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甦れ美しい日本 第073号

発行日: 2006/7/5

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年7月5日 NO.073号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >


◎ゲスト執筆者 

1.丹羽春喜       内閣府推計のGDP速報値を読み解く
2.三村文男    シンドラー殺人事件


◎月刊ビジネス情報誌「エルネオス」7月号巻頭言 

「舛添要一の賢者に備えあり」小泉政治と議会制民主主義

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤 守       大東亜戦争の真実を求めて68
2.松永太郎      TVのニュース番組
3.奥山篤信      A級戦犯って何なの?
4.西山弘道    福田株、ドタキャンで急落
     
 
◎図書室

  道元「小参・法語・普勧坐禅儀」 訳注 大谷哲夫 講談社学術文庫(松永太郎)

◎映画寸評 アメリカ映画 カーズ(THE CARS) 奥山篤信評
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1.丹羽春喜
 内閣府推計のGDP速報値を読み解く
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  まず目につくこと
 去る6月12日、内閣府は、昨年度(平成17年度、すなわち2005年度)のGDP速報値
を公表した。それによると、昨年度(平成17年4月 ~ 平成18年3月)のわが国経済の
GDPは、名目値では1.9パーセントの伸びにとどまったのであったが、実質値(平成12
年価格評価)の伸びは3.2パーセント(対前年度比)に達したものとされた。 わが国経済
の実質成長率が年率で3パーセントを上回ったのは、バブル期以来の実に15年ぶりのこと
である。この数字だけを見たかぎりでは、わが国民こぞって慶賀すべきことだということ
になろうが、しかし、このような内閣府のGDP速報値の諸数値をすこし仔細に見れば、幾
つかの重大な疑問点ないし問題点が含まれていることがわかる。本稿では、以下、そのよ
うな疑問点・問題点を指摘し、考察しておくことにしたい。
 まず、目につくことは、近年の諸年度についての内閣府推計GDPの通有性であるとはい
え、名目値ベースでの成長率がいぜんとして低迷を続けているにもかかわらず、それとの
比較では、実質値ベースの成長率が相対的には不自然なほどに高いということであろう。
 名目値ベースで1.9パーセントの成長率が、実質値ベースでは3.2パーセントの成長率
になったと算定されているということは、GDPの名目値を割り引いて実質値に換算すると
きに用いる一般物価指数(いわゆる「GDPデフレーター」)の値が昨年度は1.3パーセン
トも低くなったと推計されたことを意味しているように見える(3.2 ― 1.9 = 1.3)。昨年
度から本年度にかけては、原油価格の高騰などの影響で、諸価格の値上がりがはじまって
いるというのに、一般物価が1.3パーセントも低下したかのごとき計算に見えるというこ
とは、いかにも非現実的な話であると言わねばなるまい。もしも、このように大幅な一般
物価の低落ということが本当であったとすれば、昨年度、わが国の企業は、身を切るよう
な安売りをなさねばならなかったということを意味しているわけであり、わが国の企業を
苦しめてきたデフレ圧力は、いぜんとして過酷なものであったということになるわけであ
って、「景気回復が定着した!」うんぬんというマスコミ論調は、ウソであったと言わねば
ならないことになろう。

 「純輸出」(貿易収支)に潜むなぞ
   ━━名目値では大幅減、実質値では大幅増━━
 実は、このような奇妙に見える結果が導き出された理由は、今回の内閣府GDP推計にお
ける「財貨・サービスの純輸出」(すなわち貿易収支)の欄をちょっと注意深く観察すれば、
すぐに判明する。
 まず、この「財貨・サービスの純輸出額」(貿易収支額)をGDPから控除した額である
「国内需要額」を見てみると、名目値では対前年度比2.4パーセント増、実質値では対前
年度比2.8パーセント増と推計されているから、昨年度のわが国の国内物価は0.4パーセ
ントの低下(2.8 ― 2.4 = 0.4)であったという計算になる。この数字であれば、まずまあ、
妥当なところであろう。しかし、だとすれば、上記の実質GDP成長率3.2パーセント、そ
して、1.3パーセントもの大幅物価低落という数字との整合性はどうなっているのかという
謎が生じてくる。本稿では、まずここで、この疑問を詳細に解明しておくことにしたい。
 上記の内閣府が6月 12日に公表した推計によれば、名目値ベースでは、平成17年度の
わが国の財貨・サービスの輸出額は対前年度比11.8パーセント増の74兆9562億円、同じ
く輸入額は18.1パーセント増の68兆6013億円、差し引きした貿易収支黒字(すなわち
「純輸出」)の額は6兆3549億円であり、これは対前年度比28.8パーセントという大幅な
減少であった。ところが、実質ベース(平成12年価格評価)では、昨年度のわが国の財貨・
サービスの輸出額は対前年度比9.2パーセント増の76兆397億円であったのに対して、輸
入額は6.8パーセント増の59兆6555億円にとどまったとされており、貿易収支黒字(す
なわち「純輸出」)の額は16兆3842億円となったとされている。これから計算すると、控
除項目である実質輸入額の伸びが低くとどまったことによって、昨年度におけるわが国の
財貨・サービスの貿易収支黒字の実質額は、対前年度比18.9パーセントの大幅な「増加」
ということになってしまっている。名目値では「大幅減」、実質値では「大幅増」というま
ことにユニーク算定となっているわけであり、ここに上記の謎を解く鍵が潜んでいるわけ
である。

 実質成長率の高い数字の裏に潜む交易条件の悪化
 実は、このような異常ともいうべき算定結果が示されるにいたったのは、昨年度におけ
る原油価格の高騰と、それにともなった国際市況商品の価格上昇によって、わが国の輸入
物価がかなり大幅に上昇したことによったものであると考えることができるのである。上
記の内閣府のGDP推計では、昨年度、わが国の輸出物価も多少は上昇した(円だてで2.6
パーセントの上昇と推計されている)のであるが、輸入物価の上昇率は、それよりも、は
るかに大幅であった。すなわち、原油価格などの大幅高騰につれて輸入物価は総合値でも
11パーセントも上昇した(同じく円だてで)ものと内閣府は見積もっているのである。 こ
のような輸入価格の大幅上昇にともなって、上記のごとく、昨年度のわが国の実質輸入額
の伸び率は実質輸出額の伸び率よりも「大きく下回る」ことになり、昨年度のわが国の財
貨・サービスの貿易収支黒字(純輸出額)は、名目値では大幅減であったにもかかわらず、
実質値では大幅な増加を記録するにいたったのである。 つまり、内閣府公表による上記
の推計で、昨年度のわが国の実質GDPが対前年度比で3.2パーセントも伸びたとされたこ
とについては、このように輸入物価の上昇で実質輸入額の伸びが抑えられて実質貿易収支
黒字が大幅増となったという事情が、その大きな要因となっているわけである。 
 ここで見逃してはならないことは、昨年度のわが国経済において、輸出物価が2パーセ
ント台の上昇にとどまったのに対して、輸入物価が11パーセントもの上昇であったという
ことは、わが国にとっては、差し引きで対外交易条件が8 〜 9パーセントも悪化したとい
うことを意味しているということである。このことは、わが国の産業にとっては、相当に
苦しい事態であったはずであり、わが諸産業の海外への脱出(すなわちわが国の産業空洞
化)が、ますます激しくならざるをえなくなったことを含意していたわけである。

 危険きわまる跛行(はこう)現象
 最後に、重要なことをもう一つ指摘しておきたい。内閣府による上記の昨年度GDP推計
によると、民間設備投資額が名目値ベースでは対前年度比6.8パーセント、実質値ベース
では同じく対前年度比7.5パーセントという相当に大幅な増加率を記録しているにもかか
わらず、すでに述べておいたように、GDPは名目値ベースで対前年度比 1.9パーセント、
実質値でも3.2パーセントの伸びでしかなく、財貨・サービスの「純輸出」(貿易収支)を
含めない「国内需要」でも、名目値ベースでは対前年度比で2.4パーセント、実質値でも
2.8パーセントの伸びでしかなかったということである。実は、このように、民間設備投資
がかなり大幅に伸びているにもかかわらず、GDPや国内需要の伸び率がそれをはるかに下
回っているという跛行現象 は、マスコミが「景気回復」ないし「好況の到来」をはやしは
じめた平成15年ごろから現在にまでいたる近年のわが国経済の「悪い特徴」になっている
のである(同じく内閣府の速報によれば、本年1〜3月期においても、この「悪い特徴」は
顕著である)。
 言うまでもなく、企業が設備投資を増やしているにもかかわらずGDPや国内需要が十分
には伸びず、低迷を脱しえていないといった状態が続けば、その必然的な帰結として、国
内投資についての「投資効率」の低下現象が生じ、企業の国内投資意欲の冷却化、ひいて
は、企業の国外脱出=産業空洞化の激化が不可避となろう。周知のごとく、現在ならびに
今後のわが国経済においては、中央政府ならびに地方自治体による社会保障関連支出をも
含めた財政支出の削減が、相当な規模で行なわれつつあり、また、大幅な増税も断行され
つつある(たとえば、市県民税の大幅な増税が、本年度当初よりすでに断行されている)。
したがって、わが国経済においては、今後も、国内需要やGDPの低迷は不可避であろう。
だとすれば、過去3年間にようやく息をふき返した企業の設備投資も、間もなく失速状態
に陥る危険性がきわめて濃いと考えねばならないのである。
 このような危機的状況からの脱却をはたすためには、わが国の政策担当者たちが、ケイ
ンズ的政策パラダイムに覚醒し、これまでの「反ケインズ的」な経済政策のあり方を「ケ
インズ主義的」なものに根本的に改めることに踏み切ることが、ぜひとも必要であろう。

丹羽春喜;前大阪学院大学教授 経済学博士 
昭和五年(一九三〇年)兵庫県生まれ。
関西学院大学経済学部、同大学院経済学研究科博士課程卒。
関西学院大学社会学部教授、筑波大学社会科学系教授、
京都産業大学経済学部教授を経て、現在、
大阪学院大学経済学部教授。経済学博士。
日本学術会議第五期会員をも務めた。著書
に『社会主義のジレンマ』『ソ連軍事支出
の推計』(「防衛図書出版奨励賞」受賞)
『ケインズ主義の復権』『日本経済再興の経
済学』『日本経済繁栄の法則』ほか多数。
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2.三村文男
 シンドラー殺人事件
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シンドラーという固有名詞にはスピルバーグ監督の名画「シンドラーのリスト」以来好感
を抱いていたのだが、今回の事件で必ずしもそうでなくなってしまった。スイス.シンド
ラー社のエレベーターの扉が開いたまま上昇し、挟まれた高校生が惨死した原因は、安全
装置の欠陥、ブレーキの故障。メンテナンス会社の手抜きなどが指摘されている。しかし
最も重要な事は、自動回転ドアで小学生が死亡した六本木ヒルズの事件と同様、きわどい
事故がくりかえし起きていたにも拘らず、ろくに報告もされず、対策がなおざりにされ、
死亡事故が起こって始めて問題にされた点である。どちらも起こるべくして起こった事件
であった。

欠陥機械を製造した会社の責任は当然だが、運営に当たった人たちが、職業倫理を弁えて、
万全の措置をとっていれば、防げた事である。当事者の怠慢、油断、見落としなどのすべ
てを、未必の故意に結び付けることは無理であろうが、あえて私はこの二つを殺人事件と
呼ぶ。悲惨な死を繰り返さないための教訓としたいからである。

六本木ヒルズ殺人事件の時、「失敗学」の工学院大学教授畑村洋太郎氏は「作ったものは
壊れるし、複雑な構造物は暴走するものである。しかし利用する過程で人間が手を加える
ところで、決定的な違いが起こる。」「大企業は社会的責任も大きいから、起こりうる最
悪の事態のシナリオを作り、それを検討しておく必要がある。」「施主はもっと自分たち
の責任で最悪の事態の安全対策について騒がなければならないし、現場の情報を設計者に
フィードバックし、必要な改善を指示しなければならない。」と発言された。(テーミス
平成16年5月号)

私の住む神戸のマンションで、住民あて6月4日付けSECエレベーター会社の文書が掲
示されていた。シンドラー事件と同じメンテナンス会社と知ってびっくりした。事件前の
4月に契約して以来、月二回点検したが何の異常もなく、正常に運転していた。警察には
全面協力し。原因解明に努力したい。新しい情報が入れば、また報告すると書いてあった。
それから一ヶ月近く、新聞ではブレーキの点検を目視だけで済ませていたと出ていたが、
新しい情報の報告はなされていない。

三村文男;神戸市出身 満州帝国建国大学中退 一高を経て東京帝国
大学医学部卒業
開業医の傍ら著作、評論多数 米内光政と山本五十六は愚将だった
(テーミス)神なき神風ー特攻50年目の鎮魂ー(テーミス)など
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月刊ビジネス情報誌「エルネオス」
7月号巻頭言 「舛添要一の賢者に備えあり」小泉政治と議会制民主主義
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 九月には、小泉内閣が幕を閉じる。そして、自民党総裁選の結果、新しい内閣総理大臣
が決まる。その新首相選びに際しても、小泉政権五年間の総括が前提となるべきである。
 小泉政権の特色は、何と言っても、既得権益との闘い、そして、国民の支持を調達する
手段としてのパフォーマンスにある。前者については、郵政民営化を政策の最大眼目にし
たように、政官業の癒着を打ち破ることに努めた。それは一定の成果を上げたが、同時に、
一方では、それは、政敵である旧橋本派との権力闘争でもあった。そして、今や、師であ
る福田赳夫・元総理と血みどろの闘いを展開した田中角栄・元総理の流れを継ぐ集団は凋
落しつつあり、清和会(森派)は飛ぶ鳥を落とさんばかりで、わが世の春を満喫している。
 総裁選では、三度目の正直で総理総裁の座を得た小泉純一郎は、その支持基盤を、当時
弱体であった森派や派閥の合従連衡に求めるのではなく、国民の直接の支持に置いた。支
持率を上げるためには、メディアへの対応を含めて、あらゆる手段を動員した。田中真紀
子を外相に起用し、ワイドショー政治、劇場政治、ワンフレーズ政治を展開した。これが
ポピュリズムである。五年前の総裁選、そして参議院選から始まり、昨年の郵政選挙でそ
の極に達した大衆動員は、政治を国民にとって身近にしたが、同時に、一億総愚民化とも
いえる大衆熱狂の危険な側面を持ったことを忘れてはならない。宴の後に漂うのは、虚脱
感である。
 小選挙区制の導入や政治資金規正法の改正で、党の総裁である首相の権力が強化された。
公認権を持つことは、国会議員に対して生殺与奪の権利を持つことを意味する。昨年の郵
政選挙がよい例である。また、閣僚人事などで小泉首相は、これまでのように派閥の領袖
の意見を容れるのではなく、気ままに抜擢人事を繰り返した。派閥は金とポストの配分単
位であり、議員の互助組織であったが、これでは、その存在価値はなくなってしまう。「自
民党をぶっつぶす」といった総理の意気込みは、少なくとも派閥の機能低下という点では、
ある程度成功したといえよう。
 しかしながら、人事や政策立案過程での透明性や、民主主義が十分に確保できたかとい
うと、はなはだ疑問である。自民党は、部会、政策審議会、総務会といったプロセスを経
て、党内意見の集約を行ってきた。それは、議院内閣制である以上、与党と政府との調和
が必要だからである。与党審査を終われば基本的な法案が了承されるのは当然である。政
策決定でも、多数決ではなく全会一致の形をとったのには、それなりの意味がある。とこ
ろが、郵政民営化法案の策定過程で、小泉首相はこの伝統を壊してしまった。
 むろん、大きな改革を断行するときには、党内にも反対はつきものであり、最後には多
数決もやむをえないかもしれない。しかし、郵政民営化以外にも重要な政策は多々あった。
それらについては、総理の関心の度合いで対応が変わってくるのでは話にならない。ルー
ルの変更は、まさに「一視同仁」的でなければなるまい。
 第百六十四国会は、延期することなく閉幕した。行政改革関連法、医療制度改革法は成
立したが、教育基本法案、国民投票法案、社会保険庁改革法案、共謀罪の創設を含む組織
犯罪処罰法案などは継続審議となった。郵政民営化法案が成立すれば、あとは野となれ山
となれでは無責任である。内閣総理大臣が指導力を発揮するのはよいが、それが国会軽視
を意味するのであれば、議会制民主主義は危機に瀕する。
(参議院議員・国際政治学者)
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて68 
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福留中将の回想を続けよう。
「対米戦争の回避を念願したのは、勿論海軍だけではない。解決のめどさえ立たぬ
支那事変を抱えて、この上対米戦争などがあっては大変だとするのは、陸軍要路も
同じ考えであり、心ある国民もことごとくそうであった。私には戦争は出来ません
といって桂冠した近衛第二次内閣の後を継いで首相を拝命した東條大将も、何とか
対米戦争を避けたいものとて、五日間考えて大命を拝受したほどであった。
私は良く伊藤(整一)次長や岡軍務局長と話したものである。これほど戦争を望
まず、なんとしても回避したいという人たちが、そのための会議を開く度ごとに、
かえって戦争に向かって一歩ずつ前進する結果になっているではないか、と。
全く時の勢いというものは恐るべきものと、つくづく感じたことである」 
 この証言には、ソ連や、中国共産党、いわゆる「コミンテルン」に対する警戒が
全く感じられない。
「非戦論者たちが集まって会議を開くたびに一歩ずつ対米開戦に向けて前進してい
った」裏には何があったのか? 
 既に書いたが、支那事変勃発の経緯についても、当時の軍首脳が「熟知」してい
たとは思われない。つまり、国民党と中国共産党の、死ぬか生きるか死闘の状況に
ついて、もっとよく研究していたならば、盧溝橋の「ナゾの一発」がどのような背
景の元になされたものか、推察できたのではなかろうか?
 そして国民党政府(蒋介石一派)を支援するため、米国から、例えばフライング
タイガーのシェンノートに代表される多くの軍人達が「参戦」していたことにも納
得がいったに違いない。海軍戦闘機部隊と、彼ら「米国義勇空軍」との間には、既
に戦闘の火蓋が切られていたのである。にも拘らず、日米間で「戦争回避」のため
の交渉が続けられていた、というナンセンスさが、私には理解できない。やるとす
れば、これら米国から「正式」に派遣されている航空戦力の撤退を求める交渉であ
るべきであった。こう見てくると、福留中将が書いたように、米国の西漸政策は露
骨に進行していたのは明白であった。だとすれば、瀕死の状態にある中共軍を、共
産主義の親元であるスターリンのソ連が支援しないはずがない。同時に、風雲急を
告げる欧州情勢を見るとき、ソ連としては何としてでも「後背部」から「虎視眈々
と狙っている」強力な日本軍の勢力を,何とかして分散させなければならない。そ
れには、ソ連に向いている「日本軍の力」を、中国国内に向けさせれば良い。張鼓
峰やノモンハンで、日本軍に対して「威力偵察行動」を取り、日本軍の「先制攻撃
力」の芽を摘むことに成功したソ連は、引き続いて日本軍を混乱する中国大陸に向
けさせることにした。
 その切っ掛けが「盧溝橋事件」であり、それは近衛首相の「意外なほど明快な」
行動で成功した。近衛首相はただちに、一部の小競り合い事件に過ぎない「盧溝橋
事件」に反応し、戦線拡大を避けようとする軍部を逆にけしかけ、「蒋介石政権を相
手にせず」との声明を発表、一途に大陸にのめり込んでいった。この時点でソ連の
戦略は大成功、心置きなく西部戦線に全戦力を投入できたのであった。
 その後の日本政府の支那事変に対する対応振りは、既に書いてきたところである
が、米英からの援蒋ルート遮断を目的に、ついに軍はインドシナ半島に進出する。
ソ連にとってはこれが第二の戦略的大成功であるが、その裏には、近衛内閣のブレ
ーンであった、朝日新聞記者の尾崎秀美と、国際スパイ、つまりスターリンの回し
者であった独逸通信社の記者を装ったゾルゲが深く絡んでいたことも既に書いた。
 ソ連の次の戦略は、日米相戦わせて、ソ連に対する日本軍の脅威を除去すること
であり、あわよくば、日米共崩れを誘うことであった。
 そこに深く関与したのが実は「平和愛好者」の近衛首相ではなかったのか?
つまり、日米開戦を「回避」するごとく見せかけつつ、実は軍部、特に海軍を扇
動して、ハワイ真珠湾攻撃を計画させたのではなかろうか?    (続く)
 
佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.松永太郎
 TVのニュース番組
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 今度のサッカーをめぐる報道で、新聞やTVなどの報道に対する批判がたかまっている。
その尻馬にのって、私も書いてみたいと思うが、もちろん、マスメディアの中に多くの良
心的なジャーナリストがおられ、また優れたTV番組や記事が多いことを前提とした上であ
る。単なる一視聴者の感想に過ぎないことをおことわりしておく。

 最近、自衛隊がサマーワから撤収することになった。酷熱のなか、酷薄な環境の中で、
本当にご苦労様と申し上げたい。 さて、そのニュースを伝えるNHKはだいたいこうであ
る。「それではクエートにいる何とか特派員に聞いてみましょう」。
 しかしイラクにいる自衛隊のことをなぜクエートから報道するのか。クエートは、まだ
イラクが占領していたのだろうか。お金の話をするのが下世話なことは、十分に承知して
いる。だがNHKと民放コンソーシアムは、総額140億の放映権料をFIFAに支払ったそ
うである(「朝日新聞」による)。さらにドイツに行ったカメラマンだのディレクターだのアナ
ウンサーだの解説者だのの費用を合わせれば、どのくらいの額になるのか想像を絶する。
一方、イラクにいる自衛隊の報道は、クエートから一人である。安全なところの楽しい
お祭り騒ぎにはいくらでも行くが、少しでも危険なところには、絶対に行くもんか、と
いう姿勢がうかがえるようで、おもしろい。NHKのイラクからの報道は、いつも背景が
同じで、こっちはあのモスクと椰子の木を覚えてしまった。おそらくホテルのバルコニー
からなのだろうが、それでも防弾チョッキを着て、必死な表情を浮かべている。かわいそ
うだから早く帰国させてあげたらどうか。ホテルから出なければ日本にいたって同じだろ
う。一方、BBCの特派員はだいたい弾丸が飛んでくるような現場にいる。日本ではそのか
わり危険なところへ行っている自衛隊への批判は、涼しくて、安全で、清潔な本国のスタ
ジオですることになっている。

 この批判というかコメントというか、たんなる感想というのか知らないが、それを取材
もしていなければ専門家でもないキャスターと称する人が、隣にいる女性アナウンサーに、
ぶつぶつ言う癖はいつから始まったのだろう。今、NHKの9時からのニュースの柳沢とい
う人は、いつも眉にしわを寄せて「雨がやむと天気になるでしょう」的な、あたりまえな
ことを言うが、放映時間の無駄ではないだろうか。またその隣の、比較的年配の、鳩が豆
鉄砲を食らったような表情を浮かべている女性アナウンサーにも何かお考えがあるだろう
から、たまには聞いてみたらどうだろうか、いつも、このおばさんは、なんにもわかんな
いだろうから教えてつかわす、という柳沢の殿の姿勢なのである。
NHKにとっては、この女性アナウンサーが視聴者代表なのであろう。さすが皆様のNHK、
視聴者のレベルを最低においている。

10チャンネルの古館というアナウンサーは、狂騒的であり、落ち着いて見ていられない
ので、あまり見ない。なぜ、そのように、騒ぐのか、なぜ、そのように交差点の信号機の
ように赤くなったり青くなったり、忙しく表情を作るのかさっぱりわからない。その左隣
の首を長くして聞いている女性アナウンサーもかわいそうだが、すごいのは右隣の、銀髪
の紳士である。この岩波・朝日風インテリを絵に描いたような紳士は、いつも「はあ、そう
ですねえ。よくわかりませんが」というふうにコメントを始めるので、非常なる脱力感に襲
われる。あまりよくわからない人にコメントさせるのは、やめたほうがいいと思う。
ただ10チャンネルは、取材能力はNHKよりも格段にある。というよりもちゃんと取材
して番組を作っている。日曜になると、地元の人が川辺で水遊びを楽しんでいますという
ようなニュースを流すNHKよりは、数段上である。きっと10チャンネルのほうは、本当
に仕事をしなければ食っていかれない下請けの会社が作っているのだろう。
一番ひどいのは、言うまでもなく筑紫哲也の番組であるが、これには、中宮宗氏の本が
あるので、それに譲りたい。はっきり言えばチャイナとコリアの情宣番組である。

こうしたニュース報道番組のスタイルは、早晩変わるだろう。インターネットとマルチ
メディアの発達で、変わらざるを得ないだろうと期待する。そうでなければ、日本は簡単
に他国の情報宣伝工作に乗ってしまう危険な状態をいつまでも続けることになるだろう。
きちんとした取材がなされていないからである。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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3.奥山篤信 
 A級戦犯って何なの?
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日本人は余程西洋かぶれなのか、ありとあらゆる階層でA級戦犯という言葉が氾濫してい
る。何か事件が起こったり、何か試合に負けた場合、誰が一番責任があるかの代名詞とし
て、「A級戦犯は何某である。」などと大新聞、マスコミから一般国民まで無頓着に使用
されている。僕は提案したい。この言葉こそ言葉狩(放送禁止用語 定義:ある言葉が差
別的あるいは卑猥な内容を含む、または含む恐れがあると放送局が判断したときに、電波
法や放送法などに基づき、その言葉を放送することを放送局が自ら禁止して健全で中立的
な放送を維持する。)とすべき差別用語と思う。首相の靖国神社参拝の妥当性を言うとき、
自民党の主だった面々、それに民主党でも小沢一郎、菅直人、前原誠司、岡田克也等が「A
級戦犯が合祀されているから反対だ。」と何の臆面もなく言い張る。ましてやマスコミ、一
般国民なども平気でそのように言う。A級戦犯とは日本を大東亜戦争(いやこの人々は太
平洋戦争などを使うが)のどん底に国民を陥れた責任者ということで使っているのが常で
あり、加藤紘一や菅直人などはサンフランシスコ条約で東京裁判を承諾してこそ国際社会
に復帰できたのだから、これを覆すことは学者ならともかく政治家として国際的法律の遵
守から出来ないと嘯いている。この問題をメルマガで取り上げるのは初めてなので、はっ
きり言って置こう。一歩譲って国際法遵守という観点から言うと、サンフランシスコ条約
でACCEPTしたのは、JUDGEMENTSすなわちABC戦犯に対する諸判決であって裁判そのものの
妥当性ではない。英語でも明らかであるが仏語文の表現にはもっと明らかにACCEPTE LES 
JUGEMENTS PRONONCES と「宣告された」というPRONONCESの形容詞がついていて明らか
である。つまり判決だけを受諾したのである。それは不当に処刑された人々を生きて返せ
といっても無駄であるし、現に刑期を務めているものをその当時連合国は釈放していなか
ったからである。現に、日本の国会が全会一致でA級戦犯の遺族に恩給や養老年金を支給
する関連法案を可決したのではないか!(1953年、戦傷病者戦没者遺族等援護法を改正、
54年と55年に恩給法を改正して、第二次世界大戦の戦犯遺族に恩給などを支給することに
道を開いた。)

いまやあの東京裁判がリンチ裁判たる戦勝国が敗戦国を事後法で一方的に裁いたものであ
ることが国際的にも明らかなのに、被害者たる日本人が、そして国益を守るべき政治家が
かかる裁判を「国際社会に戻る」ために認めたからとか、A級戦犯はそもそも日本人にと
っても裁かれるべき悪しき戦争指導者などと、かかるリンチ裁判を肯定して、結果として
チャイナやコレアの手のひらで踊らされ翻弄されている。いったいどういう脳構造をして
いるのか、笑止千万である。大義名分としての大東亜の解放のための戦争だとまで言わず
とも、大体あの戦争は、国民の大多数が賛成し国家総動員によってなされた戦争である。
国民一人ひとりに責任がある点を忘れてはならない。軍部が暴走しただのファッシズムだ
などと、戦後になって自分だけは戦争に反対していたなどと良い子ちゃん顔で言うなど、
人間として許されない卑劣さである。その代表格が朝日新聞である。僕は、あの戦争が負
けたのはなぜか、海軍や陸軍の作戦に過ちはなかったか、組織としての軍部はどうだった
のかなどと原因を究明し悲惨な敗戦結果を二度と招かないことの将来の布石にすることが
国民の課題だと言いたい。それにいまやあの戦争はスターリンのコミンテルンが巧妙に
日米政府にスパイを置き仕掛けた謀略戦争であったことだ。その意味で共産主義者や社会
主義者が俺たちは戦争に反対したというのもしらけさせる議論である。

あの残虐きわまる「東京大空襲など」「長崎、広島への核攻撃」「満州での民間人大量
虐殺」「シベリア100万人拉致事件」など日本国民は米ソによる民間人の無差別殺戮
の犠牲者でもあることを忘れてはならない。

戦後日本国民が東京裁判史観に呪縛され寝覚めず、世界中にその弱点を積極的に披露して
いる日本指導部を見ると、まだ尾崎、ゾルゲの魔法にかかっているといえる。むしろあの
戦争の反省はスパイ防止法案などの立法や日本情報局の設置こそ望まれるということであ
るはずだ。

最近小林よしのりの「いわゆるA級戦犯 幻冬舎」のマンガ本を読んだ。小林氏は実質デ
ビュー作である「戦争論」にて現代の若者に反戦平和念仏、人権至上主義の世相に対して、
漫画によるデフォルメした形で大きなインパクトを与え、啓蒙した実績を僕は高く評価し
ている。漫画家風情でなどとの批判を見るにつけ、保守左翼を問わず、君たちこそが戦後
のこの日本の自虐的閉塞を作ったことを自覚するがよい。この新刊も大変良くできている。
廣田弘毅の「すべて無に帰して、いうべきことはいって務めを果たすということで来たか
ら、いまさら何もいう事実もない。自然に生きて自然に死ぬ。」と罪状認否で無罪というの
も嫌がり、弁解のための証言台にも立たず死に赴いた姿には、若いころの禅の教えが感じ
られる。処刑直前の万歳に対して漫才(万歳は福岡弁でまんざいという説もあるが)と言
ったといわれるのは、一糸乱れぬ精神の強靭さであろう。この章は特に圧巻である。
小林氏も歳を経てまた最近の失明の危機の病を乗り越えて成熟度を増し、かなり冷静に静
かに語っていて好感が持てた。それに理路整然として、老若男女誰が読んでも納得できる
書である。僕自身も廣田についてなど新しい材料があり、目を洗う読後感であった。多く
の読者が戦犯として戦勝国の生贄になった人々に、人間としての哀悼の気持をもたれるこ
とを信じてやまない。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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4.西山弘道 
 福田株、ドタキャンで急落
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 毎日新聞の岩見隆夫氏によれば、もはや「出るか、出ないか」の“論争”までに
なっているという“総裁候補”福田康夫元官房長官の動向だが、このところ招待さ
れた会合へのキャンセルが相次ぎ、「あれで政治家か?」と男を下げているという。

 福田氏の最初の“ドタキャン”は、先月20日で、旧宮沢派系3派有志でつくる
「アジア戦略研究会」の会合で講演する予定だったが、「総裁候補を呼ぶなら私は
該当しない」と言って出席を断った。
 さらに26日には、ホテルオークラ内の日本料理店「山里」で行われたマスコミ
界有志の「山里会」の会合もキャンセルした。「山里」には、読売新聞グループ本
社の渡辺恒雄会長や、政治評論家の三宅久之氏らが待ち構えていたが、福田氏は車
で、ホテル前まで行きながら、「マスコミが待機している。いろいろ聞かれるのは
本意ではないので遠慮する」と連絡して車をUターンさせたという。ちなみにこの
「山里会」は、先年、加藤紘一自民党元幹事長が当時の森首相に対して「決起する」
とクーデター発言を行い、「加藤の乱」のきっかけとなった会合として知られている。

 そして3度目の“ドタキャン”は、29日夜、都内で行われた自民党森派の三ツ林
隆志議員のパーティーだ。三ツ林議員の父、故弥太郎氏は科学技術庁長官を務め、福
田赳夫氏直系の議員として知られる。福田氏はパーティーで乾杯の発声役として招待
されていたが、「急遽、別の日程が入った」(福田事務所)としてキャンセルした。パ
―ティーには森前首相や安倍官房長官も出席、報道陣も多数、詰め掛けていた。

 福田氏の度重なる“ドタキャン”に、「あの人は本当にあれで政治家なのか」と、
政治家の資質を疑う声まで上がり、ついに総裁選不出馬説まで出てきた。「福田さん
は元々、総理総裁なんかなる気はない。次の選挙で引退して、秘書をしている息子
に譲るつもりで、そのための“事前運動”だ・・・」
 こんな人格論まで出てきたことには、福田氏も立つ瀬がないであろう。確かに最近
の各紙の調査では、一時差が接近していた安倍氏と福田氏の支持率も、また離れ始め
ている。そのアジア外交見直し論で支持を集めている経済界なども、さすがに福田氏
の「出る、出ない」の煮えきらない態度にイライラし始め、それが支持率の急落につ
ながっているのだろう。

 しかし、福田氏周辺は「出馬を確信している」と言う。周辺によると態度を明らか
にするのは、8月15日以降だという。つまり、小泉首相が公約通り、その日に最後
の靖国神社参拝を行うのかどうか、見極めて出馬を表明するという。首相参拝が行わ
れた場合、中韓を始め国内外から大反響を巻き起こすだろうし、その反応を分析して
戦略を立てても遅くはないというわけだ。

 ところで今月18日には、自民党東京都連の大会が開かれ、ここで総裁選候補者た
ちが政策発表を行うというイべントが予定されていたが、そんなわけでどうやら一部
の候補者だけの発表会になりそうだ。

 福田氏のこの焦らし作戦、吉と出るか凶と出るか。小生などは危険極まりない作戦
と思うのだが、周辺によほど参謀がいないのだろうか。

 福田氏は今月16日、70歳の古希を迎える。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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 図書室  道元「小参・法語・普勧坐禅儀」 訳注 大谷哲夫 講談社学術文庫 松永太郎評
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 かつては、洋の東西を問わずに、高僧・聖者・賢人などと呼ばれた人は、精神的に高揚し
たとき、よく詩を残した。イスラームではジャラルディン・ルーミー、キリスト教ではア
ヴィラの聖テレサやビンゲンのヒルデガルド、シレジウス、中国禅では寒山拾得など、枚
挙に暇がない。日本でも、もちろん空海をはじめ一休、良寛など優れた詩人を数多く輩出
している。
 あるいは、精神的な教えというものには、むしろ詩が適しているとさえ言えるのかもし
れない。詩は直感的であり、全体的であり、逆説を超越できる。精神的な教えもしばしば
直感的であり、全体的であり、論理を超越しているからである。
 さて、ここでとりあげる道元であるが、道元といえば難解と相場が決まっている。理屈
っぽいので「知識人」が好む。「難解」だけがとりえのフランス哲学者やドイツ哲学者など
が取り上げたりする。しかし、もし本当にそうであれば、それは道元が二流の人の証明で
あって、一流の人の証明にはならない。鈴木大拙が日本で最も評価した禅の人は盤珪禅師
であるが、師は相手が武士だろうが百姓だろうが、老婆だろうが遊女だろうが、一瞬で本
質を理解させる力を持っていた。それに比べて道元は、という気持ちはない。道元は永平
寺を開き、選ばれた弟子たちに、禅の伝統、あるいは法燈を伝えるという役目を負ってい
たからである。
 しかし、そのため、その伝えられる文章などが難解となったのは、やむをえない。しば
しば道元は逆説を好んだ。しかし、もちろん道元は後世の「知識人」向けに難解な話を展開
したのではない。逆に言えば、もし「知識人」が一度も参禅せず、本質を全身でとらえよう
とせず、ただ「頭」で捕らえようとするならば、そんな「知識人」こそ、道元からすれば、
もっと唾棄すべき人々であろう。
 今度、講談社学術文庫からでた「「小参・法語・普勧坐禅儀」は、その適切な訳注とあい
まって、私などには極めてありがたい本である。大谷氏は、駒澤大学の学長であるが、学
者にとどまらず、真に道元の魂を捉えようとする姿勢が、我々のような下根にもよく伝わ
ってくる。
 今度、この文庫版に収められた「結夏の小参」「居山、好」を読み、あらためて道元が世
界の優れた精神的な詩人の伝統の中にいることが知った。
 「小参」とは、英訳では、インフォーマル・ミーティングとなっている。「住職が、打ち
解けた雰囲気のなかで、修行者たちに話をすること」である。「結夏の小参」は、これから
長い夏の「安居」すなわち90日に及ぶ修行の始まりのときに話されたものである。
 僧は山で修行をするのが良い(「居山、好))と、かつて黄龍禅師が説法した話を取り上げ
る。それに対して弘覚大師が、弟子に「お前は、この話をどう理解したか」と問い、弟子の
答えに満足しなかった。そんな答えでは「先聖を裏切り、わが仏法の子孫を喪す」ること
になる、といったのである。それに対して 道元は、どう答えれば、裏切ることにならな
いのか、と弟子に問い、自分もまた問われるだろうという。なぜ僧は山にいるのが好いの
か(そもさんか、これ居山好底の道理) そしてしばらく沈黙して(良久して)、言う。

 縁に遇ってすなわち宗なり   縁にあうことこそ、もっとも大事である
 弁処円通す          それぞれの場所で仏道に励めば、すべてに通じる
 
こういった後、詩を述べ始める。

松は韻く暁窓の畔り
月は心り秋水の中
鶴を養ってついに潔きことを憐れむ
雲を看ては、いそがわしからざることを契る

応時応節、凱風薫風の颯々たる
万嶽万渓、疎雨密雨の濛々たる
正等のとき、また、そもさん
端座苔深くして、岩石なめらかなり
風高くして 多福の竹 叢々たり

夏の風、かぐわしい風が吹き渡るだろう
あらゆる山頂や谷に雨がときには軽く、ときに激しく降るだろう
まさにそうしたとき、おまえはどうするのだ
しかし坐禅する岩は苔むして、かどはとれ
天高く風が吹いて、竹林をならしていく

というのである。「応時応節、凱風薫風の颯々たる、万嶽万渓、疎雨密雨の濛々たる」
今も私の即今目前の天然自然は、まさに、そのようである。

松永太郎 
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映画寸評 アメリカ映画 カーズ(THE CARS)     ☆☆ 奥山篤信評
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ディズニー映画である。劇場には子供連れの客が目立つ。残念ながら僕の見たのは子供向
の日本語吹き替え版であり、ポールニューマンなど名優を配しているはずだが、時間の関
係上日本語版を見た。あの「トイ・ストーリー」のジョン・ラセター監督が3Dのアニメを
駆使しての愛らしい物語である。

何よりも懐かしいのは僕らの若いころテレビで流行した「ルート66」のテーマソングで
ある。当時自動車時代のアメリカのシンボルといえばR66であり、その沿線に繰り広げる
人間ドラマを見るのが毎週楽しみであったころが懐かしい。

この映画車に両眼や口元など人間の表情をつけて、愛らしく夢を語る。

無名の車ライトニング・マックィーンが全米の新人レースピストンカップに挑み番狂わせ
でトップ同時ゴールの一車になる。まさにこのレースが現代の情報IT文明の一刻の猶予も
ないアメリカ社会の象徴としてある。いよいよ決勝戦のためカリフォルニアに向かうライ
トニングだか途中R66の寂れた町ラジエーター・スプリングスで警察沙汰に巻き込まれ足
止めを食らう。この主人公を現代のIT起業家にたとえればわかりやすい。能力があっても
友達が一人もおらずスタッフはその傲慢さに離れていく、いわばミーイズムの権化である。
その主人公がこの古き良き町で、人間の善意というものを始めて知る。つまり人間は一人
では生きていけない。家族や社会やルールがあってこそ生きられるということを。そして
無償の愛にも遭遇するのである。

ここで精神的成長を遂げた主人公はいよいよ最終決定戦レースに臨むのだが、脱落した三
車の一車を救済し結局三位でゴールすることになる。優勝者は居丈高だが、観衆のブーイ
ングに直面する。この主人公の自己犠牲の精神が、逆に大衆のスタンディングオーベイシ
ョンを呼び、真の優勝者として称えられるという美しいファンタジーの物語である。

いつものことながらアメリカ映画の良さは、いくら拝金主義で物質万能の社会であっても、
絶えずそれの反省とこうあるべしとの理想を高く謳う点であり、この映画も例外ではない。
特に子供たちに人間社会の本質を優しく易しく訴えるディズニーの世界は感動的である。
奥山篤信
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
 編集長・市村直幸
 〒105−0003
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