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甦れ美しい日本 第063号

発行日: 2006/4/28

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年4月28日 NO.063号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >
◎ゲスト執筆者

 松島悠佐    軍事のはなし(10)「再び領土問題を考える」

◎月刊ビジネス情報誌『エルネオス』
 5月号巻頭言「佐伯啓思の賢者に備えあり」
  『壊し屋』の小沢一郎・代表に期待する
 
◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤守        大東亜戦争の真実を求めて58
2.奥山篤信       映画「ニュー・ワールド」−原始共同体と文明のはざまで
3.松永太郎     新しい科学の展開
4.西山弘道     補選、小沢民主党勝利で今後の政局

◎図書室

1. 浄土系思想論  鈴木大拙  法蔵館 (松永太郎)
2. インドが中国に勝つ 門倉貴史 洋泉社(奥山篤信)

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 松島悠佐
 軍事のはなし(10)「再び領土問題を考える」
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今回の排他的経済水域(EEZ)の地質調査に対する日韓の争い、—というより根本は
竹島の領有権の問題なのですが—、23日土壇場で一応の合意が得られ、衝突は回避さ
れました。これに対して、政府の要人も主要メディアも、「対峙事態が回避されたことを
評価するが、根本的な解決にはなっていない。今後の領土問題解決が大事である」との
論調が主流になっています。
果たして、当面の衝突が避けられたことは評価できることなのでしょうか。私は“否”
だと思います。
前回の「軍事のはなし(9)」でも少し触れましたが、わが国はこういう態度を半世紀に
わたり採り続けてきて、結局竹島は韓国のものになってしまったと言えるでしょう。
歴代の総理はじめ、外務大臣他それぞれの所掌に就かれた人達、またほとんどの有識者
達も、異口同音に「竹島は歴史的に見てわが領土であることは疑いない」と発言してい
ますが、それを取り戻さなければならないと自ら意思を表明する人はほとんどいません。
さらに、「今は事を荒立てずに、見守っておくのが大人の判断」と言う人が多く、だから
と言って、「待っていれば返ってくる」などと思っている人も、多分いないでしょう。要
するに他人事なのです。
先日私は、中高年の人達のある勉強会で、たまたま領土問題をテーマに講演を頼まれま
した。ごく常識的に北方四島・竹島・尖閣列島の現状などを説明しましたが、参加者の
一人から驚くべき意見を聞きました。曰く「竹島など、そんな無人島で争うことはない
でしょう。領土は差し上げるから、漁業は一緒にしましょうよ、というような新しい発
想が必要です」との意見でした。私は、「領土・領海というものは、国民の生活・生存権
がかかっているので、そんな仏様の世界のようには行きませんよ」と申し上げ、しばし
議論を致しました。
今回の日韓問題で、日本と韓国の市民の意見を収録したテレビ番組を見ましたが、韓国
ではまず100パーセント「独島は韓国の島。日本はけしからん」との意見でした。他
方、わが国では「竹島って何? 何処にあるの?」「どっちの物でもいいじゃないの、そん
な所で争わなくていいよ」との意見が聞かれました。これがわが国の現実です。
話を戻して、今回の事実をよく見てみましょう。
・ 日本は、自分のEEZ内の海底地質を科学的に調査する合法的な行動を計画しました。
・韓国は、日本が調査する海域は自分のEEZと主張し、立入りを拒否し、もし入れば
実力で阻止すると主張し、警備艇を20隻ほど待機させていました。
・日本は、自ら合法的な行動と言いながら、韓国の違法な対抗措置を排除する方法は採り
ませんでした。結局、韓国が自分のEEZと主張する海域には入ることが出来ませんでし
た。
・もしまた同じような事態が起きたとしたら、次回も日本は、自分のEEZと主張する海
域に入れないでしょう。要するに韓国の主張するEEZ、さらにはその奥にある竹島の領
有権を認めたことと同じことになってしまいます。
これが主権国家として評価できることでしょうか。
わが国が今回採るべきであった措置としては、海保の警備艇を少なくとも10隻ほど集
結させ、必要なら海自の護衛艦に海上警備行動に移れる態勢を採らせ、韓国警備艇の妨
害を排除して、少なくとも当初予定した調査海域に入るべきでした。そうなれば、多く
の人が心配するような小競り合いが起きたかも知れませんし、あるいは大競り合いにな
ったかも知れません。でもそれが、自らの主張の正しさを表現する方法であり,それが
出来ないなら、領有権の主張や行動の正当性の主張も出来ません。
「自分は正しいことをしているのだが、相手が力づくで来たので争いを避け、事なきを
得た」と言う結末は、正しいことではありません。主権を守るためには、時に力を行使
することも必要です。海保も自衛隊もそのためにあるのです。
調査のために現地に向った海保の測量船が、境港の直ぐ沖で停泊し待機している姿は、
正しさはさて置いて、争いだけは避けようとの姿を示していました。「正義のためなら、
敵100万と言えども我行かん」という精神は失せてしまい、事なきを得る姿が大人の
中にも子供の中にも浸透してしまいました。
このような国家の姿勢は、評価できることではありません。
領土主権の問題で、私は1982年に起きたフォークランド紛争をよく例に引きます。
前述の中高年の勉強会でも、イギリス本土から8000海里も離れた、南米大陸の南端
に近い小島に、アルゼンチン軍が上陸してから3日後には、英機動部隊の第1陣、空母
「ハーシーズ」と「インビンシブル」が戦闘爆撃機「シーハリアー」を搭載して出動し、
主権侵害に立ち向かったこと、それを直ちに決意したサッチャー首相の決断などの話を
しました。すると、先ほど「竹島など相手にあげたらいい」と言っていた件(くだん)の氏(氏は
若者向けのアクション・ドラマの作家で、いま最新の代表作は映画化されています)は、
「サッチャーは馬鹿ですよ。そんな島に国民の命をかけることはない。」と言っていまし
た。
私は、「世の中は広いから色々な考えの人が居るのだな」と思っていましたが、今回の日
韓の争いで、「当面の衝突が回避されて良かった」と思っている人達も、結局は件の氏と
同じ考えなのだと思いました。むしろ件の氏の方が、自分の意見をストレートの表現し
ているのだろうかとも思っています。
わが国では、「力の行使」と言う機能が忘れられてしまったような気がします。「人と争
ってでも、正しさを追求する者は、馬鹿なのかな」と思いながら、尖閣諸島まで中国に
取られてしまわなければよいがと祈るばかりです。(06・4・26記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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月刊ビジネス情報誌『エルネオス』(URL:http://www.elneos.co.jp/
5月号巻頭言「佐伯啓思の賢者に備えあり」「『壊し屋』の小沢一郎・代表に期待する」
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 先頃の民主党の代表選挙で、小沢一郎氏が新代表に選出された。「改革」と「若さ」を競
ってきたこの十年ほどの日本政治の潮流に対する、若干の反省の機運ともみえる。もっと
も、そうみえるのは、もっぱら「若さ」のほうだけで、「改革」の流れはとどまる気配がな
い。小沢氏は、その「古さ」を意識してか、ことさら「改革」を唱え、「まずは自分を変え
る」と言う。六十代の半ばになって、それほどおいそれと「変わる」ものでもなかろうと
思うし、また安易に変わられたのでは、これまでは一体何だったのか、などと軽口もたた
きたくなる。いうまでもなく、「変わる」前の小沢氏は、「辣腕」と「壊し屋」で通ってい
た。
 もしもその公約と違って、小沢氏が容易には「変わらず」に「壊し屋」ぶりを発揮して
くれれば、もしかすると、もう一度、自民・民主両党を含んだ政界再編が期待できるかも
しれない。
 というのも、現在の自民・民主体制では、両党の基本的政策の方向における差異はほと
んど存在しないからである。小泉首相も小沢氏もともに述べるように、両者とも構造改革
重視、日米関係重視の基調に立って「改革競争」を行うという。「改革競争」という得体の
知れない観念が政治を動かすという「改革狂騒」の時代になって、すでに数年たつ。その
総仕上げといわれた郵政民営化が一応の決着をみて、まだ「改革」をいう魔術語が日本を
支配しているのである。
 小沢氏が政治改革を唱えて自民党を割ってから、すでに十年以上たつ。まことに皮肉な
ことに、小沢氏の唱えた政治改革の中心である、首相権限の強大化、派閥政治の終焉、公
共事業や特殊法人に関わる利権政治の終焉などは、ことごとく小泉政権によって実現した
のである。こうして、自民党の「顔」と民主党の「顔」の間に大きな対立はない。とすれ
ば、このままでは民主党は所詮、小型の自民党にすぎず、政権奪取もおぼつかない。
 しかし、実は自民党も民主党も、その「顔」の背後には、それとは異なった面をもって
いる。急進的な「改革」への批判、もしくは警戒である。「改革」が従来の社会的な秩序を
崩して、個人主義的な競争を重視し、資本の東京一極集中を推し進め、M&Aなどによる
株式価値中心の経営を図り、ローカルな経済よりもグローバル経済への適応を推進するこ
とへの警戒である。
 それは、個人主義的な競争よりも、社会秩序やある程度の平等性を確保しようとし、東
京一極集中ではなく地方への資本の分散を図り、株価中心の経営ではなく、「人」と「組織」
の経営を重視し、グローバル経済よりは国内のローカルな事業を重視する政策である。
 自民党の中にも、そして民主党の内部にも、明らかにこうした考えがあり、それは、ア
メリカ型の経済・社会への大規模な構造転換を目指すのではなく、従来の日本型の社会を
改良しようとするものである。
 前者は、政治的にも、また文化や価値観の上においても、アメリカとの一体感を深める
ものであり、後者は、それとは距離を置く形で、日本独自の社会のありようを模索しよう
とするものである。ここに、明らかに二つの方向性がある。
 今日の政治の混迷は、この両者が適切に区別されず、自民党・民主党の両党に混在して
いる点にある。だから、二大政党政治といいながら、実際には、両党の政策理念の区別は
ほとんど見分けがつかず、結果として二大政党にさえもならないのである。ここは、小沢
氏があまりに安易に「変わる」のではなく、辣腕ぶりと「壊し屋」ぶりを発揮して、この
意味での政界再編に動き出すことをあえて期待したい。
(京都大学教授)
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて58
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 十一月五日の御前会議では、わが陸海軍とも対米戦は相当な覚悟が必要である事
を率直に語っている。特に陸軍は、支那事変を遂行中という重荷を背負っているこ
と、本来の「脅威」であるソ連に対しては「積極的攻勢に出てくる公算は低い」と
見つつも、「ソ連の内部的安定状態が回復に向かう場合には極東赤軍が暫時攻勢的姿
勢に転じてくる可能性がある」と指摘、「なるべくすみやかに南方作戦を解決してこ
れに対処し得る準備に遺憾なきを期すべきだ」と、まるで「終戦時の不法なソ連軍
の侵攻を予見しているが如き分析」をしている。間違いなく陸軍は北方作戦に「未
練を残しつつ」南方作戦を立案している。
 他方海軍は、時間が経てば海軍戦力が「無用の長物化」する事を恐れ、和戦両様
の二股作戦を計画、万一開戦になっても、「開戦時期が十二月上旬であれば第一段作
戦及び邀撃作戦には勝利の公算あり」としている。そしてその「第一段作戦」の結
果が「適当」であれば、「南西方面の戦略要点を確保し、長期作戦に対応する態度を
確立しうる」という、「希望的観測に基いた」判断をしつつも、肝心の長期戦につい
ては「形而上下の各種要素、国家総力のいかん、及び世界情勢の推移いかん」によ
って決定されると、実に抽象的、且つ無責任な判断をして、「今日において数年後の
確算の有無を断ずること困難」と“逃げている”。
 東条内閣における日米交渉については、東條供述書にはこうある。
「九七 東条内閣における日米交渉はもっぱら外務省がこれを扱いました。私が承
知していることは、その大綱のみであります。
 十月二日のアメリカより提出されたハルノートをめぐり、日米交渉に関連して第
三次近衛内閣が崩壊したことは前に述べたとおりであります。東條内閣の成立と共
に政府と統帥部は白紙還元の趣意に基き、取りあえず十月二十一日米交渉継続の意
志を外務大臣より野村駐米大使に伝達したのであります。その趣意は同月二十四日
若杉公使よりウエルズ国務次官にこれを通じております。
 日本政府は前述の一九四一年(昭和十六年)十一月五日の御前会議において日米
交渉に臨みその打開につとめました」
 東條内閣の日米開戦回避の努力は継続される。
「一〇一 一九四一年(昭和十六年)十一月十七日私は総理大臣として当時開会の
第七十七議会において施政方針を説明する演説をいたしました。これにより日本政
府としての日米交渉に対する態度を明らかにしたのであります。けだし、日米交渉
開始以来既に六ケ月を経過し、両国の主張は明瞭となり、残る問題は両国の互譲に
よる太平洋の平和維持に対する努力をなしうるや否やのみにかかっております。
 これがため日本としては現状において忍び得る限度を世界に明らかにする必要を
認めたのであります。
 日本政府の期するところは日本はその独立と権威とを擁護するため
(一)第三国が支那事変の遂行を妨害せざること
(二)日本に対する軍事的、経済的妨害の除去および平常関係に復帰
(三)欧州戦争の拡大とその東亜への波及の防止とであります。
 右に引き続き東郷外相は日米交渉におけるわが方の態度につき二つの事を明らか
にせられました。その一つは今後の日米交渉に長時間を要する必要のなかるべきこ
と。その二つはわが方は交渉の成立を望むけれども大国として権威をそこなうこと
はこれを排除するというのであります。首相および外相の演説は即日世界に放送せ
られ中外に明らかにせられました。
 米国の新聞紙にも右演説の全文が掲載せられたとの報告を得ました。それゆえ米
国政府当局においても十分これを承知しているものと思われました。右政府の態度
にたいし十一月十八日貴衆両院はいずれも政府鞭撻の決議案を提出し満場一致これ
を可決したのであります。ことに衆議院の決議案説明に当たり、島田代議士のなし
た演説は当時のわが国内の情勢を反映したものと判断しました」
「一〇二 前に述べましたわが国の最後案である乙案については日米交渉において
も米国政府は依然として難色を示し、野村、来栖大使の努力にかかわらず、米国政
府は依然六月二十一日案を固執しておって交渉の成立は至難でありました。
 他方十一月二十四日より二十六日にわたって米国は英、蘭、支各国代表と密に連
絡し各国政府間に緊密の連絡を遂げておることは当時の情報によって判って来てお
ります」
 日本政府の「戦争回避努力」にも拘らず、相手側である米英蘭支各国は、緊密に連
携して、開戦覚悟であったことは疑う余地はない。供述書の第一〇三には、これら
各国の軍備増強と、「首脳者の言動が著しく挑発的」になってきた事を、実例を挙げ
て説明している。「これがわが国朝野を刺激しまた議会両院の決議にも影響を与えた
ものと認められます」という供述内容を、東京裁判に関わった連合国側の「裁判官達」
がどう受け止めたか知りたいものである。              (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信 
 映画「ニュー・ワールド」−原始共同体と文明のはざまで
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イギリスの実在の冒険家ジョン・スミスと先住民の酋長の娘ポカホンタスの伝説的ラブス
トーリーを、25年の間にたったの3本しか映画を撮らなかったテレンス・マリックがま
るで一場面場面が額にはまる絵画のように静的な映像美で描いた作品である。同監督は『シ
ン・レッド・ライン』でベルリン映画祭金熊賞受賞の巨匠である。冒険家スミスを『アレ
キサンダー』のコリン・ファレルが、ポカホンタスを先住民の血を引く15歳の新人女優ク
オリアンカ・キルヒャーが扮する。この映画サウンドトラックが大きな役割を占めるが、
あの「タイタニック」の美しいメロディーでアカデミー音楽賞を受賞したジェームズ・ホ
ーナーが、なんとワグナーの「ラインの黄金」の前奏曲とモーツアルトの「ピアノ協奏曲
23番」の2楽章を巧みに取り入れた透き通るような音色をかもし出している。それによ
りアメリカ建国の神話とも言うべき壮大で自然美あふれる400年も語り継がれたラブス
トーリーを、すばらしく盛り上げている。一方でこれほど退屈で冗長極まる映画には驚い
たという酷評がかなりアメリカ映画批評界を支配したようだが、そういう側面もあるが僕
は映像の美しさと音楽の美しさが、このアメリカ大陸での壮大な愛をきめ細かく敢えて緩
慢に描いたと評価したい。それほど場面場面が目にしみるように美しいのだ。
 
ストーリーは1607年、(ちなみにこの頃の日本は丁度関が原の戦いと大坂冬の陣の丁度中
間点)英国国王よりお墨付きを貰い新大陸を開拓し、黄金を手に入れようとするイギリス
の船が北アメリカのヴァージニアに漂着した。先住民との交渉を命じられたジョン・スミ
ス(コリン・ファレル)は川上に暮らす先住民に捕らえられ、殺されかけるが、酋長の娘
ポカホンタス(クオリアンカ・キルヒャー)に命を救われる。伝説のなかでもこの部分は
信憑性が高いそうだ。この町が入植地で有名なジェームスタウンでロケもこのあたりで行
ったらしい。その後二人は離れ離れとなり、スミスが事故で死んだと聞いたポカホンタス
はイギリス人で新大陸でタバコ栽培を行っているジョンロルフ(クリスチャン.ベール)に
嫁ぐ。先住民との融和を図る英国では、国王に拝謁を認められるほど話題となる。しかし
死んだはずのスミスが生存している噂を聞いたレベッカ(ポカホンタスのキリスト教洗礼
名)は、自分は夫にスミスと結婚していた筈だとの告白する。傷つきつつも、心優しい夫
は敢えて二人を自宅で会わせる。そしてレベッカは却って気持ちの踏ん切りがつき、夫へ
と気持ちは戻るのだ。この広大な庭園で夫に「戻る」美しいシーンはロマンチックな涙を
禁じえない。なんという心優しく寛容かと好感を持てる「英国紳士」ロルフと過去を美し
い思い出の運命と割り切り夫に委ねる美しいレベッカの二人の姿が、英国庭園を背景に眼
にしみるように美しい。
 
この映画で監督の意図するところは何であったのだろうか?1970年代の映画「ソルジャー
ブルー」での西部開拓史上のタブーだった"サンドクリークの大虐殺"を描いたような、白
人先住民が暮らす平和で美しい自然環境を破壊した、白人の贖罪意識を描いたのであろう
か?大自然のなかで神と調和しながら生きる、いわば美しい楽園を奪われたポカホンタス
や先住民、そして白人社会に同化を余儀なくさせられるポカホンタス、愛するスミスの死
の報に接した生ける屍となるポカホンタスの悲劇の姿がそこにある。一方でロンドンのウ
エストミンスター寺院や目新しい風景に好奇の念を持つ、言い換えれば力強く生きようと
するポカホンタス、そしてスミスの思い出を消し去りロルフや子供と生きる決意を決めた
ポカホンタスを見る限り、僕は監督がそういう自虐意識に囚われたなどとは思いたくない。
逆に生き生きした生命感溢れる先住民の感性を描きつつも、新大陸への文明の入植と先住
民の諍いという宿命のなかで、ある意味でヒューマニズムに富み紳士的であったイギリス
人も存在したという、白人の自己擁護もあるのではなかろうか?原始共同体の道徳秩序へ
の憧憬や回帰心と文明社会との対立葛藤のなかでの人間の愛と優しさをそれらに超越した
ものとして監督は描きたかったのではないだろうか。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.松永太郎
 新しい科学の展開
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  このあいだ、スタンゴフというアメリカの元軍人の書いた本「フルスペクトルディス
オーダー」を読んでいたら、ジョンボイドというパイロットが、空対空の戦闘方法をは
じめとして、アメリカ空軍の戦術や戦略を一新したということが書いてあった。一種の天
才らしく、アメリカの軍人の中には、孫子に次ぐ軍略家と尊敬している人もいるらしい。 ボイドは、実戦でも模擬戦でも「トップガン」としてものすごい腕を発揮したようだが、
彼は、様々な科学、とくに非線形力学を勉強して、新しい戦術や戦略を編み出していった。
そのため、無断で軍のコンピューターを使うなどして、様々な懲罰も食らった、という。
 軍事にも科学にも素人の筆者は、もちろん、ここで彼の戦術を論評したり、紹介したい
訳ではなく、新しい科学が私たちの世界を変えつつあるということの一つの例として、あ
げてみたのである。
 科学の変化は、ガリレオの例を挙げるまでもなく、人間の持っている世界観や宇宙観を
も変えてしまう。その結果、人間の社会には、きわめて大きな変化が生じてくる。ボイド
の勉強した非線形力学も、その一つであろう。
 非常におおざっぱに言うと、最近の科学では、空間と時間に関して、人間の認識を根本
的に変化させるような進展が起こっている。一つは、時間の中での因果関係である。ここ
では「ブラジルで蝶がはばたきすると、ニューヨークでは嵐になる」というような言葉で
言い表されているように、初期状態の微細な変化が、結果として劇的な変化をシステムに
もたらす、という複雑系の理論に代表されている。そして、「平衡から遠くはなれた」カオ
スの状態から、秩序だった状態へと急に変化する「相転移」という現象が注目され、カオ
ス理論の創造へ結びついていった。ボイドの理論は、概略で読み限り、この理論に非常な
影響を受けている。
 もう一つは、量子力学の分野で、ここでは、空間的に非常にはなれた位置にある2つの
量子の一方を変化させると、一方に同じ変化が現れるという説明のしようのない現象から
新しい理論が進展している。またこの現象を利用した「量子コンピューター」の開発も進
んでいる。これが実現したときの人間社会の変化は想像を絶する。
 私たちは、一般に時間は単線的に過去から未来へと流れ、そして過去のある一点に起こ
ったことが、今起きていることの原因であり、今、起きていることが未来の原因であると、
信じている。この見方によって、人間のエゴが持つ「自分の物語」(自分はこれこれの時点
に生まれ、こういうことをして、こういう性格で云々)が生み出されていくのだが、我々
が現在、目にしている世界で起こっていることは、我々の認識外で起こっていることが原
因なのだ、あるいは、今、ここで起こっている小さな初期状態の変化は世界中に波及して
いくのだ、というような世界観がでてくると、あるいはエゴの構造に変化が生じるかも
しれない。エゴの構造は、ほとんど17/8世紀に西欧で生まれた科学の構造に密接に関
連しているからである。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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4.西山弘道 
 補選、小沢民主党勝利で今後の政局
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 小泉vs小沢の「小・小対決」第一ラウンド、千葉7区衆議院補選はわずか955
票差で、小沢民主党が勝利した。東大出で、元通産官僚、副知事出身の超エリートが、
高卒でキャバクラ嬢経験もある26歳の女の子に負けたのだ。選挙結果が出た24日
は、東証株価も今年最大の下げ幅を記録するなど小泉自民党にとって補選敗北は「千
葉ショック」となって打撃を与えている。
 勝利した元県議の太田和美氏は、元々、反小沢色の強い、野田佳彦民主党前国対委
員長が支援した候補で、小沢氏との距離は遠かった。当初、出馬を検討したが、メー
ル事件で断念した内山晃衆議院議員(比例区)の方が、小沢氏に近く、このねじれで、
太田氏の選挙戦も始めは、小沢新代表の選挙区入りをめぐってギクシャクしたという。
このハンディを乗り越えての当選だから、たいしたものだ。選挙に強いという「小沢
神話」が早速、永田町を席巻している。

 一方、敗れた自民党、斉藤健候補の敗因は、やはり隣の埼玉県副知事だった人物が、
いきなり、千葉から立候補するという“落下傘候補”批判に尽きるだろう。
 ともかく、斉藤、太田のこの2人の候補ほど対照的だったものはない。片や、東大
出の絵に描いたようなエリート、片や、高卒で就職もうまくいかなかったという茶髪
の女性。ある意味では小泉改革のもたらした希望格差社会の勝ち負け組が対峙した選
挙の形となり、松戸北、野田、流山市、千葉7区の選挙民は、その「負け組」に入る
かも知れない「ニート・フリーター」型の女性を支持したということになる。太田氏
の選挙のスローガンは「負け組をつくらない社会に!」だった。

 これで小沢氏の民主党内における代表としての地位は確立したし、9月の代表選挙
でも無投票当選だろう。あとは寄せ集め集団といわれる民主党をいかにまとめるかだ。
 「政界のガラパコス諸島」— これが民主党の実態だ。横路氏らのグループのよう
な旧社会党左派、民主党参議院に多い「反戦平和」の古めかしい闘士集団、管グルー
プのような市民運動グループ、本来なら時代に取り残されて、とっくに絶滅している
希少動物集団が依然として生息しているのが民主党であり、「政界のガラパコス島」と
いわれる所以だ。前原前代表が、集団自衛権や中国脅威論を持ち出しただけでも、党
内が騒然となるほどであり、民主党全体の政策として果たして一丸となって打ち出さ
れるか、懸念を持たれる。当面は教育基本法改正と憲法改正の国民投票法について、
党としてキチッと対案を出せるか、小沢執行部の真価が問われる。

 14年前に小沢氏が出版した「日本改造計画」では、消費税について10%の増税
を打ち出し、年金は税によって負担するとしている。ところが現在の民主党の公式政
策では、消費税は8%程度、年金は従来の保険方式を続けるとしている。こういう、
小沢氏の「改造計画」と、党のこれまでの政策とのすり合わせも必要となってくるだ
ろう。

 千葉補選が小泉改革の影の部分、「格差社会」を浮かび上がらせたとすると、今後
の自民党総裁選にも微妙な影響が出てくるだろう。小泉改革を受け継ぐとみられる
安部官房長官は、「改革」に対してのスタンスを変えなければならないだろうし、「格
差社会」論に対し、真正面から取り組まねばならないだろう。何しろ、千葉と同時に
行われた安部氏の地元岩国と、応援に入った隣の東広島両市の市長選挙で自民党候補
が敗北したことは痛い。東広島市は安倍氏の後見人、中川政調会長の次男が出馬した
が、安倍氏の「選挙の顔」という神通力も通用しなかった。

 小泉・安倍改革連合の影響力低下に伴い、福田康夫氏の「東アジア外交転換論」へ
の期待感が高まってきた。福田氏も24日、都内で行われた講演で、父の福田元首相
が打ち出した「福田ドクトリン」— アジア外交に向けての日本の立場を評価するな
ど存在感を現してきた。24日の講演を、事実上の総裁選出馬表明と受け取った人も
多かったという。
 小泉首相は6月18日までの通常国会を延長しないで、6月末に予定している政権
最後の訪米、日米首脳会談に臨むとしているが、場合によっては、訪米から帰国直後
電撃的に退陣するのでは、という話も出てきた。早期退陣で安部氏に政権を引き継ぎ、
ほかの候補が付け入る隙も与えないようにするというのだが・・・・・

 とにかく永田町、小沢氏登場、千葉ショックで風雲急を告げてきたようだ。 

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
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1.図書室   浄土系思想論  鈴木大拙  法蔵館
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 鈴木大拙は「禅」の人であるが、浄土宗や、真宗に深い理解と尊敬の念を持
っていた。特に「妙好人」を敬愛していた。「妙好人」というのは、真宗を念じ
る田舎のお百姓やおばあさんのなかにいた、深い宗教的な理解、あるいは悟達
の境地に到達していた人々をさす言葉である。以下では、師の「浄土系思想論」
によって、その「思想」を見ていきたい。
 普通、私たちが、浄土と言えば、それは死後に行く世界ということになって
いる。必ず浄土におきたまえ、と私たちは、葬式のときに唱えて死者を見送る。
しかし死んでから、よみがえってきた人はいないので、死後の世界と言われて
も、茫漠としてしまう。いったい、そんなものはあるのか。あるとすれば、
どこにあるのか、また死んでから行く、というとき、いったい、何が行くのか。
 しかも、仏教では「無我」ということを言っていたはずである。「我」、「私」
というのは、仏教ではないことになっているはずである。なのに、浄土へ行く、
というのはいったい何が行くのだろうか。
 徹底して「知的」な禅では、この「問題」はどう取り扱われるのだろう。
「和尚さんほどの悟りを開かれた方であれば、地獄へ堕ちる気遣いなどござ
いますまい」と、ある役人が高僧に問うた。「いやいや、わしらは今でも堕ちる
よ」と、その高僧は答えた。「なぜです?」「いや、わしが地獄へ堕ちなかった
ら、あなたのような人にお目にかかる機会もなかろう」というわけである。
 論理的な思考を積み重ねていくと、かならずパラドックスにおちいることを
禅の人はよく知っていた。全く合理的な思考をいくら積み重ねても「リアリテ
ィ」つまりは、今、ここに生きている私たちの「生の全体性」に到達できない。
必ず矛盾に突き当たる。合理的な思考の出発は、「ある」「ない」の二元論であ
る。そこから「善と悪」「生と死」「有限と無限」などのさまざまな二元論が生
まれてくる。この二元論ないし二分法は、いわゆる「分別知」から生まれて
くる。「分別知」というのは、「これ」と「あれ」とを分ける認識能力のこと
である。
 この意味では、人間の世界は、「これ」と「あれ」を分ける分別知の世界で
ある、と言ってよい。人間の世界が矛盾に満ちているように見えるのは、実に
人間のほとんどが、今のところ、この「分別知」しか知らないためにほかなら
ない。
言語が人間に与えられた特殊な能力であるとすれば、分別知もまたそうである。
そしてこの2つは、密接に関連している。言語はもともと区別するという行為
から始まっているからである。
 仏教の「唯識」では、この「分別知」が転換すると、一切の二元論を超越
して全体性を鏡のように映し出す「大円鏡智」となると説いている。しかし「唯
識」はあまりにも難解、複雑で、日々の人生とどうかかわるのかなかなかわか
らない。下手をするとまた理屈の世界に舞い戻りしかねない。
 戦前の偉大な日本の哲学者、西田幾太郎は、「リアリティ」が持つ性格を「絶
対矛盾的自己同一」と言ったが、これは、そのまま、鈴木大拙の言う「即非の
論理」である。それは、生と死のように絶対的に矛盾して見えるものが、確か
に絶対的に分かれてはいるものの「一者」としては同一である、といういわゆ
る「非•二元論」である。この即非の論理から見たとき、実は浄土と娑婆は、
あるいは彼岸と此岸は、絶対的に隔たっていながら、実は「今ここ」に現成
しているのである。鈴木大拙は、その「浄土系思想論」で、浄土宗を、本来、
仏教が持っているコンテキストにおき直した、と言えるだろう。

松永太郎 
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2.図書室 インドが中国に勝つ 門倉貴史 洋泉社
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若いころインドを商用で歩いた僕にとって、インドとは日本人に似た「情の通じる」世界
がある一方で、イギリスの植民地政策により英語はもとより組織やそしてインド特有の良
い意味でのヒエラルキーというものが確立している。それゆえに一旦契約するとそれを遵
守するという名誉の意識と近代社会の原則が守られており、30年前から非常に取引のしや
すい国だと確信があった。当時商談相手を最初からトリックに陥れようとする相互信頼の
概念の欠如、また何かあっても政経分離のできない商行為遂行の責任感皆無の共産党官僚
体制下での中国とは格段の文明度の差があった。
いまや世界中に華禍を撒き散らす中国は日本にとって脅威以上の何者でもない。日本にと
って中国の華禍の「防疫体制」を確立させることが大切であるが、能天気な政財官界は中
国にひれ伏す宦官のごとくである。
この書はインドと中国をいろいろな角度から比較することにより、中国に比べインドのほ
うがはるかに魅力的な同盟国足りうることを述べている。
なんといっても歴史的に醸成された民主主義のインドこそが、圧制の非民主主義国家であ
る中国と比較して、カントリーリスクが少ないことを謳っている。
つまり政治的安定と長期的なマクロの経済成長ではインドが中国に勝るのである。
この書は非常にわかりやすく比較検討しているので是非一読をお勧めする。

奥山篤信
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