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甦れ美しい日本 第122号

発行日: 2007/6/9

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2007年6月9日 NO.122号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >

◎ゲスト執筆者

1. 塚本三郎  参議院選挙の争点 

◎福田秀人の「日本の経営を斬る」(4) 

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤 守      大東亜戦争の真実を求めて117
2.奥山篤信   松岡洋右のジュネーヴ (6)42対1の演説、さらば連盟よ -4- 
3.西山弘道    「何を焦るか、安倍政権」

◎成澤秀麗の書で語る美(4) 「流」

◎奥山篤信の映画評論  

1.イギリス映画「あるスキャンダルの覚え書き 原題 NOTES ON A SCANDAL」☆☆☆☆☆ 

2.アメリカ映画「ザ・シューター/極大射程 原題 SHOOTER 」☆☆

◎図書室 「参議院なんかいらない」村上正邦 平野貞夫 筆坂秀世 幻冬舎新書  奥山篤信評
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1. 塚本三郎 
 参議院選挙の争点                 
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七月の参議院選挙を控えて、与野党共にその対策と準備に大童である。
 最近の内外情勢からみて、最大の問題は新憲法の創設である。既に国民の意識は、一刻も早く新憲法を、自主的に創設すべきだ、との点が大勢である。外交、防衛は勿論、教育、国内経済等、すべてが、現憲法制定当時からの歪みで、日本政治をして、身動き出来ない程に足枷となっている。歴代政権は、致し方なく勝手に憲法を拡大解釈して、その場しのぎを重ねている。
 現行の憲法の前文では、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と堂々と宣言している。現在の近隣の情勢は如何か?
 最大の問題点は第九条である。
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸、海、空軍、その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」と記してある。
押し付けられたとは云え、敗戦直後には、この憲法の前文及び第九条は、それなりに守られる理由があった。まして宗教人にとっては、今日と雖も必須の要件であろう。
国土の大半が焼け野原と化し、一億国民は飢え、働くに職なく、資材なく、奪われるべき財も、武力も、権力さえ占領軍に占められて丸裸であった。
このような無残な国家と国民を、何れの国といえども、攻めて奪う国はなかった。その上、世界最強の米軍が占領下の施政を敷いていた。
しかし、今は違う。自負すべき、権力、財産、技術、頭脳、人材、何れも世界各国が垂涎の的となっている。例えは良くないが、囲い一つない裸の姿で、以上の如き財を山積しておいて良いのか。奪うべき欲望のない国と雖も、よからぬ欲望を招くことになりはしないか。今の日本は、罪作りな憲法を、後生大事に抱えている。
今日の日本社会では、かつて経験したことのない、凶悪犯罪が多発している。強盗、殺人、そして、子殺し、親殺し、発砲事件、知能的詐欺、更に交通事故の多発。
昔と違って、現代社会である為の、致し方なき犯罪も否定できない。それにしても、防ぎ得るべき犯罪の多発は眼を覆うばかりである。
教育の荒廃、家庭の破壊、社会秩序の混乱は、日本社会を悪い方向に一変しつつある。政治の責任は極めて重大であるのに、金銭をめぐる政争に狂奔している姿は悲しい。庶民にとって、政治資金も、汚職も、年金も敏感な問題であるだけに、そんなことはどうでも良いと言うつもりはない。だが、国家として行なうべき、軽重と順序を違えてはいないか。
権利の主張と自由の乱用は、もはやゆきすぎて、自由そのものをも亡ぼしつつある。
政権を担当していない野党といえども、既に良識ある民主党議員の一部には、新憲法創設に動いている。憲法改正の為の国民投票法も、防衛省設置も、教育基本法も、高級官僚の天下り禁止も、民主党は、野党とはいえ、その根本では、ほとんど反対ではなかった。ただ一部指導者の選挙対策的便法から、反対に回り、その内容よりも、「政府の手段、方法が悪い」と駄々をこねているやにもみえる。
 国家の命運をかけた、根本法たる憲法に就いて、単なる選挙対策に利用し、かつ、これを蔑ろにして、単に「政治家と金の問題」に事態を矮小化しているやに見受けられる。
 庶民にとって、お金の問題は最大の関心事であるだけに、大衆受けするから、新聞もテレビも、連日の報道はこの点に集中している。
 政党は、国家、国民よりも、政権の攻防こそ最大の任務と誤解しているようだ。
松岡農水大臣について
 安倍首相は、日本の農政は危機的な情勢に在ると危惧する。食糧の自給率の低下、農産物の国際価格差の増大、就農人口の減少等々の対策について、最も敏腕を期待出来る議員として、松岡利勝氏を農水大臣に任命した。
その陰では、小泉前首相の強い推薦が在ったとか、また、党総裁選に全力を尽くしてくれた論功行賞とかがウワサされた。反面、疑惑の総合デパートと評する、一部野党の非難も、首相が知らない筈はなかった。それが当人の自殺で事態は急転回した。
 東京地検特捜部が農水省管轄の「緑資源機構」をめぐる談合事件の捜査に着手。五月二十四日に機構の理事ら六人が逮捕された。
 検察担当記者はこう言う。「捜査対象の企業から松岡大臣が献金をもらっていたのは事実です。しかし、容疑事実となるような職務権限が、松岡氏にあったかというと微妙です。特捜部は松岡氏の身辺について触っていないし、まだその段階まで達していなかった」。
 松岡大臣の自殺によって、この報道直後は与野党共に、死者に鞭打つことの非難を承知して、御冥福を祈る、と発言していた。これで、与野党共に、大臣個人の非難は表向き終止符が打たれたと思われたが、日が経つにつれ、選挙戦が近づいてのゆえか、松岡氏の悪評を道具に、安倍首相に対する攻撃の言葉が大きくなって来た。例えば、「説明責任を果させなかった」とか、「任命権者としての責任」をどうする、と攻撃が相次ぐ。
 疑惑は、松岡大臣個人がすべてであるのに、任命権者としての責任を問うのは、「死者が大罪人であることが明白」であるか。或いは、首相が彼を死に追い詰めた、などと発言することは、結果論としては考えられたとしても、公にすべきことではなかろう。 
 これ等の仮定を、声を大きくして、選挙戦を勝利に繋げようとすることは、民主政治の未熟さの性であり、卑怯な言動ではあるまいか。
 大衆は無智ではない。聡明である。野党のみならず、与党も、死者を選挙に利用するよりも、国家、国民第一の言動に徹すべきで、政治家にそんな発言を重ねる余裕はない。
社会保険庁の不祥事続出
グリーンピアに象徴される保険料の乱費や不正免除、職員の政治家や芸能人の個人情報の覗き見する等で、社会保険庁は批判の集中砲火を浴びた。
 平成九年、それまで国民年金、厚生年金、共済年金でバラバラだった年金番号が統一され、成人一人に一つの基礎年金番号が割り当てられた。それに従って、被保険者が支払ってきた納付記録も統合された。しかし、未だ統合されず、誰のものか判らない納付記録が五千万件も残っているということが、明るみに出た。
よくよく調べてみれば、これ等の中には、亡くなった人、一度は納めたものの受給資格を満たす二十五年分は払えないので受給を諦めた人、年金が掛け捨てになった人、偽名や年齢のサバを読んで登録した人、転職を繰り返した人、結婚して年金番号を複数持っている人、まだ受給開始年齢に足していないから、統合されていない等の例も相当数ある。また市町村から送られて来たデーターが間違っていたケースも多い。
 このシステムを作った行政責任者も職員も、将来の給付に備えて、記録の管理を徹底的に行なおうという意識も欠けていた。
 しかし、記録に不備があっても、本人が申し出ない限り、役所には確認、修正する義務を生じない「申請主義」で運営してきた。保険料を取るだけ取っておいて、給付の段階では納付者に自己責任を押し付けているとの非難はきびしい。
 年金問題は、高齢化時代を迎えて、深刻な政治問題となって来た。国民の不満はすべて現安倍政権に向けられている。野党は、この政権の弱点をそのまま参議院選挙の攻撃材料に利用しつつある。問題となった点の責任は、政府と歴代社会保険庁長官及び幹部の管理責任に在ることは申すまでもない。さりとて、野党には責任なしと言い得るのか。
 基礎年金番号導入の閣議決定の、時の厚生大臣は菅直人氏であり、更に切替業務開始、基礎年金番号実族関連省令改正、等々を行なった平成八年は、現在の民主党の菅氏である。まして、杜撰にして、不親切な対応、そしてコンピューターへの入力のミス等を行なった、社会保険庁の職員労働組合員に関係なしとしないのである。彼等は今も民主党の有力な支持団体である。社会保険庁は、この団体と百項目を超える驚くべき内容の覚書を組合との間で取り交わして来た。例えば、
一.記録のオンライン化に伴う定員削減は行なわない
一.一時間につき、十五分の休憩時間を設ける
一.一人一日当りの操作は百八十分以内
一.ノルマを設定しない
一.業務集約下の実施にあたり、社保事務所の統廃合、縮小、定員の削減を行なわない
 これは、かつて生産性向上運動に反対した、旧国鉄労組と同じで、このような、非常識な職場がどこの世界に在り得よう。
問題の発生は、こうした労使環境の下で生まれた大失態である。これ等を調査すればする程、驚くべき不正常な役所の実体は、明らかになりつつある。
 基礎年金番号の統一は、余りにも複雑な難題である。それを労使が協力一致して事に当たるべきであるのに、この難題を幸いとして、双方が問題を更に複雑にしてしまった。この実情を野党の諸君は知らない筈はない。ならば、野党に政府を責める資格があるのか。それを知らぬふりをして、ひたすら、与党及び政府を「泥棒呼ばわり」している。
それならば「我々ならこうする」と言う、代案を堂々と提議すべきである。慎重審議で、議事の引き延ばしをすることによって、参議院選挙を有利に運ぶ魂胆は、余りにも稚拙である。与野党何れが勝利するかよりも、こと年金については、一刻も早く与野党が協力し、受給者の立場に立って初期の目的を達成すべきである。
 柳沢担当大臣は、これ等の問題をキチンと片付けるのに、来年の五月まで、一年間で成し遂げると言明した。野党はそんなに早く出来っこないと、その対処する法案の成立を妨害している。
年金を政争の具にすべきではない。この年金問題こそ、国民の最大の不安材料であるならば、野党もまた、政府と協力し問題の解決にあたって欲しい。さすれば国民は、野党は大人になった。一度、野党に責任を持つ政権党にさせたいと期待することになる。
 相手の失点を暴露し、国民の苦労を逆手にとって支持を得ようとする、かつての日本社会党の悪習を、新しい民主党が繰り返すべきではない。民主党には良識の議員が多数居るはずである。

塚本三郎;                
愛知県名古屋市に生まれる 
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学 
終戦とともに労働組合運動に従事 
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学 
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業 
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回) 
昭和 35年 民社党結党に参加 
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む) 
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任 
平成 元年 民社党常任顧問に就任 
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章 
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◎福田秀人の「日本の経営を斬る」(3)              
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ソ連の二の舞となる会社

○予想どおりに世界は動くと考えるスタッフたち

ドイツ統一を成し遂げたプロシアの参謀総長モルトケは、平時から有事に備えての戦略を練る一方で、既述のとおり、必勝の戦略はなく、戦略は、その時々の状況に応じて考え、変えてゆかなければならないことを、繰り返し、強調した。ところが、その後、ドイツ軍参謀本部は知的エリ−ト集団となり、戦争を詳細に計画し、実行しょうとする計画主義に冒され、それが、以後の2回の世界大戦で、ドイツ軍が、前半は優勢にたちながら、最終的に敗北した理由のひとつとされている。

そして、近年、カナダの経営戦略学者、ヘンリー・ミンツバ−グは、計画作りと進捗管理にはげむアメリカの大会社の経営スタッフを、次のように批判をした。「ビジネスの現場に入ったことのないスタッフは、計画を作っている何ヶ月もの間、世界は何の変化もせず、また、計画で予想したとおりに世界は動くと考え、また、集まってくるデータは全て正しいものとしている」。

また、アメリカの経営コンサルタント、ジョセフ・ボイエットとジミー・ボイエットは、1980年以降の、ハーダード大学のマイケル・ポーターの競争戦略論の流行と、その後を、概略、次のように皮肉った。
!)ポーターの詳細な分析の目的は、あてずっぽうな未来予測をなくしてビジネスの世界
に秩序をもたらすことにあった。しかし現実はそう甘くはなかった。
!)その結果、実務家が幅を利かせるようになった。   
!)90年代初めになると、アメリカのCEOたちは戦略を棚上げにしてダウンサイジング、リストラクチャリング、リエンジニアリングなど即効性のある方法に群がった。

○計画主義が会社をつぶす

計画の実行を金科玉条にする計画主義に支配された会社は、達成できない計画を達成するか、達成したかのように見せかけるための様々な不正や不祥事を生み、計画経済を追求して自滅したソ連同様の運命をたどることになる。これについて、スタンフォ−ド大学の経済学者、ポール・ミルグロムとジョン・ロバ−ツが詳細に分析し、『組織の経済学』NTT出版で、誘発される問題を多数指摘しているが、それに私が遭遇した問題(!)〜!))を加えると、次のようになる。

!)確実にできることしか計画せず、計画どおりに達成できない可能性のある目標や新しい課題や難しい課題を設定しないようになる。
!)自分や自部門の計画を達成するため、それを妨げるようなことは、将来や会社全体のことを考えればやっておくべきことでもやらず、目先の、後先構わぬ利己的な行動に走る。
!)数字を操作して帳尻あわせをしたり、問題を隠したり先送りして、計画通りに物事が運び、成果が上がっているようなごまかしが横行する。
!)弱い立場にある取引先に不当な値引きの強要や押し込み販売をしたり、顧客をだましたりするなど、計画達成のために手段を選ばぬ行動をとるようになる。
!)計画を上回る成果をあげることができても、その原因を甘い計画やずさんな見通しによるものと批判されたり、それにより以後の計画目標が簡単に達成できない水準に引き上げられることを恐れて、成果をおさえたり、その成果を次期に繰り越す。
!)計画にあることしか実行せず、経営に大きな影響を及ぼす新たなチャンスやリスクが出現しても、それに対応しょうとしない。
!)計画どおりに行かぬ理由を、予想していなかった事態や変化の発生や、他部門が計画通りにやるべきことをやらなかったためとし、責任回避や責任転嫁が横行する。
!)計画どおりに収入がえられないのに、支出だけは計画どおりに実行される」。
!)計画どおりに売上や利益をあげることを名分に、計画以上の支
出がなされる。

なお、経営の神様と尊敬される松下幸之助は「予算即決算」と言い、社員たちに、計画を約束とみなして必達するよう厳命したとのことである。そして、経営の神様の言葉であるがゆえに、計画主義者の錦の御旗となり、計画主義を正当化するために用いられることもある。しかし、実際の松下幸之助は、計画達成への執念を要求する一方で、状況の変化に対応して決定を幾度もくつがえし、「朝令暮改」とか「君子豹変す」とも言っていたと、その側近であった方から伺ったことがある。

○愚かで危険なPDCAサイクルの追求

経営計画が、役員会でオーソライズされていたり、対外的に公表されていれば、面子へのこだわりもあって、ためらわれがちである。そこに、いったんたてた計画を変えようとしない会社が多く、また、そういったことを正当化し、促進するようなコンサルタントもいる。彼らは、年間計画どころか、3年先、5年先までの中期経営計画や長期経営計画まで、大変な手間ヒマをかけて作らせ、計画を作ったこと自体を成果と称し、そのとおりの実行を迫り、それとの比較で経営の良し悪しを比較し、計画と実際の乖離を大問題にする。
そういった計画主義は、「ものごとは思い通りに行く」とか、「なにごともがんばれば達成できる」いう希望的観測の反映でもある。 もしくは、経営の難しさを知らないアマチュア発想の産物である。

成熟した安定的なマ−ケットを対象とする事業や商品でも、売上や利益の急減をもたらすような顧客ニ−ズの変化や新たなライバルの出現、さらには在来のライバルどうしの価格競争の激化などが発生する脅威につねにさらされているものである。だのに、一度立てた年間計画や中長期の経営計画を変えようとせず、業績が計画どおりに上がらなければ、社員を叱責するだけで、計画を見直そうともしない会社は、計画経済にこだわったソ連の二の舞となろう。

計画を、計画どおりに実行せよというPDCAサイクル(プラン→ドゥ→チェック→アクト)が盛んに吹聴され、それを試みる会社もあるが、愚かで、危険な発想であり、行動である。この点、花王やセブン&アイなど、計画にこだわらないことを明言している会社は、頼もしい限りであるが、それは少数派のような気がする。

 ちなみに、モルトケは、「敵主力とはじめて遭遇した後、わずかでも確実性が残る計画など存在しない」と論じた。また、アメリカ軍の指揮官マニュアルは、あらかじめ、いろんな状況を想定して計画を立てる大事さを説く一方で、いざ、戦いがはじまったなら、「計画と戦うな。現実と戦え」と明記している。

*本論は、拙著『見切る!』の2部3章「計画至上主義の脅威」の一部を抜粋・修正した。

福田 秀人 (ふくだ ひでと)
76年慶應義塾大学大学院商学研究科博士課程修了(経営学・会計学専攻)。以後、主に、企業の危機管理体制の開発・運用や経営再建支援に従事。また、横浜国立大学、慶應義塾大学、法政大学他の非常勤講師、及び、外務省ロシア知的支援プロジェクト講師、海上自衛隊幹部学校講師等を歴任。立教大学大学院教授(危機管理学)、放送大学客員教授(兼、危機管理学主任講師)。
著書:『見切る! 強いリ−ダ−の決断力』祥伝社06年、『管理職入門』東洋経済新報社92年、他多数。
福田永一のペンネームで、『誇り高き男たち:日本の自衛官』エイデル研究所83年、「士気と権威:自衛隊の統率基盤と課題」月刊朝雲84年11月、「対談:私の見た自衛官」防衛アンテナ84年8月などがある。
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◎レギュラー執筆者 
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて117
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 西安事件については謎が多いが、「マオ」の第16章にはその経緯が詳細に書かれている。概略はこうである。
1935年10月、長征の末に毛沢東は黄土高原にたどり着く。生き延びつつ、ソ連との連絡路を開拓することが彼の当面の仕事だった。
 その毛沢東に対して蒋介石は、紅軍を閉じ込めておくべく、中国東北の軍閥「張学良」をこれに当てた。当時、張学良の司令部は、毛沢東の根拠地から北に300キロほど離れた西安にあった。毛沢東とソ連との武器の取引場所は、新疆と外モンゴルである。張学良軍30万は、この双方を制圧できる位置にいたからである。
 張作霖が日本軍に爆殺されたあと(「マオ」には、「一般的には日本軍が実行したとされているが、ソ連情報機関の資料から最近明らかになったところによると、実際にはスターリンの命令にもとづいて、ナウム・エイティンゴン〔後にトロッキー暗殺に関与した人物〕が計画し、日本軍の仕業に見せかけたものだという」と書かれている)中央政府に帰順し、そのまま東北の支配者として留まっていたが、1931年に日本軍が侵攻してくると、20万の軍隊を率いて関内に移動していた。
 蒋介石より13歳年下の張学良は、表向き蒋介石夫妻と親密な関係を装ってはいたが、いずれ「大総統」に取って代わろうとしていた。
「英仏を合わせたよりも広い東北を治めていた張学良としては、蒋介石の配下に甘んじることは面白くなく」「中国全土を支配したかった」のである。
 そこで彼はソ連に接近するが、ソ連側はこれを警戒して断った。
「わずか四年前の一九二九年にスターリンが中国東北に侵攻し、その後中東鉄道の強硬接収をめぐって、ソ連は短期間ながら張学良と戦火を交えたばかりだった」からである。
 そこで彼はファシズム礼賛発言をして、イタリアのムッソリーニと家族ぐるみの親しい関係を築いたので、中国共産党から「売国奴」とののしられる。
 ところが彼が毛沢東の見張り役に任命されると、モスクワの態度も一変する。そしてソ連からの支援物資受け取りが容易になり、モスクワから重宝がられる。
 やがて張学良は上海や南京でソ連と秘密裏に協議を進めるようになるが、これをカムフラージュするために「プレイボーイ」のような軽薄な行動を取る。
「マオ」を引用する。
「張学良はソ連に対して、中国共産党と同盟する用意があること、しかも『日本との決戦』に臨む——すなわち蒋介石が渋っている対日宣戦布告をする——用意があることを、はっきりと伝えた。そしてそれと引き換えに、自分が蒋介石に代わって中国の支配者になるための後押しをしてほしい、と求めた。
 この交換条件は、スターリンにとって非常に魅力的だった。特に、中国が日本と全面戦争に突入すると言うのは、クレムリンの首領には願ってもないことだった。日本は一九三一年以来中国を蚕食し続けていた。中国東北を併合した後、日本は一九三五年十一月に華北にも別の傀儡政権(注:11月25日に結ばれた梅津・何応欽協定にもとづいて華北に冀東防共自治委員会が成立)を作ったが、それでも蒋介石は対日全面戦争に踏み切ろうとしなかった。スターリンは、いずれ日本が北へ転じてソ連を攻撃するのではないかと心配していた。
 スターリンの狙いは、中国を利用して日本を中国の広大な内陸部へおびき寄せ、泥沼に引き釣り込むこと、そして、それによって日本をソ連から遠ざけることだった。モスクワは自らの狙いを包み隠したまま中国国内における対日全面戦争の機運を煽ることに力を入れ、大規模な学生デモに手を貸した。また、ソ連のスパイ、特に孫文夫人で蒋介石の義姉にあたる宗慶齢は、圧力団体を結成して南京政府に行動を求めた。
 蒋介石は日本に降伏する気はないものの、宣戦布告する気もなかった。現実的に見て中国に勝ち目はなく、日本と対決すれば中国の破滅につながると考えていたからだ。そこで、蒋介石は降伏するでもなく全面戦争に出るでもない、極めて異例などっちつかずの態度を選んだ。それが可能だったのは、中国が途方もなく大きく、また、日本が徐々にしか侵略してこなかったからである。蒋介石は、そのうちに日本がソ連のほうを向いて中国のことを忘れるのではないか、という希望さえ抱いていたかに思われる」
 張学良は、当初から自分が中国全土を支配する野望を持っていたから、それをスターリンは利用したが、蒋介石は張学良の“本心”を見抜いていなかった。
つまり、スターリンは、来るべきドイツとの戦いを予期していたのだから、背後の極東アジアから日本軍が侵入するという、最悪の事態を回避するために、日本軍の矛先を中国に向けさせようと必至だったのである。    (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信  
 松岡洋右のジュネーヴ (6)42対1の演説、さらば連盟よ - 4- 
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本草案が採択される場合は、支那側に対して、彼らが一切の責任を許され、したがって依然として日本を蔑視ししかも何の非難も受けずして済むという印象を与えるであろう。このことは互いに利害関係を有する日支両国民の感情をさらに悪化せしめるであろう。両国民はその共通の福利を増進するために、互いに友誼を結び協力せねばならないのである。

総会はこの草案の採択によって、我々日本人あるいは支那人のいずれに対しても、如上の目標への道程において助力を与えるものではなく、かつ平和の大業にも資するところなく、受難の支那民衆の利益にも貢献するところがないのである。

支那人には二種類ある。戦争をこととする軍閥、政治家、および外国の教育を受けてこの連盟総会のごときものに出席して、仮想の支那を代表する紳士諸君がそのひとつであって、他方これらの桎梏の下に呻吟する4憶5千万の民衆がある。この草案の採択によって、これらの悲惨なる民衆の福利を増進しうるのであろうか?
19カ国委員会の報告書草案は、単に調査団の報告を受け入れたにすぎなく、さらにこれを一歩進めているのである。それは現実と相いれず遠く現実と背離した叙述を基礎に判断を下しているのである。

満州における支那の主権は名目的なものにすぎない。にもかかわらず報告書草案はさらに多少とも実効的な様式において、満州に支那の主権を確立することを期している。こんなことが理義に適ったものであるか反問すべきではないか。

報告書草案は満州にある程度の国際管理を設定せんと試みている。満州には従前にも現在にもかかる機関をもっていない。いったい何を根拠に連盟はかかる企図をあえてなさんとするものであるか?もしパナマ運河地帯に同様な管理を設定せんとすれば、アメリカ人はこれに同意するであろうか?同様エジプトを例にとればイギリス人はこれを許容するであろうか?この点にかんして日本国民はいっさいかかる企図に反対である。

報告書草案は、現紛争の勃発後日貨に対して行われた支那のボイコットは、報復手段の範囲内に属するものと判定している。もしも列国が急迫せる事態の必要上自国の権益を擁護し、支那居留民の権利と財産を擁護するために、なんらかの強力的手段を取った場合これがボイコットにより報復的に応酬され、かつそのボイコットが合法的であると認められるならば、ここに甚だ物騒な原則が、国際連盟の名のもとに確立されるであろう。その結果は支那に利害関係を有する一切の国家に対して、将来予測しがたい難問をもたらすであろう。
満州問題などは問題の1局面にすぎない。満州問題の解決には、これほど熱心になるにも拘わらず、紛争全体の根底に横たわるところの大問題については、全く看過されているのである。

日本としては報告書草案について他に選ぶ方途がないのである。19カ国委員会は他に方途なんら示していないのである。ここにおいて日本は否としか答えざるを得ないのである。

我々の希望は、ちからの及ぶ限り支那を援助せんとすることである。この点において我々は真摯であり、好むと好まざるに拘わらず、我々が負うべき義務である。この声明はこの瞬間には逆説のごとく聞こえるかもしれないが、これは真実である。現在満州国に関して意見を異にしているのであるが、満州国の自立を助けんとしつつある現在の我々の努力はやがて、支那の援助者たらんとする日本の願望と義務を実現する契機となり、これによって東亜全土を通じ平和の確立に成功するにいたるべきことを確信するのである。

連盟が、事実を認識し、将来の理想を直視せんことを願う。我々の言に基づいて我々と交渉し、かつ我々を信頼されることを願う。過去80年の我々の歴史は何ら価値なきものであろうか?はたしてそれは極東において常に紛争を醸し、極東の破局を齎すがごとき歴史であったろうか?我々のこの要望を拒否することは大なる過誤となるであろう。連盟がこの草案を採択しないことを要請するものである。極東の平和のため、全世界の平和のために!

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.西山弘道 
 「何を焦るか、安倍政権」
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 最近の安倍首相の様子を見ていると、何かおかしい。焦り過ぎて、危な過ぎて見ていられない。官僚の天下りを規制する公務員制度改革関連法案を強引に衆議院通過させて参議院に送り、今国会成立を期すという。23日までの今国会の会期を考えれば、実質審議の日数は土日を除くと11日間しかなく、会期延長でもしない限り成立は難しい。参院選を控える会期延長は事実上不可能であり、普通なら廃案であろう。しかし、安倍首相は強く与党国対に成立を指示しており、困り果てた国対では参議院での委員会採決を省略して、直接、本会議可決に持ち込む中間報告方式の「奇策」も考えているという。

 そもそも参院選を控えた通常国会の参議院では、法案は成立か廃案のイエスかノーしかなく、継続審議はないのだ。参議院議員の半数がその後に改選、つまり審議した議員の半数がいなくなってしまうから、同じ法案を同じ参議院で継続して審議することは不可能という理屈からである。従って、参院選前の国会審議は、衆議院での継続審議は出来るが、参議院は不可能ということになる。安倍首相はその慣例をわかっていながら、公務員制度改革法案の衆議院での継続審議という無難なやり方を蹴って、あえて法案を参議院に送ったのである。

 つまり、ここで安倍首相は、小泉前首相の郵政法案と同じように、成立か廃案かというイシューをつくって“抵抗勢力”を煽り、公務員法案が廃案の場合は‘重大決意’に出るぞ、とブラフをかけたのである。“ブラフ”とはこの場合、衆参ダブル選挙断行に他ならない。首相はサミット出席のためのドイツで、6日、記者団に聞かれ、「国会の成り行きによっては、色々な結果が出る・・・」と微妙な答えをしている。同日選挙も十分、あり得る情勢になってきたのだ。ダブルを嫌う公明党は、首相のその決意を知って、今、慌てている。

 年金特例法案、社保庁改革法案と並んで、公務員制度も無理して通すというのは、参院選に“役人天国”叩きを争点に据えるという意図が明白だ。消えた年金5000万件をつくったのは自治労加盟が多いという社保庁役人であり、天下りを謳歌している高級官僚を退治するとともに、自治労をバックにする民主党を叩く、というのはわかりやすい。しかし、改革法案で、各省庁の斡旋による、押し付け型天下りは全廃するというものの、新人材バンクをつくって一元化するというのはきわめてわかりにくい。民間はハローワークに通って再就職先を必死になって探すのに、お役人は税金で作ったスペシャル版の天下りバンクに行って探してもらえるのか、と一般庶民はそこにも「官民格差」を感じ取る。

 安倍首相よ、ここは無理することはない。公務員制度改革法案は、郵政法案のように解散覚悟で成立を期す法案ではない。新人材バンクなどまだまだ中途半端の内容の法案であり、ここは改めて、公務員のスト権問題などを包含した、包括的な法案を次期国会に出したほうが良かろう。そして、“年金”より優先順位をおとしたという“憲法改正”を改めて前面に掲げ、当初の方針通り参院選で問うべきだ。次の選挙で選ばれた参院議員は、当然、3年後の改憲案発議の際の議員になるからである。選挙では、改憲案発議の新しい参院議員を選ぶという重要性を訴えるべきだ。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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◎成澤秀麗の書で語る美(4) 「流」
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「流」 http://www.narisawashurei.com/jp/essay/katu_05.html  (クリックしてください)

道を極めることは、とても厳しいことだと言われています。
厳しいルールに縛られるから?
究極のオタクにならないと夢中に取り組めないから?
恐ろしいほどの努力を避けられないから?
・・・どれも誤解です。
厳しいルールに縛られるのは、基礎がわからない初心者だけ。夢中になるということは視野が狭くなっていくことを示し、中級以上になったら夢中を手離さないといけない。そして、努力を恐ろしいと感じてしまったら、もはや極める人の心とは壁が出来ているということ。

本来の「極める」は、とてもシンプル。中国2000年の歴史を誇る道教では、極めるまでの歩み方を水に例えています。エゴを捨てて水のようにありのままに生きよ、嘘で取り繕ったりせず真実をもって生きよ、と説いています。
私は書道を通じて、道の本筋を覗くことができました。本筋が分かるまでの私は、厳しいルールを克服し、究極のオタクになり、喜んで努力していることに満足していました。ところが師匠のコメントはイマイチなのです。こんなに頑張っているのに何故?・・・答えは単純、「夢中」を捨てることが出来なかったから。
作品には生き様が現れると言われていますが、その頃の作品は完璧さを求める見栄と緊張感がいっぱいで「遊び」が全くないのです。
一年ほどスランプが続いたでしょうか。ある展覧会の作品を制作中、完璧も緊張も捨て、ありのままを表現した瞬間・・・、創作の力が一気に伸びたのです。遊びは奔放さから来る「楽しさ」ではありません。厳しいルールと努力を乗り越えた先にやってくる「愉しさ」、心のゆとりだったのです。

「夢中」から解き放たれ、流れに身を任せている精神状態はクラゲが波に揺らめいている様子に似ています。道教では「水は最も柔軟でありながら、岩を砕き地形を変えてしまうこともあるように、堅いものに打ち勝つものとしては、水に勝るものがない」と説いています。
水の中をフワリフワリと舞うクラゲを眺めていると、その柔軟さこそ、彼らがどんな大嵐の海でも悠々と生きていける強さの秘訣なんだなぁと実感。世の荒波の中を泰然堂々と生きて行くには、現実を素直に受け入れる柔軟さと、嘘偽りなく真実に生きる強さが大切だと。このことが何ものにも変えがたい喜びを、私たちに与えてくれるのですね。
柔軟に、そして強く。こんな生き方を自然にできたら本当にカッコいいですよね。わたしはほんの片鱗を体験しただけですが、もしあなたが実行できたなら、それは悟りを開いたと言えるでしょう。

成澤秀麗 :
山形県出身 書道家、墨絵作家、産業カウンセラー
東北学院大学経済学部経済学科卒
青山学院大学文学部教育学科卒
7年のOL生活と両立しながら書道師範を取得
東京書作展にて内閣総理大臣賞を受賞後、2002年に独立
著書『文字が変われば、ココロも変わる。』(学研)など。
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◎奥山篤信の映画評論 
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1.イギリス映画「あるスキャンダルの覚え書き 原題 NOTES ON A SCANDAL」☆☆☆☆☆

このところあのカンヌ映画祭の河瀬直美のわけのわからない「素人」映画など、とんと良い映画に巡り合っていなかったが、この映画本年見る限り最高の出来である。
何が良かったか?端的に言えば、まず脚本の素晴らしさ、そして演出力、二大俳優の炸裂した熱演、そしてこれらをまとめるサントラの素晴らしさである。

ケイト・ブランシェット扮する美しい美術教師シーバと、彼女に執拗な関心を抱くジュディ・デンチ扮するオールドミスの歴史教師バーバラを取り巻く心理劇である。
シーバは何不自由ない家庭の主婦でもあるが、夫とはかなりの年齢差があり子供の一人はダウン氏症の障害児、なんとなく満たされない生活を送っている。バーバラは器量も悪く一生独身であり、愛玩動物と若い美しい女性に対する愛慕の念で孤独さ紛らわす毎日である。

イギリスのいわば労働者階級の公立学校にシーバが新任美術教師として着任、美しい魅力的なこの教師にバーバラは接近するが、一方シーバは15歳の少年と許されざる恋に陥る。
家族、少年への性愛、そして女同志の友情、嫉妬、復讐、其のあたりをこの映画は経糸横糸を絡めながら見事に描いている。

大都会に暮らす人間は孤独であり、それは家族があろうが独身であろうが同じである。このバーバラは何も変質狂ではなく、寂しさの中に、人間の触れ合いや愛を求めているいじらしい初老の女性なのである。克明に若い女性への気持ちや状況を日記として綴っている。
それは偏執であっても個人の世界なのである。そのバーバラが大切な猫が死に、悲しみを分かち合ってほしいシーバはその日娘の学芸会で家族と過ごさねばならない。その時バーバラは孤独のどん底に陥り、シーバのスキャンダルを公にすることにより復讐を誓う。バスタブに醜悪な裸体をどっぷり沈めながら邪悪な思いを巡らすバーバラをデンチが体ごと演じるシーンは圧巻である。

少年とのスキャンダルが公になり刑事事件になってもまだバーバラの善意を信じ、バーバラ宅に居候をしていたシーバはあるときこの日記を読んでしまい錯乱、半狂乱となり逆上する。

日記とはあくまでもそれを綴るその人自身の思いであり、恋人であろうと友人であろうと、思いを完全に一致させることは不可能なのである。他人の日記を覗き見ることは、人間の心の不可侵の領域に立ち入ることであり、それは破局への導火線となってしまう。

シーバはそれをきっかけに夫のもとに戻ることを決意する。そして穏やかな気持ちで実刑10か月の刑期を終えることであろう。バーバラは新たに心を満たしてくれる女性を漁るのである。

英国の育てた本格派2大女優の見事な演技力が火花を散らし激突しつつ、そして輝きを放ち観客を釘つけにする。

この映画で重要な役割を果たしたのがフィリップ・グラス作曲のサントラである。一幕一幕意味をもってストーリーを展開していく重要な役割を帯びている。まさに歌のないオペラのごとく見事な構成であり、複雑な二人の心理を音楽で描いている。珍しく僕はサントラを先に手にいれ、カーステレオやウオークマンでその旋律を楽しんでいたので、いわば音楽からこの映画に入り込める、僕にいわすれば理想的な形で映画に接することができた。映画が終わって配役や関係者名が流れるエンドロールで音楽はさらに盛り上がり、まさに交響曲4楽章ともいえる。絶対に最後まで座って余韻を楽しんでほしい。

これこそ心理映画の醍醐味ともいえる映画である。

2.アメリカ映画「ザ・シューター/極大射程 原題 SHOOTER 」☆☆

スティーヴン・ハンターのベストセラー小説の映画化である。原作はきめ細かに孤高の射撃手とその銃の扱いについて描いている。引き金にかけた指の力を2ポンドから3ポンドに増やす」とか、「数ミリ単位で照準を修正する」とか通常人では理解できないような極限の発射時の緊張度を描き、1キロ以上も離れた超遠距離射撃というものを、その人物像から描ききっているのである。

まさにこのようなライフルと一体となった射撃手の名人芸と孤独を映画が描き切れたかということだが、残念ながらメッシュが粗すぎる。むしろスナイパーの凄さはあの映画「スターリングラード」のほうが迫力と緊張感が映画として上であった。

内容は大統領暗殺を阻止すべく、CIAに協力を頼まれた主人公が巧妙な罠に嵌められ、九死に一生を得てCIA内部の陰謀組織に復讐の鉄鎚を下すアクション娯楽劇であり、マカロニウエスタンの現代版と考えてよいだろう。

主人公のスナイパーを「ディパーテッド」でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたマーク・ウォールバーグが演じているが、この俳優なかなか渋い味がありこういう孤独で寡黙な男の怒りを爆発させる演技に見事にはまり将来楽しみである。「ドリームガール」で活躍したダニー・グローバーが悪役になる。ケイト・マーラの白痴的マスクとセックスそのものといえる肢体はかかる暴力映画のバックとしてはうってつけである。
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◎図書室 「参議院なんかいらない」村上正邦 平野貞夫 筆坂秀世 幻冬舎新書  奥山篤信評
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この本読む前の期待より実際の読み応えの方がはるかに大きい。はっきりいって週刊誌の雑談の域をでないだろうと冗談半分で読み始めたら、いやはや参議院の本質を知悉している三人の元議員がなかなか本質を突いた議論をしているのである。
 
筆坂秀世元共産党政策委員長は、参議院の予算委員会その他であの独特の関西弁で舌鋒鋭い質問を行い、与党を追い詰めていく姿とロジックには大変印象的であり僕は彼がテレビに登場するのが楽しみであった。
関西人特有の本質論が主義主張の異なる共産党であろうと心に響いたのであろう。村上正邦氏は宮本雅史の「真実無罪」を読んでその冤罪の犠牲者として義憤の怒りを感じている。まさに国策捜査の犠牲者である。
平野貞夫氏は自由党で小澤一郎のブレーンとして活躍、いまだに影の相談役である。
 
この本は筆坂氏の肝入りで完成したらしい。一体参議院って何のためにあるのかというのは一般国民だれしもがもつ疑問である。
 
本書は、結構ゴシップ的な個人攻撃もちらつかせながら、かなり教材となりうる真面目な参議院論を三者が語っているところが面白いのである。
 
三人に共通するのは、青年時代から持ち続ける純粋な正義感である。それは共産党であれ保守政党であれ、共通する倫理観であり人間的魅力なのである。
 
村上氏は冤罪事件の犠牲者で最高裁の判断待ちの苦しい環境にあるにも拘わらず「逆境に戯れる」だけの余裕のある大人物ぶりがこの書より伝わる。 
 
平野氏も流石小澤一郎の知恵袋、参議院の隅から隅までディテールを掌握していて現実性がある。
 
あの筆坂氏の剽軽な人柄はこの本にも滲み出ており、人間の顔をした共産主義者であり、彼がトップだったら結構共産党も人気爆発の国民政党になった筈である。そこが共産党の限界なのである。
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◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
 編集長・市村直幸
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何故年号を遣わないのか。日本語(国語)で表現しているのであるから、生年も年号であらわしたらよかろうに。指導マガジンたれ。
               MI7
日時:2007年6月9日


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