甦れ美しい日本 第164号
発行日時: 2008/3/8□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2008年3月8日 NO.164号)
☆☆甦れ美しい日本☆☆
☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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< 目次 >
◎ゲスト執筆者
塚本三郎 二つの暗雲
(注:先週号の「怪物・通貨の暴走」と重複する箇所がありますが、先生が更に手を加えられたものです。)
◎松島悠佐の軍事のはなし(62)「イージス艦事故対応に見る防衛大臣の自覚」
◎レギュラー執筆者
1.佐藤 守 大東亜戦争の真実を求めて 155
2.奥山篤信 こんな法相はいらない
3.西山弘道 「政争の具と化した日銀総裁人事」
4.松永太郎 本の紹介 Charlie Wilson’s War George Crile Grove Press NY 2003
チャーリー・ウイルソンの戦争 未訳
◎関西零細企業経営のオッサン 悔し涙を流すの記 (2)
先週の分が(1)となります。今後毎週連載にて人生経験・国際経験・教養豊富なオッサンが浪速の義憤をぶちまけます。お楽しみを!
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塚本三郎
二つの暗雲
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現在、巨大な二つの黒い影が日本を覆っている。
その一つは、中国の嘘で固めた国家権力の強圧であり、もう一つは、アメリカの金融支配による経済社会の暗い影である。
中国の国家権力の暴走と、米国の金融支配の横暴に対して、日本は国家の威信をかけた権力と民主主義の言論とによって、堂々と、是は是、否は否として、正義の天鼓を打ち続けるべきではないか。
中国の暴走
去る一月下旬に表面化した中国の「毒入り餃子」事件は、日本国内で衝撃と不安等を与えた。かねてから問題が伝えられていた中国食品への不信感が、この事件を通じて爆発し、改めて広く日本国民に浸透してしまった。
「二十一世紀は中国の世紀」と全世界に売り込みつつあった中国のイメージが、急速に悪化している。中国国内では、こんな重大事件を殆ど公表せず、あたかも日本側に非があるかのように装っている。
日本政府は、検出された殺虫剤「メタミドホス」の使用は、可能性からして、中国内部の仕業だとしている。中国側では逆に「われわれはこの事件の最大の被害者だ」として、賠償請求すらほのめかしている。嘘で固まった中国の、官、民の本性が露骨である。
本来なら、今回のような事件が中国食品に関して発生し、日本国民に多大な不安を与えているのであるから、少なくとも、中国の首相が謝罪と見舞いの言葉を述べるべきである。
日本政府の対応も逃げ腰である。中国製品が汚染されていることは、今に始まったことではない。日本が一方的に被害にあい、餃子を食べて体調を壊したと言う訴えが殺到しているのに、日本政府にもマスコミにも切迫感がない。相手が中国となると、途端に怖気づいて卑怯になる。マスコミも、最初は大々的に非を鳴らしていたが、しりつぼみである。
これと比べて、米国でのBSEの感染牛肉の問題が表面化したとき、日本政府は輸入を直ちに禁止した。あの過去とくらべてみるがよい。猛毒入りの餃子の、大量販売という未曾有の事件を過小評価し、「食の安全」よりも「日中友好」への悪影響を気にする。
中国の暴走は反日教育や反日暴動、世界中での「慰安婦」「南京大虐殺」の悪宣伝、日本の経済水域からの天然ガス資源の盗掘、尖閣諸島への主権の度重なる侵略行為、また靖国神社への参拝に対する内政干渉等々、数え上げればきりがない程の無礼な所業である。
日本政府は、独立国としての自尊心が在るのかと言いたい。
相手が米国の場合は、大人としての態度を見て、甘えの心で批判を重ねるが。
相手が中国なら、何をやるか知れない暴徒集団と思ってか、日本政府とマスコミは腰を引いた逃げの発言であり、国家としての尊厳を捨てた正・邪の分別なき態度である。
通貨の活用
金(キン)は生まれながらにして、地上における通貨としての宿命をもって、この世に生まれたと識者は言う。古代より、人間は物々交換によって、必要な物資を生活に活用して来た。しかし、大量の物々交換は、その行き着く処として、通貨と呼ぶ交換の手段が考えられた。その代表として用いたのが「金」である。通貨としての条件はおよそ三つ。
第一に、その物自体に価値があり、時代を経ても変化しない物質であること。
第二に、希少価値があり、持ち運びと移動に便利なこと。
第三に、地球上に、普遍的に存在し、どの地方にも材料があること。
右の三条件のゆえに、どの国も互いに相談することなく、自国の通貨として自然に金が中心になって来たのは人類の智恵である。各国は申し合わせたように金を通貨として来た。
近代になって、その金さえも、基礎として認めながら、更により便利で「金」に代替するものとして「通貨」が、その国毎に発行された。「貨幣」となり、「紙幣」となった。
通貨としての紙幣は、「金の代替」であるに過ぎない。
日本でも戦前は、十圓札に、金貨十円と交換すると、発行元の日本銀行証明の文字が入り、それを「兌換券」と呼び、正貨と引換えることを想定して発行する銀行紙幣であった。
通貨の乱用の米国
戦争直後、戦勝国の米国に、世界中の金、約三百億ドルが集まった。これは当時、全世界の八〇%であった。ゆえに米国の主唱によって、発行する米ドルこそ、金と換金し世界に通用する紙幣、即ち兌換券として世界から認証された。「IMF体制」とも呼ぶ。
爾来、二十数年間、この体制が維持され世界経済は順調に、戦後の荒廃から立ち直った。
一九七一年、米国は保存の金三百億ドルに対して、三倍を超える約一千億ドルを、各国に流通せしめた。このことは兌換券としての能力を遥かに超えるもので、通貨そのものの信用と価値を極端に低下せしめた。ドゴール仏大統領はこれをニセ札と呼んで非難した。
やがて、米国は、ドルの兌換券としての約束を放棄せざるを得なくなった。
これをドルショックと呼ぶ。欧州連合では、米国ドルの信用を軽視するよりも、自前の国際通貨を認めようとして、ドルに対抗してユーロを創設した。
かくして「金」という実質の通貨を度外視して、兌換券でない紙幣が通用しはじめた。それがドルであり、ユーロとなって、世界市場を暴れ回りつつある。
金の裏付なき、通貨が、物々交換の域を超えて、更に各国の株式をも取得し始めた。
目下世界を騒がせている、アメリカの金融業界が発行したサブプライムローンがある。それを買った銀行や証券会社は、株が暴落し、金融機関が軒並み損を出し、貸し渋りが
起こって、世界の実体経済にも深刻な悪影響を及ぼしている。
もとはと言えば、強欲なかね貸しが貸出先を増やすため、普通なら借金をしない低所得者層に、住宅ローンの貸し出しの利息を安くして、家を大量に建てさせた。やがて利息があがる頃には、家の価値も高くなるからと安心させてか拡大した。
アメリカ政府が、低所得者に家を建てさせるなら、住宅政策として、借金の信用保証体制を執るべきであった。
アメリカの金融業者は、この借金を、債務担保証券と呼ぶ証券に変え、世界中の銀行や証券会社や、投資家に売りつけた。これを「金融工学の技術の粋」であると言って。
これが真に「金融工学」の勝利なのか、それとも「巧妙な集団詐欺」に過ぎないのか。
この奇抜な経済活動が見逃され、それに乗じて、たとえばゴールドマン・サックス社は、この事件で四十億ドル(約五千億円)の利益を上げたと伝えられる。この証券会社は、高値の段階から顧客の買いの求めに応じながら、自社資金で売りを続けていたと云う。
連日ニューヨークの証券市場はこの為乱高下を招き、全世界に深刻な影響を与えている。
この「方向性をも失った金融政策」サブプライムローンは次のような問題点がある
一.低所得者に、不動産の値上がりをあてにさせて、無理な借金を負わせるのが健な金融活動なのか
一.金融業者が貸倒れの危険を独力で担うことを避け、貸金を証券にして売り飛ばすことが商業道徳にかなうのか
一.証券化された貸金の商品としての格付けが、合理的になされたのか
一.証券会社の信用度を評価する制度は、科学的に設計されているのか
等々、これ等の点について、すべてはアメリカ政府が「全責任を負って始末するべき」であると、堂々と指摘するのが、文明国の立場である。
現実に示された通貨の威力を否定しない、されど、実体なき通貨はやがて破綻する。
通貨は、単に物資交換の為の代替である。その歯止めとして「金」との交換と言う担保を持っていた。その単なる手段が、「金」や、その他の、信用出来る担保の裏付を必要とせず、思惑中心に、通貨が無制限に、エネルギー及び資源を支配し、またエネルギー保有の中東諸国も、逆に通貨を支配しようとしている。お金は魔物とはよく言ったものだ。
自然を狂わせる通貨
世界各国は農業から工業へ生産手段を変化させつつある。その結果農地を工業団地へと転用させている為、世界の農地は年と共に減少しつつある。
森林の伐採もまた、農地よりも、工業団地と住宅用地へと転換され、地球上は益々緑地が激減し、環境悪化が急激に進みつつある。
中国は、かつては農産物の輸出国であった、しかしやがて輸入国と変化しつつある。
日本の農業も顕著である。米(コメ)を中心とする農業中心の大国であったが、貿易の自由化によって、安価な農産物が流入し、加えて、産業の発展による人件費の高騰で、主食、特に穀物の輸入は、日本の農地に競争力を失わせた。政府も米の買い上げを断念したばかりではなく、政府主導で休耕田を推奨し、補償金を出すと云う事態が続いている。
食糧やエネルギーと呼ぶ天からの恵みを、単なる価格の対象として来た人間の愚かさ。
エネルギーの代替品として農産品を粗末に扱って、その土台の田畑をも、不採算のゆえに耕作地を転換する愚策を行なって来た。天はこのゆきすぎた所業を見逃すであろうか。
よく考えてみれば、太陽はさんさんと照り輝いている。なぜ一刻も早くこの力を活用し、太陽電池を蓄えないのか。
台風だ、暴風だと騒いでいるが、風力こそ発電の無償のエネルギーではないか。
四季それぞれに降る雨もまた、昔からダムを造り、農業用水に備え、その上、電力の大半は、これの恩恵に浴して来たではないか。
石油や天然ガスのみがエネルギー源でないことは、承知しているはずだ。
眼前の採算のみで、すべてを決めて来た近視眼的世界経済に厳しいツケが来る。
地球上に於ける資源エネルギー問題も、やがて来るであろう食糧の危機の問題も、所詮、その根本の原因は、「通貨」こそすべてを支配する根源と誤信し、頼ったところにある。
天候も、食糧も、地下資源も、人間に対して悲鳴に似た警告を発している。
人間に必要なもののすべてが、地上には与えられている。否、与えられたものを活かして使う者のみが生きる資格がある。それを、根の無い通貨と呼ぶ怪物の「空手形」が、すべてを支配しつつある。この不届き者が地上を汚している。
日本の運命をも左右する米国と中国の蛮行に、政権も、政治家も無関心で良いのか。
(注:先週号の「怪物・通貨の暴走」と重複する箇所がありますが、先生が更に手を加えられたものです。)
塚本三郎;
愛知県名古屋市に生まれる
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学
終戦とともに労働組合運動に従事
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回)
昭和 35年 民社党結党に参加
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む)
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任
平成 元年 民社党常任顧問に就任
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章
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◎松島悠佐の軍事のはなし(62)「イージス艦事故対応に見る防衛大臣の自覚」
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イージス艦衝突事故のメディアの報道は大分静まりましたが、逆に防衛大臣に対する不信感が強まった感じがします。というのも、「あたご」の当直長(航海長)を、事故当日ヘリで防衛省に移送し、事情聴取したことについての、大臣の説明ぶりがおかしくなっているからです。
事故を起こした当事者である海上自衛隊が、速やかに事情を掌握するのは当然であり、そのために、直属の護衛艦隊司令は司令部の幕僚長を直ぐに「あたご」に派遣して情報収集に当たらせ、海上幕僚長は状況を一番知っている事故当時の当直長(航海長)を報告に来させたのは、当然の処置だと思います。
ただ、海保が事故捜査中であり、捜査に協力という点から海保に連絡し了解を受けておく必要もあったのでしょう。この件については、海自と海保の間に「連絡した」「いや、受けてない」との食い違いがあるようですが、大した問題ではないと思います。このことを問題だと言っているメディアもいますが、それは、あたかも自衛隊が犯罪者であるという前提に立って、海保の了解を得ないで、当事者である当直長を連れ出したのは、証拠を隠蔽したり、情報を操作したりするためではないかと疑問を持っている人たちです。
だが、自衛隊はそんな組織ではありません。まして、自衛艦隊司令以下の実動部隊にそのような「不正義」はないと確信します。
ただ、自衛隊も人の組織ですから、緊張感が欠けていたり、練度が不十分だったり、規律違反もあると思いますので、この点については速やかに問題点を究明し、規律刷新を図ることが大事です。海上自衛隊に対して、多くのメディアが「こんな組織に国の防衛を任せられるのか」「いざというときに信頼できるのか」等の批判を集中していますが、そのような体たらくな組織ではないでしょう。
そのことは、6年にわたるインド洋での補給活動を、諸制約の中で立派に遂行してきた実績、また湾岸戦争時の掃海艇による機雷除去作戦でも、不十分な準備と制約を克服して、政府の要人の見送りも出迎えもない冷ややかな環境の中で職責を完遂してきた実績など、信頼できる活動を積み上げ、十分に国民の負託に応えてきた実績が証明しています。
自衛隊をあずかる大臣だったら、このことを一番理解し、一方的に自衛隊の過失と決め込み、自衛隊を犯罪者扱いする野党の追及やメディアに対して、断固抗議しその姿勢を改めさせるべきではないでしょうか。
ところが残念なことに対応が逆で、野党やメディアに乗せられ、自衛隊への不信感を露呈しています。
まず、「あたご」の乗員からの事情聴取について、最初の国会での答弁では、
「海保の調査に混乱を与えないように配慮し、現場とは接触していない」と答え、次いで聴取の事実が明らかになると、
「海幕長の判断で『当直長』を呼んで聴取した。呼んだのは自分の判断ではない」
「当直長を呼んで海幕長が聴取したと聞いたので、制服同士では上が下に圧力をかけるのではないかと心配し、自分が聞いておかないといけないと思った」と説明しています。
自衛隊の指揮を自ら採っているという自覚があるのなら、事故報告を受けたら直ちに
「速やかに細部の状況を調査し、報告せよ」と統幕長あるいは海幕長に指示するでしょう。その結果、海幕長は幕僚を派遣するなり、事情の分かる者を招致するなりして、状況把握をするでしょう。それが正しい対応だと思います。
「海保に遠慮して乗員からの事情聴取をしていない」とか、「海幕長の判断で呼んだのであり、自分の指示ではない」との説明は、明らかに自分は当事者ではないといっていることと同じです。
今回の事案で、航海長を招致して聴取したことについて問われれば、防衛大臣は、
「速やかに状況を調査し報告せよと指示したので、海幕長がその指示に基づいて処置したことであろう」と、主体性を持って答えるべきでしょう。
さらに、「海保の調査の妨害ではないか」との指摘があれば、
「海保は事故の捜査を実施しており、それには支障がない様に配慮する。防衛省は事故の当事者としても、また自衛艦隊の運用を所掌する立場からも、事故発生の状況を速やかに把握する必要があり、海保とは別に防衛省としての独自の調査をする」との意思を明確に示して、海保との齟齬が起きないように、それぞれの部署で所要の連携をとらせるべきであり、必要なら自らは国土交通大臣に通報すべきでしょう。
大臣は、事故報告を受けた後、誰に何をどのように指示したのか分かりませんが、大臣の説明の端々から推測すれば、対応がすべて他人事であって、自らが自衛隊の責任者であるとの自覚を持っていないようです。口では責任者だといっているのですが、責任者として採るべき措置は何もしていないように思います。
さらにもっとひどいのは、自らが行なった事情聴取について、
「制服同士では上が下に圧力をかけるのではないかと心配し、自分が聞いておかないといけないと思った」と述べています。
現場の状況を自ら確認するという意味からは、当直長の聴取を自ら行なうことも大事ですが、大臣としてもっと大事なことは、海上自衛隊として今回の事故をどう考え、どう判断するのか、今後の改善施策をどう考えているのか、という意見を海幕長から聞くことでしょう。
多分、海幕長はそのような状況を予測して、速やかに現場の当直長を招致し、報告させたのだろうと思います。そのことに対して、「制服同士でこそこそやっているのではないか。隠蔽や情報操作がない様に自分が聞いた」というような説明をして、海上自衛隊に対する不信感を自ら露呈していますが、このことが、制服の信頼を失う決定的なものになりました。これこそ自分の立場を全く理解していないのではないかと思います。
石破大臣についてはこれまでも、防衛庁長官の時代に、これと似たような対応があり、国防とか軍隊の運用について知識が先行し、自衛隊を自ら指揮しているという主体性と実態感覚が欠落しているとの評価を、当時の多くの現役自衛官から聞いていましたが、今回の一連の発言と対応はまさにそれを実証しています。
私は自らの経験から、今の自衛隊は信頼できる集団であり、法制上・財政上、ひいては処遇上も多くの制約を受けている中で、高い使命感を持って与えられた任務を着実に遂行してきた集団であると思っています。勿論、規律の緩みや、法令違反は時に起こるでしょうが、それはそれとして厳正に処置しなければなりません。しかしながら、一部の野党やメディアが誹謗中傷するような集団ではないと信じています。
このコラムは、石破大臣の個人攻撃をすることが本旨ではありませんが、国防を担う武装集団としての自衛隊とそのコントローラーとしての大臣の信頼関係が極めて重要であるとの思いから書かせていただきました。
石破大臣のこのような対応は、部下を持ち部下を指揮したことがない人の典型的な欠陥でしょうが、組織を動かすには、まず『自分の部下を信じる』こと、そして『組織を組織として使う』ことが基本です。部下組織を信頼せず、個人的なつながりだけで組織を動かそうとしても、不信感だけが増幅して組織は動きません。
石破大臣の感覚と手法で、目下課題となっている自衛隊の組織改革を行なうことは、取り返しのつかない国家の不利益を被ることになりそうです。
自衛隊にとって今一番の問題は、憲法改正・有事法制・軍刑法・秘密保護法など、存立の基本を正し、「軍隊らしきもの」から「軍隊」に脱皮させることです。
政治家はそのためにいるのではないでしょうか。 (20・3・6記)
松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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◎レギュラー執筆者
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1.佐藤守
大東亜戦争の真実を求めて 155
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前回は、「張家三代の興亡(古野直也著)」の中から、西安事件の秘話を書いたが、このとき東京駐在英国大使クライブは「日本の態度は静観中なり。中国人は救いようがないことを世界は知るべきなりと言わんばかりなり」と打電したという。
つまり、以前この西安事件について書いた時に私は「日本政府はこの事件をどう判断していたのか」疑問だと書いたが、これで明らかなように、国際情勢判断を怠っていたというべきである。この著には、蒋介石救出に当たった何応欽軍政部長の討伐が実現し「蒋が死に、南京では親日派の巨頭と見られていた何上将が実権を握れば、歴史も変わったことであろう」とあるが、西安事件が起きたことを知った日本側は、日本留学の経験がある「親日派の巨頭・何応欽」と接触し、情報を得るなり支援するなりしていれば、まさに歴史の流れは変わったに違いなかった。しかしクライブ英国大使が打電したように、当時の日本政府は「得意とする」静観を決め込んでいただけだったのである。
勿論、対ソ戦中心の戦略下で育った日本軍も同様であった。同書には、「このころ、日本陸軍が何の準備もしていなかったことは、防衛研究所戦史部保管の参謀本部の資料で明白である。対支出兵に際して弾薬の備蓄すらなく、大阪湾には何十隻の船舶が弾薬製造を待って停泊している。西安事件による『国共合作、一致抗日』決定により中国が対日開戦を強行するとは夢にも考えていなかった。一九三六年六月には北支は平穏のため将校、下士官の妻帯者は内地から家族を招くことを許されている」とある。今でいう危機管理意識の欠如である。何応欽よりも蒋介石を信用?していたからであろう。
交渉は「蒋と学良、楊(虎城)の間に十七日に到着した仲介役の周恩来が入り、談判は連日続いた。学良側にすれば政府の討伐を受けて、蒋と抱き合い心中となっては『兵錬』の意味も大義もあったものではない。しかしここで蒋を逃せば、報復されることは必至だから、命がけの交渉であった」
そして米国が「蒋介石支持」を発表したから、蒋にとって事態は極めて有利に展開した。蒋が顧問に豪州人のドナルドと、米国人のエルダーを連れていたからだという。
公にされなかった対日戦を明記した「文書」は、国民政府、共産党、張学良共に困る内容であったから、現在でも中国と台湾で「国家機密」になっているだろう、と著者の古野氏は書いている。同書を引用する。
「学良の旧秘書で蒋介石の現秘書だったドナルドは、文書はあったと確信している。大量にして多岐にわたる妥協の条件は文書にされていた。記憶では忘れたといって逃げられる恐れもあるのだ。学良は、受領した文書を顧問エルダーを通じてアメリカの法律事務所に送り『私が、若し不慮の死を遂げたときは、この文書を世界に公表せよ』と命じたといわれている。蒋は学良を殺せないし、この文書を奪うことも出来なかった。これが、学良が殺されなかった理由である」
シナ大陸の歴史的密約は、案外米国から公開されることになるのかもしれないが、古野氏はその内容を次のように推察している。
「1、抗日戦の決意確約とその必要措置(六ヵ月後の開戦を約したとの説が有力である。開戦の約束に日時の期限は必要)
「2、共産軍討伐の中止。
「3、国民政府の改組、抗日派の登用。
「4、張学良、楊虎城の自由と生命財産の保証。
「5、東北軍、西北軍への軍費の支給。軍、政府から親日派一掃の人事。
「6、事変関係者の責任は、全て免責として追及しない。
楊は西安で政府が討共戦、抗日戦準備に送った銀貨一七〇〇万元と法幣二八〇〇万元を押さえ、学良は蒋の身代金を一億元(実際はその十分の一しか払ってもらえなかった)を請求したという。後払いではなく前払いで」
そしてその奪い合いがあったことは前回書いたが、彼らに国家観や愛国心がないことが明白である。現在の中華人民共和国政府の実態は果たしてどんなものだろう?
古野氏は「蒋介石は『西安半月記』、宋美齢は『西安事件回顧録』、張学良は『西安事件懺悔(反省)録』を残している。しかし、どの本も『自分は偉大であり冷静であり、愛国者だった』という自己宣伝的内容で、歴史的事実に迫るものではない。日時と人の行き来だけが正確らしいだけである。蒋は命を助かりたい一心で、学良の要求の全てを受諾した。『先安内後攘外』(国家統一後に外敵にあたる)を捨て、討共の信念を捨て、国民党を捨てた。学良側の要求の十二月二十四日の西安、高桂公館での学良・周と蒋との会談、宗子文・宋美齢と学良・周会談、宗子文・宋美齢・学良・楊虎城会談(英語の会談で、同席した楊虎城は英語が出来ず不明だったと令息の楊拯民に語っている)等、重要な会談内容は現在も不明である。ハワイで学良と会った私は当然、このことを質問したが、彼は『申し上げられない』と拒絶するだけだった」
この程度の“土民軍”に翻弄されて、国家戦略も固まらないまま戦いを交えることになったことが私には情けなく思われる。そればかりか、その後、バックについていた米英に矛を転じたのだから、当時の情勢分析の甘さが悔やまれてならない。 (続く)
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信
こんな法務大臣はいらない
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鳩山が法相に就任、昨年9月25日に死刑執行について「法務大臣が絡まなくても自動的に行われる方法を考えたらどうか」と発言し僕は拍手喝采した。死刑廃止論などを唱える偽善者・欺瞞者が予想通り大騒ぎ、亀井静香に至っては「人間の資格がない」とまで言い切ったものだ。冗談ではない、日本人の陥る欺瞞性、一方で法治論、片方で感情論の典型がここにある。最高裁で確定した死刑囚は六カ月以内に死刑執行という法律があって、それを粛々と実行するのが復讐という本来の個人の権利を法治国家に委任している国家の義務であろう。歴代の偽善法務大臣が執行捺印をやりたくないと躊躇していたつけが、死刑囚の「在庫」がかくも拡大をもたらしたのである。鳩山が「ベルトコンベヤーというのは何だが、(執行の順序が)死刑確定の順序なのか乱数表で決まってるのか分からない」と、死刑執行制度の在り方について思い切った発言をしたこと自体実に痛快だと受け取ったのは、僕だけではないだろう。
おっとどっこい、その期待の鳩山は結局何の根性もなく発言を取り下げうやむやにしてしまった。なんのことはない、結局は同じ偽善で、自分で死刑執行の捺印がしたくなかったのが真相ではないか!
その後の数々の失言録を見ると、要するにこの人物はボンボンの特徴である世間知らず、自分の発言が世の常識とどれだけ離れているか自覚もない裸の王様に過ぎないのである。要するに環境や自然との共生やら友愛やら奇麗ごとを羅列するだけの鳩山家の特色であるようにみえる。
ボンボンの非常識な点は10月29日、日本外国特派員協会の講演で2002年のバリ島爆弾テロ事件に関連し「私の友人の友人がアルカイダなんですね。バリ島の中心部は爆破するから近づかないようにとアドバイスを受けた」と発言に顕著に表れる。出入国を所管する法務大臣が大規模テロ事件の情報を事前に掴んでいたかのような発言が、どんな反響を及ぼすのか分らないのである。
さらに10月31日の衆議院法務委員会にて、田中角栄秘書を務めていた際にアメリカ国防総省の協力者だったと取れる発言をしたのである。法務委員会にて河村たかしが外務省官房長の塩尻孝二郎に質問中、指名されていないにもかかわらず鳩山が法務委員長の下村博文に対し突然発言を求め、「私が田中角栄先生の私設秘書になったとき、毎月のように、ペンタゴンがやってきて食事をごちそうしてくれた。当時、私は金がありませんから『ウナギが良い』とか『天ぷらだ』などと言ってた。私は1円も払っていない」と発言した。全く常識人間には信じられない発言である。ペンタゴンに御馳走になったのが自慢なのであろうか?お笑い法相である。
次に人権である。過去に自民党内の反対を受けて頓挫した人権擁護法案を、通常国会に提出しようとする動きが政府・与党内で再燃し、鳩山が国会答弁で再提出への強い意欲を表明した。鳩山がこの法案に熱心なのは中身を理解したうえではない。単に「日本に人権擁護法案がないというのは実に情けないことではないか」など上っ面だけの言葉に酔っているだけに過ぎないのは明白である。勿論九州の自民党のドンであるこの法案推進派のナンバーワンである古賀誠のご機嫌を伺い、自らの福岡の脆弱な地盤をバックアップするという邪な打算もあるに違いない。
鳩山氏は周辺に「自民党が人権擁護法案を通せば、選挙にも有利だ」と漏らしているからである。まさにこの法案は「新たな人権侵害を生む人権弾圧法である」ことには無頓着なのである。ここではこの内容は省く。
その人権重視を叫ぶ同じ鳩山が12人の被告全員の無罪が確定した平成15年の鹿児島県議選の公職選挙法違反事件について、全国の検事長、検事正を集めた検察長官会同で、「(富山の)事件の方は人違いだから冤罪ということだろうが、(鹿児島の)事件は冤罪と呼ぶべきではないと考えている」と発言した。鹿児島県警の捜査員が「踏み字」を強要するなど違法で悪辣な取り調べが問題とされ、被告がどれほど筆舌に尽くしがたい屈辱を舐めた事実について、全く無頓着なのである。無罪が確定しても冤罪ではないのか?例の「疑わしきは罰せず」で疑わしいが無罪としたとでも言うのであろうか?負け惜しみの管轄下の検察・警察に媚を売っているのであろうか?断じて許されない法務大臣としての言動であり、これを野党が罷免まで追い込まないのが不思議である。
最近アメリカのカリフォルニア州が三浦和義を殺人容疑でサイパンにて不当拘束した。日本の最高裁で無罪が確定している三浦を同じ容疑で裁判にかけるのはまさに一事不再理prohibition against double jeopardyに反する行為であるともに、日本の名誉を著しく侮った属国扱いのアメリカの傲慢な態度である。日本の政府、法相が真っ先にやらねばならないことは、断固アメリカへ抗議することである。とくに人権に酔いしれる鳩山なら尚更である。それが、なんと三浦和義の主任弁護人を務めた弘中惇一郎弁護士が日本政府に対し、今回のロサンゼルス市警による逮捕の不当性や、米側からの捜査共助の要請があった場合、応じないことなどを訴える申し入れに、予防線を張るようにアメリカの捜査共助要請に関しては、「日本で無罪判決が確定していることが、直ちに共助の拒否理由にはならない」とし、要請があれば検討する考えを示しているのである。これが人権人権を奏でる法相か!
こんな程度の低い法相は直ちに罷免すべきである。
奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社
平河総合戦略研究所代表理事
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3.西山弘道
「政争の具と化した日銀総裁人事」
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国会の空転が続き、民主党内にも審議拒否戦術に対する世間の批判が高まることへの懸念が高まってきた。これまでの“国会の知恵”では、「寝ていた」野党を「起こさせる」ための提案を与党が「助け舟」として出すのだが、そろそろその時期だろう。今週一杯が限界である。民主党は予算案と税制関連法案の強行採決という“暴挙”を行った与党側の“謝罪”を求めているが、とんでもない、なぜ謝罪する必要があるのか。年度内に国政の最重要懸案である政府予算案を成立させるための与党のやむを得ざる行為であった。かといって民主党をこのまま困りきった状態に置いておくことも出来ず、与党側は恐らく、道路特定財源問題の集中審議を行うという“助け舟”を出して、収拾を図るであろう。
国会空転の余波で、もう一つ、民主党が強硬になってしまったのが日銀総裁の同意人事問題だ。福田首相は7日、福井総裁の後任に武藤副総裁を昇格させる人事案を衆参両院に提示したが、民主党が多数の参議院ではこの人事に不同意の決定を下す見通しだ。福井総裁の任期切れは今月19日。参議院で不同意になれば、史上初めて日銀総裁が空位のままになる、という醜態を世界に晒すことになる。
民主党の武藤“総裁”に反対する理由がよくわからない。4つの理由があるということだが、その最大の理由は通貨当局の番人は、政治から中立に置くという“財金分離”だ。旧大蔵事務次官を務めた武藤氏ではこの原則に反するというわけだが、そうなれば今後永久に財務省からは日銀総裁が選べないということになる。
2番目は武藤氏が旧大蔵省時代、降格人事を経験したという「すねに傷」を持つのが日銀総裁としてふさわしくないというものだ。確かに武藤氏は、大蔵省の例の“ノーパンシャブシャブ事件”で当時の官房長から総務審議官に降格される懲罰人事を受けた。それから事務次官に返り咲いたわけだが、この傷が、日銀総裁の“品格”に影響するというのだろうか。
3番目はこれも“品格”に影響するのだろうが、武藤氏の趣味の問題が加わる。武藤氏が達者な油絵を描くことは知られていて、東京芸大教授の絹谷幸二画伯の指導を受け、何回か個展も開いてきた。これはあくまで“噂”だが、武藤氏はこの個展での自分の絵を“不当に”高い値段で関係者に“売りつけた”という。真偽はわからないが、こんなスキャンダルめいた話が伝わること事体、問題だというわけだ。
そして最後の4番目は、武藤氏は英語が苦手だという理由だ。国際会議で日本の国益を代表する日銀総裁が英語のコミュニケーションを満足に出来ないとなれば問題だというわけだ。しかし、これは程度の問題であろう。武藤氏も大蔵省時代、ワシントンの日本大使館に3年間出向した経験まで持っているのだ。
おまけに民主党は武藤氏が東大法学部を卒業しただけで、経済学関係の発表された論文もなく、リーガルマインドしか持たないのが不適格といっているが、こうなるとこれはもうただけちをつけているだけとしか言い様がない。
小沢民主党は、何でも反対のかつての社会党に回帰しつつあるといわれているが、なるほど今回の武藤氏不同意人事については、坊主(自民党)憎ければ袈裟まで憎い、の観がある。こうなったら与党も民主党のやりたい放題にさせて突き放し、日銀総裁をいっそ空位にさせ、あえて世界の嘲笑をかわせる“ショック療法”を行ってはどうだろうか。福田首相は「(日銀総裁人事問題では)いつでも小沢代表と話し合う用意がある」と述べ、再び大連立をほのめかしているが、話し合う余地などもうあるまい。後は小沢民主党がひたすら自爆路線に突き進むのみだ。
西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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4.松永太郎
本の紹介 Charlie Wilson’s War George Crile Grove Press NY 2003
チャーリー・ウイルソンの戦争 未訳
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今度のアカデミー賞で、私のひいきのフィリップ・シーモア・ホフマン(「カポーティ」の南部なまりがまだ耳に残る)が助演賞候補になったが、その映画の原作になったのが、この本だった。ちなみに、この映画、主演がトム・ハンクスにジュリア・ロバーツ、監督は「卒業」のマイク・ニコルスという豪華版である。
この本は、いろいろな意味で、あまりにもおもしろい。500ページぐらいあるが、巻置く能わず(unputdownable)、しかも小説ではなく、ノンフィクションである。
1979年、ソ連軍はアフガンに侵攻し、首都を押さえ、元首のアミンを処刑した。日本では、思えばバブルも懐かしいころである。このとき、ソ連軍に抵抗するアフガン戦士はムジャヒディーン(聖戦士)とよばれ、大型ヘリ、ハインドをはじめとする圧倒的な武力に、まあ、竹やり程度の武器で立ち向かったのだった。ただし彼らは、ものすごい「戦い」の伝統を持っていた。敵部隊を壊滅させたあと、どのくらいすさまじい目にあわされたのか話させるため、一人だけ生かし、逃がしてやるのである。それが、かつてカイバル峠を越えて侵攻したイギリス部隊の運命であった。「アフガニスタンからお帰りですな」と、シャーロック・ホームズは、一目見てワトソン博士に言う。そのぐらい英国人にとってさえ凄惨な戦争であった。「ここからいつ出るかは、おまえらの問題だよ」と捕虜になったアフガン兵が言うそうである。死んでしか出られんぞ、という意味である。
この連中を助け、ソ連軍に出血を強いれば、ひょっとするとソ連帝国に穴が開くかもしれない、と考えたのが本書の主人公、チャーリー・ウイルソンである。美女と酒に目がない〔彼の秘書は飛び切りの美人ばかりで「チャーリーズ・エンジェルス」という〕、さらには麻薬にまで手を出した、このハンサムなアメリカ下院議員は、いわゆる「絶望的なまでにロマンチック」なタイプである。チャーチルを愛読し、ヴィクトリア朝時代の冒険にあこがれる彼は、テキサスの女富豪で社交界の女王、ジョーン・へニング〔映画ではジュリア・ロバーツが演じる〕を通じてパキスタンの大統領ジア−ウル−ハクと親交を結ぶ。そして、パキスタンがアフガン・ゲリラを支援しているのを知ると、自分もひそかにその戦いに参加することを決めるのである。
CIAは、パキスタン情報部(ISI)を通じて、アフガン・ゲリラを支援していたが、あまり活発ではなかった。パキスタンがCIAと組んで、ゲリラを支援していることが明白となれば、ソ連軍はパキスタンにも侵攻する恐れがあったからである。そのため武器もあくまでソ連軍から分捕ったということが建前であった。CIAは、旧式のエンフィールド銃をアフガンに送るぐらいが関の山で、しかも弾薬を送らないのでただの棍棒である。弾の出ないエンフィールドでハインドに立ち向かうのは竹やりでB29に立ち向かうのと、あまりかわらないが、それでもアフガン・ゲリラはソ連軍を圧倒する。
ここにガスト・アヴラコトスという、ものすごいCIA部員が登場する。彼は、本物のジェームス・ボンドであるが、ボンドほど上品ではなく、いわゆる「ストリート・ファイター」である。世界中の荒っぽい現場を回ってきた生粋の工作員であった。
この二人が手を組む。一方のウイルソンは下院歳出委員会の大立者である。彼はCIAの予算全部と国防予算の40%は「ブラック」(秘密)、すなわち歳出委員その他、非常にわずかの人間しか知らないことを知った。しかもそれにOKを与えるのは歳出委員である。400億ドル近い金が毎年、アフガン支援の武器につぎ込まれる。実質的にウイルソンはCIA長官をしのぐ権力、すなわち予算配分権を握っていたのだった。
こうして怪鳥ハインドを落とすべく、イスラエルの対空砲エリコンをはじめ、あらゆる武器がロバの背中に乗せられてアフガンに運ばれる。ために世界中のロバの価格が急騰した、という〔アフガン・ゲリラは、捕虜にしたソ連兵と同じくロバも犯したと本書にある〕。この兵站すべてを指揮したのは若干30の天才的なCIA要員ヴィッカースであった。 とくに威力を発揮したのが肩から発射する対空ミサイル、「スティングレー」であり、ハインドは次々に叩き落される。問題は、そのスティングレーは、いまだに全部は回収されていない、ということであるが〔これをテーマにしたのが、ジョージ・クルーニー主演の映画「シリアナ」であった〕。
こういう本を読むとアメリカのような大国、しかも民主主義国でさえ、ある種の政策は、やる気さえあれば、実行可能であることがわかる。ウイルソンやアヴラコトスのやったことは、秘密工作ではあるが、非合法ではない。ホワイトハウス・国家安全保障会議の面々やCIA長官は、そのころ、工作としては、はるかに規模は小さく失態続きだったイラン・コントラ・スキャンダルに忙殺されていた。リベラル派の目もすべてそれに向いていた。またCIA秘密工作部門は、イギリス情報部をモデルに、伝統的に東部のエスタブリッシュメントの子弟が支配していて、ギリシャ系のアヴラコトスはよそものであった。ウイルソン議員は年がら年中、麻薬だの女性だののスキャンダルに巻き込まれていた。つまり政界でも情報部門でも、社会的には極めて怪しげなアウトサイダーが、この作戦をすべて仕切っていたのである。したがって、ここに書かれている事実は、本書が出るまであまり知られることはなかった。
1988年、ほぼ10年にわたって凄惨な戦いを続けてきたソ連軍は侵攻してきたのと同じサラン街道を通って撤退する。CIA支局長ミルト・ビアードンは、ただ一言「われわれは勝った」とラングレーに電信する。ソ連が崩壊するのは、それからたった2年後のことである。
ウイルソンはCIA部員以外では初めてメダルを受ける。彼はCIA長官からソヴィエト帝国崩壊の最大の功労者とよばれる。しかしアヴラコトスは、上役に「Fuck You」という癖が抜けず、アフリカに飛ばされてしまう。天才ヴィッカースはアヴィラコトスのチーム「ダーティ・ダズン」にいたのでは、CIAでは自分の将来がない、と見切りをつけ、やめてしまう。
アフガンからソ連軍が撤退する。ソ連帝国は崩壊する。めでたし、めでたしであったろうか。かならずしもそうではない。ソ連が撤退すると同時に部族抗争が開始される。最後に支配したのは「神学校」の「学生」(「タリバン」)であった。そして、そこへ世界中からイスラム原理主義を名乗る連中が集まってくる。そのなかでも金を持ち、自家用ジェットで乗り込んできたのが、オサマ・ビン・ラーディンというサウジの富豪であった。
新しい「テロとの戦い」の始まりである。ここからはスティーヴン・コルの「ゴースト・ウオーズ」が詳しい。これから、読むことにしたい。
松永太郎;
東京都出身
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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◎関西零細企業経営のオッサン 悔し涙を流すの記 (2)
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20年以上前、請われてビザの保証人となった中国人青年がいたが、今回彼の上海の自宅に食事に招かれた。彼は憧れの来日を果たし、日本で苦学して三流私立大学を卒業し、其の後日本で事業を起こし結婚。そして日本に帰化し、今は日本と上海を往復している。
彼の自宅は市内マンションの32階で、150M2の眺めの良いゆとりのスペースに普段は両親が住んでいる。窓から一望すると同じような高層マンションが林立しており、どうやら此の程度のマンションは一般化しているらしい。思えば20数年前南京路に近い彼の実家に招かれた時は、街路に面した奥深い3階建て長屋のたった一室が、彼等一家両親と兄妹4人の住まいであった。と言うより、当時の上海人全部が大なり小なりそんな長屋住まいだった。殆どの家庭にバスやトイレは無く、炊事場はフロアー共同のガスコンロと水道蛇口が一箇所あるだけであった。
だから、食事中ちょっとお手洗いにとなると、部屋を出て暗い中を手探りで階段を降り、外に出て路地を歩いて共同厠所に行き、暗闇に目が慣れてくると、周りに紙を握り締め尻をまくってしゃがみ込んでいるご同輩達に気付くという現実であった。
さて食事の後、同じく結婚して日本に住んでいる彼の妹も交え、彼等から大体次の様な話があった。
「上海は此の10年とても発展しているけど、日本は駄目ですね。10年前と比べると、何一つ良くなったものは無いでしょ。駅前や郊外に矢鱈大型パチンコ屋が出現しただけ。日本は賭博禁止のはずだけど、何故かそこら中パチンコ屋だらけなのね。上海も同じく法律上賭博禁止だし面子を重んじるから、少なくとも駅前や表通りに大型賭博施設や風俗店は絶対に建設されません。日本では自宅のある藤沢駅前にも私達住民の反対署名運動にも拘らず商店街の跡地にパチンコ屋が建つことになったわ。静かな文化的環境や景観を破壊しても日本のお役人は平気なのね。
上海では抗議デモは違法行為で処罰されるけど、市が計画した無意味なマグレブ(磁力浮上式鉄道)延長計画は一月の2万人規模の大衆合同散歩による意思表示で市政府は見直しを余儀なくされたし。要するに共産党の政治は非民主と言われるけど、実は血の通った柔軟な行政が出来るのよ。」
「それに日本は民主政治で、人権が尊重されるって建前だけど、議席は親子代々引継いで政治屋が家業となっているし、議員は保身とお金のことばかり考えている。国民選挙は無いけれど北京政府では親子で議席を引継ぐなんて聞いた事も有りません。」
ここでハッと気が付いた。彼等の言ってる事は全く正しいのだ。僕は仕事でしょっちゅう中国を訪れ中国の事情は良く判っている積りだったが、モラルや教養の未熟な大衆、人権無視、言論抑圧、極端な貧富格差の共産党独裁国家中国と言う固定観念で現地を見、民主国家日本と比較しようとして居たのだ。その方が先輩の優越感が揺るがずにすむから。そして実はいつの間にか中国と日本が逆転していたのに気が付いて居なかったのだ。
最後においとまする時、彼等の母親に言われた。
「子供達から聞いてるけど日本のマンションはとても狭いんだってね。貴方も家族と一緒に此方のマンションに引っ越してきて住めば良いのに。歓迎しますよ」
ここで僕の僅かに残っていた自尊心は完全に崩れ去りました。正に此れは、中国人に何時か言われる日が来るとは思っても見なかった言葉なのです。
(2008 3月4日)
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次回の配信は3月12日(水)を予定しております。どうぞお楽しみに!
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