1.アメリカ映画 「ノーカントリー 原題NO COUNTRY FOR OLD MEN」☆☆☆☆ 
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第80回アカデミー賞にて作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の計4冠を受賞した強烈に灰汁の強い映画である。だがあまりの凄い暴力で、この映画の趣旨が逆に分からなくなってしまう難点もある。勿論往年の西部劇的面白さもあり、それで満足できるレベルにはそれはそれで良いのだろう。

題名が日本ではノーカントリーとしてFOR OLD MENの訳が省略されているので、何の意味かさっぱり分からないが、要するに「老人の住む国ではない」という意味であり、これでその意味が分かるのである。

この映画は原作コーマック・マッカーシーの『血と暴力の国』を天才コーエン兄弟が映画化したのであるが、僕はむしろ原作の優秀性が監督の優秀性に勝る映画と見ている。

アカデミー賞助演男優賞に輝いたスペイン人俳優ハビエル・バルデムが謎の殺し屋シュガーに扮するが、この身の毛もよだつヘアスタイルの厭らしさ、異常な目つき、これは「眼は魂の窓だとよく言うだろう。すると魂のない人間の眼はなんの窓なのかおれは知らないしどちらかというと知りたくない気がする。しかしこの世には普通とは違う世界の眺め方があってそんな眺め方をする普通とは違う眼があってこの話はそういうところへ行く。おかげでおれは考えてみたこともなかった場所へ連れていかれた。」そのものである。映画史上に残る殺人者の演技である。

この殺し屋が死神のように、出会うものを、あたかもその出会いが被害者の運命そのものの如くエアーガンで殺戮する。ある時はコインの裏表で命拾いする者もいる。この殺人者が偽善者や殺されてしかるべき理由がある者だけでなく、全く善意に溢れる人物も容赦なく殺戮する。そこがこの映画の面白さであり怖さなのである。

メキシコ国境近くで狩りを楽しんでいた、ベトナム帰還兵のジョシュ・ブローリンが扮する男モスが、偶然麻薬密売の取引のごたごたでの相打ちの惨状の現場に出くわし、発見したバッグに入った200万ドルの現金を猫ばばする。全く善良な一市民に魔がさしたといえる。その殺戮現場で瀕死の重傷の男が水を求めていたことで、家に帰り真夜中水を持って現場に戻ったところで、彼の悲劇の逃避行が始まってしまう。一方で猫ばばをしても、他方での人間の男らしい優しさ、これがあだになるところが面白い。

従ってモスは猫ばばという、殺されてしかるべき理由がある者なのである。しかしその妻は何の咎もなく、まさにモスの妻という運命だけで殺される羽目となるのである。

この殺し屋シュガーと逃亡者モス、そことトミー・リー・ジョーンズが扮する保安官ベルの三つ巴のドラマがこの映画のキーであるが、この冴えない保安官ベルこそが題名の「老人の住む国ではない」の老人を意味するのである。その父親もやはり保安官であった。昔は犯罪も今ほど残酷で悪逆非道でもなかった。犯罪者であっても、人間としての心の情はあった。しかし現在は全く、そんな非情な世界である。この保安官ベルはそれでも「素手」即ちFBIや麻薬局の助けを呼ばず、自らの手で昔風に殺人鬼を追うのである。失われた良き時代の手法なのである。

映画を観る者は見逃しているのではないかと思うが、この保安官ベルが前夜に惨劇のあったモテルの部屋に、天才的殺し屋の行動を深読みして命がけで一人出向くのである。実は狙い通り殺し屋シュガーがそこの息をひそめて居たのである。何故かシュガーはそこでこの保安官を殺戮しなかったのである。何故か?こんな答えを求めること自体馬鹿げているが・・

この映画のフィナーレが物足りないと、あるいは後味がスカっとしないとの評論家がいるようである。確かにフィナーレで保安官ベルが辞職して妻と語る分かりにくい場面がある。
それは彼の父親についての二つの見た夢を語るくだりである。ひとつが父親がせっかく彼にくれた金をなくしてしまう夢。もうひとつは、雪の山道を彼が馬に乗ってうとうと歩いていたら、父親が牛の角に火を掲げて追い抜いていった。そして目的に着いたら父親が寒く暗い中で火をともして待っていた。そんな夢である。これは要するに自分も結局父と同じところにこうしてたどり着いたと簡単に解釈すればよいのだと思う。父への尊敬と愛ともいえる。

この映画は人生とは偶然や運命に支配されている。そこに運命の非情があり、それはコインの裏表の賭けみたいなところがある。ちょとした出来心が魔がさしたように、その人物を破滅させてしまう。単に偶然殺し屋に道で出会ったというだけで、その場で殺される不条理などもある。そういう運命をこの殺し屋シュガーが説いているのではないだろうか。

さてこのシュガーを絶対神として、人間の生命をも召す力のもつものとして解釈するとしたらそれは不謹慎なのだろうか?僕にはこの俳優の名演のせいか、この虚ろでいて意味深な眼のなかに神の力を感じ取るのである。
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2.フランス映画「譜めくりの女 原題LA TOURNEUSE DE PAGES」☆☆☆
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譜めくりとはピアニストの横にいて譜をめくる役目である。曲が多様化して数え切れないほどの数がある中、暗譜などが無理な場合、特にトリオ演奏など自分のパートしか楽譜にないチェロやヴァイオリンと異なり、それらのパートまで書いてあるピアノ演奏家に万が一のためにつく。ピアニストは両手を使うために譜めくりに不自由するので必要なのだが、この譜めくりと一心同体であることがピアニストのリズムを保ち精神的安定をもたらすのである。

この映画はピアニストの夢をもった少女メラニーが、コンセルヴァトワールの実技試験で、審査員であるあこがれのピアニスト、アリアーヌ(カトリーヌ・フロ)の演奏中のファンへの署名といった「内職」により、調子に乗っていたにも拘わらず集中力を失い中断してしまう。そして其のあとの散々な演奏、少女の夢は無残にも挫かれた。そしてピアノニストへの夢を、それを機にきっぱり切ってしまうのである。

10年後メラニーは偶然にも(ストーカーのように復讐のためピアニストの夫に接近したとも解釈できるが、僕はあえて偶然と解釈する)、秘書として働いていたトップ弁護士の田園での豪邸の子供の世話を任され、そこでアリアーヌと運命的出会いをする。アリアーヌの記憶にはメラニーなどはない。子供の世話をするうちに譜めくりの才能を見出され、アリアーヌにとって無くてはならない存在となってくる。

このデボラ・フランソワが扮するメラニーのピアニストに対する復讐心と一方でのピアニストへの憧憬の相反する二つの心理を、薄気味悪いほどの見事な演技で、見る者の背筋を寒くさせてくれるのである。圧巻はアリアーヌ愛用の高級顔面クリームをもらい、それを自分にも塗る場面で、アリアーヌが塗りムラをぬぐう場面である。映画の面白さはこうしたちょっとした場面の意味合いなのである。

復讐は完ぺきであり、ピアニストの晴れの舞台直前に姿を隠しピアニストはリズムを壊し失墜、ピアニストがメラニーに抱くレスビアン的愛を逆手に取りピアニストの夫婦関係も破壊し、ピアニストになろうとしていた子供に無理で危険な弾き方を教えてひじを潰させる、陰険で陰湿なパーフェクトゲームである。

子供の時に負ったぬぐいきれないトラウマは、静かに人間の心の奥を潜行しているのである。その復讐に頭脳プレーにより憎悪の対象を破局に追い込む、なんとも言えない鳥肌が立つようなおぞましい心理サスペンスである。
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3.日本映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」☆☆☆☆
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久しぶりに国際的に映画として通用する真っ当な「日本映画」を観た
かってピンク映画で一世を風靡した若松は1965年「壁の中の秘事」をベルリン映画祭出品し観客より顰蹙のブーイングを浴びたが、その同じ映画祭にて、第58回ベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)と国際芸術映画評論連盟賞(CICAE賞)を受賞、第20回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門では作品賞を受賞した作品である。

若松は、原田眞人監督の「突入せよ!あさま山荘事件」について体制側から描いたあの作品では連合赤軍に参加した学生たちの心情がまったく描かれていないと憤りを感じて、この映画を学生側から描いたという。

この映画のテーマはまさに僕たち団塊の世代が大学生時代の大事件である。
三時間にわたる映画は1966年の日大や東大闘争から日本共産党以外の左翼勢力の分裂・合併などを時系列的に整理して追っていく。ベトナム反戦運動、文化大革命やパリ革命など僕たちが懐かしい青年時代の事件の思い出でがあり、ノスタルジーを感じさせる。
昨今の停滞したそして緊張感が皆無のダラッとした日本の現状とりわけノンポリの若者を見ると、思想的にどうであれ、保守派の僕ですらこの頃ゲバルトに青春を賭けた若者たちが懐かしく共感を覚えるのである。

最近小池真理子の「望みは何かと訊かれたら」などリンチ事件など題材にした小説も読んだが、やはり僕たち世代の一つの記念碑なのかもしれない。

さて極左勢力の内部分裂を経て1971年大菩薩峠事件やよど号ハイジャック事件などで最高幹部クラスの逮捕・国外逃亡などで弱体化していた共産主義者同盟赤軍派の軍事組織である中央軍の残党と、やや革命左派神奈川県委員会の軍事組織である人民革命軍が統合し、いわゆる連合赤軍が成立する。

塩見委員長、重信房子(若松監督の憧憬か「かわいこちゃん」を配役、素直な一女性として描いているのが面白い)、田宮高麿などが映画にも登場する。そして逮捕、海外、ハイジャックで消えて行ったあとの残党のいわばあがきがリンチ事件であり、あさま山荘事件につながっていくのである。

リンチ事件は必ずしも極左に特有の現象ではない。それがまさに人間社会に内在する問題であり、人種、思想集団はもとよりサヨクからウヨク、マフィアからサラリーマンまで、人間社会に程度の差はあれ起こりうる人間の弱さに基づく残酷性なのである。
とくにある独裁者がでてくると、恐怖に怯える者、媚びへつらう者は独裁者の不条理な命令には逆らえなくなり、閉塞された状況で人間集団は必ず生贄を作りだすのである。それは独裁者の地位を脅かす者、独裁者の欲望を握る情婦の嫉妬や好悪の情から惨劇は生じる。連合赤軍の場合それは森恒夫であり永田洋子であった。この凄惨なリンチ事件の模様を映画は実にリアルに描いている。残酷すぎて目を画面からそらしたくこともしばしばである。
こうして外に向かうべき暴力が、内部で消耗してしまうのである。そして人間としての後悔の念が後味悪く残るのである。

悲惨なリンチ成敗を経て警察に発覚寸前の山荘から逃亡した一集団、5人が浅間山荘を占拠して警官隊と銃撃戦となる。

かって過激派に走った若者は、良し悪しはあれ、すべて純粋な世直しの気概から革命戦士になろうとしたのである。最初はあまっちょろい革命ごっこ、そして総括。殺人というリンチを経て人間を殺すことに免疫となっていく。ちょうどポルポトなどが少年兵士を訓練するときに、反革命捕虜を銃で殺すことで残酷性への免疫訓練をしたと同じである。

映画の面白いのはあの過激派の常套のセリフを塩見や森や永田に喋らせる。まさに言葉の遊びと繰り返しのドグマであって、何一つ人間の心がないのである。しかし青年とはそういう時期であり、彼らの言葉を今聴くとあの独特のアクセントのアジ演説である。懐かしい思いと苦笑いもでるリアルな映画で、まさに若松孝二監督の自戒もあるように見える。

若松自身もリンチ事件の非を映画でも説いている。だが若松の心の底にある彼ら革命戦士へのシンパシーは銃撃戦の坂口や加藤少年をそれなりに評価している点である。特に坂口が愛人永田を森に譲った心理描写、そして浅間山荘銃撃戦での管理人の妻への労りと優しさを描いたり、リンチの反省を語らせていることからも理解できる。坂口はダッカ事件での釈放要求リストにあったが、拒絶して日本での死刑の道を選んだ硬骨漢でもあった。

保守派の連中はとんでもない映画と断罪するかもしれないが、僕はサヨクであろうとウヨクであろうと、いや明治維新でも軍隊組織でも、若者の一途な純粋性があったわけで、そういう人間の性(さが)とか若者の向こう見ずな性格などを考えれば、この映画は古今東西通じるものがある。

若松はピンク映画で鍛えられているのか人間の内面の表情を捉えるのが実にうまい。そして若者の心の葛藤を新鮮に描いている点で、僕はこの映画を一級の映画と評価する。ひょっとして日本映画の再生は若松が一端を担うのではないだろうか。
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◎奥山篤信のDVD映画評論 
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1.アメリカ映画「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 原題The Royal Tenenbaums2001」☆☆☆☆☆
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「ダージリン急行」のウェス・アンダーソン監督・脚本・製作の作品である。
テネンバウム家の3人の神童は、長男はビジネスマンとして、長女は作家として、次男はテニス・プレイヤーとしてティーンエイジャのうちに成功した。しかしそれから20年後、それぞれに伸び悩み問題多い家族となる。父親(ジーン・ハックマン)は長男にも裏切られ、妻(アンジェリカ・ヒューストン)にも逃げられ、家族一同総スカンを食ってさびしい人生を暮らしていたが、病魔を抱え家族のところに戻ってくる。この鼻つまみ者の父親が騒動を起こしながら家族のまとまりと諸問題を解決する軸となっていくのである。

アンダーソンは俳優をまさに一家ともいえるほど同じ俳優をキーに採用する。この映画でもアンジェリカ・ヒューストン、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソンなどおなじみの俳優を配して調和を維持するのである。グウィネス・パルトローがいつもと一味異なるイメージチェンジの病的な女流劇作家を演じて見事である。

何とも言えない人間的なウイットとユーモアあふれる映画であり、独創性があり、見るものを感動させる監督である。
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2.アメリカ映画「ライフ・アクアティック 原題The Life Aquatic with Steve Zissou2005」☆☆☆
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これもウェス・アンダーソン監督・脚本・製作の作品である。
海洋探検家でもあり映画監督の変人の主人公ビル・マーレイ扮するスティーヴ・ズィスーとその仲間「チーム・ズィスー」の冒険物語である。このマーレイの演技が抜群であり、その主人公の一切の偽善や欺瞞を憎悪するぶしつけで失礼で傍若無人ぶりを見事に演出している。この主人公こそ言葉の乱暴さのなかに優しさと男らしさを秘めており、人間的なあまりにも人間的な人物なのである。

同じようにンジェリカ・ヒューストン、オーウェン・ウィルソンなどアンダーソン一家を配している。これにケイト・ブランシェットが女性記者として登場、ドタバタコメディをしっかりとシーリアスドラマにしているのが見事である。

架空の海洋生物たちが出てきてユーモラスだが、ストップ・モーション・アニメーションの手法を用いたという。

アンダーソン監督に虜になるのは、彼の健全な家族愛や人間の共同生活への讃歌が底流にあるからだろう。通常のテキサス人の大味とは正反対の天才若手監督であることは確かである。
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3.スペイン映画 「オール・アバウト・マイ・マザー 原題Todo sobre mi madre 1999」☆☆☆☆
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巨匠ペドロ・アルモドバル監督の映画であり 1,999年アカデミー外国語映画賞を受賞した傑作である。アルモノドバルは同性愛者であり、映画には必ずその手の人物が登場する。

この映画はマドリッドで独り息子と母子家庭を持つ看護婦セシリア・ロス扮する母親マヌエラがその出生を隠しながら、17歳になる作家希望のエステバンを溺愛している。

映画は臓器移植の問題を冒頭捉え、そのPRセミナーのコーディネータをするマヌエラが自らの息子を交通事故で亡くし、その心臓を移植同意する場面はあまりにも皮肉で悲劇的な映画のスタートである。

そのマヌエラはマドリッドを去り、かって夫と住んだバルセロナに向かう。アルモドバルは画家の資質を持っているので原色をポイントとして見事な映像美を造る。この映画も実に美しいのであるが、列車に乗ってバルセロナに向かう列車がトンネルを通過し、そのトンネルのグレーの壁を運転席から捉え、そして緑の森、それを超えて美しいバルセロナの都会の夕方の風景が映る、圧巻のカメラ捌きである。

父親は実は女性役のホモであった。マヌエラは友人であるホモのアグラード(アントニア・サン・フアン)と遭遇、アグラードと住んでいたかっての夫は(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)行方不明となっていた。アグラードと職業安定所を訪ねそこで更生の奉仕活動をするペネロペ・クルス扮するシスター・ロサと意気投合する。実はそのロサはなんと同じ父親を身ごもっていたという奇遇。そしてAIDSに感染していたのである。そんななか息子が憧れサインを求めて車にひかれた俳優ウマ(マリサ・パレデス)に接近しその手伝いをすることになる。

ロサは出産し死んでしまう。その葬式に現れたかっての夫を優しく向かい入れるマヌエラ、そして交通事故で死んだ息子の話をするのである。いい加減で無責任な男、普通なら張り倒したいくらいの男への包み込むような愛である。

ロサの子をわが子のように育てる決意をしたマヌエラは再度マドリッドに向かうのである。

不幸の中で、その子がAIDSウイルスを抑制した奇跡を知る。神の救いである。

そして同じトンネルを通って希望の地マドリッドへと、そのシーンの演出が暗示的で見事である。

臓器移植、ホモ、AIDSなど社会問題に鋭いメスを入れながら、アルモドバルの原点である生命至上主義と憎悪を超越した人間愛が全編流れる。この監督の映画には、人間賛歌生命賛歌そして決して諦めない人間の強靭性があり、いつも感動させられるのである。

オール・アバウト・マイ・マザーはベティ・デイヴィスの名画「イブの全て オール・アバウト・イブ」から文字っており、この映画の場面も出て、またその映画のストーリーをもじるプロットもあり面白い。
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◎阿嶋彩子の料理つれづれに (29)<私流・肉の煮込み料理>
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肉の煮込み料理は何と言ってもビーフ・シチューが美味しく、このビーフ・シチューはドミグラスソースを使った濃厚な味のものだ。今も未だ変わらぬ味である『銀の塔』のシチューは懐かしい味である。

しかしこのボリュームがたっぷりの味には少し胃が疲れるので、私流に食し易い味をたどって、時々牛肉の煮込み料理を作るのである。

私は材料をドサッと目の前に置いて、この材料をどのように扱おうかと思う時、緊張感とワクワクした気分になり、最高に気持ちが盛り上がる。私が家庭料理を作る事の一番の意義は自分の家で作った料理はなぜか、胃にもたれなく消化しやすい気がして胃が楽なのである。

ビーフシチューをと思い、サシの入ったシチュー用肉の塊を1キロ程求めてきた。先ず 牛肉の塊をニンニクのスライスを入れた赤ワインに一晩漬け込み、肉の水分をキッチンペーパーでふき取り、シチューとして頂くサイコロ状の大きさに切る。フライパンにオリーブオイルとニンニクスライスを入れて香りが出てきたら肉を入れ、シチューが出来上がった時に肉の形が崩れないように又旨みが逃げ出さないようにしっかりと面を焦がす。そして、炒めた玉ねぎと共に電気鍋にて、四時間程赤ワインとフォン・ド・ヴォーをたっぷり入れて煮込むのだ。これで肉が柔らかくなるので、そのまま冷めるまで放置すると中のものがじっくりと炊ける。

これを冷蔵庫に一晩入れると翌朝には表面に白い油がびっしりと張り付いているので、これを全部取り除くのである。中から綺麗なコンソメと肉が顔を出し、基礎の出来上がりだ。もう肉は柔らかいので別の器にとり、スープのみを煮込む。その中に生のトマト数個を煮てペースト状にしたものをいれ、炒めた玉ねぎやエシャロット、トマトケチャップも入れ、煮込む。別鍋に熱湯にオリーブオイルを数滴入れてズッキーニを茹で、シャンピニオンは軽く炒めて先程のスープの中に入れ、ガーリックやクミンシード、黒胡椒、塩等で味を調えてから先程の肉を入れて煮立てる。マデーラ酒を少量入れても美味しい。火から下ろし、しばらく置くと、味が落着いてくる。これはドミグラスソースを使わず、つまり小麦粉とバターで作るルーを使わずにさっぱりとした味であるが、私的には頂きやすいのだ。牛肉の煮込みは牛肉自体が持つボリューム感が素晴らしいのだと思うが、しっかり煮込んでお鍋に入れたまま一晩置き、翌朝にお鍋の中の味が落着いている事に気付き、この充実感がたまらなく嬉しい。

この充実感が欲しくて小人数の家族でありながら、大きな単位での料理になってしまう。今日のように外食が多くなってしまっている私達は、家で作る飾り気がない料理に、何故か安堵感を覚える。
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◎廸薫の「タカラジェンヌが日本舞踊家になったわけ」
 其の十五「雨の名前・・・のお話」
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 今日は朝から雨が降っています。冬の雨とは明らかに異なる柔らかな温かみを感じさせる春の雨です。
このような雨を花や木の生育をうながす春の雨、「催花雨(さいかう)」、「養花雨(ようかう)」等と呼ぶそうですが、この雨が柔らかな新芽を芽吹かせ、桜をはじめ美しい春の花々を開花させるのですね。聞いただけで春を間近に感じることが出来る情緒溢れる呼び名です。
このように雨をひとつ取っても季節感の有る美しい名前を持つのは日本の文化、感性の素晴らしい部分だと感じずにはいられません。雨の名前は春だけではなく四季折々に様々な名前を持ち、中には物語や情景を上手く名前に織り込んでいるものも少なくありません。その余りにも美しい名前を題材に歌舞伎や舞踊になっている物も少なくないので、今回はその中の一部をご紹介したいと思います。

「梅若の涙雨」
   陰暦3月15日に降る雨のこと。その日は能や舞踊で演じられる「隅田川」の主人公梅若丸の忌日とさ
れており、人買いにかどわかされた我が子を捜し求め、物狂いとなった母が隅田川の畔に辿り着き、そこ
で酷い仕打ちの末、幼い命を閉じた梅若丸の運命を知る事となります。母子の絆が引き合わせたのか、
奇しくもその日が梅若丸の忌日だったのです。その嘆き悲しむ母のその哀情が雨になったものとされてい
ます。

「虎が雨」
陰暦5月28日前後に降る雨のこと。日本三大仇討ちの一つである『曽我兄弟』に由来しています。そ
の『曽我物語』によると、建久4年(1193年)、曽我十郎と弟の五郎時致(ときむね)は親のかたきで将軍源頼朝の臣である工藤祐経(すけつね)を、富士の巻き狩りの夜に討ち果たしました。この悲運の兄弟が父を亡くしたのは、兄5歳、弟3歳の時のこと、 のちに月夜に飛ぶ5羽の雁を見て、「雁さえ親子そろうて飛ぶものを、なぜわれらには父がおわさぬか」と嘆いたといわれます。さまざまな苦難を経た末、やっと悲願を成就したわけですが、兄はその場で切り殺され、弟もすぐに捕らえられ殺されてしまいました。仇である工藤祐経を討った兄・十郎祐成が新田四郎忠常に殺された日は激しい雷雨が降ったそうですが、この雨は十郎の愛人、虎御前が流した涙が雨になったといわれており、十郎との別れを嘆く涙だということで、このかたき討ちが美談となって謡曲や歌舞伎になって後世にまで伝えられているのです。

「催涙雨(さいるいう)」
陰暦7月7日の七夕に降る雨のこと。「七夕雨(たなばたあめ)」などとも言われますが、牽牛と織女の
逢瀬の後に流す惜別の涙が雨になったとも、一年に一度しか逢えないのに雨が降った為に逢えなくなった悲しみの涙が雨になったともいわれています。

その他にも、舞踊の題材や題名、歌詞になっている雨は「春雨」「花時雨」「夕立」「五月雨」「初時雨」「通り雨」「村雨」等々・・・・。方言なども含めて雨の名前は400以上もあるそうですが、その総てがまるで雨自体が感情を持っているかのように、優しく包み込んでくれたり、寂しがったり、甘えたり、拗ねたり、1つの人格のように生き生きと表現されていることに驚かされます。

春の雨は木々を育て、自然を慈しむ母のような優しい雨。
「催花雨(さいかう)」、「養花雨(ようかう)」「育花雨(いくかう)」、「木の芽雨(このめあめ)」、「甘雨(かんう)」、「膏雨(こうう)」、「草の雨」も山野に萌える草たちに生気を与える春の雨です。
夏の雨は「夕立」代表されるように、からっとしていて男性的な雨。また、「狐の嫁入り」に代表される天気雨といわれる気儘な女性のような雨も、夏の雨の特徴です。「化雨(ばけあめ)」、「日照雨(そばえ)」、「天泣(てんきゅう)」などはいずれも日が照っているのに、振り落ちる小雨のこと。「狐の嫁入り」も、晴れているのに、ぱらぱらと気まぐれに降る雨のことで、花嫁の複雑な心情を見事に雨に読み込んだと言えるでしょう。また、「時雨(しぐれ)」は冬の雨ですが、青葉の青を付けて、「青時雨(おあしぐれ)」なら初夏の雨になります。名前を聞くだけで滴るような木々の青さが目の前に浮かびます。
秋の雨は長雨の「秋霖(しゅうりん)」に代表されるように、もの哀しく切ないまるで恨みがましい女性のすすり泣きの様な雨です。「驟雨(しゅうう)」は本来急に振り出し、間もなく止んでしまう夏のにわか雨ですが、頭に「秋」を付け「秋驟雨(あきしゅうう)」とすると秋のにわか雨になります。感情を抑えきれずにわっとばかりに泣き出してしまった女性が、懸命に感情を飲み込んで泣き止んでいる様な切なさを感じます。頭に秋がつくだけで、同じにわか雨でもまるでその表情が違って来るのが面白いですね
冬の雨は「凍雨(とうう)」「寒の雨(かんのあめ)」「氷雨(ひさめ)」など読んで字からも感じる様に、身体の芯から凍りつかせてしまうかのような冷たい冷たい雨です。又、晩秋から初冬にかけて代表される雨で、晴れていた空がにわかに暗くなり、はらはらと雨脚軽く降っては止み止んでは降りを繰り返す通り雨「時雨(しぐれ)」がありますが、この「時雨」は冬に限らず「春時雨」「花時雨」「秋時雨」「霧時雨」「露時雨」「梅時雨」「夏時雨」「初時雨」「小夜時雨」「冬時雨」「さんさ時雨」「片時雨」「雪時雨」etc…など四季を通じて数多くの表情豊かな名前を持っています。
私の好きな雨は「季(とき)知らずの雨」に分類される「遣らずの雨」です。客や恋人の帰る刻限になると、
まるで引き留めるかのように強く振り出す雨、もっと一緒にいたいという気持ちが天に通じたかのように、グッドタイミングで降りだすなんて、何と粋な雨ではありませんか!
 「では、そろそろ・・。」と立ち上がり掛けた時に、降り出す雨。「あら・・・、遣らずの雨ですね。」という一言。その一言にその人に対する思いを込められるなんて素敵です。そしてその言葉に含まれている思いが、相手に伝わったらもっと素敵ですよね。つまりお互いに「遣らずの雨」の意味をわかって会話しているということなのですから。言葉に秘められた思いをお互いが理解して会話できるなんて、ストレートに「好きです。」なんて告白されるよりドキドキしてしまいます。日本語の中にはその言葉の奥に素敵な意味が隠されている事が多く、それを知ることによってこのドキドキ感の有る会話が可能となるのです。日本人と生まれたからにはこんな思わせ振りな、ドキドキ感の有る情緒豊かな会話をずっと楽しみたいものですね。
 


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5) 手持ちの着物、着たい着物をご持参下さい。(浴衣でも結構です。)
6)月曜日〜金曜日の19:00〜の講座を希望される方はお問い合わせ下さい。
7)受講をご希望の方は下記事務局までご連絡下さい。 

4月・5月講座開講日のお知らせ
日 程 
4月 5日(土)  /  13日(日)
5月 10日(土)  /  18日(日)

尚、6月からは夏に向け、浴衣の着付け講習を致します。
親子でカップルで是非ご参加下さい。

時 間  !)13:00 〜 15:00 !)16:00 〜 18:00
場 所  〒102-0073東京都千代田区九段北4-3-6
(JR中央線、新宿線、有楽町線、南北線市ヶ谷下車徒歩約5分)
受講料   正 会 員   1回 ¥2,000
賛 助 会 員  1回 ¥2,500
一   般  1回 ¥3,000

お申込/お問い合わせ 
NPO法人日本人のアイデンティティを育む会紫(し)薫(くん)子(し)の会(かい)事務局
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-9-8パレロワイヤル永田町203
TEL 03−3500−2533 FAX 03−3500−2206
E-MAIL  shikunshi21@dream.com

花柳廸薫(はなやぎ みちかおる);
NPO法人日本人のアイデンティティを育む会・紫薫子の会 代表理事 
社団法人日本舞踊協会正会員。
兵庫県神戸市出身。三歳より花柳流日本舞踊の手ほどきを受ける。宝塚音楽学校首席入学。宝塚歌劇団退団後、花柳流師範資格を取得。歴史街道推進協議会、関西フォーラムに参加したことを機に、アメリカ(ワシントン、ミネアポリス、ニューヨーク)東南アジア(インドネシア、シンガポール)にて舞踊公演を行うなど、ワークショップや文化交流、結婚式、祝賀会、レセプション等の舞踊活動を中心に、古典に基づく独自の舞踊活動を国内外で行う。平成十七年NPO法人日本人のアイデンティティを育む会・紫薫子の会(しくんしのかい)を設立。日本舞踊のみならず、日常生活から消え行こうとしている日本伝統文化に警鐘を鳴らし、啓蒙普及活動をライフワークとして本格的な取組みを始動。                                        
ご意見箱アドレス; michikaoru@hotmail.com 
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◎読者の書評 超・映画評 愛と暴力の行方」扶桑社
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先日、「超・映画評 愛と暴力の行方」を海外へ出向いた際のホテル滞在の友として携帯した。
次の映画を選ぶ際の基準にするため、ザガット ムービーガイドのように客観的なガイダンスの本だと思っていたのだ。 そして一度、表紙を開いて奥山氏の世界に吸い込まれる。 もっと主観的でうっとりするような美しい風景の描写、的確にエッセンスがまとめられ美しい短編集をよんでいるような経験をした。 鑑賞済みでない映画も見たい衝動に駆られ、おもわずマーカーでハイライト。 きっと映画鑑賞の後、友人と意見交換するような感覚で、もう一度本を開くだろう。

本としても内容が大変濃い。 そして奥山氏の人生の明暗さを直視・指導できる強さ、美しいものが美しく写る感性と人となりに触れる事ができる。 また、奥山氏は映画を通じて世界の人種・文化・生活様式・思考方法を学ぶ素晴らしさを熟知されている。是非、未来の日本の子供の感性や器を大きくするために子供向けのメルマガや、講義を通じその良い影響の輪を広げて欲しいと願う。
(大手銀行投資コンサルタント MM)
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次回の配信は3月22日(土)を予定しております。どうぞお楽しみに!
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