>> 記事トピックス一覧 
トップ > マネー・政治・経済 > 政治・経済 > 甦れ美しい日本

日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う




甦れ美しい日本 第059号

発行日: 2006/3/31

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年3月31日 NO.059号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 < 目次 >
◎講演 

 岡崎久彦  中国の脅威

◎月刊ビジネス情報誌「エルネオス」 4月号巻頭言

 紺谷典子の賢者に備えあり  メール問題は「報道の問題」

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤守        大東亜戦争の真実を求めて54  
2.奥山篤信      アメリカ映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」ー「愛と正義」の暴力
3.松永太郎     日本人の宗教観
4.西山弘道     小泉“裁定”はどうなる?

◎書評

1.「中国農民調査」(陳桂摟・春桃 文芸春秋)「中国は日本を併合する」(平松茂雄、講談社インターナショナル)(評 松永太郎)
2. 裁判官が日本を滅ぼす 門田隆将著 新潮文庫 590円(評 奥山篤信)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
──────────────────────────・・・・・☆
------------------------------------
中国の脅威
 岡崎久彦岡崎研究所所長による2月16日の講演
-----------------------------------
 今日は問題を「中国の脅威」の軍事問題に絞りたい。中国が脅威かどうかは、昨年に麻
生大臣や民主党の前原代表が発言し、大きな議論になった。中国の軍拡が脅威であるかど
うかはさまざまな人に聞かれたが、結論としては脅威である。

 まず通常兵器だが、東シナ海の現状は、二つの要素でバランスが取れている。一つは日
本が圧倒的な海軍力・空軍力の優勢を保っていること。その日本が専守防衛で平和主義だ
と言っている。一方の中国は、実にアグレッシブだ。背後に大海軍があるかのように傍若
無人に振舞っているが、力はまったくない。その二つが重なって東シナ海のバランスが保
たれている。

 もし中国が次第に日本に追いつき、五分五分になったら中国は何をするか分からない。
海洋の範囲に関してはさまざまな理論があるが、一つは大陸棚理論。中国大陸の大陸棚と
いうのは沖縄の傍まで伸びているから、沖縄の傍まで中国は何をやってもいいということ
だ。海軍力が五分五分なら、今の中国のやり方から見て、何でもするだろう。日本が圧倒
的に強いと言ったが、これは本当だ。中国が初めて東シナ海に出てきたのが十数年前で、
私はその時代によくテレビに出て、戦争が起これば時間の問題だろう、数時間で中国は全
滅すると言った。

 その理由の一つは、日本が冷戦時代の最後にすさまじい近代化を行った。日本は180機
のF15を持っている。日本の次に持っているのは、イスラエルの60機だ。中国がどのく
らい同じ程度の戦闘機を持っているかというと、15年前の知識では問題にならなかった。
今でも使えるのが50機あるかどうかだろう。我が方は180機あり、しかも高度に訓練され
た世界最高水準のものを持っている。

 さらにP3Cを100機、持っている。これも、これほど大量に持っている国は日本以外
にない。イギリスが次に持っているとしても、せいぜい30〜40機程度だろう。これは、海
の下の潜水艦を沈める飛行機だから、地上の艦艇などはほうきで掃くようなものだろう。
日本は圧倒的に強い。

 その頃、それを言ったら、中国の新聞から批判された。「岡崎は傲慢にも、時間の問題だ
と言った」と。しかし、これは事実である。ただその頃、自衛隊の先輩からも叱られた。「何
を言うんだ。憲法も改正しないで、戦争に勝てるわけがない」と。しかし、これは全く違
う話だ。

 もっともその時は中村龍平さんが出てきて、みんなの意見を聞いて、「それは岡崎の言う
通りかもしれない。ただ、それは数時間、弾が続けばの話だ」と述べた。確かにそうだろ
う。戦闘機がミサイルを満載して出て行って、片っ端から撃って全部を当てる。帰ってき
て、また出る。これで数回、出るだけの弾薬があるかどうか。これは軍事機密だから分か
らない。しかし、日本がそれほど強いのは事実だ。

 次第に中国が軍拡を続けると、この差がつまってくる。日本では90年代半ばまでに今の
近代化が完成しているが、その後、増やしていない。昨年、初めて若干、減らした。あれ
は片山さつき女史が大蔵省の主計官をしていて、ついに切った。ほんの少しだが、本当に
もったいないことをした。艦船と航空機を切るというのは日本の存亡に関わる。今後はそ
のようなことのないようにしてもらわないと、毎年毎年、中国は追いついてくるだろう。
軍事バランスというのは、向こうが増やしてこっちが減らせば、差がつまってくる。

 おそらくもうしばらくすれば、そういう部分での軍事費は聖域になるだろう。日本と中
国との間でこれ以上、通常兵器を増やさないという軍縮交渉が成立しない限りは、防衛費
は切れない。

しかし、中国がなかなか追いついてこないのが実態である。中国の軍事費は9%成長だ
った1年を除けば、十数年間、二桁成長を続けている。しかし、東シナ海のバランスは大
きく変化していない。残りのカネをどこに使っているかが重大な問題である。

 ラムズフェルドなどが中国の軍事の脅威について、昨年の夏にシンガポールのホテルで
初めて言った。その後はさまざまな報告書で「中国の脅威」が書かれているが、ラムズフ
ェルドが言っているのは、透明性を明確にすべきだということである。しかし、中国には
これが言えない。中国の核開発は、昔から特に秘匿性を重んじているからである。

 毎年10%増といっても、元の数字が問題だ。ペンタゴンの計算も、イギリスの戦略研究
所の研究も同じだが、公表の数字の2〜3倍はあるだろう。2〜3倍というのは、日本の防衛
予算が5兆円だから、7兆円くらいはあるだろう。7兆円が毎年15%増えれば、だいたい1
兆円増える。毎年1兆円増えたら、さまざまなことが可能になる。

 中国は兵隊が多いから給料が大変なのだと言う。しかし97年から兵隊を50万人、切っ
ているし、さらに近代化も行っている。もともと500万あったものを80年代にアメリカと
国交正常化して、戦略関係が良くなったから200万を切っている。300万はいるだろうと
みんな思っていた。

 中国の軍というのは、各地の中国人民解放軍が土地の共産党幹部と一緒になって、国全
体の治安・統制を維持している。中国の軍隊は外を見ないで内部の統制をしていると言っ
ても間違いではない。だから500万が300万を切ったので、そろそろ限界かと思ったら、
1997年にさらに50万を切っている。それで1997年から本当の二桁成長になった。

 それまではインフレを差し引けば二桁いく年といかない年があったが、97年からはイン
フレを差し引いても全くの二桁成長となった。この頃から中国が何をやっていたのかはだ
いたい想像がつく。96年に台湾海峡危機があった。その時に中国の軍が言ったと言われて
いるが、それを聞いたのが、その少しまえにペンタゴンにいたチャールズ・フリーマンで、
この男は親中だ。その男がちょうど中国を訪問していて、そういうことをするなら、中国
はアメリカに核ミサイルを撃ち込むと聞いてきた。

しかしその後中国側がそれを確認して、言った人間の名前まで出しているから、そういう
ことだろう。いずれにしても、その時は脅しであり、今の中国にそのような能力はない。
これは96年の話だが、この時は台湾海峡で中国がミサイルを撃ち込んだりしたら、アメリ
カの空母機動艦隊が来て、全く手も足も出ない状況であった。その時に私は外務省の情報
調査局へ遊びに行って、茂田局長にこれは何だと聞いたら、キューバ危機だと言われた。
キューバ危機では、フルシチョフがキューバにミサイルを持ち込もうとしたが、ケネディ
がそれを海上封鎖し、手も足も出なくなった。それからソ連の大軍拡が始まるのであり、「ソ
連の脅威」が始まったのであった。

 中国もおそらく96年の台湾海峡危機以降、遺恨十年、一剣を磨いて核開発をしているの
だろう。おそらくそのカネはICBMに行っていると思われる。冷戦時代にアメリカとソ
連の間で「恐怖の均衡」が成立したが、中国は今、ソ連と同じ地位に就こうとしているの
である。

 そこで国際的核戦略をもう一度、考えなければならなくなるだろう。私が外務省にいた
頃は、冷戦の真っ只中であり、世界中の核戦略論者が核戦略を展開したものだが、その後、
誰もその話をしなくなった。核戦略論者は皆、失業している。しかし最近だが、核戦略を
考えなければならないと考えるようになった。秋にロシアのイワノフ国防大臣が「ソ連の
軍事戦略」という長い演説を行っている。例によってさまざまなことを述べているのだが、
何に注目すべきかといえば、たった一つである。

 新しい「SS27」というミサイルを造るということが書いてある。これは、列車に載
せるミサイルである。シベリア鉄道に載せて、どこからでも撃てる、というもの。シベリ
ア鉄道にいるのだろうが、どこにいるのか分からないから、サバイバビリティがある。し
たがってロシア自身もアメリカとの「核の均衡」を放棄したと思ったら、とんでもない。
むしろ、それがイワノフの自慢の目玉なのである。

 そして、中国も同じだ。そうなると、どの国も「核の均衡」を作ろうとするだろう。イ
ランの核も今問題だし、その前に北朝鮮の核が出てくる。そうすると、我々も核戦略の
新しい理論を考えなければならない。

 石原慎太郎氏が述べていることを私が翻訳するとすれば、中国は核の敷居が低いという
ことだ。例えばアメリカと中国が核戦争をしてお互いに1億ずつ死んでも、中国はビクと
もしない。私は中ソ論争をやっていたが、あのときの毛沢東の議論にはっきりある。どれ
くらい死ぬかは分からないが、死んでもまた生まれる、と。だから核も怖くないのだとい
う演説を行っている。敷居が低いということは、新たな核戦略を作る一つの条件になる。
 そして後は、日本はどうするのかという話だ。日本に核戦略というものがあるとすれば、
日米同盟と完全に両立するものでなければならない。アメリカに対抗するために核武装す
るなどというのは馬鹿馬鹿しい話で、戦略的に何の意味もない。日米同盟と両立する核と
いうのは、イギリス型とフランス型がある。

 イギリス型は、外交・軍事戦略がアメリカと全く同じであるという前提で成り立ってい
る。アメリカも最初はイギリスの核武装に反対していたが、当時のイギリス首相はチャー
チであった。一方のアメリカはアイゼンハワーだったから、イギリスがやるぞといったら
それを許したという事情があった。一方、フランスはドゴールが最初から最後までアメリ
カに反対していた。その間、米仏関係を大きく犠牲にしている。フランス国民にかなりの
損害を与えたのである。しかし、冷戦の最後になって、まあいいのではないかという話に
なった。

 これはどういう理論なのかというと、ソ連の計算を複雑にさせるという戦略的な議論が
あった。日本の場合で言えば、日本が核武装する。そして、中国が尖閣列島を奪いに来る。
中国は、アメリカが核を使うはずがないと思うだろう。しかし、ひょっとしたら、日本は
核を使うかもしれない、と思うだろう。それが、計算を複雑にさせるという戦略理論であ
る。

 フランス型というのは、ある程度の意味は通るにしても、日米関係を犠牲にしなければ
ならない。さらに、フランスはNATOの一員であり、アメリカの同盟国である。キュー
バ危機の際にフランスは真っ先にアメリカを支持している。つまりアメリカが、ドゴール
の実施していることを許すか、それとも米仏関係を駄目にするか、という岐路に立たされ
た。そしてその結果、仕方がないという結論に至ったのであった。

 日本の場合はそのような指導者は出ないだろうし、国民世論が全部、沖縄返還の時のよ
うに核一色になることもないだろう。これを受け容れなければ日米同盟に亀裂が入るとア
メリカが思うような状態は想定できないのである。さらに、日米同盟が、これだけは捨て
られないとアメリカが思うためには、まだ欠陥がある。それは、集団的自衛権の問題であ
る。この両方を達成した場合にのみ核武装が可能になるが、これは無理だろう。

 したがって、戦略論は簡単であり、日米同盟の強化が必要だ。日本に対する攻撃をアメ
リカに対する攻撃と看做すと述べたのがアーミテージである。2002年3月にイラク戦争が
あって小泉首相はすぐにこれを支持した。「日本に対する攻撃を自国の攻撃と看做す」と述
べている唯一の国はアメリカであり、これを支持するのは当然ではないか、と。これは国
民的にも論理は通ったし、何よりアメリカが非常に喜んだ。あの約束のままならそれでい
い。しかし、あれはアーミテージだから言えたのである。

 日米同盟を強化して、日本との同盟は捨てられないという関係に持ち込まなければ、核
の安全保障は認められないと考えるべきだろう。そのために必要なのは、集団的自衛権の
行使だ。したがって結論は簡単で、日本の核戦略としては日米同盟の強化が必要であり、
他方通常兵力のバランスだけは怠りなく、いつも日本は東シナ海で優位を保っていなけれ
ばならない。私がこれから論文を書くとすれば、これがその目次となるだろう。

注;
1.上記は岡崎久彦氏の講演の録音より間一根(國學院大學大学院院生)が書き起こし
たもので、その内容を岡崎氏の確認と了解を得て本メルマガに掲載するものである。
2.岡崎研究所;http://www.okazaki-inst.jp/oifront.html
-----------------------------------
 月刊ビジネス情報誌「エルネオス」 4月号巻頭言
 紺谷典子の賢者に備えあり  メール問題は「報道の問題」
-----------------------------------
 偽メール事件における民主党への批判は厳しく、マスコミは口を揃えてそのふがいなさ
を責めたてる。「偽メールを安易に取り上げたから、耐震偽装、ライブドア、BSE、官製
談合の重大問題がうやむやになった」、「多くの攻撃材料を持ちながら守勢一方」などなど。
たしかに民主党は甘すぎた。

 しかしながら、「すぐに偽と見破れるはず」のメールに振り回され、重大問題の議論を疎
かにしたという点では、マスコミもまったく同罪だろう。メール問題を大きく取り上げ、
国民の関心を引き寄せたのは、マスコミ、特にテレビだからである。四点セットの審議が
できなかったのは、そうしたマスコミの報道姿勢の結果でもある。「重大問題をうやむやに」
したくなければ、マスコミが追及の手を緩めなければ良かっただけの話である。新しい話
題に飛びつき!)真に重要な!)問題を忘れたのは一体誰なのか。民主党を稚拙と批判できる
ほど、報道は役割を果たしたのか。

 メールが偽だからと言って、メール事件の背景にある“疑念”までが消し去られたわけ
ではない。しかし、メールが偽と判明するや、マスコミは一斉に民主党叩きに転じ、その
関心は民主党がこの決着をどうつけるかに移った。暗に詫びを督促したも同然だが、詫び
ると今度は詫び方を批判。責任をとって辞任した野田国対委員長に代わり渡部恒三氏が就
任すると、今度は「民主党の塩爺」、「水戸黄門」とすっかりバラエティ・タッチなのであ
る。

 大した根拠もないまま他党議員を面罵する場面は、これまでにもいくらもあった。たと
えば鈴木宗男氏への批判も、「疑惑の総合商社だ」「デパートだ」と、かなり強烈だったが、
まったくの事実無根と立証されたことも少なくない。「ムネオ・ハウス」も「ムルアカ疑惑」
も、事実ではなかった。一部で報道されたように、鈴木氏糾弾の根拠となった外務省の内
部文書には為にする改ざんがあった。

 次から次への外務省機密文書の漏洩、しかも改ざんという事実は、あるいは宗男疑惑よ
りもずっと国益を損なうかもしれぬ深刻な問題であったのに、文書疑惑は広がりを見せず、
追及されないまま忘れ去られた。次官と局長が承認した“流用”で末端の一主任分析官が
逮捕されたことも国策捜査を強く疑わせたが、彼が鈴木氏の側近(?)と目されていたと
いうだけで、マスコミは彼の逮捕に疑問を投げかけるどころか、逆に煽り立てた。

 堀江社長と自民党の間に「何があったか」「なかったか」を明らかにするのは、野党より
むしろ報道の責務であろう。少なくとも「民主党が偽メールにひっかかったせいで、重大
疑惑の解明ができなくなった」と他人事のように批判してすむ問題ではない。野党ができ
ないなら、なおのことマスコミの解明の責任が重くなるだけの話である。

 そもそも「四点セット」は単なる不祥事でもなければ、独立に生じた問題でもない。い
ずれも小泉政権の「誤った改革路線」が招いた同根の問題なのである。「官から民へ」「中
央から地方へ」の改革は、聞こえは良いが、国民の生命と生活を守り、安全と安心を保障
するという、国の基本的役割を閑却し放擲するものでしかなかった。国民無視の政権の姿
勢が、官民挙げての安直な耐震検査を許し、米国の牛肉検査のチェックを怠らせた。自由
な市場メカニズムには限界も問題もあるからこそ、それを補完する政府の存在意義がある。
米国と財務官僚のシナリオのままに動く政権が、官僚組織にメスを入れられるわけもない。
小泉改革は国民のためではなく、すべて米国と財務省のための改革でしかなかった。

「改革」のレッテルに惑わされ中身の検証を怠って、改革路線を支持してきた報道の責任
も決して軽くはない。

紺谷典子(こんや・ふみこ)
1968年早稲田大学第一文学部史学科東洋史専修卒業。同年、(財)日本証券経済研
究所に研究員として入所。1984年から同研究所主任研究員。専門は数量経済学、証
券経済学、企業金融論。国際基督教大学教養学部非常勤講師(財務管理論)、上智大
学経済学部非常勤講師(資本市場論)、お茶の水女子大学生活科学部非常勤講師(生
活と金融)などを歴任。

月刊ビジネス情報誌「エルネオス」URL:http://www.elneos.co.jp/
------------------------------------
1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて54
-----------------------------------
「東条英機『わが無念』(佐藤早苗著)」には、興味ある事が書かれている。
「真珠湾攻撃の際、天皇、海軍、外務省は宣戦布告をしてからすぐに攻撃すべきという意
見を持っていた。それにも拘らず、何らかの理由によって宣戦布告よりも前に攻撃が開始
された。海軍は、最初は一時間前に通牒を発するという意見だったが、アメリカ側がかな
り対日戦の準備を整えているという状況などを考慮して、三十分前に通告する考えに固ま
った。しかし最終的に決定された計画は、宣戦布告は、日本時間十二月八日午前三時(ホ
ノルル時間=七日午前七時三十分)。そして、其の三十分後に攻撃開始というもの。
 ところが『ある不明の理由』によって、この宣戦布告は遅らされた、と永野元帥は述べ
ている。この談話を公表した新聞記事によると、『ある不明の理由』について永野元帥は、
故意に東京で遅らせた事を示唆したという。更に、取材したAP記者は、遅らせたのは東條
大将ではないかと推測している」というのである。
 宣戦布告遅延理由は、日本大使館員の不手際が原因だったことは、今では殆ど疑う余地
がないことだが、永野元帥の不用意?な談話から、東條大将がその“犯人”に疑われたと
いうのだから、東條大将の怒りは最もである。
聊か長くなるが、開戦にあたって東條首相の心境を示す重要な手記だと考えるので引用
する。
(「真珠湾攻撃ヲ中心トスル諸問題ニツイテ」と題する原文は「カタカナ」だが、ひらがな
に変えて引用する)
「戦争全般に対し余は十全の責任の前に立つは当然にして元よりその覚悟にあることは謂
う迄もなし。従って敗戦の今日当時の事態を明瞭にし、その審判を受くるは将来世界平和
の確立の上においても必要なるべし。故にその心理を受くるに当たりては事実を記憶にも
とづき素直に陳述する考えなるも、生殺与奪の権を有する勝者の前に敗者は往々迎合的阿
諛的に陥り易し。
余の言動も其の点大いに注意を要し、何処迄も素直に真を真とし曲を曲とせざる可からず、
唯真ならざること迄迎合的にこれを極言するがごときは、反って審判を誤り国家に不測の
不必要なる害を及ぼすこととなるは大に注意を要す。
 偶々去る十月二十七日真珠湾攻撃に関する永野元帥の談なるものを発表せられたり。之
を読むに、重要なる部分に於て錯誤を認むるを以て、茲に後世のため当時の真相を記す次
第なり。
一、十二月二日御前会議において対米英開戦決せられるや、開戦手続きを如何にするやは
御前会議案を連絡会議において討議するに当たり論議せられたり。
而して作戦を過早に暴露せざること及び国際条約手段については正当を期することと
し、米国務省に野村大使をして手交するは一時間半前とし、文案及び内地発信時間等
は統帥部及び外務省において責任を持って其の実行に当たることとせり。従って国交
の断絶を以て帝国として自由行動に移ることは、外務大臣の責任において手落ちなく実施せ
られたるものと今日においても考え居れり。
勿論之に欠陥あれとせば、総理大臣として当然其の責に任ずるは論なし。
最後国交断絶の案は当時外務大臣其の責任においてなされ閣議に報告なし。
二、宣戦の大詔は其の第一項に見るごとく、主として帝国国民に対する宣示にして開戦後
なるべく速やかにその手続きを踏むの着意の下に、九日午前之を枢密院の御諮詢の手
続きを取れり。
   国内問題なる以上、之を事前に手続きすることは作戦漏洩の恐れある事を避けたり。
   要するに宣戦大詔の取り扱いを真珠湾攻撃秘匿の手段として取り扱いたるごとき意
志は豪もなかりき。
   この点永野元帥は宣戦布告が真珠湾攻撃前午前三時前に行わるると了解せりとの事
なるも、之れ大なる誤解にして政府として知らざる処。午前三時とすれば、日曜日深
夜枢密院に御諮詢となることにして、日本の慣例よりも政府として斯くの如き諒解を
与うることなし。同元帥は恐らく最後通牒と混同しあるにあらざるや。元帥の斯くの
如き真の事実に相違し然も国家意思として故意に宣戦布告を遅らせたる如き印象を世
界に与うる如き言動は甚だ迷惑なり。
   今日より考うるときは、真珠湾の攻撃が其の奇襲に成功せるは天佑と考えある処に
して、米大艦隊の同地終結せるは明瞭なる処にして、従って其の警戒又厳重ならんと
は之れを想像したる処、之れに対し吾は大艦船を持って接近すること故、其の成功に
は多大の疑点を有せり。その際外交上の重大なる不利をも冒すこと、政府として忍び
ざるところにして、従て豪も斯くの如きことは考えざりき」
 以前書いたが、永野元帥は、野村大使が交換船で米国から帰国した昭和17年にも野村氏
を訪ねて「真珠湾攻撃を予報出来なかったことを遺憾とし、油が来なくなった以上は一か
八かやるより他に手段はなかった」と語った前歴があるが、戦後のこの発言も無責任過ぎ
るように思われ、私にはどうにも腑に落ちない。  (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
---------------------------------------------------------
2.奥山篤信 
  アメリカ映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」ー「愛と正義」の暴力
 --------------------------------------------------------
映画をみて数日経ったが僕の脳裏から強烈なインパクトは未だに消えない。

カナダの監督デイヴィッド.クローネンバーグがグラフィック・ノベル(一種の漫画)を
原作として描いたアメリカ映画である。アメリカ映画と一味違いヨーロッパの風味を感じ
るのはカナダで育った監督の北欧ヨーロッパ人の血のせいかもしれない。ちなみにクロー
ネンバーグはトロント生まれで、トロント大学で生化学を専攻するかたわら文学的才能に
恵まれ映画界に入った異色の監督である。僕は数年前この監督の「クラッシュ」(本年度ア
カデミー賞の同名の作品ではない。)を見た。自動車事故に快感を覚える秘密の集団“クラッ
シュ・マニア"の倒錯した性がテーマで、大都会の孤独で疎外された男女の心理を浮き彫り
にしたそのどぎつい着想において強烈なショックを受けたものだ。この映画もそれに比べ
マイルドとは言え、暴力と人間について真正面から取り組んでいる。

法治国家において暴力は、国民にとって社会との契約に違反した行為であり原則として許
されない。でもそれを踏みにじる暴力に直面した場合、良き国民は法やモラルや倫理から
解放されみずからの暴力により自分の生存を守る権利がある。まさに正当防衛である。監
督の根底に流れる思想はここにある。日本人がもしこの映画に馴染めないとしたら、それ
は戦争放棄、軍隊放棄をした、世界に通用しない戦後日本人の平和ボケ的思考形態による
ものだろう。
 
舞台はアメリカ・インディアナ州の典型的な田舎町である。町全体がひとつの封鎖社会で
あり、ここにはまさに外界から閉ざされた「村八分」の社会である。小さなダイナーを経
営するトム・ストールは、弁護士のインテリである妻のエディや2人の子どもとともに、
幸せな毎日を過ごしていた。そんなある夜、ダイナーが凶悪殺人強盗犯2人組に襲われる。
あわやレイプされそうな女性店員、客、友人を救うため見事な手さばきで二人を一気に撃
ち殺したトムは一躍全米の英雄となる。しかしその出来事でトムの過去が明らかになって
いく。

かってマフィアの殺し屋であったジョーイが、完全にトムに成り代わり良き家庭の父親と
して別の人生を歩んでいたのだ。殺し屋としての人生、そこから足を洗い地道な家庭を築
き上げる人生、二つのフィクションを生きるトム。マフィアとしてのジョーイの暴力はさ
ておいて、生まれ変わったトムの暴力は実は正義の戦いであり妻を愛し、家庭を守る暴力
である。そして暴力を慎むように教えた息子の放ったショットガンにより危機一髪のとこ
ろで、皮肉にもトムは命を救われる。クローネンバーグの暴力描写はスピード感と共に肉
片と血が飛び散るリアリティにあふれていて残酷ではある。でも逆にこれが友を守り家庭
を守る男の宿命を、正義感を強調させる効果を持つ。

さらに、監督の言葉を借りれば、夫婦を描くに避けられない男女の性愛を二つの場面、平
和的愛と暴力的愛を対比的に描写する。クローネンバーグ監督の描く映像のリアリズムが
衝撃的である。撮影は三つ目の場面があったらしいが、編集でカットされたという。ここ
では内容を説明するに憚るので省略するが、この映画のテーマである「愛と暴力」につい
て、夫婦の愛を真正面にえぐりだしている。男性には本来的に暴力があり、それを補うも
のとして男の優しさと労りがある。その本来的暴力を戦後絶対的タブーとして去勢化され
た日本男性が却って凶悪で陰湿な暴力を生み出しているのも事実である。
 
トムは自らのマフィアの痕跡を消すためフィラデルフィアのマフィアの親分(実兄)に決
死の覚悟で乗り込み相手を一網打尽に殺戮してしまう。そしてその広大な屋敷の池で心と
体を洗い清めるシーンに完全に過去のフィクションを消しきった平穏なトムの姿がある。
そしてとんぼ返りでインディアナへの家路に急ぐトム。そこには食事中の家族があった。
居心地悪そうに佇むトムの姿を見て、幼少の娘が皿とナイフフォークを並べ、息子がナプ
キンを渡し、妻は戸惑いを示しつつも受け入れようとするラーストシーン。子供たちによ
りトムは完全にトムに戻れるのである。なんという見事な構成か!この監督の並々ならぬ
能力を示すものといえよう。

ヴィゴ・モーテンセン、マリア・ベロ、エド・ハリス、ウィリアム・ハートの見事な競演
が見ものだ。ウィリアム・ハートはこの映画でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ
た。そのマフィアの親分役の演技は15分足らずと思うが非常に印象的であり、蛇足なが
らトム役のヴィゴ・モーテンセンは顎のくぼみといいカークダグラスの再来ともいえる。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
-------------------------------------
3.松永太郎
 日本人の宗教観
-------------------------------------
 よく知識人といわれる人のなかに、日本人は宗教心がない、とか宗教がよくわからない
という人がいる。こういうことを聞くたびに不思議に思う。
 
「宗教」も、ついでに「哲学」という言葉も、明治になって、西欧概念を輸入・翻訳する
ために作られた言葉である。それまでの日本語にはなかった。そして、キリスト教は、
それ以前の江戸時代には布教が禁じられていた。したがって、日本に、西欧的な意味で「宗
教」という概念がなかったのは、当たり前である。世界三大宗教と呼ばれるキリスト教、イ
スラム教、そして仏教のなかで、キリスト教とイスラム教は、根が同じである。キリスト
教とイスラム教が日本の歴史や文化のなかで、十分に根付かなかった、ということをもっ
て、日本人は宗教心がないというふうに言い切ってしまえるのかどうか、それは日本文化
の理解の根本にかかわってくる問題である。さらに、いつもそうであるが「知識人風」の言
い方のなかには、どこか日本人が劣っているような響きもある。ここでは、それらすべてを
覆したいと思う。

  鉄舟・山岡鉄太郎は日本人には「道心がある」といっている。今、手元に本がないので、
正確な引用ができないのは残念であるが「道心」とは、神仏のように自分より大いなる
ものを敬い、信じ、その「道」に従うという意味である。とすれば、これは「宗教心」と同じ
である。
 新渡戸稲造氏は、ベルギーの法学大学教授に、「日本には宗教教育がなくて、どうやって
道徳を教えるのか」といわれて、おおいに「まごつき」、そのかわりに「武士道」があること
を「発見」した。しかし新渡戸氏は、キリスト教徒であるため、最終的には、キリスト教が
「功利主義および唯物主義の拮抗するに足る唯一の倫理体系」で、これに比べれば武士道
は、「煙れる亜麻」のようなものかもしれない、と悲観的なことを述べている。すでに「武
士」という階級がなくなった以上、武士道の将来にも悲観的ならざるを得なかったのだろう。
それに比べれば「道心」というのは、端的で、はっきりしている。

 「道心」というのは、日本文化のなかでは、キリスト教のように教会や学校で書物を
もって教えるのではなく、日本人の間に生きていた道徳や倫理、慣習が社会の中で、人生
のさまざまな局面に自然に現れてきたものである。もちろん寺や神社、そして寺子屋の
ようなところでは教えられてきたであろう。けれども、それは家庭の「躾」にもあらわれ、
「祭」やさまざま「式」の中にも現れてきたものである。
明治以降の知識人が、キリスト教のような宗教はないことをもって「日本には宗教がな
い」と考えたのは、実は西欧人の受け売りに過ぎない。新渡戸氏のような優れた人ですら、
まごついたぐらいである。
 このような事情は、現在、大きく変化した。それまで、キリスト教とイスラム教以外は、
宗教ではない、と考えていた西欧人の見解はまったく変ったのである。それは、一つには
仏教に対する理解が、とりわけ第二次大戦後、急速に進んだことによる。処女から生まれ
た、とか原罪を背負って十字架にかけられた、というような神話的な物語を基礎にしたキ
リスト教にどうしてもなじめなかった西欧の人々は、仏教の中に驚くべき「合理性」を見
出したのである。 

 非常に残念なことに、この「道心」は、今の日本では、滅びつつあるように見える。先生
と生徒、親と子供は、友達のような関係がいい、とか男女の区別はないほうがいい、とか、
道徳教育はいらないとか、できるだけ子供の自主性とか自由決定にまかせるべきだ、とか、
子供にも人権があるとか、個性が大切だとか、国なんてないほうがいいとか、戦前の日本
はとても悪いことばかりしていたとかいう今の教育に蔓延しているらしい、これらすべて
の考え方は、日本人の大人も子供も、非常に、不幸にし、かつ不自由にさせるものである。
なぜなら、これらすべては「道心」とは正反対にある「作られた考え」(イデオロギー)
にすぎないからである。
 倫理や道徳、ルールは、それだけが道徳の役割ではないが、少なくとも社会において不
安なく振舞うために必要・不可欠なものであり、これは、今では、きちんと教えなければ
ならない。なぜなら、現代では、もし、それらが教えられなければ、誰も社会でどのよう
に振舞うのが適切なのか、判断できないからである。
奈良県のほうで、少年少女が12時を過ぎて外出したら、補導するとかいう県条例がで
きたらしい。一方で自由にさせろといい、一方で夜、外出したら補導するという。これ
で少年たちがおかしくならなかったら、不思議である。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
-------------------------------------
4.西山弘道 
  小泉“裁定”はどうなる?
-------------------------------------
06年度予算成立とともに、自民党総裁選が事実上、スタートした。“麻垣康三”
といわれる、ポスト小泉を噂される4氏はこれから9月の総裁選挙まで各々の存在
を各所でアピールしていくことだろう。
6月18日まで会期がある今国会は、予算成立でヤマを越え、民主党のみっとも
ないお家事情もあり、もはや“消化試合”となってしまった。行革推進法案など重
要法案は残るものの、憲法改正に関する国民投票法案や教育基本法改正案などは国
会提出も難しいということで、国会の緊張感は全くなくなった。今、国会で一番
張り切っているのは、普段全く見向きもされなかったヒマなポストの衆議院議院懲
罰委員会の民主党岩国哲人委員長というのだから、嘆かわしい。来週4日に民主党
永田寿康議員に偽メールを渡したとされる西澤某というジャーナリストの証人喚問が、
懲罰委員会で行われるからだ。民主党は早く偽メール問題を決着させて、体勢を変
えたいところだが、一方の自民党は決着を長引かせる作戦のようで、4月23日の
衆議院千葉7区の補欠選挙までは、ジワジワ民主党を追いつめたいとしている。何
やら、かつての与野党攻防が逆になったような、奇妙な構図である。

 さて、ポスト小泉だが、予算成立の時点で、各報道機関が行った調査では、安部
氏のダントツは変わらないが、福田康夫氏が急浮上していることが注目される。特
に朝日新聞が行った、自民党地方県連会長のアンケートでは、福田氏を推す声が強
いのが目を引いた。地方は小泉改革で置き去りにされたと感じており、“シャッター
通り”現象からの脱却をのぞむ地方の声が、福田氏に集まっているのだろう。また、
69歳の福田氏急浮上の背景には、民主党の国対委員長に73歳の渡部恒三氏が就
任した“ベテラン待望現象”もあるのだろう。 二人の後を追う麻生、谷垣両氏の
“戦いぶり”も見物だ。

 こうした“麻垣康三”の競い合いを、さしずめ“高みの見物”と決め込んでいる
のが小泉氏だろう。予算成立の日、後継者の条件を記者会見で聞かれた小泉氏が
「構造改革を受け継いでくれる人。健康には十分留意をして・・・」と述べた表情
からは、最高権力者の“禅譲”を楽しんでいる、余裕さえうかがえた。

 戦後、東久邇首相から小泉氏まで数えて、首相の座に就いたのは計25人。その
ほとんどの首相は、政権を不本意な形で去らざるを得なかった。“円満退社”は稀で
ほとんどはスキャンダルや、選挙の敗北、或いは病気などで不本意“免職”となっ
たのである。その中で、佐藤栄作氏と中曽根康弘氏のたった二人だけが、“円満退社”
だった。吉田茂氏の場合は、鳩山一郎氏など反吉田勢力に追いつめられてのやはり、
不本意な退陣だったろう。その、佐藤、中曽根両氏の引き際がまた、興味ある。

 佐藤氏の意中の後継者は、知られているように福田赳夫氏であったが、“禅譲”の
タイミングを間違えてしまった。早くその胸中を明かしてしまったため、田中角栄氏
の察知するところとなり、田中氏が猛烈に巻き返したため、福田氏が涙を飲むことに
なったのである。そして、佐藤氏も引退後は全く影響力もなくなり、ノーベル平和賞
をもらって“隠居”するしかなかった。
 中曽根氏は、その佐藤氏の伝を踏まないようにしたのか、ギリギリまで胸中を明か
さなかった。3人の後継者、安竹宮を競わせ、絶妙の最後のタイミングで、竹下氏を
後継者として裁定した。

 小泉首相は佐藤、中曽根両氏の“禅譲”の仕方を当然、参考にするだろう。まして
福田直系の弟子として、佐藤栄作氏の“失敗”は、間近に見ているはずだ。当然、中
曽根裁定方式でいくだろうし、9月ギリギリまで“意中”は明らかにしないかも知れ
ない。
 その小泉内閣は、4月6日、中曽根内閣の4年19日の在位日数を抜き、佐藤内閣、
吉田内閣に続いて戦後3番目の長期政権となる。

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。
--------------------------------------------------------------------------------------------
1.書評「中国農民調査」(陳桂摟 春桃 文芸春秋)、「中国は日本を併合する」
(平松茂雄 講談社インターナショナル)
--------------------------------------------------------------------------------------------
 私は、中国専門家でもなんでもないが、日本の、特に「朝日新聞」などに見られる中国
に関する論調には、いつも違和感を覚える。たとえば、「朝日」は、チベットにいたる鉄道
が開通かなにかしたとき、これでチベットにも「文明」が訪れるような、提灯記事を書いた。
しかし、そんなところに「鉄道」をひく目的は、別にチベットの人の利便のためではなく、
もちろん軍事目的であろう。平松茂男氏は、新刊の「中国は日本を併合する」(講談社イン
ターナショナル)で、「この常識では考えられない高地に鉄道を建設する意図はいうまでも
なく軍事目的である。ここに建設されるトンネルを利用してアメリカに届く大陸間弾道
ミサイルを搭載した列車を隠蔽し発射するという情報がある」と書かれている。

 NHKも、おもしろい。「世界遺産・故宮」という番組の冒頭では天安門広場にでかでか
と掲げられた毛沢東の肖像を映しながら、そこでどんな「事件」(実際は、虐殺)があったかは、
一言も触れない。このどことなく、おためごかしの口調のアナウンサーは、番組の最後に
「中国は、清朝以来、多数の民族が集って暮らしながら、その領土を維持してきたのです」
と清朝と現在の中国の領土が、重なるような言い方をしている。これも平松氏によれば、
現在の中国は、「清朝が帝国主義列強によって奪われたとする領土は、自国のものだ」と
主張しているのである。ここには、沖縄、台湾、ベトナム、カンボジア、ネパール、ハバ
ロフスクなどが含まれている。要するに、アヘン戦争以後、あるいはそれ以前において、
いわゆる「中華帝国」が自分の版図としてきたところは、全部、自分のものだと主張して
いるのだから、ほら半分に聞いたとしても、なかなかすごい。「多民族が平和に集って暮ら
してきた」などという、なまやさしいものではない。

 またNHKは、潤沢すぎる予算をかけて作ったに違いない(なにせヨーヨーマに、音楽
家の選択から、作曲まですべて任せているのであるから、それだけで一財産であろう)「新・
シルクロード」で、「私たちは、日本で始めてこの道路(おそらく青蔵公路)を、奥深く
たどることを許されました」と、平伏して喜んでいる。「許されました」というのが、なか
ながすごい。これも平松氏によれば、この道路は、「国防建設を強化する」ために、実質的
にはチベットを戦略要塞化する目的で作られたのである。インドとは、この「公路」建設
の際、軍事紛争まで起こしている。この「公路」にそって1800キロに及ぶ光ファイバ
ーケーブルが中国軍によって建設された。軍が作ったのであるから、何の目的かいうまで
もないが、建設資金は日本の外務省が必死になって守ろうとしているわが日本政府のOD
A援助によるものだそうであるから、笑いが止まらない(誰の?)

 中国は、実際には欧米や日本のような「近代国家」ではないのではないか、という疑問
が、朝日やNHKのようなマスコミには感じられない。何か平和を愛する、理想の国の
ような描き方をする。いうまでもなく、そういう描き方をすればこそ「日本で始めての取
材も許される」し「新しい支局も次々に開局を許可される」のであろう。ご同慶の至りで
はあるが、実際の中国の農村がどんな状態におかれているのかは、この発禁となった「中国
農民調査」で明らかである。
 本書は、別に中国共産党を批判したものではない。そうではなく、中国の地方の農民が
いかに悪代官によって、封建時代よりもひどい扱いを受けているのかの実態をエピソード
によって知らせ、もっとしっかりやってくれ、という中央政府の介入を促しているのであ
る。
この程度の本を発禁してしまうのであるから、独裁政権というのは、いかに自由な言論
を恐れているのかわかる。軍と独裁政権と経済自由化が結びついたとき、どんな恐ろしい
ことが起こるのか。たまには朝日もNHKも、中国から「発禁」処分を得るぐらいの民主
主義国家のジャーナリストとしての「誇り」を見せてみたらいかがか。

松永太郎 評
------------------------------------------------------------------------------
2.書評 裁判官が日本を滅ぼす 門田隆将著 新潮文庫 590円
-----------------------------------------------------------------------------
この書は二年以上前に単行本として出版され、文庫本として昨年秋発刊されたものである。
日本の司法制度が如何に機能しないか、検察の問題はKSD村上事件についての宮本雅史著
「真実無罪 特捜検察との攻防」より戦慄の思いで知らされたが、この書では如何に裁判
官が非常識な判決を下している数々の例を取り上げている。日本の司法には正義も常識も
ない恐るべき実態を改めて確認するものである。司法研修制度を終えて、裁判官になるの
は年齢が若く優秀で成績抜群で従順な候補をピックアップしていくらしい。徹底的に叩き
込まれる「要件事実」だけを官僚的に積み上げて判断の材料とすることで、複雑な事象を
単純化してしまう、まさに機械的ロボットとなっているのが現状らしい。そこには人間の
情とか正義とか常識とかが入りこむ余地はなく、精神医学でいうと万能感(幼児的誇大妄
想がそのまま裁判官のエリート意識の思い込みへとなってしまう)に取り付かれた裁判官
が法廷ゲームとして「愉快犯」とも言える信じられない判決を下しているのである。かと
いって僕は、著者が言う陪審制度にすれば日本の司法が改善されるなどと短絡的にも思っ
ていない。陪審制度に率先して群がるサヨクプロ市民や宗教団体を思えば、期待する常識
や正義が、イデオロギーやドグマや団体利益に取って代わる恐れが大きいからだ。

ついでに、著者はジャーナリストの利益代表か、「NYタイムズ対サリバン事件」のアメリ
カ最高裁判決の名誉毀損に対するジャーナリズムの誤謬を含む「表現の自由」の優越宣言
を金科玉条のごとく礼賛している。言い換えれば「メディアが情報が虚偽と知りながら報
道したか、あるいは真実か否かを無視して報道した」いわばほぼ不可能な立証責任を公人
側としているものだ。これによって名誉毀損の訴訟は公人から事実上不可能としてしまう。
公人の泣き寝入りである。このような権利を、言論界のモラルと品位が確立しているとは
言いがたい特権意識剥き出しの日本のメディアなどに与えたらどんなことになるか、そ
れこそ身の毛がよだつ思いだ。著者にはそのあたりのジャーナリストの反省がなく、マス
コミの権利だけを主張しているきらいがこの書にはあるが、それはさておき裁判例だけを
冷静に読めば読者は怒りに体が震えることは間違いないだろう。

奥山篤信 評
◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

◎情報感度を研ぎ澄ます!ビジネス情報誌「エルネオス」
 編集長・市村直幸
 〒105−0003
 東京都港区西新橋1−22−7 丸万7号館4階
 電話:03−3507−0306
 Fax:03−3507−0393
 e‐mail:ichimura@elneos.co.jp
 URL:http://www.elneos.co.jp/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回の配信は、4月7日(金)を予定しております。どうぞお楽しみに!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
登録内容(メールアドレス等)の変更、メールニュース配信の停止は、
こちらからお願いします。
<http://www.melma.com/backnumber_133212/>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有限責任中間法人 平河総合戦略研究所< http://www.hirakawa-i.org >
発信元:< info@hirakawa-i.org >
掲載された記事を許可無く転載することを禁じます
Copyright(c)2005 Hirakawa Institute
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします

ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万4千部突破!
週刊アカシックレコード
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
頂門の一針
急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
花岡信昭メールマガジン
政治ジャーナリスト・花岡信昭が独自の視点で激動の政治を分析・考察します。ときにあちこち飛びます。


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

■オススメ■銀行系カードローン
三菱東京UFJ銀行系 モビットなら急な出費も安心♪
ネットで24時間申込OK⇒ネットで審査結果表示!
【頼れる】限度額300万円
【おトク】年利9.8%〜18.0%
【便 利】全国提携ATM72,000台
三菱東京UFJ銀行系 モビット

はじめようメルマガ生活
メルマガを読むには
メルマガを出すには
約64000誌から検索

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


新着記事トピックス