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甦れ美しい日本 第067号

発行日: 2006/5/25

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年5月25日 NO.067号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >
◎ゲスト執筆者

塚本三郎      靖国神社参拝と経済同友会  

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤 守       大東亜戦争の真実を求めて62
2.奥山篤信      映画「ジャケット」--過去現在未来 クオ‐バディスQuo Vadis--
3.松永太郎    憲法とは何か
4.西山弘道     国会、ポスト小泉もヤマ場へ

◎図書室

1.「在日論の嘘=贖罪の呪縛を解く」 浅川晃弘 PHP(松永太郎)
2.「彰義隊 」吉村昭 朝日新聞社(奥山篤信)

◎映画寸評 映画寸評『ダ・ヴィンチ・コード』--腐っても鯛--
(奥山篤信)
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 塚本三郎
 靖国神社参拝と経済同友会 
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 次期首相選びが内外の注目を浴びている。中国は小泉首相に如何なる注文をつけても、
影響がないと悟って、今度は、次々と媚中派と呼ばれる日本の国会議員や、経済人を北京
に誘い、日本国民の世論の分断を計って、次期首相選びに影響させようと企んでいる。

 まずその手に快く乗せられたのが、橋本元首相一行であったことは既に報道されている。
その企みはこともあろうに、「胡錦濤講和」と呼ばれている。
 そして今回は、日本の経済同友会の提言となって表面化した。
 ここでは、東京と関西とが、その対応が明確に分かれた。
 東京の同友会が露骨な媚中派として、相当数の反対にも関わらず、多数決で決定し発表
したと報道された。この種の提言を、なぜ強引に多数決で集約する必要があったのか。
 時を同じくして、関西の同友会もその骨子を発表した。
 関西同友会は、私共の日頃感じ取っている、中国の理不尽な要求、即ち日中友好条約第
一条で約束した、内政不干渉違反だと、毅然たる態度を示している。
 残念なことは、東京同友会の提言は、殆んどのマスコミで報道されたが、関西同友会の
提言の骨子は、極く一部の新聞以外は報道されなかった。ましてNHKをはじめとするテ
レビは、片方の東京同友会即ち、媚中派の宣伝に終始した。これは余りにも、日本国民に
与える、片寄った報道であった。
参考の為、双方の要点を公平に記してみた
 二〇〇六年五月、経済同友会(東京)は、「今後の日中関係への提言」を行なった。
一.首脳レベルの交流を早急に実現する上で、大きな障害は、首相の靖国神社参拝問題。
わが国が国際社会の中で占める重要な地位と、担っている責任に鑑み、自らの問題と
して、主体かつ積極的に解決すべきだ。
  戦争による全犠牲者を慰霊し、不戦を誓う、国による追悼碑も建立を求める。
二.「不戦の誓い」をする場として、政教分離の問題も含め、靖国神社が適切か否かは、日
本国民の間にコンセンサスは得られていない。
三.両国の歴史学者ら有識者による歴史問題、教科書問題の共同研究を発足させ、その成
  果を両国の中学、高校の近現代史教育に反映させる。
 右の三点を強調している。
時を同じくして、関西の経済同友会は、靖国参拝問題や歴史認識を、
一.靖国問題など、内政に関わる諸問題は、国交正常化以来の原則通り、相互に不干渉と
すべきである。ただし、反日思想を、ことさら煽るような反日感情増幅施設は、見直し
や廃止を求める。
二.中、韓両国が、外交カードとして使っているのに対して、政府高官も含めて、日本人
自身が歴史を知らないため、生煮えの歴史対話となっている。
三.中、韓両国の反日教育は、国内政治的な背景に基づくものだが、一方的に日本が批判
され、適切な反応、反論が出来ていない。歴史的な感情について、理屈を超えた感情が、
しこりとなって存在する。
同じ日本の経済団体で、東京と関西では、余りにも異なった提言である。
 但し、東京側は、
 戦争による全犠牲者を慰霊し、不戦を誓う、国による追悼碑の建立を求めると、(戦争犠
牲者に配慮をして、A級戦犯のみの非難)と弁明している。
 経済問題が、日本国家として、極めて重要であることは当然である。また、中国が、日
本の経済界にとっても、最重要対象国であることも自明である。
独立国家日本
靖国参拝については、中曽根康弘首相参拝まで、中国はA級戦犯合祀や総理の参拝など
問題視しなかった。
 昭和五十九年、大平正芳首相は春、秋例大祭に参拝し、夫人を伴って訪中した。中国政
府は熱烈歓迎した。そして中国の新聞は、「満足」「友好」「高い評価」」「深い感謝」で歓迎
したのが、大平、華国鋒両首脳会談であった。これは、A級戦犯合祀が大きく報道された
後のことであった。
東京同友会が、「首脳レベルでの交流を早急に実現する上で、大きな障害となっているの
は、総理の靖国参拝問題と述べているが、総理はいつでも中国首脳と会うことを求めてい
るが、先方が一方的に注文をつけているだけのことである。
小泉首相の靖国神社の参拝が、中、韓にとって、なぜ敵視されねばならぬのか。
靖国神社合祀のA級戦犯は、戦争の「責任者」であって、「犯罪者」ではない。その区別
は、かつての日本国会でケジメがつけられた。(昭和二十八年八月三日)世界も当時は
非難しなかったのに、なぜ、中、韓両国がこれを、今頃非難の焦点に取り上げたのか。
中、韓の対日問題は、靖国だけなのか。それに屈服すれば、また別の問題を持ち出す。
未だ歴史を学ばない政治家や、東京の経済同友会のような人が居り、それを当然の如く、
A級戦犯を繰り返す人が居る。その背後には一部の左翼的マスコミが居る限り、中、韓両
国は、「日本国民の思想の分断」の絶好の対象と利用する。
中国や韓国の政権が、反日感情を、体制維持のために様々の施設を利用している現状に
ついて、毅然とした態度で臨み、正しい相互理解促進の観点から、修正と謝罪を率直に
相手方に求める必要がある。相手は、受け入れなくとも、その都度言うべきだ。
歴史認識問題は、古今東西、数多く存在するもので、自国民に都合良い部分のみを取り
上げるから、双方のコンセンサスを得られなくても仕方がない。それが独立国の実状だ。
内政干渉を受け入れたら
総理が中国の内政干渉を受け入れた場合、その後の日本の利害得失の分析に、まったく
かけているのが東京側である。一歩譲れば、際限なく譲らせるのが共産主義である。
今日、経済界が、中国に緊急に譲らなければならない必要があれば、それを明示すべき
である。高度の政治問題について、反対意見があるのに、強引に多数決で通したことに
不信を感ずる。誰しも考えうるのは、関係者に対する中国からの利益誘導か、あるいは
脅迫とみるが如何か。
媚中派議員が、東京同友会のような提言を繰り返しているが、唯物論者にとっては、精
神的なものはすべて敵である。中国は今も中国共産党の独裁国家であり、中共があらゆ
る事象の解釈権を握って、それを国民に強制している。共産主義は、「宗教的施設」は観
光施設にすぎない。従って何れの宗教、慰霊の施設を造っても認めるはずはない。
 例えば、健康団体の法輪功でさえも、禁止と弾圧を繰り返している。
A級戦犯と呼ばれる人が、仮に犯罪人であったとしても、中国は如何なる法によって死
後もなお、法的に罪を問うことが出来るのか。中国の国民感情を、嘘で固めて反日思想を
煽り続け、それを理由として、非難するのは中国政府の傲慢そのものである。
その恥ずべき、「扇動に応える経済人」が堂々と発言することが恥ずかしい。
中国経済は、隆々発展し、間もなく日本を追越し、やがて米国と経済的にも軍事的にも
肩を並べるであろうと、予見している経済人も少なくない。
しかし、経済人の中には中国の経済発展に、危惧をも抱いている。(板子一枚下は地獄)
という、頼りないものと観ている人も少なくない。
汚職、弾圧、格差、公害等々、表と裏の極端な姿は黙視出来ない。
 中国の首脳には、十三億の人民の生命と生活がかかっている。己の権力維持の為には何
でもする、それが中国指導者の本質である。大袈裟な話ではあるが、
万一中国が経済危機の場合には、恥も外聞もなく、靖国神社に堂々と参拝するかもしれ
ない。そうしたら、悦んで日本政府は莫大な資金を援助するであろう。どう転んでも中国
に損はない。彼等はそのような人達なのだと、言ってのける識者も居る、北城・東京同友
会代表よ、「総理に御迷惑をかけました」で済む提言ではないと自覚して欲しい。
小泉首相の姿勢
「商売と政治は別」だと小泉首相は、不快感を露わにした。日本を代表する有名な経済
人の集まりであるから、単に、狭い利己的から出た提言ではなかろう。そして経済や、
安全保証等々の危惧を抱いての提言であろう。だからといって、首相が靖国参拝をやめ
れば、日中関係は安定すると東京の同友会は考えるが、それは正しいか。
共産主義の先祖レーニンは言う、「人間は一度転べば際限なく転ぶ」と。
もともと、この靖国参拝については、小泉首相就任の最初の公約であった。「誰が何と云
っても、八月十五日に参拝する」と言い切っておられた。
それでは中国と対立するから、八月十五日だけは避けて欲しいと、側近に言われて、八
月十三日に参拝を改めた。それで中国は満足したはずであった。しかし一層非難された。
中国に騙された側近が誰かは、首相は言わないが、泣いて怒ったと伝えられている。
小泉首相は、日本の内閣総理大臣である。中国に眼を向ける必要は否定しない。しかし、
靖国神社参拝を期待する日本国民は、圧倒的の多数である。
昨年の八月十五日には、一日で二十万人を超える人達が参拝して、参道は身動きができ
ない程であった。私も過日参拝したが、大勢の参拝者であった。遊就館もまた若者達で溢
れていた。中国や韓国の内政干渉のおかげで、逆に若者達が、靖国神社への関心をいやが
上にも高めさせている。国家の代表である小泉首相が、この世相の中で、中国や韓国の干
渉に屈して良いのか。
ゴールデンウィークに上京し、孫を連れて宮城前に行った。美しい松の立ち並ぶ広場の
清潔な景観は見事である。参観の団体が、百名単位で、数百名が列を作って、二重橋に
向かっている。絶景を背景に、若者達が記念写真に夢中である。
どこから来られたのかの問いに、中国・或いは台湾、の声が殆んどである。日本人は殆
んど見かけない。交番の巡査は言う。午前中はいつも、殆んど、中国と台湾の人達です、
日本人は午後が多いと。中国人も台湾人も、みんな日本にあこがれている。それなのに、
反日の政治指導者は狂っていはしないか。  
                                  五月下旬 

塚本三郎;                
愛知県名古屋市に生まれる 
鉄道省名古屋鉄道局に勤務し、県立中学校(夜間)に入学 
終戦とともに労働組合運動に従事 
運輸省に転勤し、中央大学法学部(夜間)に入学 
国鉄を退職し、中央大学法学部卒業 
昭和 33年 挑戦4回目にして初当選し、昭和生まれ初の代議士
(日本社会党所属)となる(以後当選10回) 
昭和 35年 民社党結党に参加 
昭和 49年 民社党書記長に就任(国鉄改革・電電公社民営化に取組む) 
昭和 60年 民社党中央執行委員長に就任 
平成 元年 民社党常任顧問に就任 
平成 9年 「勲一等旭日大綬章」を受章 
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて62
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 第二案、第三案について、東條首相は次のように書いている。
「第二の説については別に説明をいたしません。第三については次のごとき説明を
加えました。すなわち帝国としては速戦即決を欲するが、しかし相手のあることで
あるからわが国の意のごとくならざる場合もあり、長期戦を覚悟せねばならぬ。長
期戦の場合については連絡会議においても種々研究したが概ね二つの事が中心とな
る。
(イ)日本としては長期戦に対し補給能力が耐えうるか否か、また国民の戦闘意思
につき破綻を来たすことなきや。
(ロ)戦争をいついかにして終結せしむるや。
右(イ)の事柄については緒戦の効果いかんに関係する。戦争のことであるから確
信はできないが、統帥部においては緒戦の成功については相当の確信をもっておる
ようである。(ハワイ攻撃のことは勿論その他攻撃に関する純統帥事項は告げず)
 もし統帥部の確信するごとき成果を得るときは、戦略要点の確保により重要資材
ことに石油の獲得によってある程度補給上の緩和ができる。軍も政府のこの点につ
いては万全を尽くす。爾後は輸送維持が問題である。この点は主として海軍の活動
にまつ。人心の動揺については、既に支那事変四年後の後を受けておりかつ敵側の
宣伝謀略も加わり来るであろう。政府としては十分に戒心を加えるが結局国民の忠
誠心に信頼するものである。また(ロ)の点については連絡会議においてもすこぶ
る苦慮したのである。ソ連またはローマ法王庁を適当な時機に仲介を立てて平和に
入ろうとする案も検討した。しかし、確信ある成案を得ておらぬ。妙案ならば承り
たい。政府としては緒戦の成果を得れば速やかに戦略地点を確保し長期持久の策を
立て爾後
(一)作戦の活発なる遂行を図るとともに国力を培養する。
(二)政戦両略を尽くしてまず重慶政権および英国の脱落を図る。
これにより米国の戦意の喪失を図る。まずこれを基礎として進むのである。更に
いかにして戦局の終結を図るやはその後において定めるのほかはないとの意味
の説明を加えました。かくてこれを終わり再び政府との懇談を重ね会議は午後四
時ごろ終了したのであります」
戦争終結に関する腹案は、「緒戦の成功により戦略要点を確保し、長期自給態勢
を確立し、国力を培養し、重慶政府、英国の戦線離脱、米国民の戦意喪失を図り、
適時にソ連またはローマ法王庁の仲介を期待する」というものであったが、結果
的には緒戦は成功したものの、長期持久態勢の確立、国力培養までには至らなか
ったというべきであったろう。また、重慶政府や英国の戦線離脱を図るとされた
が、どのような見積もりでそういう結論が導き出されたのか、また、どのような
手段を講じる計画だったのか興味深いところがある。確かに米国民の大半は、開
戦に否定的であったし、ルーズベルト大統領も「不戦」を掲げて再選されてはい
た。しかし、わが政府は、理不尽な米国政府の要求に対して、ただ苦慮するばか
りで、民主主義国・アメリカの弱点を突いた外交政策を取ったとは決していえな
い。ベトナム戦争で、北ベトナム政府が取ったようなに、「その理不尽な事実」
を米国民はもとより、世界に直接訴える戦法を取らなかったのか?
当時も今も、「正直者」のわが外交官には「外交とは武器を用いない戦争である」
という認識が不足していたのではないのか?
重臣会議懇談会の後、連絡会議を宮中で開いて十二月一日の御前会議の議題(対
米英蘭開戦に関する件)が決定される。宣誓供述書に戻ろう。
「一一四 十一月三十日午後三時過ぎ突然陛下のお召しありただちに参内拝謁しま
したところ、陛下より先ほど高松宮より海軍は手一杯でできるならこの戦争は避け
たしとのことであった。総理の考えはどうかとの御下問でありました。よって私は、
『この戦争は避けたきことは政府はもちろん統帥部も皆感を同じうするところであ
りますが、連絡会議において慎重研究の結果は既に内奏申上げたごとく、事、ここ
に至っては自存自衛上開戦止むを得ずと存じます。また統帥部においては戦勝に相
当の確信を有すると承知いたしております。しかし海軍作戦が基礎をなすことでも
ありますゆえ、少しにても御疑念を有せられるならば軍令部総長、海軍大臣を御召
の上十分お確かめ願います』と奉答し退下しました。
 しかるに午後七時頃、木戸内大臣より電話がありまして陛下より軍令部総長、海
軍大臣も共に相当確信ありとのことであるから、十二月一日の御前会議は予定のご
とく進めて差し支えなしとのことでありました」
 開戦間際のこの時期に、何故高松宮が「海軍は手一杯・・・」と陛下に内奏したのか、
その意図には疑問が残るが、既にハワイ真珠湾攻撃部隊は行動を起こしていたのだ
から、この時点での海軍内部の見解の相違は気になるところである。  (続く) 

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信 
 映画「ジャケット」--過去現在未来 クオ‐バディスQuo Vadis--
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世界同時公開の話題作「ダビンチコード」と同じ日に封切、まったく目立たない映画で映
画館はガラガラ。実はこの映画あの巨匠ロマンポランスキーの「戦場のピアニスト」で史
上最年少でアカデミー主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディと「プライドと偏見」
の本年度アカデミー賞主演女優の有力候補であったキーラ・ナイトレイが主演で出ている
なかなかの内容なのだ。
 
1992年、湾岸戦争で頭部をぶち抜かれ奇跡的に生還したが、その負傷が原因で記憶喪失症
になったブロディ扮するジャックは、警官殺人事件に冤罪として巻き込まれるが精神異常
として精神病院に送られる。ジャケットとは暴れる精神病患者用の拘束衣の意味である。
ジャックはそれを着せられ、死体安置用の引き出しの中に閉じ込められるという実験的療
法を受ける。クリスクリストファーソンが扮する精神科医は、自らの研究成果の野心を満
たすためサディスティックに患者の人権を薬付け電気ショックなどで蹂躙する。ジャック
はその閉ざされた暗闇のなかでの記憶を取り戻そうと、逆にその苦行による蹂躙を前向き
に捉え過去現在未来へとタイムトンネルを、失われた自分を見つけ解明しようとす
るのだった。
 
この映画を神経質にいちいち矛盾だらけと時系列を追って行く野暮なことをしてはならな
い。それは何の意味も成さない。フランツカフカの古典「変身」にある、ある日虫に変る
主人公をこのジャックとなぞらえ、この精神病者を取り巻く人間社会の喜劇性を凝視しな
がら人間の人生の不条理を思い浮かべてもよい。またこのタイムカプセルを流行のデジャ
ヴ(deja vu)として捉えるのも結構。いずれにせよ見るものが想像力を逞しくして己の
解釈をすればよいと思う。この映画のサントラを担当はブライアン.イーノが主人公の心
理の起伏を見事に描いた調べを流している。最後幕が下りたあとのデイビッド.アーノル
ドの「We have all the time in the world」がとても心に響く。まさにこの映画は孤独な人
間の救いは結局愛しかないということが言いたいのであろう。その美しい愛があるという
ことで、その対象としてナイトレイが登場するのである。でもこの映画のナイトレイは、
あの「プライドと偏見」で見せた高貴な心の美しさをもった品性ある役割とは、正反対の
汚れ役的な虚無感が漂っている。改めてこの女優の演技力に感嘆する。
そういえばこの主人公ブロディは何故かキリストに似た自己に厳しい求道者風であり、そ
れに慈愛が溢れた目をしている。一方このナイトレイをマグダラのマリアと置いてみたら
どうだろう。なにやらダビンチコードに通じてしまう。
ローマカソリック殿かようなコメントをしてどうぞお許しくださいませ!

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.松永太郎
 憲法とは何か
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 岩波新書から出た長谷部恭男という人の「憲法とは何か」という本を読んだ。朝日の「論
座」などに掲載された論文をまとめたものである。
 「朝日」や「岩波」は、憲法9条を改正すると戦争に巻き込まれる、という百年一日の
一つ覚えでは、さすがにもう通用しないと思ったのだろう。新進の東大法学部教授などを
引っ張り出して、新手の議論の展開を図ったのかもしれない(さすが学者だけあって、ル
ソー、ホッブス、ロックから始まって、シュミット、バビット、バーリン、アッカーマン
など横文字先生のオンパレードで、勉強にはなる)。
 さて憲法とは何か、著者によれば、それは、近代以降の立憲主義国家がよって立つ国の
あり方を決める法典である、では立憲主義とは何か。著者の説明を聞いてみる。

立憲主義とは、「人の行き方や世界の意味について、根底的に異なる価値観を抱いている
人々がいることを認め、そして、それにもかかわらず、社会生活の便宜とコストを公平
に分かち合う基本的な枠組みを構築することで、個人の自由な生き方を、社会全体の利
益に向けた理性的な審議と決定のプロセスとを実現することを目指す立場です。そのた
めに手段として、公と私の分離、硬性の憲法典、権力の分立、違憲審査、軍事力の限定
など、さまざまな制度が用意されます。」(はしがき。P3)
 
まことに結構で、特に異論をさしはさむ余地もなさそうである。けれども筆者のような
すれからしとなると、「この世に根底的に異なる価値観を抱いている人がいることを認め」
などと書かれると、眉につばをつけたくなるのである。人間というのは、そんなに「異な
る価値観」を持っているのだろうか。一体、そもそも「価値観」というのはなんなのだろう
か。また仮に価値観が違ったとすると、そういう人々が「共存」できるものなのだろうか。
実は「多様な価値観の共存」などというのは新手のイデオロギーに過ぎないのである。
 ポストモダン社会では「多様な価値観を認めよう」とか、「異なる価値観の共存」などと
いうことがよく言われる。しかし、これは実際には学者が研究室で想像するほど簡単なこ
とではない。一見して、価値観がもっとも異なるように「見える」のは、わかりやすい例
で言えば、異なる風習や文化を持った他民族であろう。しかしアメリカは言うにおよばず、
フランスにしろ、イギリスにしろ、あるいはドイツにしろ、他民族との共存の問題は、そ
んなに簡単に解決していない。隣の家で毎晩のように奥さんを殴っている夫がいて、その
悲鳴が聞こえるから、文句を言ったら、いや、私たちの社会の価値観では、女性は殴って
もいいことになっている、と答えられたら、どうするのか。うるさいから、聞こえないよ
うに静かに殴ってくれ、といえばいいのだろうか。これは実際にアメリカであった事件で
あり、この場合、夫は妻を殴り殺してしまったのだが、弁護人は被告の弁護に「価値観の
相違」を持ち出したのである。
 宮台真司という典型的なポストモダンの社会学者は、価値観の相違する集団ごとの共存
を認めようなどと言い出し、「ある集団内で殺人が行われても、その集団の価値観に合致し
ていれば、OKです」などと、なにがOKなのかわからない狂った議論を展開していた(「こ
れも「論座」である)。
 「多様な価値観の共存」というのは、ことほどさように言葉の響きだけで見るほど美し
いものではない。現代の一つの特徴として、誰も反対できないような、響きだけは美しい
言葉で人を抑圧しようとする政治手法があるが、この「多様な価値観の共存」というのも
その一つである。そのほかに「人権」とか「反差別」とか、いろいろある。
 この本にでてくる「公と私の分離」という言葉である。著者は、東大法学部のかつての
ボスに敬意を表してか、丸山真男の「超国家主義の論理と行動」をよく引用している。その
中で丸山は「戦前の日本はみんなが同じ世界観、価値観を持っており、公的領域と私的領
域は区別されていなかった」と指摘しているそうである。
「すべての行動は、直近の上司、究極的には天皇への奉仕として意味づけられ、説明され
る。=中略=天皇自身も皇祖皇宗という価値から自由ではなく、自らが自由に選択し決断
する領域は誰も持っていない。したがって自らの行動に責任を取る用意は誰一人としてな
い。こうした世界で公と私的の切り分けが必要でないのは明らかである」と著者は、丸山を
解説する形で書いている。さいでやんすか、と半畳を入れたくなる。
 戦前の日本を実際に知らない知識人のなかには、よくこうした言い方をする人がいる。
立花隆もそうであるが、「戦前の日本は今の北朝鮮のような国家だった」とか「特攻隊は自
爆テロと同じだった」(筑紫哲也)などといいだすのだが、筆者の祖父や祖母、あるいは両親
は戦前の日本で生きていたが、ぜんぜん、こんなイメージではない。こんな変な社会では
なかったことはたしかである。
むしろ現代日本社会のほうがよほど奇怪で殺伐としていて、味気なく、人間の幅が極度
に小さいというのが実感である。なぜ、そうなったのかは、憲法だけからは説明できない
のはたしかにしても、立憲主義の見本のような憲法体制下で、なぜ、こんな変な社会がで
きたのか、ある程度の因果関係はあるだろう。法学者には、新手の護憲論を創出する間に、
そこら辺も考えてもらいたいのである。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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4.西山弘道 
 国会、ポスト小泉もヤマ場へ
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 国会は6月18日の会期切れをひかえ、ラストスパートにはいった。小泉首相は
有終の美を飾ろうとして、与党に重要法案成立のハッパをかけているが、公務員の
数を減らす行革推進法案はまず間違いなく成立する。問題は教育基本法改正法案で
ある。同法案は、衆議院の特別委員会で23日、審議が始まったばかりであり、6
月18日の会期までには、衆議院通過がやっとだろう。参議院審議を見据えれば、
会期の延長は必至であり、与党内からは7月末まで、40日間の会期幅が必要とい
う声が出ている。これは、7月中旬には、ロシアでサミットが行われるため、余裕
をもって40日という日数が出てきたのだろう。

 教育基本法改正は当然である。教育の憲法ともいうべき基本法が、憲法と同様、
昭和22年、米軍占領期にGHQの指令によって成立、以来60年近く手を加えら
れていないというのはそもそも異常である。中曽根康弘氏や、森前首相など保守の
文教族リーダーがその改正を“悲願”としていたのもわかる。
 さて、その改正案の中身であるが、自公与党案は自民党が公明党にあまりにも配
慮しすぎて、無残な案になったのが気に掛かる。問題の愛国心の表現であるが、与
党案は「我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し国際社会の平和と発展に寄
与する態度を養う」という、なんとも珍妙な文章になってしまった。国だけでなく、
「郷土」をわざわざ入れたのは、公明党側が、国だけでは「統治機構」を表すこと
になってしまう、「ネーション」ではなく、「カントリー」の意味で「郷土」を加え
ることにしたらどうか?という珍妙な申し入れをしたという。自民党内には「国と
郷土を愛する態度とはなにごとか、なぜ「『心』ではなく『態度』なのか」という
真っ当な声があったが、「心」では、公明党が嫌がる「愛国心」を連想させるため、
「態度」にしたという。
 この与党案に対し、小沢民主党が出してきた案の方がすっきりしている。「日本
を愛する心を涵養し、祖先を敬い、子孫に思いをいたし、伝統、文化、芸術を学び
・・・」。しっかり、「日本を愛する心」と明記してあるし、完璧だ。ただし民主
党案はこれを本則ではなく、前文に置いたことがいただけない。なぜ、本則にしな
かったのか、党内の横路グループに配慮したのだろう。
 ともあれ、教育基本法改正案は終盤国会の目玉となり、その成立のための会期延
長の動きが出てくるだろう。

 もう一つの問題法案に「共謀罪」がある。組織的に犯罪を謀議すると、実際に犯
行に着手していなくても罪に問えるという「共謀罪」を創設する組織犯罪処罰法改
正案だ。政府・与党が法改正を急ぐのは、テロなどの国際的な組織犯罪に効果的に
対処する「国際組織犯罪防止条約」に参加する狙いがある。同条約は各国に共謀罪
などの法整備を求めている。すでに米英仏をはじめ120カ国が締結しており「日
本は遅れている」という焦りがある。
 そもそも「防止条約」は、6年前に国連で成立しており、日本でも3年前、国会
で承認され、その時は民主党も社民、共産党も賛成していた。それがここへきて、
問題法案の扱いをされるようになったのは、「共謀罪」というおどろおどろしたネー
ミングもさることながら、適用になる対象犯罪の数が、道路交通法違反や公職選挙
法などを含め、600以上になる(与党修正案の共謀行為。国内、国外を問わず、
懲役5年以上の犯罪)という、拡大解釈のおそれが出てきたからだ。
 政府・与党は法案提出から2年、2度も修正を繰り返しているから、審議は尽く
したとして、採決強行の構えをみせているが、小泉首相サイドは強行に今のところ
ストップをかけている。首相自身、成立に乗り気でないことから、恐らく継続審議
となるであろう。

 終盤国会はポスト小泉の行方とも絡んで、その終わり方に目が離せなくなった。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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1.図書室   「在日論の嘘=贖罪の呪縛を解く」 浅川晃弘 PHP
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 戦後の日本の風潮で、私など、なにがいやかといえば「偽善」である。「偽善」とは、
自分を百階の棚の上にあげておいて、他人を断罪することによって、自分(たち)は良心
的な人間である、あるいは上等な人間であるという自己証明ないし自己欺瞞を得ることを
さす。
 とくにこの風潮を主導したのは、学校の先生たち(日教組)と左翼マスコミ、とりわけ「朝
日新聞」である。偽善者たちは、まず自分たちが戦争中にやったことを百階の棚の上に上
げて「日本軍国主義」や「日本のナショナリズム」を断罪し、自分たちを「良心的な人間」
あるいは「良心的な言論」に見せかけようとした。
 世界的に見れば、この風潮は「マルクス主義」に連動している。「マルクス主義」という
のは、よく言われるように、人間世界を善と悪によって裁断する神様という宗教がなくな
った後、その代替をなすイデオロギーであり、世界を悪人(資本家)と、それに虐げられ
る哀れな人々(労働者)に分け、哀れな人々を救済しようとする「自分」を「善人」すなわち
「良心的な人間」と思わせる擬似宗教である。もちろん自分は何もする必要はない。ただ、
そういう理屈を覚えこんで、それを他人に説教したり、「資本家」や「資本主義」を断罪し
ていれば、それで「良心的な人間」であるという自己証明が得られるので、こんな楽なこ
とはない。
 というわけで、戦後の日本の風潮である「偽善」と「マルクス主義」は、見事に一致した。
あるいは日本に、こんな変な偽善の風潮をもたらしたのがGHQに潜むマルクス主義者であ
ったかもしれない。
偽善とマルクス主義を合体させたのは、良心的ではありたいが、宗教はもはや信じられ
ないという西欧やアメリカの「知識人」の多くも同じであった。
その裏で腹をかかえて笑っていたのは、もちろんスターリンやマオ、あるいはキム・ジョ
ンイルだのポル・ポトだのの権力衝動が異様に強い連中であった。権力衝動というのは、
要するに他人を操作したい、それもできれば多ければ多いほどいい、という変な衝動であ
る。こうした連中は人間の弱点を知っている。人間の弱点を知って、そこを突けば人間を
動かすことができるからである。どこを突けば、その人間は動くのか、言い換えれば何を
欲しいと思っているのか、それを知れば、他人は操作できるであろう。そして「良心的な人
間でありたい」という欲求は、神を失った現代人の弱点である。

「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」という親鸞の有名な逆説は、こういう契機
をさしている。現世において、自分を善人であると思ったり、救済されるべき(浄土に往
生すべき)立派な人間であると思ったりすること、あるいはそう、思いたい人間ぐらい始
末に困る人間はいない(ちなみにカソリックにも親鸞に近い教義がある)。本来の宗教性な
いし精神性というのは、それとは反対のベクトルから出発するのであるが、それに触れる
紙幅は、今はない。

「マルクス主義」が困るのは、一つには、現世に地上の天国を到来させることができる
という幻想を与えたこと、2つには、その実現できる手段を自分は知っていると考え、そ
れを、口先で言うことによってのみ自分の良心を満足させることができるという「理想主義
者」を増やしたことである。もちろん、なかには、本気で地上の天国を実現できると思って
いた人間もいただろうが、そういう「オールド・ボリシェヴィキ」が、まっさきに粛清の
憂き目に会ったのは、スターリンやマオの伝記を読めばわかる。建前を利用して人間を動
かそうと思っている人間にとって、建前を本気で信じている人間ほど邪魔になるものはな
いからである。
戦後、長い間、日本で恐るべき、すなわち本音は自己の権力衝動を満足させるため、建
前は良心的に聞こえる言説のような偽善が、マルクス主義は弱まったものの「東京裁判史
観」や「憲法9条」などに変形されて生きてきた。これらはみな人間に罪の意識(贖罪意識)
を負わせることによって、他人を操作しようとするメカニズムに基づいている。現在、憲
法9条に宗教的な信仰が寄せられているのも、よくわかるのは、それらが一種の宗教と化
しているからである。
さらに現在、複数の隣国政府は、日本のマスコミや政治家がこの贖罪意識にかられてい
るふりをしている、これは、うまいカードがあったものだ、と気がついて、外交カードに
している。また、それに呼応して、いわば「虎の威をかる狐」の商売をしている「朝日新聞」
に代表されるような言論機関や、媚中派と呼ばれる政治家もある。
さらに国内には、建前としての贖罪意識を利用して利権を確保しようとする団体もあっ
た。今日、それらの団体の2つが合体したというニュースを、「朝日新聞」はうれしそう
に取り上げている。会社でも団体でも勢力が弱まったとき合併したり、合同したりする
のであるけれども。
この本は、そうした贖罪意識を利用する団体や人々の構造を完膚なきまでに明らかにし
ている。著者の勇気に乾杯したいが、ここで明らかにされているカン・サンジュンやシン・
スゴだの欺瞞性は、やはりものすごい。限度を超えている。そういう連中をもてはやす日
本のアカデミズムやマスコミも、商売とはいえ、いい加減にしてもらいたいものである。

松永太郎 
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2.図書室 「彰義隊 」吉村昭 朝日新聞社
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朝日に貢献するのは忍び難いが、吉村昭著作と見て本屋で飛びついた。吉村昭は僕の愛読
書のひとつであり、日本の維新期の縁の下の力持ちを描いてこれほど感動を与える作家も
ないと思っている。いつもの文体がとつとつと心に迫るのである。
この本戊辰戦争でただ一人朝敵になった皇族上野寛永寺山主輪王寺能久親王(北白川宮 能
久親王)の波乱に満ちた生涯を描いている。プロフィルを書くと、上野戦争から東北に逃
れ、仙台藩に迎えられて奥羽越列藩同盟の盟主に擁立された。仙台藩が新政府軍に降伏し
た後は京都で蟄居を申し付けられるが明治3年(1870年)、許されて伏見宮家に復帰、伏
見満宮(ふしみみつのみや)と呼ばれた。弟北白川宮智成親王の遺言により還俗して北白
川宮家を相続し、北白川宮能久親王と呼ばれた。還俗後は陸軍に入り、ドイツに留学。 帰
国後は陸軍少将、さらに中将に昇進している。明治26年11月10日に第4師団長となり明
治28年(1895年)、日清戦争によって日本に割譲された台湾に向かい、第1師団長とし
て出征中の台南にてマラリアによる戦病死。皇族としては初めての外地における戦没者で
ある。一時は朝敵の盟主となり、子に、竹田宮恒久王、北白川宮成久王、小松輝久などが
いる。(ウィキペディア(Wikipedia))
吉村氏の独創的見解なのかどうか知らないが、和宮降嫁事件と絡み官軍の大総督有栖川宮
との感情的な確執がある。みずからの婚約者を奪った徳川家に対し復讐の鬼となった有栖
いを聞いて嘆願)をけんもほろろの応対で江戸に帰れと京都行きを妨げた、今度は輪王寺
のこの失礼千万な対応への怨念が彰義隊事件、奥羽越列藩同盟などに影を落としてくる。
まさに人間の極めて個人的な愛憎の世界が政治や歴史を作っているところが、古今東西の
真理であることが面白いのである。特に輪王寺自体が人間的に魅力的かどうかわからない
が、敢えていうなら自分の身の処し方のために犠牲になった数々の人々(例えば側近覚王
院は拷問に絶え全責任を自らが負い断食死する様は日本人の美学そのもので魅了される)
への償いの気持ちからか、台湾へ軍人として志願して前線に飛び込んで死ぬ姿に輪王寺の
人生の総決算を見る、それが本望の死であったのではないかと思う。
この本三舟、南洲、慶喜、武揚などが登場してそれなりの人物像が描かれており面白い。

奥山篤信
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映画寸評『ダ・ヴィンチ・コード』--腐っても鯛--奥山篤信
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ベストセラーを映画化するのは監督にとって大変なリスクであるに違いない。うまくいっ
て当たり前で失敗したときの打撃が大きすぎるからだ。その意味で「アポロ13」、「身代金」
「ビューティフル・マインド」「シンデレラマン」などで独自の映像の世界を創造する巨匠
ロン・ハワードがこのベストセラーをどう料理するか見もので早速鑑賞した。僕は二年前
だったかこのベストセラー大変楽しんで読んだが、細かいところは忘れたので映画と小説
がどう異なるかは定かではない。二時間半の大作、ストーリーの展開はスピーディであり
本を読んだことのない人はあまり退屈しないだろう。だが本を読んだこのとのある僕
はハワード監督もついに商業主義者に落魄れたのかと結論を急いだものだ。だが最後の15分
には流石映像の美しさと俳優の演技が9回裏逆転さよなら勝ちの満足感を僕に与えてくれ
たのだ。
その1 オドレイ・トトゥが演じる女性がマグダラのマリアの末裔すなわちイエスキリスト
の末裔であることがわかるのだが、彼女に恋愛感情が芽生えてきたトム・ハンクスが最後
の二人の(別れの)場面で、つまり畏れ多いキリスト様の末裔ということで諦める男の哀
愁の思いが直裁の言葉ではない演技で見事に演じられていた。流石ハンクスの面目躍如で
ある。
その2 パリはナポレオン三世時代に都市計画を行い世界で最も美しい統一された都市と
いえる。ミッテラン政権のグランルーブル計画に中国系アメリカ人の建築家、巨匠IMペイ
のピラミッドデザインを大胆に採用した。1889年のエッフェル塔と同じくらいのインパク
トをパリの美観に与えたことは確かであり、賛否両論がある。僕は一時建築家を志したも
のとして、この建築のガラスとそれを支える繊細な金属チューブの近代的な美しさが、見
事にルーブルの古典美とマッチして、何の違和感もない20世紀屈指の建築芸術だと思って
いる。さてこの映画で真夜中ハンクスが謎解きにひらめきを感じて、このピラミッドに向
かいガラスで透明となったルーブルの地下のナポレオンホールを見ながら瞑想の世界に浸
る場面がある。このピラミッドと古い部分を描く、次々に変化するカメラアングルの美し
さとサウンドトラックの奏でる迫力は、ハンクスの無言の演技に加え、これだけで名画
を見たという充実感に満たされる感動があった。

奥山 篤信
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
 編集長・市村直幸
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