日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う
- 最新号:2008-10-11
- 発行周期:週間
- 読んでる人:5899人
- 創刊日:2005-02-04
- Score!:95点
- コメント数 : 38
- メルマガID:133212
- バックナンバー:全て公開
- 発行者サイト:あり
- >> 月間ランキング
甦れ美しい日本 第081号
発行日: 2006/8/29□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年8月29日 NO.081号)
☆☆甦れ美しい日本☆☆
☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
< 目次 >
◎レギュラー執筆者
1.佐藤 守 大東亜戦争の真実を求めて76
2.松永太郎 日本のこれから(2)
3.奥山篤信 アンリ・カルティエ=ブレッソンの世界
4.西山弘道 見えてきた安倍内閣の“店構え”
◎図書室 「風の影」カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫 松永太郎評
◎映画評 アメリカ映画「マッチポイント」−ウッディアレンの正体を見た!−奥山篤信評
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──────────────────────────・・・・・☆
------------------------------------
1.佐藤守
大東亜戦争の真実を求めて76
-----------------------------------
マクマリーは続ける。
「このコミンテルン思想の影響は、国民党のリーダー孫逸仙(孫文)に現れた。彼は、米
国もしくは日本から新たな支援を獲得する努力をしなくなり、『反帝国主義』と、『不平等
条約』破棄を中国再生のための基本教義とした。孫文の教義(民族、民権、民主の3民主
儀)が、中国人特有の政治の考え方に良くあっていたのか、一九二五年の春彼は、北京で
かっての最も強硬な政敵たちから歓呼して迎えられた。そこで彼は、いささか愛国的殉教
者のような形で死去するのだが、信奉者たちのすすめによってある政治的遺書を発表する。
その遺書には、帝国主義的列強への隷属から中国を解放してくれるのはソ連だけだと述べ
られている。孫文は、諸外国との全体的な関係における中国人の憤りの感情に、強力な情
緒的刺激を与えたといえるだろう」
その遺書とは何か?アーサー・ウォルドロンは次のように解説している。
「一九二五年二月二十四日、死を目前にした孫文は、彼の政治目標と不平等条約破棄の必
要を述べた145語字の遺稿文を残したが、ソ連への言及はしなかった。
三月十一日(死亡の前日)、彼は自分が残す書籍、紙幣、住宅などの一切を妻の宋慶齢に
遺贈する旨の遺書に署名した。ところがマクマリーは、この日『孫文博士の病床にあった』
とされるもう一つの文書に言及している。その英文テクストは、陳有仁がボロディンと協
議して用意したものであり、三月十四日プラウダによってまず公表され、ソビエト社会主
義共和国連邦の中央執行委員会へ提出された。その原文の一部には、帝国主義の犠牲者中
国は、レーニンの不滅の遺産によって自由を確保すべきだと書かれている。ボロディンの
モスクワへの報告は、死に臨んだ孫文が『ソ連さえ中国を支援し続けてくれれば』と繰り
返し述べたことにふれている。しかしながら、ウイルパー教授が書いているように、『国民
党の多くの指導者たちが、『この文書』を敬意を持って認めるわけにはいかなかった事情が
あった』わけである」
つまり、ウイルパー博士は、この遺書は本人が書いたものかどうか特定できないとして、
国民党幹部たちが信用していなかったことを言っているのだろう。こうして孫文自身も『コ
ミンテルン』に利用されていたのである。
そしてさらにマクマリーは、1925年に発生した上海と沙面での暴動事件を次のように分
析している。
『上海と沙面での大虐殺とともに、燻っていた暴動が燃え盛ることとなった。中国人に内
在する要素が、凶暴な外国人嫌いの感情となって爆発したのである。現行の条約体制によ
って押し付けられた恥辱と彼らが考えるものに対し、民族的な自己主張が荒れ狂った。こ
の事件においては、中国人の特別の憎しみが、英国人と日本人に対してかき立てられた。
しかし暴動の標的は明らかにソ連の国民党政治顧問の助言によると思われるが、英国へ
突然集中するようになった。イギリス人は排外運動の標的とされ、ついで日本人、その次
にアメリカ人、そしてその他の列強は目標となる感の外側にあった。一年以上もの間、英
国の貿易と船積みは力ずくでボイコットされた。この現象は特に華南で顕著であり、スト
ライキもイギリス直轄植民地の香港を目標としていた」
ここでボロディンと共に孫文の遺書「捏造?」にかかわった、「陳有仁」に付いて書いて
おこう。
陳有仁(1870〜1944)は、トリニダード島(英領西インド諸島)生まれで、初期の学業
も終え、法律家として成功していた。1911年ロンドンに行き、法廷弁護士として活躍し
ていたが、ここで孫文と知り合い、1913年まで彼の外交問題顧問として仕えた。次いで
英文の「Peking Gazette」の編集者になり、孫文が1923年広東へ帰国したとき、彼も外
交問題顧問として再び行動を共にして大陸に渡っている。1926年には国民党の中央執行
委員会に参画した。1926年5月には、広東政権の外交部長(外相)に任命された。彼は、
武漢政権が分裂したときモスクワへ逃れた(反蒋介石運動に失敗)何人かの一人であり、
1932年に外相をごく短期間勤めた以外中国の政界において、彼が再び要職に付くことは
なかった。彼は日中戦争中の1944年、上海で死去している。
彼の経歴を見ても分かるように、当時の中国国内には、ソ連コミンテルンの情報網が張
り巡らされていたことが分かる。 (続く)
**前回、75に誤字がありましたのでお詫びして訂正します。
1、不況→布教
2、承認→商人
3、強調→協調
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
-------------------------------------
2.松永太郎
日本のこれから(2)
-------------------------------------
前回にも触れたが、NHKが、8月15日に放送した「日本のこれから」という番組の中で
視聴者に対し、「首相の靖国参拝」の是非を問うたところ、賛成が70%を超え、反対を大き
く上回った。
これを見ていて、筆者はついに、批評家の江藤淳氏が言っていた「戦後の閉ざされた言
語空間」の壁が壊れた、と感じた。いわゆる占領軍の検閲と宣伝工作によって、戦後のマ
スメディアに作られた厚い壁はその後も一部、というよりは大方のマスメディアの中に温
存されていた。そして、その壁を旧左翼が利用し、冷戦終結後はサヨクが利用した。それ
は戦後60年以上にわたって、厳然と存在していたが、今、その壁が壊れたのである。大げ
さに言えば、戦後の言論史のなかで、あるいは社会史のなかで、もっとも大きな出来事と
いえる。
ここでは旧左翼というのは、本当に社会主義、共産主義の「歴史的優位性」を信じ、本当
にその実現に向かってまい進しようとした勢力を言う。そしてサヨクとは、旧左翼の系譜
を受け継いで入るものの、もはや共産主義の教義は信じてはいないが、何かといえば、「日
本は反省していない」「侵略国家だった」「人権が大事」「民主主義は大事」「憲法は大事」「中
国、朝鮮半島などと仲良くしよう=なんでも言われたら賠償しよう」「国家は悪い、とくに
日本」「権力は悪い」「男女同権」「戦争反対」などというお題目を唱える勢力を言う。もちろ
んお題目であるから、その中身を問うことは絶対にしない。「朝日新聞」やNHKの一部を
代表とするマスメディアや、社会学系のアカデミズム、学校の先生たちの団体などに多く
残っている。今では「プロ市民」などとも呼ばれているようである。
これらの勢力の偽善性が、国民の前に完膚なきまでに明らかになったのは、まず拉致を
北の将軍様が認めたときである。このとき「朝日」は「拉致問題は、日朝国交正常化への
障害」とまで書いた。「国策」の前には、国民の「人権」などどうでもいいというわけで、
これには筆者を含めて多くの国民は呆然とした。そもそも、多くの国民には、人さらいを
し、覚せい剤を売りさばき、ミサイルを乱れ打ちするような「国家」となんで「国交」なんぞ
を結ばなければいけないのか、さっぱりわからないのである。そのうち社民党の辻本清美
のようなのが、一人や二人さらわれたってどうってことない、と言い出し、ついにこの勢
力のお里が知れ渡ったのである。そこへ持ってきて、チャイナの反日デモである。
あたかもその少し前から、小林よしのりという漫画家が、「王様は裸だ」という子供のよ
うな率直な目で、日本のサヨクのおかしさを描き始めた。とくに「従軍慰安婦問題」のお
かしさが、若者たちに広く受け入れられた「ゴーマニズム宣言」で、非常な説得力をもっ
て、描かれたのである。私見では、このころから主として青年たちの間で、ネットなどを
中心として、メディアの中のサヨク、すなわち、戦後の「閉ざされた言語空間」のタブーを
打ち破る議論が広く流通し始めたのである。これを筑紫哲也のような旧来の言論空間のボ
スなどは、敵意を込めて「ゴミタメ」とよんだのだった。
現実の事件、優れた表現者、ネットという新しい情報流通、これらが「閉ざされた言語空
間」の壁を打ち破ったといえるだろう。
8月15日のNHKの番組では、とくに面白かったのは、若者のあいだで「靖国参拝賛成」
が多かったことに周章狼狽する司会者や、ディレクターのやり方である。それは「若者た
ちが何にも知らないから、だから賛成するのだ」というまとめかたであった。自分たちの
無知は百階の棚の上に上げて、平然とそんなことを言う傲慢な姿勢は、当日の出演者の一
人だった保坂正康にも見られる。彼は、こう書いている。
「市井の庶民に、慰霊や追悼の名の下に政治思想が鼓吹されている、というのが現状で
はないだろうか」
バカな庶民は何も知らないから、そういう「政治思想」に簡単に動かされる、といいた
いたのである。古典的な旧左翼の「いつか来た道」論法である。靖国参拝に反対するほうが、
どこら方面の意図を受けているのか知らないが、よっぽど「政治的」ではないのか。
「同時アンケートで、首相参拝賛成が70%を超えたのには驚いた。若い世代の支持が多い
という。メディアの報道はこの首相の主張なき信念のみを伝えてきたということだろう。
朝日新聞は、連日、ほとんどとりつかれたように首相の参拝に反対する記事ばかり掲載
した。「メディアの報道は首相の主張なき信念のみを伝えてきた」のは、明確な事実判断
の誤りである。同時にまたそうした報道しかなかったから、みんな参拝に賛成するのだ
という途方もない主張も、まったく根拠がない。保坂という人の目の狂い方にも、かな
りすごいものがある。きっとネットなど見たことがないのだろう。
8月15日の翌日、若宮啓文・朝日新聞論説主観は一面に「国立追悼施設を作るのがよかろ
う」と書いた。自分たちの言論がいまだ言論ヒエラルキーのトップにあるという空疎な
強がりが、「よかろう」によく現れている。
謹んで、中国共産党対外宣伝部に申し上げる。もう「朝日」のご注進は信じないほうが
いいよ。「裸の王様」になっているから。
松永太郎;
東京都出身
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
---------------------------------------------------------
3.奥山篤信
アンリ・カルティエ=ブレッソンの世界
--------------------------------------------------------
恵比寿の東京都写真美術館にて『瞬間の記憶』というドキュメンタリー映画を見た。ブレ
ッソンが95歳で他界する二年前自宅で同氏の追想を語ったものである。一時間強の映画
であるが、すでに好好爺となった気品あふれるブレッソンが写真の真髄を語っており、同
氏の往年の作品を解説するまさに写真講座ともいえる。写真家を志すもの、素人写真を楽
しむもの、写真とは何かこれほど抵抗無く面白くはまり込んでいける教材はないだろう。
教材というと何かこの映画がhow toものの誤解を受ける惧れがあるので訂正するが、まさ
にブレッソンが精魂を込めたかずかずの傑作にブレッソンの人間を見る目、社会への洞察、
人間愛、怒りなどその瞬時のシャッターに籠められるという写真の不思議な魅力が語られ
ているのである。
1908年にフランスの裕福な中流家庭に生まれたブレッソンは少年のころよりボックスブラ
ウニーを持ちスナップを撮影していた。一方でシュールレアリズムに傾倒画家志望でもあ
った。そのブレッソンがライカ35mmレンジファインダーカメラに50mmレンズや望
遠レンズを使用してスナップショットを撮り始めたのである。まさに"I suddenly
understood that a photograph could fix eternity in an instant."瞬間に永遠を捉えること
ができるのである。"Il n'y a rien dans ce monde qui n'ait un moment decisif."
決定的瞬間のないものはないのである。
1936年にパリの新聞社に求職するが刎ねられ、同じ目にあったロバート・キャパ、デヴィ
ッド・シーモア、ジョージ・ロジャーと知り合い、その後1947年に共に国際写真家集
団「マグナム」を結成した。大地に根を下ろしたキャパこそブレッソンに率直にアドバイ
スできる写真家であり、当時芸術としての写真を目指していたブレッソンに"No, don't do
that mannered thing."芸術を求めるが故の マンネリズムを捨てよと忠告したのである。
彼にとって大切なのは写真の構図である。いかに物体や人間がバランスよく配置されてい
るか、自然の恵みで時には最高の構図が得られる。手を加えなくとも良い写真が撮れるの
である。
ポートレートの場合被写体が構えてはならない。まさに自然体のショットにより、その内
面の想いや心の襞が表情として映写される。
"There is a creative fraction of a second when you are taking a picture. Your eye
must see a composition or an expression that life itself offers you, and you must
know with intuition when to click the camera. That is the moment the photographer
is creative," "Oop! The Moment! Once you miss it, it is gone forever."
一秒といえどそのなかに瞬間の集積があり、そのある瞬間にまさに人生を語る表情があり、
それを直感でシャッターが捉えたときがその写真の創造性であり、それを逃したら永久に
そのチャンスを失うということである。
ブレッソンの語る数々の写真にまさにそれを見ることができる。
ブレッソンは日本を始め世界中を旅行し決定的瞬間を追い求めた。その傑作写真にはそれ
が現実であるかと思うほど不思議で深遠な風景や人間の表情の瞬間的に的確に描写してい
るのである。晩年は人物写真が多く、歴史上の人物の一瞬の表情を捉えているが、その人
物を知るものにとってまさにその人物の歩んできた軌跡がそこにあるのである。
この映画にはナレーターとして作家(セールスマンの死)アーサーミラー、女優(8人の
女)イザベルユベール他写真家、映像作家がブレッソンを語る。それがまたブレッソンの
魅力を引き出していてドキュメンタリー映画として見事な出来栄えである。それにバック
で流れるバッハやモーツアルトのピアノの音色が天才カメラマンの美しい人生を静かに品
良く引き立てる。
奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社
平河総合戦略研究所代表理事
-------------------------------------
4.西山弘道
見えてきた安倍内閣の“店構え”
------------------------------------
9月20日の総裁選を経て、安倍晋三官房長官は第21代自民党総裁に選出される。
選挙は投票総数703票(国会議員403票、地方票300票)のうち、恐らく安倍氏が
500票近く獲得して圧勝となるであろう。
この2日後の22日、臨時国会が召集されて冒頭、首班指名選挙が行われ、安倍
新総裁は第90代内閣総理大臣に指名される。当初、臨時国会は29日に召集される
予定だったが、小泉首相の強い意向で召集が前倒しとなった。組閣人事を間をおく
ことなく断行することで、新首相のやりやすいような場をつくる、小泉首相の“親
心”だろうが、これには与党内がア然とした。普通なら国会召集は内閣が、与党と
緊密に打ち合わせて決めるものだが、小泉氏は与党に諮らず、独断で決めた。これ
には早くも、「小泉院政の構えか」との声も上がっている。ちなみに、この中日の
21日、安倍氏は誕生日を迎え、52歳となる。
さて新政権だが、早くもいくつか特色を打ち出した。それはまず憲法改正を最大
課題とし、任期中に改正への道筋をつけるという。そのため、とりあえずは改正へ
の手続き法である国民投票法を今度の臨時国会で成立を期すとしている。安倍氏の
祖父である岸信介氏が、やはり同じ「自主憲法制定」を強く主張して内閣を組織し、
日米安保条約改定に全力を投球した、保守の“DNA”が安倍氏にも受け継がれて
いるのであろう。
安倍新政権はまた、小泉内閣と同じように「官邸機能の強化」を掲げる。その目
玉は、日本版NSA、米国型国家安全保障会議の設立だ。これは、北朝鮮のミサイ
ル発射事件で、官房長官の安倍氏が、ホワイトハウスのハドリー大統領補佐官と緊
密に連絡を取り合い、国連安保理事会への北朝鮮非難決議案上程までこぎつけた経
緯を下敷きにしている。国家の危機管理に当たっては、戦略・情報を一元化して集
約することが何よりも求められる。
現在も内閣には安全保障会議があるが、これは全く閣議と同じで、ただ漫然と報
告事項が続いて形式化している。新しい日本版NSAでは、首相、外相、防衛庁長
官などの他、統合幕僚長も出席する、というのが“安倍構想”の目玉だ。自衛隊制
服組のトップが堂々と首相官邸に出向くのである。もっとも、これまで制服組が大
手を振って官邸に出入りできなかったというのが異常であった。
安倍氏は官邸強化のためさらに、現在の官房副長官の増員を考えているという。
現在は事務の副長官一人の他、衆参それぞれ2名の政務副長官がいるが、この政務
をあと2名、増員する予定だという。また、安倍氏は伝えられるように内閣広報官
の充実を考えており、現在の一日2回の官房長官の記者会見をこの広報官が替わっ
て行うこともあり得るという。この新しい内閣広報官には、民間のマスコミ出身の
人材を当てることもありそうだ。
さらに安倍新政権は、教育に重点を置くという。すでに言い尽くされていること
だが、21世紀の喫緊の課題は、少子化も進む中での、子供たちの教育のあり方だ。
当面は先の国会で継続審議となった教育基本法改正案の成立に全力を挙げるという。
また教育政策に力を入れるため、現在の首相秘書官制度を見直して、文部科学省か
ら秘書官を引き抜くことも考えているという。すなわち、現行の財務、外務、警察
出向の秘書官はそのままにして、経済産業省から出向の秘書官を文科出向に入れ替
えるという。これもひともめありそうだ。
西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
-------------------------------------
図書室 「風の影」カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫 松永太郎評
------------------------------------
長かった夏も終わりそうなので、緑陰や浜辺やプールサイドの本のおすすめは、遅いか
もしれない。しかし、これから夏の休暇の最後を楽しまれる本好きの方には、この文庫本
は、絶好である。
この本は、世界的なベストセラーになったそうだが、なるほど、そういう手もあったか
と思わせる、非常に巧みな小説である。本を読む楽しみ、小説を読む楽しみというものを
久しぶりに味わうことができた。ただ、どことなく、のせられた、やられた、という感は
禁じえないが。
ある一つの「都市」にささげられた「賛歌」というと、ロレンス・ダレルの「アレクサン
ドリア・クワルテット」がすぐに頭に浮かぶ。「海は今日も高い」(The Sea is high again
today)に始まって「愛するアレクサンドリア!」(Beloved Alexandria!)で終わる冒頭の
一節は、何度も繰り返し読んだものだった。この「風の影」は、ダレルほどの文学性はな
いが、筆力は相当のスペイン生まれの作家によるカタロニアの首都、バルセロナへの「賛
歌」である。
バルセロナというのは、悲しい都市である。それは20世紀の悲劇の一つの象徴ともいえ
るスペイン内乱の主たる舞台となったからでもある。虐殺と蛮行の記憶が、いまだに生き
ているのだ。バルセロナは、ほかの地中海の多くの都市と同じように、敵と味方が、今日
と明日で入れ替わる町であった。そのとき、そのときで、より多くの力を持った人間が、
ひどいことをした、としか言いようがない、と、ある内戦期のギリシャ人が言ったように、
あるいはイタリア映画「パードレ・パドローネ」で見事に描かれているように、スペイン
からギリシャまで、地中海の誇り高く、かつ傷つきやすい男たちを政治的な嵐が襲ったと
き、血の池が生まれるのは、見えたことだった。この小説は、映画の「惹句」風に言えば、
そうしたいかにも地中海的な男たちの「血と復讐のドラマ」である。
もちろん、そこに「女」がなければ小説にならない。地中海の男たちは、極端に言えば、
あるいは冗談で言えば、朝から晩まで「女」のことを考えているのだ。あるいは、それし
か考えていないといってもいい。いい女が通れば口笛を吹き、いつまでも「あの女」のこ
とを考えているのは、何もイタリア人だけではない。マリア様、マ・ドンナ、パナイア。
聖母の伝統の生きている土地では、女性とは、これも通俗的に言えば、もっとも聖なるも
のの対象である。フェミニズムにとっては禁断の土地だろう(笑い)。
最後に「ロマン」がある。ダンテ以来の文学の伝統。ゲーテやバイロンの憧れた南欧。
ロルカやヘミングウエイのスペイン。この小説は、本が好きな人間にしっかりと照準をあ
わせている。[忘れられた本の墓場」とくる。「謎の作家」とくる。まったくこたえられない
が、一方、非常にマーケッティングがうまい、と感じたことも事実である。
要するに、通俗的なスペインのイメージを見事に織り合わせたのが、この「風の影]であ
る。「ラ・ソンブラ・デル・ヴィエント」などといわれれば、筆者のようなミーハーには、
たまったものではないのである。最初に、のせられた、やられたと書いたのは、この小説
全体が、すべてスペインのこの通俗的なイメージを、このうえなく美しく描いているから
である。読み出したら、やめられない。
最後に、この小説の「本好き」の主人公が、ブラスコ・イヴァネスが好きだったらしい
のが、筆者にはうれしかった。イヴァネスの「血と砂」そして「地中海」は、岩波文庫か
ら再刊されているが、これからスペインに行かれる人にはおすすめしたい、すばらしい小
説である。
松永太郎
-------------------------------------
映画評 ●●●●●
アメリカ映画「マッチポイント」−ウッディアレンの正体を見た!−奥山篤信評
------------------------------------
これほど期待を裏切られた映画も少ないだろう。マスコミ、評論家の事前の絶賛もあり、
奔放なアメリカ人女性を最近売れっ子で『ロストイントランスレーション』『理想の女(ひ
と)』のスカーレット・ヨハンソンが演じているというだけで期待で心も弾むはずであろう。
何がくだらないか、まず内容は男女の爛れた関係を描く三文小説それに何のヒネリもなく
犯罪が行われる。その犯罪の発想と実行の手段のお粗末さは、よもやそういう筋書きでは
ないかと思いながらも、僕が危惧しかつ想像する通りになってしまう凡庸で陳腐さ、嫌悪
感を覚えるほどである。低俗な日本のテレビ犯罪物ドラマ程度の下品な筋書きである。か
って悪漢映画としては『太陽がいっぱい』とそのリメイクである『リプリー』という名画
があった。あの生まれながらの邪な野心をもった悪(わる)の犯罪それにどんでん返しと
いう何時見てもフレッシュなヒネリの構図があった。このマッチポイントには基本的には
悪党ではなく善人で小心である野心家テニスプロが名門の令嬢とその同族会社での地位を
射止めるが、スカーレット・ヨハンソンに対するLUSTを拭いきれず、きわめて幼稚で嫌
悪感を感じさせる殺人を犯すという物語である。『LOVEとLUST』にもならない平坦な陳
腐なストーリーである。
ユダヤ系アメリカ人ウッディアレンにとっては世の中は汗と努力で勝ち取りコントロール
しうるというよりは、ちょっとした運で決まってしまうという。冒頭テニスプロである主
人公がネットに当たったボールがどちら側に落ちるかで勝負が決まると語らせるように。
この映画では稚拙な犯罪が暴かれるのではなく、さらなる幸運によって犯罪は忘却されて
しまうというストーリーで終わらせているが、これが観客には全く心地良くないのである。
僕は何も映画のピカレスクpicaresque 性を否定はしていない。むしろその反道徳性に映画
の 娯楽性もあると思っている。でもこの映画がきわめて不快感と違和感を感じさせてしま
うことにこの監督は気がつかないのだろうか?犯罪の巻き添えになった無辜の老婦人を、
中東戦争で巻き添えになる一般市民と喩えたりしている。何が言いたいのだろうか?反戦
なのだろうかそれともイスラエルの正当化であろうか?首をかしげる。
イギリスが舞台として美しいロンドンの街並みや田園風景が描かれている。とりわけ主人
公とヨハンセンの土砂降りの中の田園の別荘での麦畑での愛欲シーンは強烈で衝撃的であ
る。でもそれはポルノグラフィーとしての映像でしかない。
大体日本人の僕ですらこのユダヤ系アメリカ人監督がイギリスを理解しているとは全く思
えない。言葉だけイギリス人には女王英語を話させ、アメリカ人のスカーレット・ヨハン
ソンにコロラドのアメリカ英語を話させたところで、アメリカVSイギリスなど何一つのコ
ントラストも描ききれるわけがないのである。表面的なオペラやポロや狐狩がイギリスな
のであろうか!したがって、このテニスプロが入り込むイギリスの貴族ともいえる階層が
なんやらアメリカの金持ちと変わらない精神性と日常性しか持ち合わせていないのである。
さらにヨハンセンが妊娠して、会社にまで乗り込んでいき罵倒する姿、あまりにも直裁で
あり、観客にとって、とりわけ女優ヨハンセンにはしてほしくない場面である。この映画
全体にもいえるが筋書きに陰影がないのである。台詞も直接で品格がない。とってつけた
ようなサントラとしてのベルディ歌劇のマクベスの名歌手カルーソーのアリア、夜中に殺
された被害者が主人公の前に亡霊で現れるなどシエックスピアでも意識しているのだろう
か。また小馬鹿にしたような日本人のビジネスマンの登場、ウッディアレンの世界とは、
単に奇異を衒った皮肉っぽさだけが売り物で実は中身が空っぽというのが、僕のこの映画
の印象であり総括である。そこのウッディアレンさん、アメリカでジャズでもしていたほ
うが無難ではないのか?
奥山篤信評
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎
◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
編集長・市村直幸
〒105−0003
東京都港区西新橋1−22−7 丸万7号館4階
電話:03−3507−0306
Fax:03−3507−0393
e‐mail:ichimura@elneos.co.jp
URL:http://www.elneos.co.jp/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回の配信は9 月5日(火)を予定しております。どうぞお楽しみに!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
登録内容(メールアドレス等)の変更、メールニュース配信の停止は、
こちらからお願いします。
<http://www.melma.com/backnumber_133212/>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有限責任中間法人 平河総合戦略研究所< http://www.hirakawa-i.org >
発信元:< info@hirakawa-i.org >
掲載された記事を許可無く転載することを禁じます
Copyright(c)2005 Hirakawa Institute
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます
- Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
- 日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万4千部突破!
- 週刊アカシックレコード
- 02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
- 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
- 頂門の一針
- 急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
- 花岡信昭メールマガジン
- 政治ジャーナリスト・花岡信昭が独自の視点で激動の政治を分析・考察します。ときにあちこち飛びます。
![メルマガスタンド[メルマ!]](/img/common/backnumber_article/melma_logo.gif)


