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甦れ美しい日本 第074号
発行日: 2006/7/12□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年7月12日 NO.074号)
☆☆甦れ美しい日本☆☆
☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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< 目次 >
◎ゲスト執筆者
1.松島悠佐 北朝鮮の弾道ミサイルにどう備えるのか、続き
2.塚本三郎 北朝鮮のミサイル発射を考える
◎レギュラー執筆者
1.佐藤 守 大東亜戦争の真実を求めて69
2.松永太郎 魂について(1)
3.奥山篤信 アメリカ映画 「美しい人」(9 Lives)にみる女性の生命力
4.西山弘道 北朝鮮ミサイル発射で安倍新政権始動か?
◎ 図書室 企業の正義 中條高徳著 ワニブックス 奥山篤信評
◎映画寸評 アメリカのTV:「コマンダー・イン・チーフ」(日本未公開) 松永太郎評
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1.松島悠佐
北朝鮮の弾道ミサイルにどう備えるのか、続き
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日本時間の7月5日早朝、北朝鮮がミサイルを発射しました。
前回(6月27日記)の話の中で、「ミサイル開発の最終チェックには実射テストが必要
であり、テポドン2号の開発も、最終チェックの時機が来ているようなので、金正日の
ことだから、われわれの道理とはまったく違う勝手な理屈をつけて、政治的なインパク
トに活用しながら実射テストに踏み切ることは十分に考えられます」と書いておきまし
た。
結局、米国の独立記念日、ディスカバリーの打ち上げにぶつけて、しかも各種ミサイル
を10発ほども連射して力を誇示するという金正日独特の演出で、実射テストと威嚇射
撃を組み合わせて実行した感じがします。
狙いは何だったのか、実射テストは成功したのか、失敗したのかなど、色々な論評があ
ります。ただ、これでアメリカが北朝鮮に譲歩するようになるとは思えませんし、むし
ろ逆効果であり,今日にも国連安保理決議が行われるようですが、国際的にも北朝鮮の
孤立化が進むと思われます。
ミサイル発射に対する批判は色々出ていますが、本質的な問題は、むしろ北朝鮮の国家
体質、というよりも金正日の独裁政治体制にあることは明白です。「気違いに刃物」とよ
く言われますが、刃物が悪いというよりも、刃物を振り回す「気違い」が悪いのであり、
その「気違い」を正常に戻すことを真剣に考えなければなりません。
ミサイル発射についてだけ言えば、北朝鮮が主張するように「国の自主権に属する問題
であり、他国に是非を問う権利はない。自衛的国防力強化のための訓練であり、今後も
継続する」という理屈が成り立ちます。米国はじめ欧米諸国でも中国でも、現にミサイ
ルの実射訓練を実施しています。昨9日には、インドが弾道ミサイルの実射テストをし
ました。誰も別に騒いではいません。
ところが北朝鮮は、他国の国民を拉致したり、偽札を製造したり、麻薬を栽培し売却し
たり、国内での過度の人権抑圧など、所謂「ならず者国家」であり、何をするか分から
ない危険な国です。その国がミサイルを振り回すから危ないといっているのでしょう。
従って、問題解決のためには、その「ならず者国家」を正して「普通の国」になること
を追求しなければなりません。「普通の国」になれば、ミサイルの問題は今ほど先鋭には
ならないでしょう。中国もロシアもわが国を射程に収めるミサイルを沢山持っており、
たびたびミサイルの実射もしています。わが国にとって脅威には違いありませんが、「気
違いの刃物」とは違います。
北朝鮮が普通の国に変わる方法は、三つのケースが考えられます。
1.金正日が、自らを改め政治姿勢を変革する。
2.自己疲弊・クーデーターなどにより内部崩壊する。
3.外部からの圧力・破壊工作により崩壊させる。
1はまず無理でしょう。2は一番望ましいのですが、金正日側近は警戒心が強いし、可
能性なしとはしませんが難しいでしょう。結局!)を誘導しつつ、!)を実行することが一
番可能性のある方法かも知れません。フセイン政権を崩壊させたのと同じパターンです。
これには荒療治が伴い、戦争になる危険性があります。わが国も門外漢でいる訳には行
かず、わが国にもミサイルが飛んできたり、テロによる破壊活動が起こるかも知れませ
ん。望ましい状態ではありませんが、気違い染みた無法極まりない金正日体制を崩壊す
るためには、避けて通れない道かも知れません。
もしこのような事態になったとしても、それに耐えるような防衛体制を整えておくこと
が必要です。その体制が出来ていないと、結局相手の強硬な手段に恫喝され、うろたえ
て、相手の言い分に従わざるを得ない結果になります。
今回を含めて3度にわたる北朝鮮の弾道ミサイルの実射テストは、その都度われわれに、
防衛体制を整えることの重要性を教えてきました。93年のノドン・ミサイル発射以来、
ミサイル防衛体制の研究着手、情報収集衛星の打ち上げ、危機管理体制の整備、制裁措
置の検討などが進み、関連法案も遂次整備されてきました。
皮肉な結果ですが、北朝鮮がわが国に被害をもたらさずに、ミサイル実射を繰り返すこ
とは、わが国の防衛意識高揚に大きな効果があり、平和ボケを直すにはよい薬になると
も言えるようです。
ミサイルを装備している以上、訓練であれ、テストであれ、北朝鮮はこれからもミサイ
ル実射を繰り返すでしょう。ただ願わくば、ミサイルが発射されて大変だという話だけ
ではなく、金正日体制を崩壊し、平和的・安定的な朝鮮半島を作るために、わが国が何
をしなければならないのか、そのために何を決意しなければならないのかを、しっかり
と見極める糧にしてもらいたいものです。 (06・07・10 記)
松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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2.塚本三郎
北朝鮮のミサイル発射を考える
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名古屋弁で「やけくそ」と言う。人類の敵と警戒する麻薬を造り、世界中の暴力団組織
にそれを売りつけ、またドルを偽造して、流通市場に闇のルートで流すことを、国家とし
て行なっている国が、未だこの世に存在すること自体が奇異である。
まして、近隣諸国の若人を拉致して、国際犯罪の実行者に仕立てようとする。余りにも
幼稚な、子供遊びの如きゲームを、国家の犯罪に仕立てている。それが北朝鮮である。
---第一は金融の解除---
北朝鮮第一の被害国は日本である。経済支援の要求を当然の権利として威嚇し続けるが、
残念なことに日本は、自立国家としての法制がない。平和を愛する諸国民の公正と信義
を信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意したままである。
その第二の被害国は米国である。ドルは国際通貨であると共に、米国の自国通貨でもあ
る。国家の尊厳を、これ程に傷付けられたことは、米国にとっても見逃すことが出来ない。
幸い米国には、北朝鮮に対して、すべての点で優れた能力と感性を持っているから、まず、
ニセ札を中心とする、闇の金融流通、特に金正日の闇の口座を次々と塞いで来た。これに
よって北朝鮮は窮地に追い詰められている。
世界最強の国・米国は、過去二回に亘ってこの無法者の乱行を、民主党政権の時代は許
したから、今度もまた、テポドンの発射によって、塞がれた金融の窓を開けよと、乱行を
行なったとみる。今回の米政府は、三度は騙されないぞと、大きく圧力を加える。
日本としては、憲法の建前からして、対話と圧力と称していても、対話のみで圧力らし
きことは、殆んど行なっていない。特に拉致被害者家族からの強い要求にさえも、日本国
家として、法制上からして、出来得ることさえ実行していない。
そんな不満の声が拉致被害者家族の叫びとなっている、そこへ、今度はミサイルという
戦争に匹敵する発射を、しかも日本の方向(日本海)に七発も行なった。腰の重い日本
政府も漸く、自発的に米国を誘い、国際舞台である国連へ、制裁の為の決議に奔走しだ
した。
日本は漸く、緊張感を高めながら、自国の安全は、米国との同盟のみに依存することの
危険を実感した。
---第二は武器輸出---
米国に対しては、塞がれた金融の解除及び、日本に対しては、経済支援の要求に無言の
抗議として、打ち上げたことではあろう。それと共に、北朝鮮にとっては、違法商品こ
そ儲けが多い、その商品は、前述の麻薬や、ニセ札のみではなく、ミサイルという武器
を、反米独裁国に売りつけるため、発射が、展示、宣伝の効果をねらったとの説もある。
これは半ば成功した(短距離)が、テポドン(長距離)は失敗した。大事な試射のテポ
ドンが失敗したから、ミサイル発射は止めない、またやり直すとの発言は、武器輸出に
命を継ぐ金正日の、最後のアガキではないか。
結論として、ことは大事に至らなかったが、一体国連はこの乱暴をどうするか、日・米
の主唱によって、十五カ国の安全保障理事国は、どの様な態度をとるのか。
---第三は中国の本心露呈---
唯一の試金石は、中国の態度である。既に中国は北朝鮮に自重を求めている。しかし中
国の本心はどうか。北の国は中国政府の掌の中で踊る属国と化している。食糧はもちろ
ん、油の供給パイプまで、今回の発射によって断つと、脅す程の誠意が中国に在るだろ
うか。死に体と化した北朝鮮の領土、特に地下資源の半数を食糧及び原油の代償として
権利を保有している。この国の死に体から、生命維持装置まで外すことは出来ないであ
ろう。
北朝鮮そのままの現在の姿が、中国にとっては一番好都合であるし、また六カ国協議の
議長国として、米国と日本を自由に煽り、そして正義の名によって北朝鮮を養っている。
今回の制裁決議によって、「中国の本心」を世界に露呈させ、理に合わぬことを重ねれば、
より鮮明に本体と馬脚を全世界に表わすことになる。
---第四は寝た子を起した---
日米安全保障条約は、約六十年前、日本に対して独立の条件として、駐留米軍と基地の
保全を呑むことによって、成立した。この条約を小泉首相は、同盟と言い換えた。
日本の敗戦時、占領軍の中に対立の芽であったソ連と並行して、逆に北朝鮮と中国が極
めて危険な、脅威の対象となりつつあるからである。
国家の安全に配慮することなく、経済発展と、科学技術に専心出来た日本は、極めて幸
運な敗戦後と言うべきであった。しかし、それは自立心、独立自尊という日本人の魂の軽
視であり、大和魂の放棄とも自嘲して今日に至った。
ここ十年余、中国の矢継ぎ早の内政干渉、特に小泉首相の靖国問題は、韓国の左翼政権
に拡大化され、国際化の問題へと悪用されるに至った。
外交は、実力、とりわけ武力、防衛力の背景を帯びずして対等には成立しないことを、
いやが上にも知らされたのが、中国、韓国の小泉首相へのいやがらせであり、さらに歪め
られた歴史認識でもあった。
その最中に、今回のミサイル発射を見せ付けられて、防衛力は、単なる外交力ではなく、
国家の安全そのものであることを、クローズアップせしめた。
いわば、平和日本と言う安眠の床に、号砲を打ち込まれた。北朝鮮のミサイルは、神の
警鐘であり怠惰への天雷ではないか。
何等の被害を受けることなく、被害者の地位を得、その上、怠惰な国防意識に、極端な
程の意識革命を呼び起こしてくれた。
これは、結果として無責任や、或いは利敵な、一部のマスコミに対して、一大鉄槌を下
してくれたことになった。
穏健にして安逸をむさぼりつつある日本国民に対しては、教育では幾ら資金を注ぎ込ん
でも達成し得ない程の難題、憲法改正と国防意識の覚醒に繋がると信じている。
仏教では、これを「釈迦に提婆」と呼ぶ。
お釈迦様のような、尊く、正直な人にも、命をねらう悪人が居る。それがいとこであり、
弟子であった提婆逹多である。しかし、彼は釈迦をして、真の仏として、完璧の聖者た
らしめんがため、わざわざ悪人になりすましているにすぎない。と釈迦は説明する。そ
して彼こそ私が生まれる前の世の師匠であった。前世の師匠だからこそ、よく今の世に
生まれ変わっては、悪役である仇役を努めてくれるのだと。
北朝鮮も中国も、日本をして、アジアの指導者としての自覚に目覚めさせる。悪役(ダ
イバ)であり、その一役が今回のミサイルか?
平成十八年七月中旬
塚本三郎;
愛知県名古屋市に生まれる
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学
終戦とともに労働組合運動に従事
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回)
昭和 35年 民社党結党に参加
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む)
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任
平成 元年 民社党常任顧問に就任
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章
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1.佐藤守
大東亜戦争の真実を求めて69
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少なくとも、山本大将の日ごろからの言動から察して、唐突に計画された「ハワ
イ攻撃計画」の裏に何があったか非常に興味深い。ひょっとすると、荻外荘での近
衛首相との会談において、「半年や一年ぐらいは暴れて見せますが・・・」と山本長官
が言ったのは、近衛首相の見事な「おだて」に乗ったからではなかったのか?
勘ぐれば、軍人の最大の弱点である「強気」と「名誉心」を、近衛首相は荻外荘
会談で「くすぐった」のではなかったか?
軍人には「撤退作戦」と「卑怯」を嫌う習性がある。今まで貴重な税金を使って、
営々として築き上げられてきた「軍事力」が、国家の非常事態に臨んで何等健闘す
ることなく、国民の期待を裏切ってムザムザと「浮かべるスクラップ」になること
は、最大の「恥」であったろう。同時に、当時の国内世論は決して“それ”を許さ
ない雰囲気にあった。大政翼賛会が結成され、「大和魂」が叫ばれ、女学生でさえも
銃を取って軍事教練をしていた。当時の新聞を見るが良い。「鬼畜米英」「撃ちてし
止まん」・・・。この雰囲気に「抵抗できる軍人」は少なかっただろうし、ましてや生
粋の帝国海軍軍人には出来ない相談だったろうが、逆に考えると、それを一番望ん
でいたのは、コミンテルンに魂を売った者たちだったに違いない。
そんな最中に「強大な帝国海軍を維持してきたのは、一日これを用いんがためで
はなかったのか」と聞かれて、「それはそうですが、出来ません・・・」と否定的な回
答をすることは、いかに勇気がある良識派の山本長官といえども言いづらかったで
あろう。そこで米国の実力を熟知した、非戦派の山本長官でさえも、近衛首相の言
葉を受けて、「半年か一年ぐらいは」と答えることになる・・・。海軍首脳の従来から
の山本長官観、米国観を勘案する限り、私にはそう思われてならない。
勿論、今次大戦に関して「悪者扱い」されている陸軍も、創立以来の「脅威」で
あったソ連軍に対する戦略を放棄して、全く無計画だった「南方作戦」に向かわざ
るを得なくなったその裏には、壮大な「ソ連共産主義活動(コミンテルン)」の謀略
があったと考えざるを得ないのである。
そこで今度は視点を変えて、日米交渉に臨む米国側の実態はどうであったかを見
てみたい。
1881年に生まれ1960年に没したアメリカの外交官、ジョン・ヴァン・アントワー
プ・マクマリーが1935年に書いた「メモランダム」(「平和はいかに失われたか・・・
大戦前の米中日関係もう一つの選択肢」(マクマリー原著、アーサー・ウォルドロン
編著。北岡伸一監訳、衣川宏訳:原書房)を見ていくことにする。
このメモランダムは大変貴重なものだが、アジアの「大乱」に至る経過は省略し、
大東亜戦争勃発直前に焦点を絞ってみたい。
マクマリーは、「満州国成立に伴い米国は厳しい選択を迫られる。その代案とし
て二つの選択肢があった」という。そして彼は言う。
「その一つは軽視できない国力を持つ日本との戦争である。もう一つの方法は、年
がら年中テーブルを叩いて日本の不誠実をなじり、それでいて何もしないでいるう
ちに、だんだん滑稽じみてくるであろうやり方である。
しかし軍事力の行使は考えないのだから、選択肢は後の方法、いわゆる『不承認
主義(満州侵略は国際法違反として承認しない旨の宣言)』しかない。これはヘンリ
ー・スティムソン国務長官が元祖である。
こんな消極的な政策でさえ、危険は伴う。満州情勢の正邪は、当初考えられたよ
りずっと複雑であり、柔軟に対処しなければならないものであった。アメリカの対
策を決めるに当たりスティムソンは、かっての多くの著名な法律家達と同じように、
『先例を用いて新しい法律に匹敵するものを作り出した』のである。
彼は一つの印象的な告発状を起草した。この告発状は、かっての門戸開放宣言に
始まり、ワシントン条約を経て日本の国際条約違反に至るまでの前例を辿ることに
より、日本との如何なる妥協をも困難にしてしまった。その法的論証は余りにも厳
しくて、弁護依頼人に何の工作の余地も与えず、法廷外の処理も殆ど不可能にする
体のものだった。しかもこの事件を審理できる唯一の法廷たる国際連盟は、その判
断を強制できないという弱点があった。スティムソンは『治療をしないで事を悪化
させていた』のであり、そして次のルーズベルト政権に難しい問題を引き継いだ」
福留中将が、米国の西漸政策を非難し、門戸開放の虚構を見抜いていたのは、実
に見事で的確な判断だったのである。 (続く)
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.松永太郎
魂について(1)
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19世紀の唯物論的な思考がいきわたる以前の人間は、いずれの文明に属していても、「自
我」を中心とする「心」を包括する上位の次元として「魂」という領域があることを知っ
ていた。「魂」に相当する言葉は、洋の東西を問わずに、どの言語にも存在し、みなほぼ同
じ次元をさしている。魂、ソウル、ゼーレ、サイキなどである。
近代心理学の創始者のように目されているフロイトは、「魂」という領域を認めず、かわ
りに「下意識」(サブ・コンシャスネス)という言葉を使った。そして自我を、「イド(そ
れ)」と呼び、「下意識」を「自我」の下位領域、つまり「自我」によってコントロールされ
るべき領域としたのである。これは近代までの人間の考え方の一種の逆転といえるが、悲
劇的とさえいえるのは、この心理学によれば、「自我」が崩壊した人間は、結局、自殺する
しかなくなってしまうことである。なぜなら、自我が心の司令官の位置にあり、一番トッ
プにあるからだ。もともと「魂の学」(サイコ・ロギア)という意味であった心理学は、か
くして「自我の学」になってしまい、文字どおり「魂」を失ってしまったのである。
かつて伊丹十三という映画監督がいて、日本のフロイト心理学者の理論に心酔していた。
この極めて陰気な心理学者の理論によれば、人間は「本能の壊れた動物」であり、かろう
じて自我によって個としての持続性を確認しながら生きている、というような存在である。
いかに薄っぺらな思想であるかわかると思う。「本能の壊れた」という言い方には、人間は、
動物よりも劣った存在であるという含意がある。
問題は、この「自我」が極めてフラジャイルなものであって、簡単に崩壊する(ように
思える)ことである。つまり自我を支えるべき一定の外界条件が満たされないと、かなり
のエネルギーを使ってその条件を満たそうとするが、もはや絶対に満たされないと思った
ときには、絶望する以外に道がなくなってくるのである。「自我」というのは、自己に対す
るイメージであり、そのイメージが壊されるのを何よりも恐れる。伊丹氏は、女性スキャ
ンダルが暴露されるのを恐れたが、本当に恐れたのは、自我イメージの崩壊であり、彼は
痛ましいことであるが、自殺してしまった。
精密を極める仏教の心理学(「法相唯識))では、悟りによって転換される前の自我意識は、
トップどころか、かなり低い位置におかれている。低い、というのは、なにもさげすんだ
言い方ではなく、むしろ潜在的な成長の可能性を秘めている、という意味である。
最近はかなり変わってきているが、それでも近代人は成長して一定の年齢の「大人」に
なると、それ以上の心の成長の可能性を見出せず、しかも「入門儀式」(イニシエーション)
がなくなったことから、子供のような大人(「とっちゃんぼうや」)や、逆に大人のような
子供が多くなった。心の発達や成長は、必ずしも正確に年齢と相関関係にあるわけではな
いからである。そして自我意識はかなり早い段階から発達する。自我意識が十分に発達す
れば、それで成長は終わりということは、仏教心理学から見れば地獄そのものである。
魂とはなにか、それは現れるとすればどのように現れるのか、私たちは、何も知らない、
というよりも明白に現れていても、それを魂の現われとは見ない。
魂とはなにか。それは「朝日ににおう山桜花」である。「狭霧消ゆる湊江の、舟に白し朝
の霜」である。「あらゆる山、あらゆる谷に降り注ぐ雨」である。水平線に高くそびえる夏
の入道雲であり、縁側を吹き抜ける涼しい風である。母親の優しい呼び声であり、恋人の
ちょっとした仕草である。展覧会で不意に立ち止まる一幅の絵、たちまちすべてが満たさ
れるような音楽の一節である。戦場に向かう戦士が、懐かしい家族に当てて書く手紙の一節である。
リストは無限に続く。それはきわめて個人的なものであると同時に、自我としての個人
を越えたものである。それは魂の現われというよりも、もっと隠喩的である。
「彼の目は象のようだ」というのは、直喩であるが、「彼の目は象の目だ」というのは隠喩で
ある。彼の目は象の目であるはずはない、というのは近代人的な思考である。そのよう
な言い方が一定の文脈で成り立つと考える人々は、古今東西、詩人と呼ばれてきたが、
詩人とはとりわけ「魂の学問」に通じた人々であった。
朝日ににおう山桜花は、魂の現われではなく、魂そのものである。舟に白く浮かぶ朝の
霜は魂そのものなのである。
かつてある禅の老師が息を引き取ろうとするとき、弟子たちが最後の言葉を頼んだ。い
ったい悟りとは何でしょうか。そのとき、谷を渡る鋭い猿の声が聞こえた。老師は微笑ん
で、あれだよ、といってそのまま亡くなったそうである。
禅では、よくこういう言い方をするが、しかしそれはたとえではない。彼らにとっては
それは、そのままとるべき教えなのである。
松永太郎;
東京都出身
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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3.奥山篤信
アメリカ映画 「美しい人」(9 Lives)にみる女性の生命力
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またしても内容に相応しくない題名である。むしろ「9人の女の場合」とでもすべきか?
この映画のラストの第9話にて猫が墓石に座っている場面があるが、英米の諺に「a cat has
nine lives.」というのがある。その意味は決して猫には9生があるのではなく「 Many cats
seem to have the exraordinary ability of repeatedly getting themselves into some
dangerous circumstances and surviving. This is the basis for the expression 」猫
はどんな危険な状況にあってもそれに順応し生き残る能力があるという意味である。
猫を女性に置き換えればよい。
この映画はアメリカ映画にはない、粘っこくべたべたして鑑賞したあとも尾を引く映画で
ある。道理でノーベル文学賞を父に持つコロンビア人ロドリゴ・ガルシアという監督脚本
によるものである。極めて異質なアメリカ映画で新しいジャンルであろう。物語は約10
分のカットから成り立ち、女性の心理を、生活の匂いぷんぷんにリアルに描いている。
この映画を理解するためにはかなりイマジネーションと人生経験が必要と思う。
とにかくこの女性役をこなすのには、カットが10分で表情を篭めて描かねばならず、並
大抵の役者では務まらない。9人の女性役に心よりエールを送りたい。
第一話 サンドラ(エルピディア・カリーロ):服役中のヒスパニア系女囚で模範囚にな
ろうとして刑務所で一生懸命働くふりをしている。そのため他の囚人の告げ口もするので
嫌われている。唯一の生きがいは娘と面接することにある。罪を犯した当時は娘に対して
もろくでもない悪い母親だったに違いない。刑務所というどうにもならない束縛の空間に
あって始めて娘への愛を発見し、面会だけが彼女のすべてになる。面会の窓越しの電話が
故障し、怒りが爆発し結局さらに模範囚への道は遠ざかるのである。でも娘の母親に対す
るまなざしは変わらない。母と娘の固い絆がある。
第二話 ダイアナ(ロビン・ライト・ペン):妊娠中のダイアナは夜のスーパーでかって
愛し合った恋人と出会う。読者もこういう経験があるだろうか?幸せなあの熱い過去の関
係が走馬灯のように頭をよぎる。軽く挨拶で別れようと思うが、買い物も上の空、相手の
男性もすでに結婚しているが、ダイアナを忘れられない。アメリカの大型スーパーを連想
してもらいたい。品棚が時には死角となり、またばったり、そこでまた話。いとおしいよ
うに大きな腹をさする男性。男性はようやく未練を捨てスーパーを去る。思いつめたよう
にダイアナは追いかけ店の外に出る。そこには深夜の暗闇のみあり男性の姿はない。なん
ともいえない哀感が伝わってくる。それで良かったのかもしれない。暗闇の子宮がしっか
りと二人を離別させたのである。
この第二話の二人の男女の演技は男女の心理の機微を見事に演じていて、やるせない美し
い愛を語る。スーパーを舞台として選んだ脚本も見事というほかない。
第三話 ホリー(リサ・ケイ・ハミルトン):前妻の子で家出したホリーが突然その家に
現れる。そして父親にすぐ会いたいと腹違いの次女に迫る。次女が生まれる前に可愛がっ
てくれたときもあった父親を思い出すホリー。ホリーは次女に父親が帰宅したら二人きり
にしてくれと頼む。次女とやりとりするうちに、血のせいか、次女への憎しみも和らいで
いく。かって遊んだ庭のブランコ、良い思い出も頭をよぎる。父親が帰ってきた。やおら
拳銃を向けるが引き金を引けない。そして自殺を図るべく???愛憎心理で揺れ動くホリ
ー、あまりにも残酷で痛ましい姿がある。
第四話 ソニア(ホリー・ハンター):倦怠期を迎えた夫婦は友人の家に呼ばれる。夫は
こともあろうに、驚く友人夫婦の前でソニアが堕胎した当時の二人の秘密を喋りだす。一
気にソニアの夫への信頼は消滅してしまう。嘘で誤魔化し合ってきた結婚生活の破綻の危
機である。倦怠期を迎えた夫婦が陥りやすい、お互いを傷つけあう場面である。それでも
この夫妻は「繕い」ながらガラス細工の夫婦生活を続けるのであろうか。
第五話 サマンサ(アマンダ・セイフライド):車椅子の父親と一切直接会話のない母親
の間でいわば通訳の形で存在する娘サマンサ。どこの大学でも進学できる優秀な生徒にも
拘らず、家をでることなく、神の申し子のように、二人の親の間を取り持つ。娘に対して
の父親の車椅子が故の生活苦による罪悪感と母親の苛立ちと憐憫が画面からリアルに伝わ
る。ムンムンするような台所やトイレや体臭の生活の匂いが漂う、宿命に生きる娘の哀れ
で悲しい物語である。
第六話 ローナ(エイミー・ブレネマン):聾唖である元夫は妻に自殺される。気が進ま
ないが葬儀に参列した美貌のローナ。実は元夫はいまだにローナを愛していたのである。
葬儀での周囲の目は自殺がローナに原因があると冷たい。そんな視線を浴びたローナは中
座しようとする。なんと元夫は人目もはばからずローナを追いかけ控え室に連れ込み、セ
ックスを駄々っ子のようにねだる。なんというどぎつい設定か!自殺した妻の厳粛である
べき葬儀の最中だけに、禁じられた肉欲は普通なら猥褻になるところが、ローナのそれを
受け入れる優しさは何か罪悪を超越した行為に昇華させてしまう。ローナには元夫への愛
も肉欲もない。死に赴く兵士に刹那の喜びを与える女性のごとく心の優しさと労わりだけ
がある。
第七話 ルース(シシー・スペイセク):夫の車椅子で途絶えた性への乾きは抑えがたく
満月の夜に恍惚の官能を得ようとして、出来心で娘の先生とモーテルに行く。そのモーテ
ルで警察沙汰を目撃する。連行されたのは逃避行を続ける一人の若い女性だった。警察の
室内捜査のあと、放置された片足の靴を見るうちに、ふと日常の世界に呼び戻される。自
宅に携帯電話をし娘と話すうちに現実の家庭と母としての役割を自覚してしまう。いまや
性への渇望は失せてしまう。中年の女性の不倫願望とはこういうものでなかろうか!
第八話 カミール(キャシー・ベイカー):乳癌という女性にとって極めて心理的に過酷
な手術直前のカミールとその夫。不安と恐怖に耐えられない感情むき出しのカミール、夫
や看護婦に理由なき八つ当たりをする。女性としての「終焉」を迎える「死刑囚」のよう
な心地に違いない。慰めの言葉も感情の爆発を招くだけ、沈黙も苛立ちと恐怖を募らせる
だけといった状況で夫は優しく妻に接する。鎮静剤を注射し、やっと安らぎを取り戻した
カミールにはその夫の優しさが、これまでの人生の充実感とともに確認することができた
のである。なんという平和な夫婦であることか。名優キャシー・ベイカーが見事に演じき
る。
第九話 マギー(グレン・クローズ):「危険な情事」などで独特の魔性の女性を演じた
らこの右にでるものはいないグレン・クローズ、僕は約15年前ニューヨークブロードウ
エイでチリのピノチェト政権での拷問で身体精神をずたずたにされたアジュエンデ派の
クローズ扮する元学生が、その拷問担当官と偶然めぐり合わせ復讐する舞台劇「死と乙女」
を見てその演技に魅了された思い出がある。この映画で久しぶりにクローズを見たが、そ
の年老いた姿にも拘わらず、このマギー役の真骨頂の演技を見た。幼い娘(ややクローズ
の年齢からして親子というのは違和感を感じたが)とピクニックをかねた父親の墓参りを
する場面。葡萄の束を喜ぶ娘。猫の九生ってほんとかと尋ねる娘。おしっこがしたくなっ
て木陰でする娘にティッシューを渡す母。そのあと拭いたティッシューをバッグに無造作
にいれる場面はちょっと!という感はあったが微笑ましい親子の愛の演出であろう。その
後急に場面が回りだして、よく注意しないと見逃すが、今度は母が一人で墓の前にあり、
葡萄の束を墓石に載せる。あの娘を失ったことを意味するのだろう。そこにはあるべき悲
しみの表情はない。天国の子との永遠の親の愛情の絆を確信しているからだろう。
母と娘の絆の第一話から始まって同じ主題を扱う第九話で終わる。全編を通じ女性をと
りまく子供、夫、恋人などのわずか10分のカットのなかでの女性の心理の細やかさを描
く。とにかく一見意味のないような動作や場面が日常性をリアルに描いていて、その脚本
演出には感嘆する。この映画監督男性にしては女性の心理を掌握しており、映画を見終わ
って、あの場面の意味はこうだったのだと、成る程と納得させる奥行きのある立体感あふ
れる組み立てである。研ぎ澄まされた感性とはこのことであろう。1週間経つのにいまだ
に余韻は僕の心を離れない。
奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社
平河総合戦略研究所代表理事
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4.西山弘道
北朝鮮ミサイル発射で安倍新政権始動か?
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北朝鮮のテポドン!)を含むミサイル発射で、日本は仮想敵国から重大な挑戦を受
けた。ミサイルはその7発がすべて日本海に落下したことで、日本が標的にされた
ことは間違いなく、日本政府もいつになくすばやく万景峰号の半年間寄航禁止など
制裁措置を発令した。当然の国家意思の発動である。しかしその後、3発目に発射
されたテポドン!)が、米国ハワイ州沖に向けられたことがわかり、当初「日本の問
題」と比較的遠見の見物気味だったブッシュ政権も危機管理のスタンスを変えつつ
ある。それが国連安保理での日米の緊密な協調となっている。
日本は国連憲章7章に基づく対北朝鮮制裁決議案を提示、米も即これに同調、そ
の後英仏も加わって一部修正した4カ国の決議案を安保理に提出した。問題の当事
者とはいえ、日本が国連を舞台にこれだけ積極的なイニシャティブをとったことは
珍しく、その背景には日本の首相官邸の強硬姿勢がある。決議案に反対の“抵抗勢
力”中国、ロシアの北朝鮮寄り姿勢を“炙り出そう”という戦術だ。サミットの自
国開催を控えているロシアはどうやら棄権に回りそうだが、問題は“北との兄弟国”
中国だ。あくまで拒否権発動を貫いて、“孤立外交”に突き進むのか、これは近来に
ない外交上の見ものになってきた。
制裁措置の発動といい、積極的な国連外交といい、当然のこととはいえ、いつに
ないわが国の“国家意思”のすばやい発動には、北のミサイル発射監視期間中に政
府プロジェクトチームが十分に練り上げたマニュアルの実施という面もあろう。し
かし、それ以上に対北強硬派だった安倍晋三氏が官邸の要の官房長官という職に就
いていた“人の利”もあるだろう。また外務省の事務方のトップ、谷内正太郎事務
次官の存在も見逃せない。谷内氏は外務省には最近珍しい“国士型”の官僚といわ
れる。これはあまり知られていないことだが、谷内氏は国際政治学の権威だった故
若泉敬京都産業大学教授の直弟子に当たる。若泉氏はその著作「他策ナカラシメン
ト欲ス」で知られるように、昭和40年代の沖縄返還協定交渉当時、佐藤内閣の秘
密顧問として、佐藤栄作首相から、米国に何度も派遣され、米国政府と秘密交渉に
当たった“国士”の政治学者として知られる。その“和製キッシンジャー”学者の
薫陶を受けたのが、谷内次官であった。
安倍官房長官、谷内外務次官、そして外務副大臣に安倍氏の最側近の塩崎恭久氏
が就いていることといい、首相官邸はもはや事実上、安倍政権シフトになっている
といっていい。小泉首相の米国卒業旅行は、結局「プレスリー外交」で他愛なく終
わり、今や小泉官邸は事実上、安倍官邸になった。
北はさらにミサイル発射を準備しているという中で、わが国の対北警戒体制は当
分続くだろうし、ポスト小泉も「東アジアの恒久平和構築」という悠長なことを言
っている福田康夫氏の存在は完全にかすんでしまった。天の時、地の利、状況は完
全に安倍政権に向かって始動している。沢木耕太郎ではないが、安倍氏は「危機の
宰相」として登場しようとしている。
沢木の「危機の宰相」は、池田勇人首相のことを書いた本である。池田内閣は所
得倍増政策で安保闘争後の時代を危機どころか、東京オリンピックまでの4年間、
「黄金の60年代」の繁栄時代をつくった。1960年7月、岸内閣の後を継いで
安保闘争の余燼さめやらぬ中、政権に就いたことから「危機の宰相」と呼ばれたの
である。
わが国の戦後政治史をみてみると、国際政治の危機の中で登場した内閣というの
は全くない。戦前は独ソ不可侵条約成立で瓦解した平沼内閣や、日中戦争の行き詰
まりで交代した近衛、東条内閣など国際政治の危機から生まれた内閣はかなりあっ
た。ところが、戦後の歴代内閣はすべて選挙の敗北など国内政治危機、スキャンダ
ル、病気などから交代しているのであり、国際政治が原因で政権交代が起きたとい
うことは一度もない。軍隊を持たない、商人国家の国際的影響力の低さゆえであっ
たろう。いや、ただ一度だが、あえて言えば、国際情勢が原因で政権交代に追い込
まれた例がある。1982年の鈴木善幸内閣である。鈴木首相は日米首脳会談で
「日米同盟は軍事的な側面を含まない」と発言したばかりに、米側の不興を買い、
退陣に追い込まれた。戦後政治史で唯一、国際政治が原因で政権が瓦解したのであ
る。
ポスト小泉新政権発足までにはまだ2ヶ月余りあるが、北の脅威がまだ続くとな
ると、新政権(恐らく安倍政権)は戦後初めて国際政治危機の中で発足する可能性
が出てきた。
西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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図書室 企業の正義 中條高徳著 ワニブックス 奥山篤信評
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ホリエモン事件、村上事件、耐震偽装事件、ヤマハ発動機事件、東横イン事件など悪質な
経済犯罪事件は枚挙に暇がない。犯罪行為は論外としても、経団連、東京経済同友会の靖
国参拝批判など経済界の姿勢そのものが根本的に問われる昨今の危機的状況に、大企業経
営の「成功者」としての中條氏が明治に存在した品格ある経営者などと比較してどうして
こうなってしまったのかと、熱く語る警鐘の書である。中條氏は陸士60期生として、当
然プロ軍人として戦死を覚悟していた。それなのに自分に代わって幾多の人々が、日本国
の安泰を願い戦死して行った人々にあまりにも申し訳ない気持から、雨の日も風の日も東
京に居る限り朝6時靖国神社の英霊に参拝している。
こういう中條氏を表面的に判断し、一世代前の古い封建的経営者で現代の経営者に通用し
ないと想像される人がいるかもしれない。確かに同じ年配の経営者でそのような人もいる。
ところが中條氏は全然異なるのである。あのアサヒスーパードライ作戦でアサヒビールの
奇跡(ハーバードビジネススクールがはなから負け組みと分析したアサヒビール)ともい
える復活を齎した企業戦争に勝利した中條氏は、その思考の柔軟性、次世代への期待と対
話の姿勢、何よりも保守の一部が蛇蝎のように嫌うグローバリズムの波を単に否定するの
ではなく、それに立ち向かおうという姿勢に常にアイデアと斬新さがある
明治の経営者として、渋澤栄一と岩崎弥太郎の二人を取り上げ、岩崎の利益も組織も自己
独占的傲慢に据えかねて、渋澤が酒席を立った逸話が出ている。日本資本主義の礎を作っ
た渋澤の正義と道義が、今の経済界にも新鮮に適用されると思う。その他伊庭貞剛、益田
孝、山本為三郎の経済人としての王道が述べられている。
まさに現代の企業戦士が立ち止まって読んでみて欲しい話である。
要するに経済界の精神的荒廃もひとえに戦後教育のなせるわざである。企業人の正義感の
喪失であると断言できる。気の遠くなる話だが、それでも教育をこれからでも改めねばな
らないと中條氏は説く。
実際中條氏に面談したものは、誰でもその威厳のなかに、人生の先輩として次世代を暖か
く観る優しさを感じ、若輩はおのずとその堂々たる姿に頭が下がる。
この書でも、デビュー当時のホリエモンとの接点に触れており、獄中のホリエモンに「四
書五経」の差し入れを考えていたという。実に心温かい人生の先輩である。
最後に、中條氏の恩師安倍能成学習院院長の言葉「正直たれ」「正直の頭に神宿る」を引
用する。
奥山篤信
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映画寸評 アメリカのTV:「コマンダー・イン・チーフ」(日本未公開) 松永太郎評
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アメリカのTV映画は、マルチメディア登場以後、映画並みに金をかけ、時間をかけて製
作されるようになった。視聴者がほかのチャンネルに変えないよう、ものすごくテンポを
早くし、いくつものストーリーを同時に進行させるので、たしかに目が離せない。一回で
も見始めると、はまってしまう。トム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル!)」
の監督、J.Jエイブラムスが製作した「エイリアス」とか、今、日本でも「中毒者」(笑)が続出
している「24」(すべての事件が24時間以内に起こり、それを一人の超人的なCIAエイ
ジェントが解決する)などが、その代表だが、 そのなかでも、もっとも成功したシリーズが、
「地獄の黙示録」のマーチン・シーンが大統領を演じる「ウエスト・ウイング」である(日本で
は「ホワイト・ハウス」という名で放送されている)。脚本のアーロン・ソーキンが非常にうま
く、アップ・テンポの会話を進行させていく。また役者たちもうまい。とくに長い間、下積
みだったようなヴェテランを配置しているが、この連中のうまさには舌を巻く。往年のハ
リウッド黄金時代の映画を見ているような幸福感が漂う。
「ウエスト・ウイング」の成功を当て込んで、凄腕のプロヂューサー、スティーブン・ボ
チコが製作したのが「コマンダー・イン・チーフ」で、ヒラリー・クリントンが大統領にな
るかもしれないのを見越して、女性の大統領という設定だが、この大統領役がひどい大根
で、しかも、ほかの役者も目も当てられないので、結局、ドラマを盛り上げるのは、すべ
て、この大統領をなにかと邪魔する下院議長役のドナルド・サザーランドにかかってきて
しまう。サザーランドは老いて、ますます円熟、「マッシュ」以来の存在感を失っていない。
この演技で、彼はまた当たり役を作った。
このどちらのドラマにも、大統領というものに対するアメリカ人の願望が投影されてい
る。いわば理想化された大統領というところだが、いくら理想と言っても、現実からまっ
たく遊離できないわけで、政策決定のプロセスとか、ホワイト・ハウスのチーフ・オブ・
スタッフの役割とか、すべてにわたって、どちらのドラマも前ホワイト・ハウス・スタッフ
を顧問にして「リアリスティック」なドラマを演出しようとしている。
これを見ていると、かりに半分でも本当の姿であるとすると、アメリカの大統領という
のは常人にはとてもつとまらない仕事である。各国との外交、全世界に展開する米軍、ア
メリカ国内の経済状態から自然災害、政敵やマスメディアに対する対応など、一瞬も
気が抜けない。またそれらに対して、最終的に全責任を負う、という決意がなければなら
ない。スタッフは、大統領に対して、絶対の忠誠心を持つ。これは結局、大統領に対する
忠誠が、そのままアメリカに対する忠誠となるからである。
この「コマンダー・イン・チーフ」のなかのエピソードに、アメリカのスパイ潜水艦が北
朝鮮沖で浮上不可能になる、という事件がある。副大統領は、「北はスキゾフレニックな
国だから、なにをするかわからない」と頭を抱える。これは今のアメリカの本音だろう。
大統領は、チャイナと取引し、チャイナとアメリカの合同救出作戦を行おうとする。チャ
イナは、北の後見人なので、チャイナが入っていれば手を出せないだろう、という計算だ。
しかし下院議長は見返りに何をやるかが問題だ、といい、結局のところ、チャイナがアフ
ガンやパキスタンに対する武器のセールスに目をつぶることで、救出作戦の協力を取り付
ける。
このドラマや、ほかの映画などを見ていてわかるのは、かつての冷戦時代のソ連の位置
にチャイナが入った、ということである。つまり、アメリカ人のイメージのなかで、チャ
イナは一種のアーク・エネミーとなりつつあるのだが、かつて第二次大戦中に一緒に戦っ
た、という広く流布された誤解から、完全に抜け切っていないので、どことなく話せばわ
かる相手というイメージも残っているのである。付け加えれば、日本の外交戦略としては、
この「話せばわかる交渉相手」というチャイナのイメージを払拭させなければならないだ
ろう。チャイナはいまだ一党独裁の危険な全体主義国家であり、覇権主義的な政策をその
核に持っている、ということを機会を捉えて欧米に宣伝すべきだろう。とくにいまだチャ
イナびいきの多いフランスなどには、そうしなければならない、と思われる。
ドラマのチャイナの大使はアメリカ大統領と堂々とディールする。それでは政府のOK
は出ない、それなら持ち帰るとたった一人で交渉する。日本の大使もかくあってもらいた
い(笑)。
アメリカの大統領は、いかなる危機においても衆知を集め、戦略的な選択肢を比較し、
最終的な決断を行う。理想化された姿とはいえ、最高司令官とはやはりそうあるべきだ
ろう。
松永太郎
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次回の配信は、7月20日(木)を予定しております。どうぞお楽しみに!
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