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甦れ美しい日本 第123号

発行日: 2007/6/16

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2007年6月16日 NO.123号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >

◎ゲスト執筆者

1. 塚本三郎  凋落するアメリカ経済につきあう日本
2. 松島悠佐  軍事のはなし(37)「日中友好35年、日中戦争70年」 

◎福田秀人の「日本の経営を斬る」(5)会社をつぶすエリートの条件 

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤 守      大東亜戦争の真実を求めて118
2.奥山篤信   松岡洋右のジュネーヴ (6)42対1の演説、さらば連盟よ -5- (完結)
3.西山弘道    「『消えた年金』パニック」
4.松永太郎  「プレスティージ」

◎成澤秀麗の書で語る美(5) 「克」

◎奥山篤信の映画評論 
 
1.アメリカ映画「プレステージ 原題 THE PRESTIGE」☆☆☆☆
2.中国映画「女帝(エンペラー) 原題 THE BANQUET/夜宴」☆

◎「青山二郎の眼」展を鑑賞して
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1. 塚本三郎 
  凋落するアメリカ経済につきあう日本                
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 二十世紀半ば頃のアメリカは、まばゆいばかりの繁栄ぶりだった。ニューヨーク・マンハッタンの摩天楼は、世界を威圧するに充分の威容を誇示した。
 この時代の産業界には、石油王ロックフェラー、鉄鋼王カーネギー、鉄道王ヴァンダービルト、火薬王デュポン、金融王J・Pモルガンなど。彼等の出世物語りは、日本の若者達にも、大きな夢の神話であった。
 米国は当時、日本人にとって、数百年かけても、彼等には追いつくことも出来ない、スーパースターであった。数十年後に日本の乗用車が、全米を圧する状況など、当時の人達には想像だにできなかった。
米国は、その後、スーパースターとしての地位を維持するため、次々と変貌した。まず金融資本が弱小企業を買収していった。「シェアで一番」と信じ、金の力こそ勝負を決める。企業買収は、経営戦略の中核で、買収される者のほうが悪い。それがアメリカの産業界の風土となった。米国の投資する対象は、やがてハイリスク・ハイリターン志向となり、投資ではなくむしろ投機となった。それが前世紀までのアメリカの英雄達の歴史ではなかったか。かくして、百年を超える金融戦争の経験を重ねたアメリカから、自由化、解放を迫られた小泉内閣は、丸裸のままこれに応えた。
 官僚王国の日本は、かつての国鉄、そして郵政、今また社会保険庁等々、国家と国民生活を、自由に操った。高級官僚も労組も、天下は俺達のものと自負した。同族意識で、国家と国民を単なる利用の道具とみなしており、民間企業では考えられない、無責任ぶりであった。要求が通らねば、列車を止めると言う、かつての国鉄労組。年賀状は配らないと言う、かつての全逓労組。預かった年金を、湯水の如く保養施設グリーンピアに投資して、赤字を続出した社会保険庁。
小泉前首相は、竹中担当大臣と共に、十五年前の国鉄改革、民営化の成功の例にならって、労使の横暴にメスを入れるべく、民で出来ることは民で行なえ、それが開放経済と進歩への道であると考えた。かくして自由化への当然の道と主張して、郵政民営化と金融自由化を、ペアであるかの如くみなした。金融の自由化は、理論的にも、世界の潮流としても、そして自由主義国日本の立場からも否定出来ない。だからといって、自らは産業界に生きた経験のない、小泉、竹中両氏は、何の準備と対策も無いままに開放した。結果は評者の言の如く、「虎の前の猫」日本ではないのか。
 アメリカ経済の今日は、大げさに言えば残念なことに、もはや生産力をあきらめた、と疑わざるを得ない状況である。かつての如く、新しい製品を作るのでもなく、新しいサービスをするのでもなく、新しい設備投資をするのでもない。まして地域のサービスや、従業員の雇用を増大させることすら、あまり考えないようにみえる。
 そのような国の人達の投資が、金融の自由化に便乗して、投資した国である日本の社会に、何の付加価値ももたらさず、肥大化した豊富な資金力と、投資のノウハウを持っただけで、ますます豊かになる。しかも、その投資ファンドの実体さえ明らかに示さない。
 このような無国籍集団の投資は、単に株式市場に止まらない。投資対象は、通貨、債権、不動産、石油、貴金属へと対象を広げ、世界中に拡大している。ハゲタカと言われるゆえんである。

ニセ札といわれた米国の$

 米国は一九四五年、プレトンウッズにおいて、「$は国際通貨」と約束した、IMFの出発である。日本は一九四七年に加盟した。
原因は、物々交換から、通貨による交易の時代に入ったからである。第二次世界大戦の勝者となった米国に、食糧、衣料、鉄鋼、エネルギー等を求めて、世界各国の産業界の責任者は、金塊を抱えて殺到した。その結果、当時全世界保有金塊の約八〇%が米国に集まった。従って米国当局は、自国の通貨$と、金との交換を約束し、その裏付けとして「$を兌換券」として信用させたのである。交換レートは、金一g四〇五円で、$が最も高価とした。その条約は二十年余続いた。しかしその約束は、米大統領ニクソンのドルショックによって破棄された。一九七一年のことである。それでも$は、国際通貨としての威信は急落したが、依然として国際通貨として君臨し続けている。
その後、更に三〇数年を経た今日、米国の通貨$の乱発によって、ドルは当時の一$三六〇円から一二〇円に下落。金の価格は、今日現在、一g二六〇〇円と、当時の六倍以上となった。$の価値は六分の一以下に下落したことになる。たまりかねた欧州各国では、対応処置として、「ユーロ」を欧州通貨としたことは周知の通りである。
 金との交換の責任を捨てた米国は、資金が不足すれば$を増発し、信用が疑われれば$の金利を上げる等の操作によって、世界経済の主導権を依然として握っている。 
しかし、基軸通貨発行元の米国の、貿易と財政の双子の赤字は眼を覆うばかりである。
 イラクへの米軍の攻撃は、テロとの根絶をめざして戦い、忽ち勝利したが、しかし、民主政治に慣れた米政権にとって、テロの真の怖ろしい姿と、中東における異教徒の執念は、想定を遥かに超えていた。彼等は、目的の為には手段を選ばないこと、生死をも意に介しないこと、国内でさえも、自他の犠牲者の区別を許さない。騒動さえ続けば良いと考える仕打ちに、米国の政権は騒然としている。かくて、米国民の政府の不支持は、逆に七五%となっており、双子の赤字増大の今一つの原因となっている。
 自由世界の各投資市場は、米国の強引さに加え、欧州勢まで加わって臨界状態である。
危ないとみた、中国及びアジア新興国は、無防備な市場開放に歯止めをかけている。
 中国は、独裁政権の悪の強みを発揮して、アメリカと競って、資源獲得外交で、南米、アフリカ等へ、資金のみならず、兵力をも投入して、世界各処で争乱を起しつつある。

ものづくりの日本を守る

長期的戦略に立ち、着実な設備投資や、人材育成で成長をめざし、労使協力と、終身雇用の物づくりの国日本は、米国とは、経営形態で根本的相違がある、欧米狩猟民族の集合体と、農耕民族日本との、決定的な相違が目立つと言うべきか。
人間生活には、多様な生き方がある。人それぞれに特長、特技を持って生まれ育ったと思う。国家もまた、物づくりの特長と宿命をもって、その国なりの歴史を経て来た。
今日の日本は、民主国家アメリカと、独裁共産国家中国との間に挟まって、好むと好まざるとを問わず、付き合ってゆかねばならぬ立場にある。しかし、それに迷わされてはいけない。
日本は金融の世界では、余りにも幼稚である。否、金融の世界に足を踏み入れることは、むしろ邪道だ、とさえ教えられた歴史がある。
「ものづくり大国日本」は負け惜しみではない。日本の新商品の開発、技術の開発と革新性、品質の向上と生産性向上は、販売力の優越性となり、世界市場に君臨している。
それが大企業となった場合には、従業員間のチームワークの妙を発揮して、海外進出企業での成功の要因ともなっている。
内部保留を厚くして将来性を高めることは、結果として、株主及び役員に対する配当と給与を抑えることとなり、そのことは、株価の低迷を招かざるを得ない。
これが、企業買収、合併へと連動している。小泉、竹中両氏のとった施策、即ち市場の自由化は、結果として米国の急速な参入を招き、日本的生産方法を破壊しつつある。
外国の投資ファンドは、日本的経営こそ、最も狙い易い餌食とみられている。
日本の会社は例えて言えば、「中身が良くて安価な商品」である。
外国の投資ファンドの狙いは、日本企業に対して、手に入れた企業の、経営戦略を度外視して買収し、短期保有で転売、或いは解体して資産扱いしているとみられる。
配当金の倍増も、株価の吊り上げも、株主にとっては正論である。しかし、企業には、多くの従業員が、会社の主力となり、生涯の生活設計をもとにして勤務している。まして取引の相手方もまた、同じ運命の下で活動している。
企業防衛の為に、漸く、官も民も外資に抗戦の気構えで対処する必要にめざめて来た。
それなのに、政府も官庁も、自由世界に生きてゆく日本の宿命として、ただただ表立っての防戦は難しいと嘆くのみ。
最も大切な防戦の担い手は、企業内で働く労働者であると私は提言したい。
転売を前提としてわが社を買収するならば、短期保有では利益は得られないぞ、と対抗出来る一つの方法は、企業内で働く労働者の態度如何である。
労働者は、自らの職場を守る能力と責任が在る。労働者が、自分達の職場の買収に対処して、強硬に反対したならば、転売先は容易ではなくなる。
いいにくい話であるが、かつての官公労働組合は、親方日の丸で、つぶれる心配のない
相手には、荒っぽいストを打ち続けた。これに反して、民間労組は。荒っぽいストは自分達の会社を傷つけ、自分の首を絞めることになるから、無責任に荒っぽいことはしない。従って民間労組は、穏健にして堅実であると、日本的雇用は高い評価を維持して来た。
 しかし、わが社を乗っ取り、転売を企てるとみれば、わが職場を守る為に、いつでもストライキを打つ。買い占めても、転売先が見つからないようにと、堂々と「組合でストの議決」をする。即ち「企業を守る為のスト権」の確立をすすめたい。
また株主や経営者に対しては、ことと次第にもよるが、これに対応して、採算の増大のため、徒にコスト削減のみに力を注ぎ、そのため、徒に派遣労働者を増やして、従来の労働者の「終身雇用を諦めさせる態度」をとるべきではない、と主張する。
米国社会にみられる如き、倫理なき、虚構の市場に迷わされるなという、労使の決意こそ、企業を守る力となる。米国の経済に付き合わされて、日本国の持つ特長、「物づくり日本」の固有の長所が、ハゲタカによって崩壊しようとしている。
日本の労使は、日本国家を支えて来た体制を、今後とも守る必要を提言する。
同時に、アメリカとの頼もしい同盟国日本は、外交、防衛の面で、その結び付きを更に強固にし、真の同盟国らしく、血の通った安全保障体制を前進させることは申すまでもない。                    

塚本三郎;                
愛知県名古屋市に生まれる 
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学 
終戦とともに労働組合運動に従事 
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学 
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業 
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回) 
昭和 35年 民社党結党に参加 
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む) 
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任 
平成 元年 民社党常任顧問に就任 
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章 
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2. 松島悠佐 
  軍事のはなし(37)「日中友好35年、日中戦争70年」        
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今年は、日中友好35周年、日中戦争への本格的な突入から70年の節目の年になっています。
日中友好の方は、江沢民による徹底した反日教育によって、一昨年の夏のサッカー・ワールドカップの騒ぎなど、反日行動のピークだった時期から見れば、手のひらを返したような中国の変わりようです。
日中両国でさまざまな友好の催しが計画されていますが、表面だけのぎこちなさが残っています。
日中戦争の方は、南京事件70周年を期して「南京大虐殺」をテーマにした映画が、アメリカ・中国・カナダなどで多数製作されており、今後世界中で放映されることが予想されます。
そのほとんどの内容は、アイリス・チャン氏著作の「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」と同様、日本軍の非人道、残虐性をアピールするもののようです。そこには明らかに、真実の歪曲・歴史の捏造があり、それが世界中に報道され、日本人に対する誤った印象を世界の人々に植え付け、反日・侮日の感情を定着させる危険性があります。
南京事件の真相については、相当以前から各種の機関で少しずつ明らかにされてきましたが、30~40万人の虐殺は捏造であり、日本に着せられた汚名であることは明らかです。そのことは、亜細亜大学教授の東中野修道氏の著書「南京虐殺の徹底検証」(展転社)に克明な調査の結果が記されています。
「南京での死者は1万数千人。うち戦死が1万人前後。日本軍による便衣隊(私服を着たゲリラ部隊)の処刑が数千人。しかしこれは合法であり、日本軍の戦時国際法違反はなかった。」というのが、東中野氏の見解です。
便衣隊の大量処刑についての意見もいろいろあると思いますが、30~40万人の虐殺というような事実に反する誇張は正さなければなりません。
今、日本文化チャンネル桜代表の水島総氏が中心となって、映画「南京の真実」が製作されています。
水島総氏は、「反日プロパガンダの意図的な流れをくいとめ、日本人として、わが国の名誉と誇りを守るために、この映画の製作を決意し、世界への配信を実現しなければならない。」との決意を語っています。
戦争は国にとっても兵士にとっても異常な事態であり、戦場での事実は往々にして歪曲され、自分の都合のよいように作り変えられる要因をはらんでいます。わが国の自虐史観と中国共産党軍の正当史観によって、相当に事実が曲げられていることに、われわれはもっと注意を払って事実の追及をすることが必要です。
70年前の昭和12年7月7日に起きた盧溝橋事件に端を発して、日中戦争(わが国では当初、北支事変と呼び、その後支那事変と命名していました)が始まりました。この盧溝橋事件も、どちらが先に発砲したのか、事実がわからないまま、関東軍が仕組んだのではないかと長い間見られていましたが、今では、中国共産党が蒋介石の国府軍と日本軍を衝突させるために仕組んだ挑発だったことが明らかになってきました。
戦争には謀略が付き物であり、自虐史観に立つと真実が見えなくなる危険があります。まして、中国共産党のように、党の政策に利用する意図を持って事実を歪曲する手法を加えると、真実は把握できないようになります。
戦史を正しく見るには、一切の先入観を排除して、事実を正しく調査し、それを積み上げて行かなければなりませんが、それには膨大な資金と労力を要します。
南京の新実を明らかにして、歴史を歪曲した反日プロパガンダに立ち向かうことは、本来なら国家が取り組まなければならない仕事ですが、それが進まぬことに業を煮やして、自らの資材を投げ出し、浄財を募って実行に移している水島総氏の情熱には、多大の敬意を評するしだいです。「南京の真実」が、大虐殺の虚構を暴き、日本の汚名を返上してくれることを期待しています。
因みに、「南京の真実」製作委員会の連絡先は次のとおりです。
・TEL:03−5464−1937
・FAX:03−5464−1938
http://www.nankinnoshinjitu.com/           (07・6・15記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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◎福田秀人の「日本の経営を斬る」(5)会社をつぶすエリートの条件   -----------------------------------  
○フォーシブル・エントリーを決行したアメリカ軍

アメリカ軍は、いくつもの国に跨る広範な地域に対する、大規模な軍事行動を想定した統合作戦計画を作成している。それには、平時に、1.5〜2年かけて作られる熟慮計画(デリベレ−ト・プラン)と、危機が発生しそうな時に、短時間で作成する危機対応計画(クライシス・アクション・プラン)がある。そこで注目すべきは、「熟慮計画が想定したとおりの事態が発生することはありえない」とされ、実際に危機が発生しそうになったら、それをたたき台にして、危機対応計画を作成することである。

また、熟慮計画も危機対応計画も、変化に対応して、随時、修正されるだけでなく、「破棄されるまで有効」と、破棄を想定している。さらに、武力行使にあたっては、前線への戦力投入を優先し、補給などを後から強化してゆく強制的戦力展開(フォ−シブル・エントリ−)と、補給などをしっかりと整えた上で戦う管理展開(アドミニストレイティブ・ディプロイメント)のいずれかを選択する。

ちなみに、03年のイラク進攻戦は、「イラク軍がルメイラ油田の爆破準備に入った」との諜報員よりの情報により、攻撃前の大規模空爆を中止し、地上軍を一気に突入させた強制的戦力展開であった。補給が追いつかないことを批判する評論家がいたが、それはお門違いの評論であり、補給が追いつかないことは先刻承知の進撃だったのである。一方、イラク軍は、空爆してから地上軍がくると思い込んでおり、虚をつかれた形になって、大混乱し、ろくな抵抗ができなかったとのことである。

○アメリカ軍の計画の作成と審査

ちなみに、熟慮計画は、「導入→作戦構想の作成→計画の作成→計画審査→支援計画」といった5つの段階をふんで作成されるが、そのうちの計画の作成は、次の8つの段階をふんで作成される。
1戦力計画の作成:作戦構想を実行するために利用できる戦力を確認し、時系列戦力展開デ−タを作成する。
2補給計画の作成:補給品、装備、補充兵員の必要量を、展開の各段階ごとに見積もる。
3兵器使用等に関する計画:省略
4輸送計画の作成:補給品の輸送、整備を要する機材の後送、非戦闘員の救出、傷病兵の後送などの計画作成。
5欠格事項の見直し:省略
6輸送可能性の分析:作戦計画が輸送面から実行可能か見直す。
7戦力展開デ−タの最終調整
8計画の文書化

以上により作成された計画を、統合参謀本部議長が、次の基準で審査し、司令官は、その意見に従って計画を修正する。
1適合性:計画の範囲と構想が任務に適合し、仮定は妥当か。
2実行可能性:使用可能な資源を使用して、任務を達成できるか。
3整合性:統合ドクトリン(教義)と整合しているか。
4受容性:予想される人的・物的・時間的コストが成果に見合い、法的・軍事的・政治的に受容可能か。

会社でも、この審査基準は、「軍事的・政治的」を「経営的・社会的」と読み替えて適用すべきであろう。また、計画の実行にこだわる計画主義は危険だが、計画を熟慮して作り、実際にいかに戦うかという戦略のたたき台として用いるのは、戦略をつくる手間と時間を大きく減らし、戦略が場当たり的なものになる危険を軽減する。

○戦いを知らないエリートの脅威

計画を立てることをもって成果とし、現実を見みずにPDCAサイクルにこだわる人間は、新たな仕事を命じられれば、手間ヒマかけて計画を作り、大きな権限や資金と多数の人間を要求する。失敗すれば、それらの不足や、関係する社員や取引先の怠慢とかミスをあげつらうか、予想外の事態の発生を強調する。彼らの最大の特徴は、「新しい試みで問題が発生すれば、問題をいかに解決するかを考えず、問題の発生を理由に試みを中止する」ところにある。

彼らは、「戦いが嫌いな人々」であり、権限と計画にこだわり、「決められたことしかやらない」のではなく、「やれることしかやらない」のである。ただし、怠慢とは違い、「やれることは熱心にやる」人が多い。そういった人々は、失敗をせず人事考課も悪くない。その一方で、戦いに挑む人々は、大きな失敗をして、解雇や左遷の憂き目にあう確率が高い。そこで、戦いの嫌いな人々が、エリートといて栄進し、会社の存続を左右するような意思決定にも関係する役員、さらにはトップに登用されることがある。

しかし、彼らに、戦いの決定や指導はできない。彼らは、得意な分野の管理には有能であっても、戦いには無能である。また、戦う人間を、危険なトラブルメ−カ−として排除してゆく。おかげで、会社からチャレンジャブルな戦略も気風も消え去り、活動は停滞し、変化に対応できないようになる。彼らを、トップはもとより、意思決定が必要な要職につけるべきではなく、ついていれば、企画か管理だけでよい役職に変えるべきである。そこでは、彼らは、大きな貢献をするであろう。経営は戦いであり、戦いが嫌いな人々に、重要な意思決定をゆだねるのはタブ−である。

ただし、戦いが嫌いではなくても、戦いの能力やセンスをもっていない人間は、さらに危険である。それは、ちょっとした成功経験に自信をもってしまい、希望的観測に支配され、見切りができず、ついには無謀な戦いにのめり込む人間である。そして、会社の不幸の多くは、こういった人々がトップにつくことにより生まれるように思うが、いかがなものであろうか。

*本論は、拙著『見切る!』の2部3章「計画至上主義の脅威」の一部を抜粋・修正した。

福田 秀人 (ふくだ ひでと)
76年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了(経営学・会計学専攻)。以後、主に、企業の危機管理体制の開発・運用や経営再建支援に従事。また、横浜国立大学、慶應義塾大学、法政大学他の非常勤講師、及び、外務省ロシア知的支援プロジェクト講師、海上自衛隊幹部学校講師等を歴任。立教大学大学院教授(危機管理学)、放送大学客員教授(兼、危機管理学主任講師)。
著書:『見切る! 強いリ−ダ−の決断力』祥伝社06年、『管理職入門』東洋経済新報社9
2年、他多数。
福田永一のペンネームで、『誇り高き男たち:日本の自衛官』エイデル研究所83年、「士気と権威:自衛隊の統率基盤と課題」月刊朝雲84年11月、「対談:私の見た自衛官」防衛アンテナ84年8月などがある。
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◎レギュラー執筆者 
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて118
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中国国内では、蒋介石と毛沢東に代表される権力争いが熾烈であり、その蒋介石も毛沢東も、実は彼ら自身の内部に、それぞれの『権力闘争』を抱えているという複雑怪奇な図式が明瞭になる。「群雄割拠」とはよく言ったものである。
このときの蒋介石の心理状態を「マオ」は次ぎのように書いている。
「蒋介石は日本に降伏する気はないものの、宣戦布告する気もなかった。現実的に見て中国に勝ち目はなく、日本と対決すれば中国の破滅につながると考えていたからだ。そこで、蒋介石は降伏するでもなく全面戦争に出るでもない、極めて異例などっちつかずの態度を選んだ。それが可能だったのは、中国が途方もなく大きく、また、日本が徐々にしか侵略してこなかったからである。蒋介石は、そのうちに日本がソ連のほうを向いて中国のことを忘れるのではないか、という希望さえ抱いていたかに思われる」
 しかし部下である張学良の考えは違っていた。前述したように、彼は共産党と同盟し、日本との決戦に臨む考えがあることをソ連に明言していたのである。
しかしソ連は、彼の力量を信じてはいなかった。むしろ中国の内戦状態が混乱すれば、逆に日本に征服されやすくなり、それはソ連にとっても最も避けなければならないことであったからである。ソ連はいかにも彼の提案を検討する振りをしつつ、時間稼ぎをしていたのである。
 一方毛沢東にしてみれば、張学良と手を結び、蒋介石に対抗するという野心があった。そして中国全土を支配するつもりだったのである。
 張学良の方は、毛沢東の提案にソ連の裏づけを期待していた。そこに上海から、聖ペテロ教会牧師の肩書きを持った「共産党の秘密諜報員」の薫牧師が、張学良の司令部を訪問する。「マオ」を引用する。
「・・・神に背いた薫牧師は、自分は上海で毛沢東の息子達をひそかに預かっている、彼らをソ連へ送ってコミンテルンが運営する外国共産党指導者の子女専用の学校へ入学させようという計画がある、と話した。ついては、少帥(張)のほうで毛沢東の息子達のソ連留学に同行する使者を出していただけないだろうか、と。
 毛沢東は、一九三〇年に国民党に処刑された妻楊開慧との間に三人の子供をもうけていた。母親が処刑されたあと、息子達は上海に連れて行かれ、共産党の地下組織が面倒を見ていた。子供達は、悲惨な境遇に置かれていた。一番下の岸龍は、上海へ移されてまもなく四歳で死亡した。後の二人、岸英と岸青も、人目を忍んで暮らさなければならないため学校にも行けず、薫家以外で友達を作ることもできず、しかも薫家はいつもぴりぴりした雰囲気だった。薫は子供達を前妻に預けたのだが、そのおかげで前妻は危険と波乱の生活に巻き込まれるはめになった。それに、どのみち、前妻は毛沢東の息子達に特に愛情も抱いてもいなかった。幼い兄弟はたびたび家を飛び出し、浮浪児として暮らした。後年、上海孤児の映画を見た毛岸英は感情を高ぶらせ、弟と自分もあのような暮らしをしていた、歩道で眠り、ゴミ箱をあさって食べ物やタバコの吸殻を拾っていた、と、妻に語ったと言う。つらい境遇で暮らす息子達に、毛沢東は言葉一つも送ったことはなかった」
 この部分は冷血な毛沢東の人間性を明白に描いている。
余談になるが、毛沢東の長男・岸英は朝鮮戦争に出征し、彭徳懐の司令部でロシア語翻訳者として勤務していたが、1950年11月25日、米軍の空爆で死亡した。朝鮮入りして1ヶ月過ぎた頃で享年28歳だった。
「毛沢東の私生活(李志綏著:文芸春秋社刊)」によると、毛沢東の最初の妻・楊開慧は一九三〇年に夫を裏切ることを拒んだため国民党に処刑されたのだが、毛沢東はその頃数百キロ離れた江西省のソヴィエト基地にいて、既に二人目の妻・賀子珍と結婚していたという。楊開慧は毛沢東に捨てられていたのである・・・。
 次男の岸青も朝鮮戦争では党中央委員会宣伝部に通訳として勤務していたが、上海で浮浪児生活をしていたとき「警察官から受けた野蛮な殴打に起因する」精神障害があったという。そして1952年に始まった党幹部に対する反腐敗、反浪費、反官僚主義の「三反運動」中、同僚の一人の不正を見た毛岸青が怒りに任せて彼を殴りつける事件を起こしたが、毛主席は事件を耳にすると激怒し、「息子を手厳しく叱責した」という。毛沢東がとった処置は全く逆の筈で信じがたいのだが、その理由は全く分からない。そのため岸青は、精神病を触発され入院する。
 精神病と診断された岸青は、大連に送られ完全看護付きの一戸建てで暮らしたが、やがて看護婦と恋に落ちる。ところが毛は既に朝鮮で戦死した岸英未亡人の妹を内定していたため、看護婦は北京へ引き上げさせられたという。
共産主義者の非人道性を物語るものだが、既に毛沢東自身が「精神を犯されていた」という説もある。                    (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信  
 松岡洋右のジュネーヴ (6)42対1の演説、さらば連盟よ - 5- (完結)
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連盟との提携はこれ以上は不可能だ

松岡全権は上記のごとく、最終的、悲壮そのものの長演説をおこなったが、今になってはすべてが無駄であった。その結果は予期したがように42対1。
この結果に対して、松岡全権は、議長!!と鋭く発言を求め、次のような声明をなしたのである。そしてそのまま自席にも戻らず、代表部一同を率いて堂々と退場したのである。議場はシーーンとしてわが代表部を見送るものもなかった。

その松岡全権の最後の宣言
報告書草案が今や総会によって採択せられたこ
とは、日本代表並びに日本政府にとって、深い失望と悔惜を齎すものである。日本は国際連盟創立の当初よりこれに加盟してきた。1919年には日本代表は盟約書の起草にも参与した。

我々は人類が協力しうる最も偉大な目的のために

世界の列強と共々に相並んで、これが加盟国たりえたことを少なからぬ誇りとしてきた。世界人類によって久しく要望せられた共通の目的を達成せんがために、連盟の同僚 他加盟国と協力することは常に我々が心から成る希望であり喜びであった。
ゆるぎなき平和の存続を要望すること、この同じ目的は、常に割られらが思索と行動の原動力をなすものであるとことを寸毫も疑わぬものであるがゆえに、いまや我々が遭遇する事態に対しては、深くこれを遺憾とするものである。

日本の政策がその根本において、極東平和の確立と、全世界の平和の招来に貢献せんとの純正なる希望により設定されたるものなることは、先に周知のところである。然しながら、日本は総会によって採択された報告書を受諾することは不可能であることを発見した。よって特に,報告書に含まれる勧告条項は、該地方に平和を確保すべき性質のものとはみなされざるべきことを詳細に指摘した。ここに日本政府は、日本と他の加盟国とは極東平和達成のための様式についてはその意見を異にするものであるとの結論に達せざるをえない。

かつ日本政府は、日支もんだに関して国際連盟と提携せんとの努力は

いまやこれ以上なし得ざるに到ったと思惟せざるを得ないのである。しかしながら日本政府は極東平和の確立のためには、かつまた諸外国との友誼親善の保持のためには、最大限度の努力を惜しまないであろう。日本政府が、人類の福祉に貢献し、世界平和に寄与する事業のために誠意をもってこれらの諸国と提携し、不幸なる報告書採択の結果による諸事情の許す範囲内において、可能なる限り、諸国との提携をとる政策を今後とも固執すであろうことは、これは付言するまでもないところである。
この部屋を去るにあたり、日支問題解決のために、理事会諸卿並びに議長及び総会の全諸卿がこの一有半歳の長きにわたって、快く提供させられた努力に対して、我れが心から成る感謝をささげるものであることを代表部に代って一言ご挨拶をなすものである。 完結

注:次回より月刊日本』2003-12月号に掲載された「松岡洋右待望論 言挙せよ日本外交」に若干修正加えたものを連載します。無能で外交官という職業を食い物にしている国益意識なき芸者としか言えない日本の外交官に鉄鎚を下すためにかっての偉大な松岡洋右を取り上げ続けたいからです。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.西山弘道 
 「『消えた年金』パニック」
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 消えた5千万件の年金、年金記録問題は毎日のように社保庁の新たなミスが報道され、年金パニックの様相を見せてきた。全国各地の社会保険事務所には問い合わせの電話が殺到し、不安に駆られた人々が相談窓口に押し寄せている。関西では、怒りに駆られた男性が、応対の社保庁職員の態度が悪いと殴りかかる傷害事件まで起きた。まるで30数年前の石油ショックの時の、トイレットペーパー騒ぎの様相だ。トイレットペーパー騒ぎは、作られたものだからすぐ収まったが、今度の年金記録問題は収まりがあるのだろうか。政府は1年間で、5千万件全ての照合を終えるとしているが、杜撰な今の社保庁の対応が続く限り、また新たなミスが発覚して報道もエンドレスに続くだろう。

 週刊誌では、歴代社保庁長官の豪邸がグラビアで特集され、またまた庶民の怒りを買っているが、年金官僚のこうした、民を民とも思わない態度は実は、戦前の内務省官僚の体質に根ざしているのだ。

 年金制度が始まったのは、太平洋戦争最中の昭和17年。「労働者年金保険」として、主に工場で働く肉体労働者を対象にした。戦争末期の昭和19年には、「厚生年金保険」として、事務職と女子労働者にも拡大した。つまり、年金制度は戦時中、軍費を調達するため、労働者の賃金から強制的に貯蓄させるという戦争遂行に沿う、戦時立法だったのである。従って当時の年金官僚、つまり内務省の役人は戦時労働者から集めた膨大なカネを、給付することなどは考えず、戦費やその他に湯水の如く使った。また平均寿命50年の当時は、年金は老後というよりも、事故や疾病の障害保険としての意味合いが多く、実際の給付は戦死などで少なかったのだろう。

 戦時立法だった年金制度は戦後も残り、昭和34年、岸内閣の時に「国民皆保険」の下に国民年金法が公布された。そして年金官僚も戦前の戦費調達と変わらない感覚で、年金積立金を湯水の如く使い、それが全国12ヶ所に建てられた豪華なグリーンピアの施設に蕩尽されたのである。申請しなければ支払いには応じないという「申請主義」の根底には、この年金官僚の「蕩尽感覚」があるのだ。

 とにかくこの年金記録問題は1ヶ月余りに迫った参院選挙に今のところ、大きな影響を与えるだろう。そして、コムスンの破綻問題も介護制度の先行きの暗さを示すものとして同じく、選挙に影響を与えるかも知れない。特に官房副長官時代、コムスンの折口雅博会長に肩入れしていたという安倍首相には、ダメージとなるであろう。永田町にはすでに安倍氏と折口会長が料亭で撮ったツーショットが出回っている.

 12日、政局に本能的な直感を持つ小泉前首相秘書官だった飯島勲氏が都内での講演し、「(参院選では)与党が過半数を10から12,13議席割る大変な事態に陥ると率直に見ている」と惨敗を予言した。自民党は51議席を割れば過半数割れとなるのだが、飯島氏の予言ではつまり40議席台に落ち込むということだ。面白いのはその翌日、今度は当の小泉氏が自民党の武部前幹事長のグループの懇親会で参院選挙について「結果がどうであれ、右往左往すべきではない」と述べて、飯島氏の予言に平仄を合わせたことだ。小泉氏も惨敗を嗅ぎ取っているのだ。

 自民党は3年前、前回の参院選で、小泉〜安倍のゴールデンコンビで臨んだにも拘わらず49議席しか取れず、敗北した。敗因は前回も年金問題だった。どうやら、今回も似たような展開となってきたようだ。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。-------------------------------------
4.松永太郎
 「プレスティージ」
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「プレスティージ」(prestige)というカタカナ言葉は、日本語では「地位が高い」とか「特権階級」とか、という意味で使われている(もとの意味もそうですが)。
しかし、「プレスティージ」という言葉が、実は「マジシャン(大掛かりな手品師)」の言葉でもあったことは知りませんでした。非常に渋い名優となったマイケル・ケインが、この、すばらしい映画の冒頭で、かわいい女の子に説明しています。「マジシャン」の演技には、3つの段階があるんだよ、と。
まず「プレッジ」(誓い)、このときマジシャンは、これから、こういうことをお目にかけます、と言い、観客の期待を最大限、高める。たとえば、ここにいる美女を消してしまいます、と宣言する。
次は「ターン」(転回)で、実際に美女を消してしまう。では、最後の「プレスティージ」とはなんでしょう。これは観客を「現実」にもどす段階である。美女(消してしまっハトでもいい)が、この世に戻ってくるのである。
マジックを見に来る人、手品を楽しむ人は、「堅固な現実」(ソリッド・リアリティ)というものを信じている。しかし「堅固な現実」を信じているだけでは、人生、味気ない。それで、少しだけ、だまされて、その間だけ「夢の時間」を楽しみ、それから「ああ、おもしろかった」と言って、家に帰りたい。
だが、その前に、「現実」に戻してもらわなければ、困る。輪切りになった美女が、どこかへ行ってしまいました、では困る。水槽から出られなくなった人はどうなったでしょう、では困る。ちゃんと水槽から出てきて、みんなの前で拍手喝采を浴びなければ、ならない。
この映画を作ったクリストファー・ノランは、自信家である。最初に、この映画は、こういうプロットです、と宣言して、そのとおり、展開させる(「プレッジ」)。ノランの傑作は「メメント」で、短期記憶を失った男が、起こったことを忘れないように、次々に刺青にしてしまう映画だった。この映画は、すばらしくおもしろかったが、これは、実は、映画のストーリーの展開の方法に関する映画である。
ノランは、いつも「映画の語り方」について、考えている。哲学用語で言えば「メタ」の次元を考えている。今の人は「メタ」の次元が入っていないと、満足できない。つまり、これは「映画についての映画だな」とか「恋愛についての恋愛のストーリーなのね」とか。こういう多重構造を持ってないと、単線的な映画では、観客は「わかりました。もういいです、さようなら」になる。「単線映画」ということでは、今度のアカデミー作品賞を受けたスコセッシ監督の「ディパーティッド」という、極端な駄作がそうです。あの映画に最後まで耐えられた人は、すごい。
「プレスティージ」という映画のもう一つのテーマは、もっと魅力的である。それは「分身」というテーマで「ドッペンゲルガー」という「ドイツ文学科」では、かならず、習うものですが、いずれにしろ、この世に、自分以外の自分がいる、という考えで、魔術的(マジカル)な想像力を誘う。二人の若いマジシャンが互いに相手を出し抜こうと、恋人までつかって、相手の手を探ろうとする。恋人役はスカーレット・ヨハンセンで、どの映画に出ても同じような顔をしているが(あたりまえです)、いずれにしろ、二人がしのぎを削るのが瞬間移動のマジックである。ケインは最初からタネを見破ってしまうが、2人のうちの一人、ヒュー・ジャックマンは、そんなに簡単なはずはないと信じ込み、ヨハンセンの盗んだノートにテスラと書いてあるので、ニコラ・テスラのところまで、出かけていくのである。
このテスラという人物は、謎の科学者で、陰謀論の本などを読むとかならず出てくる。
今でもアリゾナには、テスラの秘密科学研究所があり、そこで殺人光線だの、瞬間移動機などをアメリカ軍が開発している、なんて本もある(もちろん、うそに決まっているが)。
ノランは、こんな変な科学者を出してきてさえ、うそ臭くなく、19世紀、ヴィクトリア時代の科学の勃興期の、わくわくするような雰囲気を作り出している。特にこのテスラを演じる役者はうまい。
 この作品は、去年、アメリカで発表されたそうだが、あまり評判にはならなかったようである。しかし、僕から見て、映画的には「父親たちの星条旗」や「リトル・ミス・サンシャイン」よりは、ずっと優れた作品だ、と思う。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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 成澤秀麗の書で語る美(5) 「克」
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「克」 http://www.narisawashurei.com/jp/essay/katu_03.html  (クリックしてください)


勝負は相手がいて初めて成り立つもの。あなたが勝てば、必ず誰かが負けます。他人を蹴落とす闘争心がないと勝負には勝てない? いいえ、他の誰も蹴落とさない勝負があるんです。
「己に克つ」という言葉があります。自分との勝負が一番苦難を強いられるのだと知ったのは、展覧会への出品に燃えていた頃でした。
審査当日は結果を天に任せるしかないので、出品までの作品制作期間が己との勝負となります。
この期間は、大勢の仲間や先輩たちと勉強する機会がありました。周りが上達すれば、当然、こちらも燃えます。そんな時には大抵、欲が出ているもので、「この線はワザとらしいな。上手く見せたいという気持ちがあからさまだ。」先生にはあっという間に意図がバレ、弾かれてしまいます。
「勝ちたいんだろ?」悪魔のささやきと、「欲を出すなよ。」天使の戒め。
両極端のメッセージに気持ちを引っ張られながら、最高の自分を表現していくことは、とてつもなく苦難でした。
この時、何に気持ちが囚われていたか? 周りとの比較でした。先生に誉められている先輩がいれば、作品を覗きに行き、数百枚もの清書を広げている仲間がいれば、サボってしまった自分に焦り・・・、日々、周囲の状況に揺さぶられてしまうのです。自分の軸を見失っているとは、この状態です。
創作意欲よりも羨望と嫉妬に燃えてしまっては己に克つことは出来ず、結果、展覧会の勝負にも勝てないのでした。
勝負って意外にシンプル。周りと比較してしまうから怯えてしまう。それなら、周囲はジャガイモばかりと思えば良いのです。怖がる必要がないんですね。そうしたら変な嫉妬が消えました。見つめるのは己だけです。ただ頑張る、ひたむきに頑張る・・・そういう爽やかな気持ちを得た気がしました。この気持ちが実際の勝負にも生かされたのです。

成澤秀麗 :
山形県出身 書道家、墨絵作家、産業カウンセラー
東北学院大学経済学部経済学科卒
青山学院大学文学部教育学科卒
7年のOL生活と両立しながら書道師範を取得
東京書作展にて内閣総理大臣賞を受賞後、2002年に独立
著書『文字が変われば、ココロも変わる。』(学研)など。
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◎奥山篤信の映画評論 
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1.アメリカ映画「プレステージ 原題 THE PRESTIGE」☆☆☆☆
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この映画については本メルマガに松永太郎氏の秀逸の論文があるので読んでいただきたい。同氏が日本公開前にアメリカより直輸入のDVDを見た上での論文である。

松永氏が語るように、イギリス出身のクリストファー・ノーラン監督はこの映画でも見事な構成が組み立てた。三つの奇術の基本「プレッジPLEDGE」、「ターンTURN」、「プレステージ(偉業)PRESTIGE」、そのまま物語全体の流れに重ねている趣向が実に憎いほど見事である。

二人の憎悪のライバルを演じるのがヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベール、そしてヒロインには、これほど女っぽい女性はいない、これほど可愛げのある女性はいない、これほど健全なセクシーさはマリリンモンロー以来ではないかと筆者が考える、「ロスト・イン・トランスレーション」「マッチポイント」「ブラック・ダリア」のスカーレット・ヨハンソンが19世紀の衣装を着ながら可愛い女を画面いっぱい発散する。彼女を鑑賞するだけでもこの映画の値打ちがあるほど愛くるしい。奇術師ミルトンを演じるマイケル・ケインが実に渋い。
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2.中国映画「女帝(エンペラー) 原題 THE BANQUET/夜宴」☆
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日本の映画評論家はこぞってボロカス、それに昨今の反中国の日本の国民感情が加わってか映画館はガラガラ、これでは気の毒ではないかと思い書いてみた。

シェイクスピアの「ハムレット」を種本として五代十国時代を舞台に、灰汁(あく)そのものといえる中国の宮廷の裏切り、欲望、嫉妬、復讐の物語である。中国人の本質的残酷さが良くわかる映画であり、目をそむけたくなるような棒で打ち砕く処刑の残酷場面はこれでもかこれでもかである。

純粋な愛と装っていても、なにやら肉欲、物欲、権力欲がもろにでてくるストーリーであり惻隠の情などひとかけらもない。日本人とは見分けのつかない表面的様相をしているが、中国人は精神的側面から何から何まで中身が全く違うn似て非なるものであることが、この映画を見ても良く分かるであろう。アジア共同体などと嘯く輩は日本民族の孤高性を理解できない空論であり売国論でもある。中国では人間の動機とはすべてが金欲、物欲なのであって、純粋な愛などといってもそれは性愛であり肉欲でしかないことがこの映画でも良く分かる。日本人の優雅、品性、もののあわれなど何一つない。
日本人がすっぽんを料理するとそれは淡泊で品格があるが、中国人がそれを料理するととたんに甲羅のゼラチンと煮込んだ油臭さであり、日本酒で食べるのかあのマオタイの強力な酒で食べるのかの感覚の違いである。

あえて援護するとするなら、日本の映画に得てして多い,わけのわからない義理人情や生活の臭いがまったくなく、ドライに画面を原色(色だけではない)で描き切るクリアーさと暴力とストーリー展開、スペクタクルである。
「SAYURI」で芸者を演じたチャン・ツィイーだけはなかなか魅力のある女優であり、官能的な演技を見せる彼女の魅力は僕を含め男性を悩殺してしまう。監督 フォン・シャオガンは教育者の家庭に1958年中国北京生まれのゴリゴリの中国人監督である。こんな監督が反日映画でも作り出したら反吐のでそうな残虐場面を捏造すること間違いなしである。
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◎「青山二郎の眼」展を鑑賞して
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「青山学院」という言葉がある。あの学校の青学ではない青山サロンのことを言う。古美術の天才的目利きと言われた青山を囲んで小林秀雄、中原中也、永井達男、大岡昇平、中村光夫などが青山の暮らすアパートや下町の待合や銀座のバーで集まり、青山の毒舌にこれらの人々がこてんぱんに泣かされたサロンで、大岡が青山学院と命名したのである。
白州正子もその「弟子」のひとりである。青山(じいちゃん)は美について議論したり論陣を張ったりすることは決してなく、じいちゃんが信じるものは美しいものであった。「美なんて狐つきみたいなものだ。空中をふわふわ浮いている夢に過ぎない。ただ美しいものがあるだけだ。ものが見えないから美だの、美意識だのうわごとをはいてごまかしているので、みんな頭にきちゃっている。」じいちゃんはいわば形のなかの魂を求めたのである。小林秀雄の「当麻」にある「美しい「花」がある。「花」の美しさというものはない。」はまさに青山じいちゃんの教えの真髄であろう。

さて世田谷美術館で展覧会があるというので早速赴いた。
本展は4章立ての構成で、第1章 鑑賞陶器—中国古陶磁、第2章 朝鮮考—李朝、朝鮮工芸、第3章 日本の骨董、第4章 装幀家 
 
残念ながら良い展示品もあるにはあるが、バザーの寄せ集めの展示会の印象は免れない。僕が感心したのは種類に富んだ呉州赤絵、信楽の口のかけた大壺、古伊万里、李朝の一部などあるが、青山が絶賛した宋時代の展示が少ない。富岡鉄斎の二点の軸など僕の眼にはきわめて真贋危ういと見えた。

会期: 2007年6月9日(土)〜8月19日(日) 
休館日: 毎週月曜日(この日が祝日の場合は翌日) 
開館時間: 午前10時〜午後6時(入館は閉館の30分前まで) 
会場: 世田谷美術館1階 企画展示室 
観覧料: 一般1000(800)円、大高生/65歳以上800(640)円、中小生500(400)円  
 ( )内は20名以上の団体料金、障害者割引あり


◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
 編集長・市村直幸
 〒105−0003
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