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甦れ美しい日本 第128号

発行日時: 2007/7/21

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2007年7月21日 NO.128号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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< 目次 >

◎ゲスト執筆者
  1. 松島悠佐  軍事のはなし軍事のはなし(39)「安全保障には関心のない参院選」
 
◎福田秀人の「日本の経営を斬る」10: 成果主義は、やる気のある人間のやる気を破壊する危険思想(中)

◎レギュラー執筆者 
      
1.佐藤 守    大東亜戦争の真実を求めて  123   
2.奥山篤信   言挙げせよ日本外交−松岡洋右待望論 -5-
3.西山弘道  「選挙と地震」

◎奥山篤信の映画評論 香港映画「傷だらけの男たち 原題傷城/CONFESSION OF PAIN」☆☆☆☆

◎成澤秀麗の書で語る美(10) 「極」
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1. 松島悠佐 
 軍事のはなし(39)「安全保障には関心のない参院選」             
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参院選が7月12日に公示され選挙戦に入りました。国民の関心の主体は年金問題にあるようです。
7月はじめに行った読売新聞による「全国世論調査」の結果では、投票にあたって特に重視する政策や争点についての質問(複数回答)に、1.年金 65%、2.消費税 43%、3.教育問題 38%、4.政治とカネ 36%、 5.格差問題 30%、 6.景気 30%、 7.公務員制度改革 27%、 8.憲法改正 24%、 9.外交・安保 22%、 10.その他(特になし・無回答)5%となっていました。これを見る限り国民の関心は生活環境の改善がすべてのようで、外交や安全保障に対する関心は薄いことがわかります。 
野党は連携して、年金問題での社会保険庁の不始末や、久間大臣の辞任・赤城大臣の事務所経費の問題などをネタにして安部政権つぶしに焦点を当てた選挙戦を仕掛けており、メディアもそれを煽っています。どちらが主導しているのか分かりませんが・・・。
各政党のマニフェストを見てもその傾向は瞭然です。
自民党はさすがに政権政党として、第1項目の「美しい国の礎を築く」の中で「国の安全保障を強化する」ことを掲げ、次の点を明記しています。
1.集団的自衛権の問題を含め、安全保障の法的基盤を再構築する。
2.日米防衛協力を一層緊密にし、基地の地元負担を軽減する。
3.弾道ミサイル防衛システムの配備を進める。
民主党は重視政策を「3つの約束・7つの提言」としてまとめていますが、お金のことばかりで、安全保障には具体的に触れていません。政策各論の最後の方の「外交防衛」の項で、
1.イラクから自衛隊を即時撤退させる。
2.イラク戦争を支持した政府判断を検証し、責任を総括する。
3.中国・韓国などアジア諸国との信頼関係構築に全力をあげる。
とうたっていますが、自国防衛の具体的なことは書いてありません。
公明党は、「重点公約21項目」を定め、その20番目に「平和・軍縮推進」を揚げていますが、自国の安全保障については「憲法9条の1項・2項を堅持し、自衛隊の存在や国際貢献のあり方を加憲論議の対象として検討する」ことを重要な政治課題として示しているだけで、自国の防衛に関する具体的な記述はありません。
共産党・社民党の左派政党は、憲法9条改正反対、集団的自衛権憲法解釈の変更反対、日米安保強化反対、自衛隊をイラクから撤退させる等、いつものことですが反対だけを掲げています。
これが国政選挙を争う代表的な政党の公約かと見まごうばかりです。わが国の周辺を概観すれば、決して安閑としていられない状況になっています。
北朝鮮の核武装化はわが国にとって極めて大きな脅威であり、対応策を真剣に考えなければなりません。中国の軍事力強化は、東シナ海・南西諸島の権益を圧迫し、さらにマリアナ諸島から西太平洋へと影響力を伸ばしています。このまま放置しておくと収拾が難しい状態になりかねません。
今年の末には韓国の大統領選挙、来年の初めには台湾総統選挙があり、その帰趨によっては朝鮮半島・中国大陸からの圧力が強くなります。来年の秋にはアメリカの大統領選挙があり、仮に民主党が勝つことにでもなれば、さらにわが国の安全保障を再構築する必要性が出てきます。
このような状況の中で行われる参院選は、次世代の国の流れを決める重要な選挙なのですが、自民党以外には自国の安全保障を真剣に考えている政党がないという実態に、非常な危機感を持っています。
国家の安全保障に理念と政策を持たない政党は、頼りにならない無責任な寄り合い所帯のような感じがします。2大政党制が望まれている時に、実に残念な気がします。(07・7・20記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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◎福田秀人の「日本の経営を斬る」 10: 成果主義は、やる気のある人間のやる気を破壊する危険思想(中)
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○成果主義の成功条件の検証

 前回紹介したインセンティブ強度原理と均等報酬原理からすれば、働く者のリスク許容度が高く、リスク最小化での安定報酬指向をもっていなければ、成果主義はインセンティブ効果を発揮することになる。これが、成果主義の第1の成功条件となる。

成果主義論者が、ホワイトカラ−にリスクへの挑戦、さらにはハイリスク・ハイリタ−ンをアピ−ルするのは、その成功条件をみたすためではなかろうか。しかし、人間のリスク許容度を高める方策などあるのだろうか。安定的な収入により家族の生活を安定させる責任をもつ者が、不安定な収入を指向するだろうか。それに、ハイリスク・ハイリタ−ンの追求のような金銭欲にかられた発想、行動を、皆が、各人各様に実行すれば、企業は利己的な個人プレイが錯綜する支離滅裂な状態に陥るであろう。

何よりもハイリスクな行動しか発想できぬホワイトカラ−は、ビジネスのプロとはほど遠い危険人物となろう。医師や教師に、それを要求するのは、狂気の沙汰である。なによりも、素人にとってハイリスクな行動を、知識や技能の優越性を生かしてロ−リスクで成し遂げ、ハイリタ−ンをえるのがプロというものであろう。

ちなみに、プロの専門家の代表のように取り上げられる成功報酬制の弁護士の行動についてアメリカで多くの研究がなされている。それをもとにポール・ミルグロムたちは、弁護士は、勝算が低い案件については、高い成功報酬が提示されても引き受けようとせず、引き受ける場合は高い着手金を要求してリスクをヘッジすることを指摘している。また、高度な案件を扱う大規模な法律事務所では、弁護士に対し、成果ではなく、勤続年数に応じた賃金が支払われている。

成果主義の第2の成功条件は、成果が正しく評価されることである。この条件をみたす代表的な事例はプロ野球の選手であろう。彼らは、試合中のプレイのありようを監督、コ−チなどに完全にモニタ−され、成果も詳細多岐にわたり数値であらわされる。野球は、ビジネスと異なり、100年以上にわたってル−ルもさして変わらず、選手の能力と努力以外の要素が成果に影響することをできる限り排除した環境で行われ、評価基準作成のための膨大なデータが集積し、評価も野球に精通した経験者によりなされる。

一方、ビジネスは、相手が9人で守るならこちらは20人で守るとか、相手が木のバットならこちらは金属バットだ・・・といったようなことが許され、横行する世界であり、新しい仕事が次々と生まれ、その仕事ぶりや成果を正しく評価できる者など誰もいないことも珍しくない。例えば、これまでにない情報処理システムを3億円で構築した責任者が、本当は1億円でできたか、5億円かかるのを3億円で作ったか、また、そのシステムがどのくらい優れたものか、劣ったものか、誰も評価できない。

成果主義論者のなかには、プロ野球の報酬制度を成果主義のモデルとして説く者もいるが、それは、それらが成果主義の成功条件をかなりみたしているからである。それをビジネスの世界で適用できるのは、永年にわたって、同じような組織、ル−ルで、同じような仕事をしている業界、企業のみであろう。少なくとも、新しい課題、仕事が次々と生まれ、仕事の種類や内容をどんどん変えてゆかねばならぬビジネスにおいて、第2の成功条件をみたすのは不可能である。

以上2つの条件を検証するだけでも、成果主義は、ハイリスク・ハイリターンを好むギャンブラーのような集団で構成されるビジネスか、なすべき課題と方法が十年一日のごとき状況にあるビジネス以外では、ディス・インセンティブ効果を生むことになる。のみならず、個人評価をあげるための手段を選ばぬ行動に走り、知識や情報の優位性を逆手にとって顧客をだましたり、反社会的な行動をとって、企業信用を失墜させるようなモラル・ハザードを誘発する危険が高まる。

○目標管理による成果主義の弊害

 テイラーの科学的管理法は、ノルマを一方的に押しつけるものであった。これに対し、昨今の成果主義論では、個人の申告目標をベースに評価者と協議して目標設定をし、その達成度で賃金を決める目標管理方式が提唱されてきた。そして、ウィリアム・マーサー社のように、従来の目標管理は、賃金決定に大きな影響を与えないものであったが、それを与えるよう進化させたかのごとくアピ−ルする論者もいる。

1960年にダグラス・マグレガ−が提唱した従来の目標管理論は、賃金のインセンティブ効果を限りなく否定し、働く者の自主性を尊重して目標を決め、チャレンジさせ、目標を達成できるようサポートしてゆくことでモラールを高めるのが目的であり、賃金インセンティブで目標を設定・達成させようというのは根本理念のすり替えである。

理念をすり替えても、それが高い目標の設定と達成へのインセンティブ効果を発揮すればよい。しかし、安定した賃金を確実に確保しようとし、またそれが家族への責務である者が、高い達成困難な目標を設定するはずがない。むしろ、目標を可能な限り低くするよう努力するはずである。また、ラチェット効果による目標の切り上げを嫌い、目標を大きく上回る成果をあげることができても、それを回避するであろう。成果主義を導入した企業にこういった弊害が生じるのは、理論的にも、直感的にも当然の結果である。

また、ブルーカラーよりはるかに広範多様にして複雑な問題を扱い、しかも、組織の運用や業績に大きな影響を及ぼす予想外の新たなチャンスやトラブル、障害がいつ出現してもおかしくないビジネスの世界で、それらの発見・対処をリードする立場にあるホワイトカラーに、半年や1年も先の目標を賃金の主要決定要素にして固定化し、目標設定時点での主要な目標課題の達成状況をもとに評価を下すのは、活動を狭小化させ、また変化への対応力を大きく削ぐ。目標設定の前提条件が変化し、目標の改廃を早急にしなければならぬ場合、それが遅れ、大きな損失を招く。新たな企画へのチャレンジは、試行錯誤の連続であり、何年もかかる場合もあり、それを途中で適切に評価できない。
 
成果主義でも、目標管理は従来の位置づけで行うにとどめ、評価期間にどれだけの成果をあげたかを評価するだけならまだ何とかなるかもしれぬが(それでも適正な把握・評価は至難だが)、目標の固定化につながる目標管理による成果主義は、組織の硬直化を推進する、かってのソ連の計画経済と同根の危険な官僚発想と考える。
 
従来の目標管理についても、問題がいろいろあり、松島静雄は1977年に、概略、次のとおり指摘したが、成果主義とのリンクはそれらをさらにひどくするであろう。
1)長期的に必要な事項や成果にみえにくい問題が軽視される。
2)自部門の成果のみに熱心となりセクショナリズムが発生する。
3)最初は意欲をもやして高い目標を掲げても、やがてその意気込みが減退しがちである。特に高い目標が失敗するとそうなる。
4)評価の寛大化、平準化作用が生まれる。
5)分業化され部門間の利害が対立する中で、各自の目標を経営計画に向かって絞り上げるための調整作業は極めて困難である。

そして、エドワード・ロウラー3世)は、1990年に、次のような批判をしている。「評価システムは、レートを高くしすぎたり、虚偽の申請が行われたり、非現実的な目標設定が行われたり、評価自体のミスがあったりで、スクラップ&ビルドの繰り返しの運命にある。だからこそコンサルタント会社は、つねに新しいシステムを売り込むことができる」。

福田 秀人 (ふくだ ひでと)
76年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了(経営学・会計学専攻)。以後、主に、企業の危機管理体制の開発・運用や経営再建支援に従事。また、横浜国立大学、慶應義塾大学、法政大学他の非常勤講師、及び、外務省ロシア知的支援プロジェクト講師、海上自衛隊幹部学校講師等を歴任。立教大学大学院教授(危機管理学)、放送大学客員教授(兼、危機管理学主任講師)。
著書:『見切る! 強いリ−ダ−の決断力』祥伝社06年、『管理職入門』東洋経済新報社9
2年、他多数。
福田永一のペンネームで、『誇り高き男たち:日本の自衛官』エイデル研究所83年、「士気と権威:自衛隊の統率基盤と課題」月刊朝雲84年11月、「対談:私の見た自衛官」防衛アンテナ84年8月などがある。
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◎レギュラー執筆者 
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて  123    
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 こうしてついに支那事変に一大転換をもたらした「西安事件」が起きる。
「マオ」を引用する。
「十二月四日に西安入りした蒋介石は、身辺警護に関しては何ら特別な措置は講じなかった。宿舎は西安郊外の温泉保養地として有名な華清池にあり、蒋介石の身辺には護衛数十名が付いていたが、門と敷地周辺は張学良の兵士が警備にあたっていた。さらに、張学良は実行部隊を宿舎に招き入れて下見をさせ、蒋介石の寝室まで確認させていた。
 十二月十二日早朝、事件は起こった。蒋介石は毎朝欠かさず行う体操を終え、着替えを始めたところで銃声を聞いた。張学良の兵士約四〇〇人が宿舎を襲った。蒋介石の護衛兵が応戦したが、警護責任者も含めて多数が射殺された。蒋介石は裏手の山へ逃れたが、数時間後、裸足のまま寝巻き一枚で岩の割れ目に潜んでいるところを見つかった。泥まみれの大総統は、背中に怪我をしていた。
 事件直前、張学良は毛沢東にいよいよ決行することを告げた。秘書から電報を受け取った毛沢東は、破顔一笑して言った。『床に戻りなさい。朝には良い知らせが聞けるぞ!』」
 2000年9月、上海、桂林、西安、北京と、大陸内を一巡したとき、西安で華清池を真っ先に訪問して、保存されている「西安事件発生の地」を見学した。「マオ」に書かれているように、裏手に小高い丘があったが、蒋介石はここに逃れたのである。宿舎には銃弾の痕も生々しく残っていて、蒋介石が監禁されていた寝室なども保存されていた。私は歴史的な現場に立って、当時の蒋介石の心境を想像した。
 彼は、念願の天下統一を寸前にした「大総統」であった。長年の宿敵・毛沢東を、殲滅寸前にまで追い詰めながら、部下の張学良の不甲斐なさに憤って自ら作戦指揮を取り、一挙に殲滅すべく現場に進出したのであったが、彼は周到かつ陰湿な毛沢東のワナが仕掛けられていることには全く気がつかなかった。
 宿舎で一夜を明かした蒋介石は、取るべき作戦の構想を考えていたに違いない。いかにして指揮能力が欠如している張学良の「メンツ」を保ちつつ紅軍撃滅作戦を指導するか!
 いつもどおりに朝の体操を終えて着替えをしていた彼は、部下に与える高邁な「訓示内容」を考えていたのかもしれない。そこに突然銃声が響き、警護の者から抱えられるようにして裏山に逃げたが、多勢に無勢、ついに寝巻き姿のまま、泥まみれで後ろ手に縛られて連れ戻された。その“屈辱”は彼のその後の人生を大きく転換させたに違いない。何よりも張学良の裏切りを、彼に密告する者さえいなかったのである。
ところで、以前取り上げた彼の日記「蒋介石秘録・1」には、「中国士道と日本武士道」として、「日本人は、武士道を、国家民族の魂のありかとみなし、これを大和魂と称して篤く信仰して疑わず、王陽明の知行合一の学説を実践した。『即知即行』とは、例えば道徳、知識、文化に対して、苦心研究して了解することを第一歩とし、続いて篤行実践して実現を促すことを第二歩とする。日本人は、いささかも疑わず、怠らなかった。明治維新ののち、よく西欧の物質文明を吸収し、列強に追いつき、くつわを並べることが出来た理由である」と日本人将校に受け継がれている武士道を賞賛しつつも、彼はその根幹にこそ「中国の精神」があるのだが、日本人はその道理を知らなかった、として彼は次のように言っている。
「中国の古人のいう『三達徳』は『智・仁・勇』であり、また中国古来の軍人精神は『智・信・仁・勇・厳』の五つの徳である。・・・両者とも『仁』の一字が中央にあることを、知らなくてはならない。すなわち、『仁』は、我々の軍人精神の基本であり、中国の一切の固有道徳の一つの中心であり、また、これら諸徳を統括する源泉的な『徳』ということが出来る。これこそ、堯、瞬そして孔子の昔からずっと伝わってきた基本倫理であって、数千年間にわたって相継いできた『道』の中心なのである。もし『仁』がなければ、一切の精神と道徳は、全体を貫くものを失い、高尚、純潔、円満の人格、至大至剛の気骨を完成することが出来ない。なぜならば『道』はもともとただ一つであり、『徳』は必ず完全を求めるものであって、少しでも偏向したところ、欠けるところがあれば、必ず一を得れば一を失うの岐路にはいることとなるからである。
 日本人はこれらの道理を知らなかった。中国の固有道徳の全体的な認識もなかった。そのために、彼らの武士道は、中国固有道徳の、最も中心であり、最も基本的な一点、即ち『智・仁・勇』の『仁』を見落としてしまった。しかも、『智』『勇』のうち、『勇』を特に重んじ、『智』の一事をさえ重視しなかったのである」とし、そして『士道とは、本来中国の精神である』とさえ書いている。
勿論この日記は、台湾に亡命した後のものだから、“プロパガンダ”に近いものもあり、西安事件当時の彼の“心境”には程遠かったに違いない。しかし、皮肉にも“日本人のみならず”彼自身にも『人徳』が欠如していたことを如実に示したのが『西安事件』であった。彼自身が全く予想していなかった「汚辱」を部下から受けたのだから、彼のその後の精神状況に、ある種の「虚脱感」を与えたであろう事は想像できる。まさに「言うは易く、行うは難し」である。  (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信  
 言挙げせよ日本外交−松岡洋右待望論 -5-
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対米交渉

松岡の日独伊三国同盟の締結、ならびに日ソ中立同盟の締結による北門の安全そして軍の南進すなわち仏印進駐への強力な反対、これはひとえに対米関係を考慮の上の外交戦略以外なにものでもない。松岡の外交戦略は日本が地政上の力学としての均衡の上にたって、アメリカに満州国を認めさせ、太平洋を挟んだ日米関係の安定を終局に求めるシナリオであった。アメリカの対日敵視政策(日本を叩き潰す意図)のあるなかで、日本にとって、国際的な力の均衡を背景としない他にどのような外交の選択肢があったであろうか、三国同盟の結果的失敗を糾弾するなら、他にどの選択があったのかを言わなければフェアーとは言えないのである。松岡には蒋介石と重慶での和解の会談をへて、太平洋上で日米中三国会談を行い、劇的な中国よりの日本軍の撤兵、満州国の承認、太平洋を挟んだ東洋和平を決める広大な構想があった。残念ながら近衛の陰湿な嫉妬がこれを妨げたのだった。それどころか松岡が個人的な狭量さで日米の最後の交渉の機会(日米了解案)を妨害、潰したと言うのだ。

そもそも近衛の模索した米国ルートは極めていかがわしい性格があった。

話は昭和15年にさかのぼる。来日した二人の神父はウオルシュとドラウトというニューヨークの郊外にある宗派に属していた。松岡が外相就任早々解雇した澤田節蔵という元外交官が、そのニューヨークの知人を通じ二人の神父を日本の要人に紹介してほしいとの話だった。
二人の主張するところでは“このままでは日米国交は悪化する一方であり、これが解決のためには太平洋を二分割し、極東モンロー主義を共同声明させ平和の均衡を保つ”といった幼稚なものであったが、二人が元フーヴァー大統領秘書シュトュラウスの井川忠雄あて紹介状を持っていたので松岡は面談した。松岡はこのドラウトの胡散臭さを、直感で見抜き全く相手にしなかった。
一方近衛は、ドラウトの“日米和平ドラウト覚書”を受け取り、その中にあるホノルルでの日米首脳会談提案に惹かれ、松岡に相談したが、松岡は当然のことながら相手にしない。松岡は謀略か売名かを見抜いていたのである。他方近衛は溺れるもの藁をもつかむ心境でこの二人の提案に注目していた、帰国後ドラウトより“フーズベルト大統領に面会したが極めて有望”との井川を通じての連絡を受け、この井川のルートを信頼するに至った。一方で松岡の力量に激しい嫉妬を感じていた近衛は、日米和平を達成し自分の手柄にしようと考えたのである。悪いことに松岡に内緒でこのルートを進めることにしたのである。

この神父のルートはアメリカ側の謀略であり、行く着く先の最後通牒たるハルノートを見れば一目瞭然ルーズベルトやハルの時間稼ぎの謀略と判断されるが、何事にも奇をてらう性癖の近衛は見事なまでに引っかかったのである。

松岡がヨーロッパ、ソ連から凱旋帰国せんとしたとき、この神父ルートの危険な“日米了解案”なるものが作成されつつあったことを松岡は知らなかった。

三国同盟、日ソ中立同盟締結の帰国途中満州国に於いて松岡は大歓迎を受け祝福される。そこへ近衛より至急東京に戻るべしとの連絡が入った。アメリカから重要な提案が入っているというのだ。これを聞いて松岡は自分の構想の下、直々駐ソ米国大使スタインハートに頼んでいた件が実現したと思い込んでいた。その誤解は帰国まで続いた。松岡を中傷するものは満州で日米了解案を知りそれに抵抗するために、近衛が一日も早く帰国して欲しいとの要請を理由をつけ延引したとか、述べられているが、これは帰国まで自分のスタインハート工作が功を奏したと思っているだけに間違いである。問題の近衛日記によると“余は自ら外相を出迎えに立川飛行場に赴いた。感情の人一倍繊細な外相には米国案を最初に見せるときが特に重要なりとし。余みずから帰路の自動車の中でこれを説明する心組みだったのである。
ところが外相には宮城二重橋参拝の予定があったので余の代わりに大橋次官が同乗、このデリケートな問題をおおせつかったのである。果して松岡外相は非常に不機嫌でほとんど興味のないような態度であったということである。”

これこそが近衛の捏造の日記であり、松岡に日米開戦の責を負わせるべく、日米了解案に対する松岡の大人げない反発をここで浮き彫りにしたかったのだ。そもそもこの日に松岡は天皇に拝謁、欧州出張報告をすることになっていたので二重橋遥拝の必要は全くなかった。近衛は自ら松岡に状況説明しようとしたが、松岡のせいでそれが出来なかったと言いたいのである。
松岡の車には大橋など3名が同乗した。そこでかっての二人の神父による話を近衛が外相の頭越しで進め、これが日米了解案となったことを知り、松岡は当然のことながら激怒する。松岡はこの日米了解案を闇取引で国際信義にもとるし、アメリカの謀略があると見抜き、検討のため2週間の猶予を欲しいと反対を唱える。松岡はこの背景に陸軍の謀略、平沼一派の松岡追い落とし策謀それに神父を使ったアメリカの謀略を嗅ぎつけ、早速ドラウト神父の身の上調査、岩畔(いわくろ)大佐の調査を命じるともに了解案を検討開始した。
予想通りこの了解案は極めて質の悪い翻訳文で、原文を取り寄せようとしたがこれがなく、手をつくして取り寄せた”原文“がまさに日本に都合のよい訳となっている。この了解案の真相は闇に包まれているが、少なくとも松岡の判断は正しく、これを妄信した近衛以下の能天気ぶりも度を通り越している。この了解案を松岡が潰したため日米開戦の羽目に陥った、松岡主戦論者、近衛平和論者などとの通説は、近衛の自己弁護の一環である。そもそも得体のしれない井川、岩畔、トラウト神父、登場人物からしてアメリカの謀略の匂いが濃厚であり、了解案を真面目に日本がフォローしていれば日米開戦は無かったという説は全くナンセンスと思える。
アメリカはあらゆる謀略を使ってでも、最終的には日本を叩こうとしていたのである。筆者は松岡自身の雄大な構想、すなわち日米中三国会談も実現していたとは思わない。だが、そうだからと言って松岡の考えた三国同盟、日ソ中立条約を梃子とする日米外交戦略自体が、当時おかれた日本の立場、アメリカの原理主義的反日姿勢から考えて、果して間違った選択だったであろうか?松岡は極めて正直であり、常に自己を反省するが故に、聯盟脱退の非を自ら負ったと同様、”三国同盟は一生の不覚”と述べたのも結果の責任を負うという松岡の潔さなのだ。この自ら反省の言葉尻を捉え松岡に全ての非をかぶせ、その性格的問題が破綻を齎したなどとの決め付けるのは、歴史を見誤るものと思う。
日米関係に関する限り、非難されるべきは、松岡への嫉妬心から、アメリカの謀略たる了解案に騙された近衛、さらには米国大使として外相松岡を無視して独走した野村大使にこそ、その他数々の過ちとともに日本歴史の中で日本人にとっての”戦争犯罪人“として断固糾弾されるべきではないかと思う。野村大使などは、米国側に松岡追い落としの示唆を行い、その旨の米国より日本政府に言わせるなど、外交にてあるまじき行為を行った。まさに国家反逆罪に値する行為といえる。其の上寺崎送別会によるパールハーバーの戦争布告通告遅れという日本歴史上最悪の恥辱行為にも関わらず、寺崎と共に何のお咎めのない。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.西山弘道 
「選挙と地震」
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 参議院選挙の選挙運動期間中に起こった中越沖地震。10人の死者を出し、今なお5千人近くの人が避難所生活を続けており、大きな災害となった。中越地震から3年、能登半島地震から4ヶ月、被災された方々には心よりお見舞い申し上げる次第だ。九州地方に多くの被害を出した台風4号に続いての今度の地震ということで、災害列島日本の不安感を改めて人々に植え付けた。

 ところで今度の地震災害が今行われている参院選にどう影響するのだろうか。不謹慎にならない程度に分析してみると、やはり与党有利となるのは否めないだろう。大きな災害が起こった時、人々は財政出動を伴う災害復旧に大きな権限を持つ政権党を頼るものであり、無力の野党からは離れていくものだ。

 選挙と地震の相関関係を調べてみると、最近では2年前の2005年3月に発生した福岡県西部地震の例がある。この地震では死者はなかったものの、玄海島を中心に300棟の建物が全半壊するなど大きな被害をもたらした。地震は4月末、実施予定の統一補選衆議院福岡2区の告示直前に発生した。その選挙結果だが、地震前は劣勢が伝わっていた自民党前職の山崎拓氏が民主党候補を2万票余りも突き放し、圧勝した。災害時の“与党効果”であった。

 今回の地震で、安倍首相は発生のその日のうちに、素早く新潟に入ったことは評価していいだろう。発生の16日午前、長崎市で遊説の最中、連絡が入り、演説を2分で中断、民間機で帰京し官邸に戻った。官邸からは防災服に着替えて、自衛隊のヘリで新潟に向かい、柏崎小学校の避難所や刈羽原発をいち早く視察した。一方、民主党は鳩山幹事長が高崎から車で急遽、現地に入ったものの、小沢代表は在京で動かなかった。この党首の行動の差は大きい。ちなみに3年前の中越地震で、当時の小泉首相が新潟に入ったのは発生3日後だった。

 年金の記録漏れや、赤城農水相の事務所費問題などで、危機管理に疑問が持たれていた官邸も、今回の地震の対応は素早かった。地震発生2分後には官邸の危機管理センターに対策室を設置、午後には溝手防災担当相を団長とする各省庁の担当者で構成する調査団を現地に派遣した。異例の速さだ。

 災害列島日本では、内閣の危機管理の強弱が常に問われる。95年の阪神大震災、時の首相である社会党の村山富市氏は、「何しろ初めてのことなので・・・」と弁解し、失笑を買った。今回の安倍首相は選挙中ということもあるだろうが、さすがに危機管理は万全だった。

 今回の中越沖地震がこれまでの地震と異なるのは、初めて原発が深刻な被害を蒙ったことだ。耐震基準を2倍も超える激しい揺れで、柏崎刈羽原発は火災が発生、放射性物質が大気中に漏れたことも判明し、東京電力は衝撃を受けている。世界の原発設置国もこの初の地震被害に注目しており、大きく報道した。この原発シンドロームは人々にも不安感を与え、政府に徹底究明へ声を集中させることになるだろう。今は現体制=政府を信認するしかないわけで、野党の存在はますます霞んでいく。投票日まであと10日間となった。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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◎奥山篤信の映画評論 香港映画「傷だらけの男たち 原題傷城/CONFESSION OF PAIN」☆☆☆☆
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本年度アカデミー賞受賞作「ディパーティド」は香港映画三部作「インファナル・アフェア」のリメイクである。僕はリメイクは全然感心しなかったのでアカデミー賞受賞には驚いた。その後この原作である香港映画をレンタルDVDで観て驚くとともに、はるかに原作の方が泥臭さ、人間臭、ストーリー展開で上回ることを確認した。

その傑作「インファナル・アフェア」アンドリュー・ラウとアラン・マックのチームが放つ新作がこの映画である。
この映画は香港ノワールの暴力映画と理解していた。そして映画の展開を見て、まさに同じようなノワール映画と思ったが、結果は素晴らしい人間ドラマなのである。このどんでん返しというか急展開のシナリオの素晴らしさには舌を巻く。見事としかいいようがない。
「インファナル・アフェア」と同じ香港ノワールの域に留まらないアンドリュー・ラウとアラン・マックのチームの絶えず新しい挑戦を感じて、ただただ感心するばかりである。

あまりに面白いので僕は筋は語らない。ただこの映画は家族愛を犯罪を通して高々と謳っているのである。家族を抹殺された男の心の傷と復讐そしてそれを成し遂げたとき、自ら自己矛盾に陥る男の苦悩と優しさをなんと残酷にそして美しく描いていることか?僕はこの映画で泣いた。家族愛、肉親愛、友情、恋愛など真の人間らしい感情を偽善という衣ですべて片つけようとするこの日本を想う時、香港人(中国人とは言いたくない)の感性に感動するのである。

いまや中国のトップスターでカンヌ映画祭主演男優賞にも輝いたと二—レオンが見事に男の苦悩を演技する。そして僕が初めて銀幕でみた台湾出身の金城武が素晴らしい。父親が日本人である。世界のスターとなれるマスクと語学力である。楽しみである。

本作もハリウッド・リメイクが決定しており、レオナルド・ディカプリオが出演する予定と。
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◎成澤秀麗の書で語る美(10) 「極」
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「極」  http://www.narisawashurei.com/jp/essay/katu_01.html  (クリックしてください)


この言葉から浮かぶのは自己犠牲ありきの努力ではないでしょうか。つまらない欲望を振り切るから道を極められる・・・その姿は美しい・・・こんなイメージがあります。愛を極めたナイチンゲールは愛されたいならまず許しなさいと言いましたが、この言葉にもたいていの人が自己犠牲を感じるでしょう。
書道も同じようなイメージがつきまといます。「一番書いた時は一回の展覧会のために千枚練習しました」なんて言うと、たいがいの人は「そのぐらい書かないと極められないんだね、私には無理。」と。やったことがない人には修行も自己犠牲の一種にしか見えないようです。当の私といえば、楽しくて書きまくっていたらいつの間にか夜が明けていた・・・という感覚なのですが。
だからこそナイチンゲールは眉間にシワを寄せて愛を尽くした訳ではないと思えるのです。楽しくて夢中になれると感じることをひたすら続けてきたはず。もちろん義務でも自己犠牲でもありません。欲望を捨て去るどころか、むしろ欲望の固まりじゃないと極めたいという気持ちは生まれてこないでしょう。
辛そうに努力した方が価値があるように見えるのは、私たちの心に武士道が根付いているせいかもしれませんね。だからこういう話をすると、なんて軽々しいと眉をひそめる人も確かにいました。でも私はやっぱり、我を忘れるほど楽しめることを見つけて極めてみませんか?と言ってしまうのです。

成澤秀麗 :
山形県出身 書道家、墨絵作家、産業カウンセラー
東北学院大学経済学部経済学科卒
青山学院大学文学部教育学科卒
7年のOL生活と両立しながら書道師範を取得
東京書作展にて内閣総理大臣賞を受賞後、2002年に独立
著書『文字が変われば、ココロも変わる。』(学研)など。
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この記事へのコメント

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西山さんの地震と選挙の分析は、
共感できませんでした。

安倍さんは、TOPが現場にいってどうするの?というのが自分の感想です。



日時:2007年7月23日

First Class Magazine日時:2007年7月22日


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