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甦れ美しい日本 第058号

発行日: 2006/3/24

□□■平河総合戦略研究所メルマガ■□□(2006年3月24日 NO.058号)

  ☆☆甦れ美しい日本☆☆

☆・・・・私たちは書きたいから書くのです・・・・
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 < 目次 >
◎ゲスト執筆者
 
松島悠佐  軍事のはなし(8)「軍事問題の特異性」

◎レギュラー執筆者 
         
1.佐藤守        大東亜戦争の真実を求めて53  
2.奥山篤信      アメリカ映画「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」
3.松永太郎     教育について  
4.西山弘道     或る長老政治記者の死

◎書評

1.書評の書評:「論座」に掲載された「マオ」の書評(「マオ」 ユン・チアン、土屋京子訳、講談社)(評 松永太郎)
2.書評 円を創った男 小説 大隈重信 [著]渡辺房男 文芸春秋 1900円(評 奥山篤信)

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 松島悠佐
 軍事のはなし(8)「軍事問題の特異性」
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3月12日岩国市で、米軍再編成の問題で住民投票が行われました。米空母艦載機の離発
着訓練を岩国基地で受け入れることに賛成するか、反対するかという投票です。投票率は
約6割、そのうち反対票は約9割で、受け入れ反対が圧倒的でした。投票前から、一部の
政治家や有識者の間では、この種の問題は住民投票に馴染まないのではないかとの疑問が
投げかけられていましたが、結果的には実行され前述の結果となりました。

投票の結果は、最初から分かっていたことです。私自身、昭和30年代半ばから30数年
自衛隊に奉職し、「自衛隊は憲法違反」、「日米安保反対」、「自衛隊の基地撤去」などが声高
に政治論争されていた中で、国民の世論調査などを分析し、基地反対闘争にも対処してき
ましたが、「自分達の街に基地が有った方がよいか、無い方がよいか」という質問ほど、お
よそ馬鹿げた質問もないと思っています。

「基地を撤去しその跡地に公園を作れば、市民生活がより良くなる」、「戦闘機1機買う金
で、校舎が10棟も建つ」等と、キャンペーンを張る団体もありますが、市民生活からだ
け見れば、基地より公園がよいに決まっているし、戦闘機より学校のほうが役に立つに決
まっているでしょう。

だが、軍事・国防という問題は、市民生活を快適にするという身近な課題だけでは解決で
きない要素を含んでいます。その基本的な違いを理解できないと、前述のような平和団体
のキャンペーンが生まれ、今回の岩国市の住民投票のような愚を犯すことになるのではな
いでしょうか。

一昨年の秋の予算編成に際し、財務省は国家財政逼迫の折から、聖域なく予算削減をする
との方針の下に、当時の片山主計官(現衆議院議員)が何ら安全保障上の検討もせず、単に
金枠だけから自衛隊の大幅削減を目論み、経済団体の支援も取り付けて、理不尽な削減計
画を提示してきました。当時の大野防衛庁長官初め防衛庁・自衛隊の幹部が必死に戦って
何とかくい止めましたが、これも、防衛問題の特異性を理解しないために犯した愚の一つ
でしょう。

今また同じようなことが起きようとしています。小泉政権が今国会の目玉にしている行政
改革において、国家公務員を削減して、小さな政府を目指す改革を計画していますが、自
衛官も削減の対象になっていることは問題です。自衛官も特別職国家公務員ですから、聖
域なき削減と考えれば事務的には削減の対象になるのでしょう。だが、行政職にある職員
を減らして行政府を小さくする話と、自衛官を削減して国の防衛力を抑制する話とは異質
のものです。
国防軍の編成や規模は、脅威の実態を見積もり、防衛構想を確立して定めるものであり、
言わば国を守る国家の姿勢そのものです。今回のように、わが国が保有すべき防衛力の規
模を、行政改革のための公務員の削減と同じ思考の中で考えることは、極めて不適切なこ
とです。このことを理解できない人達が、政治家にも、官僚にも、学者にもまだまだ沢山
おり、そのことが、残念ながら、国の進路を怪しくしています。

この平和な時代に、「顔に墨を塗って偽装し、泥まみれになって戦闘訓練をするのは、一
体何の為なのか」という若い自衛隊員の素朴な疑問に答えて、「周辺諸国の中には、理不
尽で異常な行動に出る国もある。若しそのような事態が起きたとしても、それに対して国
家の平和と独立を守ることが自衛隊の使命であり、軍隊とはもともと異常な行動に備える
のが常態の組織であり、平和な状態を基準に考えているわけには行かない」ことを説明し、
軍隊には普通の市民社会とは違う特異性が求められていることを教えてきました。

今学校では、軍事や国防のことを正しく教育していません。従って、外交・防衛・通商な
ど、外国を相手に国益を追求する行政分野では、国内問題や市民生活とは違う基準で物事
を判断しなければならないことも知らない人がいます。

岩国市だけでなく、米軍の基地を抱える地方自治体では、目下米軍再編問題の対処を迫ら
れています。原則的には、「米軍による抑止力の維持」と「基地問題の負担軽減」の両面
から検討が進められているのですが、市民生活を最優先する地方自治体の視点からすれば、
どうしても基地問題の負担軽減が優先され、なかなか調整が進まずに、政府も対応に苦慮
しています。

軍事問題は、優れて国家・国益の視点から判断すべきことであり、市民生活の利便性とは
相容れない、異質の問題があります。そのことをよく考えて、外交音痴、軍事音痴になら
ないように対処することが、今わが国にとって緊急の課題になっているようです。
(06・03・23記)

松島悠佐(まつしま ゆうすけ);
元陸上自衛隊中部方面総監
防衛大学卒業後、自衛隊入隊陸上幕僚監部・防衛部長、第8師団長(熊本)
等の要職を経る。
平成7年阪神大震災時、中部方面総監として活躍。
同年中部方面総監で退官。著書に「阪神大震災・自衛隊かく戦えり」(時事通信社刊)
がある。 現在、危機管理などの講演を精力的に行う。
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1.佐藤守
 大東亜戦争の真実を求めて53
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 こうして東条内閣は成立したのであるが、今回は東条内閣成立時の「裏話」を2,
3挙げておきたい。まず「東条英機『わが無念』・・・獄中手記・日米開戦の真実」(佐
藤早苗著)には、東条内閣発足時の動きが次のように書かれている。
「東條陸相はお上から組閣の大命を受けたとき、余りにも思いがけないことで、し
ばらくのあいだ奉答ができなかったという。それほど東條英機の総理大臣抜擢は、
それまでの経緯からしても唐突だったのだ。
 東条英機陸相の秘書官として、東条内閣解散まで、東條と共にあった赤松貞雄は
『東條秘書官機密日誌』の中にその日の事をこう記録している。昭和十六年十月十
七日の事である。

 参謀総長杉山元大将と懇談中であった東條陸相に宮中からお召しがあった。陸相
はただちに近衛内閣倒閣の直接原因となった陸軍の要望事項(註・九月の御前会議決
定による中旬交渉打ち切り)を説明できるよう整理するとともに、立ち上がると、
参謀総長に、『やがて、あなたにもお召しがあるだろうから予め準備しておかれたが
よいだろう』といい残し、私をともなって直ちに参内した。
 拝謁の前に、木戸内大臣から『今日は御椅子を賜りません』といわれ、いよいよ
近衛内閣辞職に対する『御叱りかな』と陸相は独語し、恐る恐る御前に出た。従来
上奏後は椅子を賜り、色々と御下問に対して御懇談申し上げるのが例だった。とこ
ろが、東條陸相はお上から組閣の大命を拝したのである。思いがけないこととして、
しばらくの間、奉答が出来なかった陸相に、お上から暫時の猶予を与える、及川海
相も呼んである、木戸と三人でよく相談して組閣したらよいとの御言葉を頂いた。
とともに、やがて及川海相も参内し、東條の組閣に協力するようにとのお上の仰せ
を頂いたのである(この真相は後日、東條さんから直接私は聞いたことであり、当
時はその事情がさっぱり解らなかった)。
 私は待合の室で、しばらく東條陸相が御前を下がって来るのを待っていた。随分
長時間待ったような気がする。退出してきた東條さんは、口を一文字にして何も話
してくれなかった。そして車に乗ったら、ただちに明治神宮に参拝するといっただ
けで、また黙り込んでいた。
 明治神宮に続いて東郷神社にも参拝すると命じ、その途中で私はやっと『どうさ
れたのか』と質問したのである。
 『大命を拝したのだ。予想もせず、恐懼して奉答も出来ないでいたら、お上から
暫時猶予を与える、及川海相と木戸とよく相談して組閣を準備するようにと仰せ出
され、ただただ恐れ入り、この上は神霊の御加護によるほかはないと信じて、まず、
かくは参拝するわけである』と陸相は答えてくれた。
 陸相官邸に帰ったときは、すでに、このニュースが伝わっていた。大ホールでは
陸軍詰めの新聞記者と報道部の人達が気勢を上げていた。大臣室で、木村兵太郎次
官、武藤軍務局長と懇談の上、局長から陸軍の希望する閣僚名簿案を受け取り、た
だちに稲田内閣総務課長(後の侍従)を呼び、私とふたりをともなって日本間の方
に入った。この時、『今日から首相という立場で万事を処理しなければならないから、
従来のように陸軍だけの代表ではない。公正妥当な人選をしなければならぬ』と東
條陸相はいった」
 この事実は、東條自身が書いた供述書を裏付けるものであるが、供述書には「大
命降下に関わる個人的な感情は省かれていると見るべきであろう。ただ「赤松日誌」
の中で、陸相官邸に帰り着いたとき「既にこのニュースが伝わっていた」という部
分が聊か気にかかる。木戸内府に通じる新聞記者ルートがあったのではないか?
 そう仮定すれば、東條に大命降下したナゾが解けるような気がしないでもない。
 その一つが、平成2年12月号の「文芸春秋」誌に公表された「昭和天皇独白録」
にある。昭和天皇は、何とかこの国難を回避しようとされ、東條に期待しておられ
た事がうかがえる。「この男ならば、組閣の際に、条件さえつけておけば、陸軍を抑
えて順調に事を運んでいくだろうと思った」という部分である。更に「元来東條と
言う人物は、話せばわかる、それが圧制家の様に評判が立ったのは、本人が余りに
多くの職をかけ持ち、忙しすぎる為に、本人の気持ちが下に伝わらなかったことと、
また憲兵を余りに使いすぎた」と人物評価しておられるが、これまた極めて妥当な
評価だと思われる。
 更に軍事組織の観点から付言が許されるとすれば、階級は「中将」であり、大将
の下である。士官学校の卒業年次で見ても、遥か“大先輩”方が犇いているのだか
ら、「指揮統率」は極めて困難で、東條個人に対する相当なプレッシャーがあったで
あろう事は想像に難くない。その結果、サイパン陥落を口実に失脚、戦後はA級戦
犯としての汚名を一身に負わされたのではあるまいか?
              (続く)

佐藤守:
防衛大航空工学科卒(第7期生)。
航空自衛隊に入隊
戦闘機パイロット(総飛行時間3800時間).
外務省国連局軍縮室に出向。三沢・松島基地司令、
南西航空混成団司令(沖縄)を歴任.平成9年退官.
岡崎研究所特別研究員.軍事評論家.
日本文化チャンネル「桜」軍事コメンテーター.
著書に「国際軍事関係論」
ブログ;http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/
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2.奥山篤信 
 アメリカ映画「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」
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カントリー歌手ジョニー.キャッシュの生涯を自伝に基いて映画化したものである。
あの昨年のアカデミー賞主演男優受賞の盲目のレイチャールズ「RAY」とどこか重なる
ような音楽家の波乱に富んだ人生を描いたものだ。二人の天才RAYもジョニーも薬漬
けから立ち直る。

ジョニーは幼少のとき最愛の兄を事故で失う。兄を偏愛していた父親から兄の代わりに
ジョニーが死ぬべきだったとの無神経な言葉を聴いて、それがトラウマとして一生背負
うこととなる。幼少時代の両親の一言が、時には子供の心を勇気つけ、逆に傷を与える
か家庭の愛情の大切さを感じるところだ。

成長したジョニーは空軍を除隊後、初恋のヴィヴィアンと結婚、幼少時代から聞きなじ
んだゴスペルを自己流に発展させた独自の境地でオーディションに合格、その後順調に
人気を高め成功した生活を続けるかのように見えた。子供三人に恵まれ何不自由な家庭
生活があるものの、何か満たされないジョニーはジューン・カーターと出会い惹かれて
いく。そして満たされない愛と薬による自堕落な生活が始まるーーー−

テネシーの美しいコットンフィールド、朝鮮戦争のころ青春を迎える南部の風景は、現代
の極度のIT物質文明からはまだ遠い時代で、人々に宗教心があり人情味あふれるアメリカ
の昔の良さが残っている。ちょうど「always 三丁目の夕日」のあのころの日本の良さと同
じように。あの時代は、アメリカ女性も規律正しく、離婚などは悪と看做されていた時代
である。女性も貞操を大切にし、男性も野性的な荒々しさはあるものの、男性的な女性へ
の労わりの気持ちがある。男女のお互いの補完性がある時代で、今の時代から見ると隔世
の感がある。

音楽映画としても大変楽しめる。僕たちが青春時代耳にしたまさにカントリーの世界だ。
ジョニーの唱は刑務所の囚人に光と希望を与える。彼の唱には心の底からの魂の叫びが
ありテネシーの大地の神の声そのものである。現代のRAPに象徴されるニヒルで薄汚
く汗臭い反逆の唱ではない。ジョニーの幼少時代の兄を失った心の痛手は、もっとも社
会の底辺であえぐ囚人たちに向けられた。ジョニーが自暴自棄の薬漬けから立ち直った
レコードの第一作はプロデューサーの反対を無視した、なんとカリフォルニア
FOLSON刑務所での実況演奏である。このアルバムはビートルズを凌駕する売れ行き
だったという。

WALK THE  LINE というのはまさに真っ直ぐ一筋に真摯に人生を歩むという意
味でヒット曲にもなっているが、それはジューン・カーターへのひたむきな愛である。人
を愛することができる者は、人生をまっすぐ生きられるということである。

大団円の公衆の面前のステージの演奏中にジョニーがジューンに求婚するシーンは感動的
である。
さすがアメリカ社会ならではの、善良なアメリカを感じさせる僕の大好きな世界だ。それ
にちっとも下品で野卑に見えないところがすばらしい。

ジューン・カーターを演じたリーズ・ウィザースプーンはこの作品で見事本年度アカデミ
ー主演女優賞を獲得した。僕はそれを知らずに映画を見ていたのだが、彼女の演技はまさ
にキュッと抱きしめたくなるほど愛らしい、可愛らしいそれでいて清潔な凛々しいこの時
代の女性を見事に演じている。あの「プライドと偏見」キーラ.ナイトレイが受賞を逃し
残念に思っていたが、この映画を見て両者とも清潔な女性を演じて互角、強いていえばア
メリカ女性とイギリス女性の違いではないだろうか。

最後に、ジョニーを演じたホアキン・フェニックスとリーズ・ウィザースプーンは
吹替えなしの唱らしい、まさに役になりきるアメリカ俳優のプロ根性といえる。

奥山篤信:
京都大学工学部建築学科卒
東京大学経済学部卒
三菱商事本社入社
6年余にわたる米国三菱ニューヨーク本店勤務を経て
平成12年退社 
平河総合戦略研究所代表理事
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3.松永太郎
 教育について
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  今度のWBCで、日本が優勝したことは、近来にない快事だった。サッカーについて
は、いまだにルールのわからない、筆者のようなおじさんにとっても、野球ならば、わか
る。かみさんに「解説」しつつ、ビールがどんどんあいた次第である。ついでに言えば、
サッカーは、変に横文字が多くて嫌いである。

 この快事については、いろんな言いたいことがあるが(たとえば、それまでまったく無視
していたとしか思えないNHKが、優勝したとたん、手のひらを返したように騒ぎ始めた
ことや、イチローのすばらしさ、韓国のニュースの・・・まあ、これは言い出すときりが
ないが)。

 しかし、ここでは筆者に印象に残った一つのTVのニュース場面を取り上げたい。それ
は優勝が決まったとき、小学生ぐらいの子供が「日本を誇らしく思った」と言っていたこと
である。翌日の朝日新聞社説が「ナショナリズムを抑える工夫がなされていたのが、よかっ
た」という、わけのわからない不愉快なことを書いていたのと対照的だった。もちろん「朝
日」としては、さぞかし韓国に優勝してもらいたかったことだろう。「ここは、一つ、素直
に隣国の優勝を讃えたい」ぐらいの予定稿は、用意していたことだろう。くやしさがにじみ
でた社説であった。

 それに比べて、この小学生のコメントは、こちらが誇らしくなった。なぜだろうか。
戦後、ずっと主として「朝日新聞」、そして、今は一時に比べて3分の一に減っているらし
い先生の団体などが中心となって、日本を愛するとか、誇らしく思うということを絶対に
禁じようとしいう運動がなされてきたからである。現に卒業式で国旗を掲げ、国家を歌う
ことまで、やらないほうがいいということまで主張してきたのである。
 これは、子供の健全な精神的発達に破壊的影響を及ぼす。もちろん、それがねらいなの
だろうが。

 子供の心は、簡単に言えば「同一性」の輪が、次第に広がっていくように発達していく。
このとき、同一性の対象と親和的な関係を結ぶことができれば、心は健全に発達する(健全
に発達する、というのは簡単に言えば、幸福感にあふれながら発達する、という意味であ
る)。幼年期というのは、神から与えれらた、ともいってよい至福の時期である。しかし、
ここで、親和的な関係というのは、甘やかすとか、その子供の「自由」を尊重するとか言
うのとまったく逆である。
なぜなら人間は、動物と違い、規範・規則などは、教わらなければならないからである。
これを本能が壊れているためだという見当違いの心理学者もいるが、そうではなく、言
語という複雑なコミュニケーション能力を持っているためである。したがって規則・規
範・道徳・倫理などを教えることは、成人したとき、より自由に社会で振舞えるように
するために必要なことなのである。この最も重要な点が、現代の教育では見逃されてい
る。

同時に、この時期に、大人は、子供がやがては成人して、その社会の一員となること
が「誇らしいこと」であること、「素晴らしいこと」であることを教えることが必要である。
人間社会はほとんど普遍的にそうしてきた。これは古代部族社会だろうが、ローマ帝国
であろうが、大英帝国であろうが、シナだろうが、みんな同じである。そのため、古代
社会では「イニシエーション」というものさえあった。これは試練と同時に祝福である。
なぜなら、成人すべき子供は、そのように教えられて、初めて、どんな試練を乗り越え
ても、その社会の一員(成人としてのメンバー)となりたいという動機あるいは、成長する
喜びを持ち、また大人は、それを祝福して、はじめて、新たにそのメンバーとなった成
人と「対等」な関係を持つのである。いきなり大人と対等の関係を結んでしまえば、子
供は成長する動機を失う。また社会においてどのように振舞えばよいかわからないため、
つねに不安に襲われるのである。

 家族、友達、共同体、国家というふうに同一性の輪はひろがっていく。これを飛び越え
ることはできない。同一性というのは、愛情と言い換えてもよい。自分の国に愛情を持
たないで、いきなり「地球社会」なんてものに愛情を抱くことはできないのである。

 同一性の輪の拡大は、人間の成長の自然な過程である。しかし何とか、それを阻害しよ
うとする努力にもかかわらず、自然に「日本が誇らしい」という子供がいる。その意味でも、
今度のチームには感謝したい気持ちである。

松永太郎;
東京都出身 
翻訳家、多摩美術大学講師、レモン画翠社長
主訳書「進化の構造」「イカロスの飛行」他。
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4.西山弘道 
  或る長老政治記者の死
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 読売新聞の政治記者出身で、政治評論の世界で活躍されていた宮崎吉政さんが今月
3日、心不全で亡くなった。90歳だった。
 宮崎さんは札幌市出身。昭和15年、早稲田大学を卒業後、読売新聞に入社、兵役
を経て、戦後複社され、政治部記者として55年体制前後の自社政党政治をつぶさに
取材された。昭和45年には、読売を退社され、政治評論家としてテレビラジオでも
活躍、ベテラン政治記者の目から見た“自民党戦国史”の時代を庶民にもわかりやす
く解説した。
 実は私事になるが、筆者も大学の大先輩として、また放送人政治懇話会という、宮
崎さんが主宰した政治研究会、別名“宮崎学校”のメンバーとして、格別の薫陶を受
けた一人である。それだけに、天寿とはいえ、その逝去は残念でならない。
  
 宮崎さんは政党政治の要諦を把握していた人であった。政党の筋(すじ)というものを重ん
じる人であった。特に近年の政党の離合集散をながめるにつけ、その筋を曲げた政党
の理念なき合併を慨嘆していた。宮崎さんの政党論は年季が入っていた。何しろ、戦
前の大政翼賛会の前に、政党が一斉に解散した時、これに抵抗した、早稲田出身の政
治家、中野正剛が結成した政党「東方会」を賞賛した、というのだから歴史がある。

 宮崎さんの瞠目すべきところは、55年体制からそのまま残っている政党は自民党
と共産党だけだとして、晩年は共産党を大きく評価し、赤旗にも執筆するかたわら、
「赤旗まつり」にも招かれ、講演したこともある。保守の政治評論家ながら、宮崎さ
んにとっては、イデオロギーはあまり関係なく、持論の政党が筋を通すことを大事に
したのだろう。その「しんぶん赤旗」も宮崎さんの厚意に報いるべく、今月12日の
紙面で宮崎さんの逝去を大きく取り上げていた。また、4月号の「月刊日本」も「故
宮崎吉政さんを偲ぶ」と題して、特集でその死去を悼んでいる。

 その「月刊日本」3月号には、「朝日新聞の社論に屈伏した読売主筆 渡辺恒雄君を
叱る」と題して宮崎さんが一文を寄せていた。ナベツネ氏は、宮崎さんが読売時代、
政治部の後輩として面倒をみてきたそうだが、そのナベツネ氏が朝日の若宮啓文主幹
と対談して、朝日、読売の共闘宣言を行ったことを叱ったのである。これが宮崎さん
の最後の絶筆となった。

 宮崎さんは「政党の筋」、「憲政の常道」を重んじる、古いタイプの政治評論家であ
った。恐らく宮崎さんのような政治評論家はもう出ないであろう。また、「小泉劇場」
のように、政治の中味があけすけになり、政治家自身がタレント化してきた現代では、
政治評論家といっても、テレビで媚を売る“電波芸者的”評論家しか需要がなくなっ
てきているのが現状だ。宮崎さんの逝去は、古い、正統な政治評論が終焉したことを
告げる一事かも知れない。

 故宮崎吉政さんを「偲ぶ会」は、4月21日、東京・内幸町のプレスセンターで
行われる。 

西山弘道;
ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒業後、文化放送で30数年、放送記者として
活躍。政治担当として、三角大福中、安竹宮の「永田町戦国史」を取材。
2005年10月、文化放送を退社、以後フリーのジャーナリストとなる。

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1.書評の書評:「論座」に掲載された「マオ」の書評(「マオ」 ユン・チアン、土屋京子訳、講談社)
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「歴史を逆さまから読めば、このようにも読めるものだというのが読後の率直な感想
だった」と、朝日新聞社発行の月刊誌「論座」で、加々美光行愛知大学教授が書いている。
講談社から翻訳の出たユン・チアンの毛沢東の伝記「マオ」に関する書評の冒頭である。

  「歴史を逆さまから読む」というのは、もちろん「中国共産党正統史観をさかさまか
ら読めば」という意味である。私のような素人から見れば、そうすれば、さぞかし本当
のことが書いてあるだろうとしか思えないが、加々美氏のような方から見れば、違う。
あたかもご本尊を傷つけられた信徒のごとく、しかしながら、そのご本尊も、すでに
だいぶ鍍金が剥げてきたことを認めざるを得ないが、あくまでも宗派を守らざるを得な
い信徒のごとくに、やるせない筆致で異端の書「マオ」をやっつけなければならない。
このような場合、党派的な学者のやることは、まず、当該の本が「学問的でない」と宣言
することである。

「本書の最大の特徴は、戦後、全世界の範囲でなされてきた中共党史研究、中国革命
史研究、毛沢東研究、中国経済研究、文化大革命研究等々の分野の膨大な成果を
ほとんど参照せず、しかも事実上、多くの部分でその成果を否定している点にある」と
加々美氏は、かなり威張って書いている。どうだ、恐れ入ったか、この本は、素人の
書いたつくりごとだ、とおっしゃりたいのである(先生自身は「ドキュメント・フィク
ション」という英語では通じないおかしな言葉を使っている)。しかし、ずらずら、なん
とか研究、かんとか研究と並べたわりには、具体的にどこをどう「否定」しているのか、
さっぱり書いてはおられない。第一、「全世界」的に、そんな「研究」なるものが行われ、
「膨大な成果を挙げている」なんて、誰も知らない。私のような素人だけでなく、中国
現代史専門の先生も知らないのではないか。なぜなら、翻訳の「マオ」の「訳者あとがき」
には、「早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授の天児慧先生には、原稿を細かく
チェックしていただいたのみならず、本書が中国研究者の目から見てもいかにショッキ
ングな内容であるのか、これまでの中国研究の基礎に立って本書をどうとらえるべき
であるか、など、広く深いご教示を賜った。最大級のお礼を申し上げたい」と、最大級
のお礼の言葉が書かれてあるからである。

天児先生といえば、いまや売り出し中の現代中国専門の学者、学生を北京に連れ
て行きながら、いかに日本がひどいことをしたか、慙愧の涙を流しつつ、その罪を償う
ため、「東アジア共同体」論を、朝日新聞と一緒におし進めているお方である。そんなに
「膨大な成果」をぜんぜん参照していないような、ひどい本であるなら、まず、まっさき
に訳者の土屋さんに、この本はひどいガセ本ですから、出版されないほうがいいですよ、
ぐらいは、言うべきお方である。しかし、お名前まで出されている以上、本書には毛沢
東の伝記として出版価値があると判断されて、いろんな「ご教示」を与えられたのであ
ろう。「ショッキングな本」ですませられるものではない。はたして「膨大な成果」なるも
のの実体は何なのだろうか。

加々美先生は、「私は本書の解釈に与しない」と、書評の最後に書かれている。信徒
の信仰告白である。そして、次のようにも書かれている。「毛の根本の誤りは、第3
世界の困難を過度の理想主義によって克服しえると夢想した点にあると私は考えるから
だ」と。
爆笑せざるを得ない。おお、ロマンティックな理想主義者、毛沢東よ。彼は、「理念
や思想は優れて」いた。「理想も持っていた」。だが、もし過ちがあるとすれば、彼
の「社会主義」は「理想主義に過度に偏した」ものだったのだ!
いまだに、こうした夢から覚めない人たちがいる。安楽椅子に座り、「膨大な学問
的な成果」を参照しながら、一度も自分のご本尊に対して、つきつめて考えたことの
ない人々。「理想はよかったが、やり方はまずかった」で、すますことのできると考えて
いる人々。「学問的でない」といえば、みんな恐れ入ると考えている人々。
「マオ」の言いたいことは簡単である。毛沢東は「20世紀の指導者の誰よりも多い7
千万の人々を死に追いやった」ということである。加々美氏には、「膨大な学問的な
成果」で、この事実を否定していただきたいものである。あるいは「過度の理想主
義」のため、
それだけの数の人が死んだのだろうか。だとすると、死んだ人々も浮かばれまい。それ
とも理想のためならば、人間など何人新でもかまわない、と考えておられるのだろうか。

松永太郎 評
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2.書評 円を創った男 小説 大隈重信 [著]渡辺房男 文芸春秋 1900円
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円という貨幣の創出という切り口から明治維新の一局面を描いている。
大隈重信は亜流の佐賀藩出身で会計に通じ長崎で活躍した。貿易に携わった経験より外交
の基本である交渉術を身につけた。弱冠の身でありながら、老獪な英国公使パークスに一
歩も引かない駆け引きを行うあたり、このころの外交官がいかに国益を重んじ、交渉の手
練手管、交渉の流れを自分なりにシナリオを頭に描きつつ咄嗟の判断と体全体からくるオ
ーラで相手を自分のペースに持ち込んでいく巧妙さは見事だ。これに引き換え嘆かわしい
今の外交官僚の姿を思い浮かべる。大隈に限らず戦前は職人芸ともいえる外交官がふんだ
んに日本にはいた。咄嗟の機転ができる直感や経験や知識の積み上げのないサラリーマン
根性の外交官などが日本の国益外交などできるわけもない。
 
かかる実績をもとに叩き上げていく、痛快で傍若無人な大隈の姿を慶応4年から明治4年
(1868−1871)に光りを当てて描いている。
政府紙幣発行により現在のデフレ脱却かつGNP向上を主張する経済論を唱える日本の経済学者
もいる。福井藩で財政立て直しの実績のある光岡八郎が成功例で引用されている。いわゆ
る当時の政府貨幣という太政官札という不換紙幣である。福井の規模で成功したので、こ
れを政府という桁違いの規模で行い、結局は贋金の乱造を呼び国際信用を落とし政府収支
は破綻してしまう。大隈がこの財政破綻を救うべく福井の実績などで名をあげた傲慢不遜
の光岡と火花を散らす論争の様子など面白い。結局大隈は日本国の近代貨幣である円を
10進法にて創造して国際的信用を回復し財政破綻を救う。隠れた大隈のエピソードがこ
の本の一読に値するところだ。

奥山篤信 評

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