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甦れ美しい日本 第106号
発行日: 2007/2/18□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2007年2月18日 NO.106号)
☆☆甦れ美しい日本☆☆
☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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< 目次 >
◎レギュラー執筆者
1.佐藤 守 大東亜戦争の真実を求めて101
2.奥山篤信 武藤章という悲劇の軍人-徹底した合理主義者 (7)最終回
3.松永太郎 過剰な心理主義をやめよ
4.西山弘道 日本は置いてけ堀?将軍様の高笑い
◎ 映画評 スペイン映画「あなたになら言える秘密のこと」(原題The Secret Life of Words)☆☆☆☆ 奥山篤信
◎ 映画評 アメリカ映画「ドリームガールズ」☆☆☆☆☆ 奥山篤信
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◎レギュラー執筆者
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1.佐藤守
大東亜戦争の真実を求めて101
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蒋介石が如何に軍官学校の創設に努力したか、彼の秘録を続けよう。
「五月三日、孫文から陸軍軍官学校校長(広東軍総司令部参謀長を兼務)に正式に任命された。五日には、試験にパスした第一期の学生三百五十人が入学してきた。この日は孫文が非常大総統に就任(一九二一年)した記念日である。学生達は第一、二、三隊に編成、さらに七日には補欠学生約百二十人が第四隊に編成された。学生はさらに増えて六月十六日の開学式には、四百九十九人に達した。
八日、学生達に、初訓示を与えた。
『われわれが革命の事業を行うには、まず革命の意義を理解しなければならず、また、人の道の意義を理解しなければならない。私(蒋介石)は、諸君が、従来の一切の旧習慣、旧思想、旧行動のすべてを、きょうこの日から、きれいに取り除き、一人の新しい真正な人間となり、過去を継ぎ、未来を開くというわれわれの責任を担い、天を頭にいただき、地の上にしっかと立つ革命につくすことを希望する。
真に人としての意義を理解し、自己の生活の目的、生命の意義を徹底的に理解したならば、弾あられの中、血の海、屍の山の中でも、決しておびえ、おののくことはない。われわれ軍人の本分は、ただ『死』の一字にある。生をむさぼり死を恐れるのは、軍人とはいえないばかりでなく、人格がなく、人ともいい得ないのである』健軍の一歩は、ここに始まった」
如何に蒋介石が、幹部養成のための軍学校建設に情熱を傾けていたかがよく分かる。しかし、この訓示は、あまりにも「高尚」過ぎはしなかったか?
混乱の巷からかき集められた学生達にとっては、このような高邁な理想主義が、直ちに理解されたとは考えられない。むしろ、共産主義革命思想と混同し、この国(中国)に要望されているのは、まさに共産革命だ、と考えたとしてもおかしくなかったであろう。蒋介石の高邁な訓示は、彼の自己陶酔に過ぎなかったように思われる。彼は自分の言葉に酔っていたのである。事実、彼は続けてこう書いている。
「学生達を迎えて、陸軍軍官学校の陣容もようやく整った。
廖仲!)が軍校駐在の中国国民党代表に就任、党の指導責任体制が確立された。教練部主任には李済深、教授部主任には王柏齢、政治部主任に戴季陶、総教官には何応欽が任命された。管理、軍需、軍医の各部スタッフも決まった。
これらスタッフの中には、葉剣英(教授部副主任)、周恩来(政治部副主任)など、共産党分子が早くも混入していた。
軍官学校の目的は、国軍の将来を担う幹部を最短機関で促成すことにある。それにはまず、軍事面での教育が急務であることは、言うまでもないが、それ以上に重要なことは、精神面における武装であった。
すなわち、徹底した革命精神を養うことであり、そのための政治教育が重要な部分を占めた。
汪兆銘、胡漢民、邵元冲の三人が政治教官に就任し、三民主義や中国国民党党史などの授業を担当したほか、世界の大勢及び国内の社会の現状を認識させることにも力が入れられた。軍官学校が当面する問題点は、「統御」「経理」「衛生」の三つに大別できた」
この蒋介石秘録は、後年彼がまとめたものだから、当然この時点では共産分子が軍学校の幹部の中に深く混入していたという自覚はなかったと思われる。
「国軍の将来を担う幹部」を養成する学校の重要な任務が「精神面の武装」だと蒋介石は書いたが、そのための柱になるべき重要な部分を占めた「政治教育」の中味がどんなものであったかは想像できる。つまり、後の共産党の大幹部となる、葉剣英と周恩来がともに「副主任」という目立たない形で、その重要な「精神教育」を牛耳っていたに違いないからである。国民党はその創設期から共産党、はっきり言えばコミンテルンに「軒を貸して母屋をのっとられていた」のである。
話は変わるが、戦後の自衛隊幹部養成に当たるべき「防衛大学校」の創設期も、この観点が希薄であったように思われる。「軍国主義」を排除し、「陸海軍の対立」を解消するという目的はほぼ達成された感があるが、「民主主義化の新国軍建設」という戦後の高邁?な理想主義が強調され過ぎて、我が国本来のあるべき伝統を軽視したツケがやがて表面化するのではないか?と懸念されるのだが、それはさておき、国民精神を良くも悪くも左右するのは、「国民教育」である。その観点から戦後の我が国を見ると、義務教育の中枢に侵入した日教組という“反日団体”の行動が、中国国民党を乗っ取るために国民党の中枢に忍び込んだ中国共産党のやり方とそっくりなことに瞠目させられる。 (続く)
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信
武藤章という悲劇の軍人-徹底した合理主義者 (7)最終回
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「山下大将が自身が全く知らざる場所と時とにおいてその部下が犯したと称する罪の責任を負って、処刑された。山下大将は日本軍人として最善を尽くされた。私はその参謀長として大将の無罪を信じて、将来史家の公正なる批判を待つものである」と、武藤は回想録に述べる。その武藤自身が比国収容所で暮らすある日、突然東京に召還の知らせがあり巣鴨ブリズンに向かうのである。まさに茶番裁判そして田中隆吉の告げ口による犠牲者である。武藤が裁かれたのは、対英米戦争の計画し進めたという内容が中心であった。あれだけアメリカとの開戦に反対し軍部内での賛成派を抑える努力をしていたにも拘わらず、卑劣な田中隆吉の密告にて、対アメリカとの戦争の張本人とのレッテルを張られたのは悲劇としか言いようがない。
武藤は他の陸軍軍人とともに、日本国家弁護の立場で、この戦争は自衛のものであり侵略性はないとの弁論の流れに沿っていたが、武藤自身法廷で際立って弁解するような場面はなかった。既に自分の運命を静かに受け入れようと決意していたからであろうか。武藤には結局南京事件、スマトラ、比国における犯行(残虐行為)を結びつけ極刑が言い渡された。
武藤が手記で述べている点で、興味ある点は、判決後極刑組と禁固刑組がそれぞれ隣り合わせた別室に誘導されたが、極刑を免れた海軍の嶋田繁太郎などの嬉しそうな声が響いてきたことを「さりげなく」触れている。ここに(海軍組に処刑判決がない)実際の戦争責任の上ではるかに陸軍を凌駕する海軍への武藤の怒りが篭められているのではないだろうか。
武藤は判決後の面会で妻と一人娘(養女)に次のように言ったという。
-----二人して勇気を持って暮らしなさい。千代子は早晩結婚せねばならぬが、お前の自由を束縛する毛頭ない。だが、できるならお母さんを大事にしてくれる、人情ある男だと結構だと思う。例えば検事だとか、裁判官だとかは避けるがよいと思う。今度の経験で彼等は人間の屑だということがわかった。-----(小林よしのり 「いわゆるA級戦犯」より)
多くの冤罪事件や奇妙な判決で裁判官や検事の非人間性を痛感する昨今、この武藤のいう「人間の屑」とまで言い切ったところが武藤らしいが、世の真実を突いている。
武藤は曲がったことが大嫌いな一徹な軍人であり、自ら人生に悔いることがないほど自信を持って生きてきた一方、きわめて温情がある軍人であったことが、同期や部下からの思い出から偲ばれる。陸士46期で自衛隊陸将だった渡邊博が手記で偲んでいるが、彼自身が比国にて悪性赤痢で死線を彷徨っていたとき、武藤が険峻な坂を攀じ登り意識不明の自分を見舞い、死に水として酒好きの自分に貴重な葡萄酒を恵んでくれたと後で聞き知り涙が止まらなかったなどの逸話がある。
武藤が辞世の句として
霜の夜を思いきったる門出かな
散る紅葉吹かるるままの行方哉
と詠んだが、悲運であっても、それをそのまま受容しようとする潔さが窺われる。
武藤と生前良きライバルでもあった田中新一が「武藤は日本民族の犠牲になった。」と悲憤の涙を流したという。
最後にスマトラで武藤に接した館勇氏の武藤の人物像を箇条書きして、論文を終えたい。
1.文武両道 国際常識 社会常識豊かな人
2.政治を理解し、政治的事務に適した才覚を持った人
3.洗練された俳人で、戦陣においても折に触れ俳句を詠む心のゆとりと情操を持つ人
4.対米非戦論者で日米交渉中あくまでも平和解決に努めた人
5.戦略戦術すべて合理的で彼我の戦力判断適正かつ精神主義に偏らぬ人
6.兵站についての卓越した戦術眼を備えた人
7.使命感、責任感抜群の人
8.人を見る目が鋭く、教育指導の厳しい反面、部下を愛すること海のごとき人
(了)
奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社
平河総合戦略研究所代表理事
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3.松永太郎
過剰な心理主義をやめよ
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異常な事件が多発している。そのたびに心理学者と称する人が出てきて、何かコメントを新聞に出す。そのコメントを読んで、この程度のことなら、何もわざわざ学者ではなくても、言えるのではないか、と思われた方も多い、と思う。
いっぽう、学校が病んでいる、といわれる。学級崩壊、いじめなどの問題も新聞をにぎわす。そのなかで、ストレスによる先生の「心の病」が増えているという報道が、よくなされる。
また「PTSD」(外傷性ストレス障害)という耳慣れない単語も、よく目にする。何か心に傷を負った場合、残る精神的な障害のことだそうである。
「うつ」が増えている、とも言う。日本もアメリカも、そうであるらしい。リストラにあったり、離婚したりすると、欝になる確率が高いそうである。
こういうのを読むと、どことなく釈然としない。つまり不安になったり、欝になったりするのは、「病気」なのだろうか。何かつらいことを思い出して、またつらい気持ちになるのは「障害」なのだろうか。
心理学者が書く本を読むと、香山リカのような人が典型だが、その人間観の浅薄さには驚かされることがよくある。同時に、社会現象に対して心理学的解釈を加える、その解釈の安易さ、いいかげんさにも驚かされる。たとえば「ナショナリズム」は、このような人にかかると「不況によって不安になった人々がそのよりどころを求めた結果」なのである。こんなのは、暇な人が新聞に投書する程度のレベルである。
フロイトやユングやラカンのような西欧の心理学者の書くものは、読めばおもしろいときもあるが、ほとんどの場合、眉につばをつけたくなるようなことが書いてある。しかも曖昧模糊としている。とくにラカンというのは、なにを言っているのか、確実にわからない。断言してもいいが、ラカンというのをわかりました、という人は、ほらをふいているのである。心理学というのは、経済学と同様、果たしてこれを学問といえるのかどうか、わからないぐらい、いいかげんな学問である。いい加減といって言いすぎであれば、まだ確立されていない、幼児期の学問である。
カウンセリング(心理療法)というのは、それに比べると、かなり効果があるようである。しかし、いったいカウンセリングというのは何か、といえば、要するに昔で言えば、人生相談なのである。
私が言いたいのは、こういうことである。なにか、つらいことがあって、夜眠れなくなるのは当たり前のことである。失恋すれば、何もかも灰色に見えるのもあたりまえのことである。職を失えば不安になるであろう。家族に病気があれば、心配になるのは当然である。
こういう、昔なら当たり前のことが、今では「病気」とされ、「心の病」となり、というのは、少し変なのではないか。しかし、その変なことが、当たり前のようになっている反面、年間、3万人の人が自殺する、という明らかに異常な事態に対しては、あまり関心が払われていないようである。
私は、自殺というのは「心の病」の結果なんかではないと、ふたたび断言してしまう。欝で死ぬ人はいない。鬱の人に、そんなエネルギーはない。そうではなくて、これは社会的なシステムの欠陥である。もっと簡単に言えば、暴力的な金利が野放しにされている結果である。こんなものは、きちんとした社会的施策を施せば、必ず解決する。みんなそれは知っているはずである。
学校もそうである。生徒が騒いだぐらいで、鬱になるわけがない。それに対する有効な手段が見つからないから、不安になる程度のことなのである。有効な手段といったって、何もむずかしいことではない。先生が一致団結して「正邪の基準」を子供に教えれば言いだけの話である。弱いものをいじめるな、嘘をつくな、人のものを盗んではいけない、年長者を敬え、この程度のことを団結して、なぜ教えられないのか。
トラウマだとか、鬱だとか、不安神経症だとか、対人恐怖症だとか、あやしげな心理学的用語を使うのをやめよ、といいたい。それらは実際に病気でもない人を病気にしてしまう反面、本当は簡単に解決できるはずのことをやたらに複雑にしてしまう。
松永太郎;
東京都出身
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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4.西山弘道
日本は置いてけ堀?将軍様の高笑い
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北京の6ヶ国協議は、北朝鮮の核を停止する見返りに、北に重油100万トンを供与することで合意した。ミサイル発射どころか、核実験まで強行した“ならずもの国家”に、100万トンという膨大なエネルギー支援を行うというのだから、「泥棒に追い銭」とはこのことだ。合意した“朝鮮半島の非核化”とは、とりあえず寧辺の核施設を稼動停止・封印するということで、まだ数個所有しているとみられる核爆弾や、ウラン濃縮施設については一切触れられていない。
ブッシュ政権は今回の合意を「朝鮮半島の非核化への第一歩」と大々的に評価しており、しかも米国は北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除する方針を示し、ゆくゆくは米朝国交正常化も考えるという大サービスをした。イランと並んで北朝鮮を「ならずもの国家」と指弾したあのブッシュ政権が、である。
戦前の平沼内閣ではないが、全く国際情勢とは不可解である。ブッシュ政権のこの外交変化の理由は、昨年秋の中間選挙で共和党が敗北、民主党が議会の多数派となったこともあろうが、それ以上に米中朝の3国間で何らかの密約が成立したのかも知れない。特に1月に行われたベルリンでの米朝2国間協議が怪しい。
拉致問題で梯子を外された形となった日本は、今後の北へのエネルギー支援を考慮する時、苦しい立場に追い込まれる。拉致問題は北以外の5カ国で重要議題に取り上げると合意し、しかもブッシュ大統領がホワイトハウスで横田早紀江さんを直々に激励したのに拘らず、今回の6者協議でも拉致問題は無視された。国益重視の外交交渉の非情さの結果とはいえ、拉致被害者はやりきれない思いだろう。
拉致問題でのブレない姿勢が評価されて、首相の座に就いた安倍晋三氏としては、拉致問題での北への圧力路線は政権の金看板である。拉致の解決がない限り、北への支援はない、と言い続けた安倍政権にとって、あくまでこの姿勢を貫くか、それとも5カ国と協調して北支援の線列に加わるか、重大な選択を迫られる。しかもその時期は、合意文書によれば、「初期措置」が終わる2ヵ月後、つまり国内では今年前半の政治決戦、統一地方選挙が行われている真最中である。「圧力」か、「対話」を取るかは当然、政局にハネ返る。
自民党内では、山崎拓安保調査会長が「拉致問題解決を優先する日本はバスに乗り遅れる」と雑誌で発言すれば、谷垣派内からも「米国の対話路線転換を読み違えるな」との声も上がっている。一方で中川政調会長は「拉致問題が解決しない限り、支援する必要はない」と安倍首相の「圧力」路線をバックアップしている。すでに政局になりつつあるのだ。
いや、政局などと低次元のレベルよりも、今後の「対話」か「圧力」かの選択は、日本の国家としての重大な針路選択を迫る問題になってきた。「国際協調」か、「孤立」かとは何やら戦前の日本の選択を彷彿とさせるが、ここで我々が確認すべきことは、拉致問題は北朝鮮という無法国家の「犯罪」であり、これの解決=現状復帰は日本の国家原理の根幹に適うということなのである。
西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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◎ 映画評 スペイン映画「あなたになら言える秘密のこと」(原題The Secret Life of Words)☆☆☆☆奥山篤信
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スペインの女流監督イサベル・コイシェの作品である。巨匠ペドロ・アルモドバル親子が製作者である。アメリカ映画にないヨーロッパならではの、しかも女性特有の木目の細かい内容である。なんと僕たちが若い頃のあの「ドクトル・ジバゴ」のララ役のジュリー・クリスティが初老のカウンセラーで出てくるのには懐かしい。
凍りつくように 殺伐とした北海油田に浮かぶ石油掘削リグが舞台である。厳しい大自然のにある人工構造物において石油掘削作業管理のために男たちが現世と隔離され共同生活する場所である。船舶のように航海することはなく、同じ場所に浮かんでいるだけに、不安と孤独それに哀しみ、そして「人間の疎外」を象徴的に表せる舞台である。女性の居ない世界には、楽しい愉快な男たちが集まり、それなりに友情が存在し連帯感はある。あるときその一員が自殺しようと掘削現場に飛び込んだ。これを救出すべく飛び込んだティム・ロビンス扮するジョゼフは複雑骨折、網膜火傷、火傷の重傷を負い、リグで盲目のまま死線を彷徨う。
ここに偶然志願して看護するのがサラ・ポーリー扮するハンナである。ハンナはあらゆる感情を最初から一切禁じられてように、規則と勤勉だけに生きる工場の作業員であった。組合よりの休暇も取らず働きすぎることにクレームに従い、無理やり一ヶ月の休暇を取らされる羽目となったが、孤独で何ものにも興味を持つことのない無表情で無感動なハンナにとっては苦痛以外何物でもない。ある日、偶然このリグの事故を耳にして、重症人ジョゼフの看護を買って出る。
視力を失ったジョゼフが何を語りかけても、通り一遍の答えと嘘しか返ってこないハンナ。ジョゼフにも「過去」はありそうながら、友達の妻であっても人妻に手をつけるのが生きがいという陽気そうに振舞う一面がある。ハンナはそれをジョゼフが部屋においた携帯電話の留守電で知る。ある日責任者よりジョゼフの重症は、事故ではなく自分の身を捨てて自殺者を救おうとしたことを知る、そしてそれを誇示せず一切ハンナに語らないジョゼフに心が開いて行くのである。
どんな容貌かも見えないが、誠心誠意看護する、一切自分を語りたがらないハンナにだんだん惹かれていくジョゼフであった。この二人のやり取りの絶妙の演技は圧巻である。ハンナが心を開き笑いさえ見せるその姿、しかしすぐに無表情に戻る心の傷の深遠の襞を、なんと見事にサラ・ポーリーは演じていることか!それに加え名優ティム・ロビンスの演技の魅力は、ジョゼフの男の思いやり優しさに富んだ包容力を見事に演じ、観客が期待する大団円に見事に導いていくのである。、これは過去に心の傷を持った二人の男女が真の愛に再生されようとする無償の愛の物語である。この映画を涙なしに見れる観客はないだろう。
否、でもあの「女は子供を生む機械である」が女性の心を傷つけたなどと言葉尻の馬鹿騒ぎしているような感性の連中には、この映画が描く本当の心の傷など、微塵もわかりはしないことは確かである。
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◎ 映画評 アメリカ映画「ドリームガールズ」☆☆☆☆☆ 奥山篤信
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トニー賞で6部門を受賞した伝説のブロードウェイミュージカルを映画化したもの。コーラスガールの女性3人組を軸に、野心と成功そして挫折の物語で、「勧善懲悪」の良きアメリカの伝統的な筋書きで、心から楽しめる大型娯楽作である。
出演者がほとんどアフリカ系アメリカ人であり、「レイ」のオスカー名優ジェイミー・フォックスが野心あふれるruthlessな興行事業家 、アフリカ系の絶世の美女というべきビヨンセ・ノウルズがその妻でありコーラスガールのリード役 、エディ・マーフィが酒と薬におぼれる過ぎ去りし栄光を追う時代遅れの歌手などを見事に演じている。どたばた喜劇俳優も一枚剥けた感がある。アカデミー助演男優賞にノミネートされている。『シカゴ』で脚本を担当したビル・コンドンが監督と脚本を担当。
何よりもすばらしいのはこの作品でアカデミー女優助演賞にノミネートされているジェニファー・ハドソンである。ハドソンは「ドリームガールズ」のオーディションを受け、782人の中からエフィー役をつかんだシンデレラである。もうこれは受賞100%確実と思われるほど、熱演とど迫力の歌声を画面一杯に轟かせる。あの抑圧されたアフリカ系の絶叫と希望と夢を謳いあげるかのように、まさにアメリカ国家の20世紀前後のアフリカ系の被差別と貧困の苦悩を体で体現しているのである。もっとも実力がありながらら、リード役を外され、嫉妬と怒りで潰れ、なおも無慈悲なフォックスの子を宿し、絶望と貧困から再度這い上がるアメリカンドリームそのものの生き様で、彼女のこの絶唱が観るものの心に重く響くのである。
観終ったあとでまた見たくなる最高の娯楽傑作である。
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◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
編集長・市村直幸
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