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ぶんぶん便 No.236
発行日時: 2004/11/23■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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■■■ 「ぶんぶん便」 2004/11/23 No.236
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作/者/か/ら/
取材の仕事で、アーチェリーの銀メダリスト山本選手にお会いしました。
テレビではいつも底抜けの笑顔で、人のよさそうな「中年のお星さま」
というイメージでしたが、お会いしてみると違うんです。
すらりと背が高く、ダンディな物腰。洗練された紳士なの。
単刀直入に言えば「きれい」なんです。
『007』の頃のショーン・コネリーみたいです。
映画の試写や記者会見で、俳優さんをお見かけする機会がありますが、
山本選手の美しさは映画俳優を越えてます。
ちょっとびっくりしたので、みなさまに言いたくなっちゃいました。
ヨン様よりヤマ様ですよ。
――C―o―n―t―e―n―t―s――――――――――――――――
■ 石焼き芋を追いかけて(今週のコラム)
□ ぶんぶん気まぐれフォトルーム
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■ 石焼き芋を追いかけて
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松茸の季節だとか、牡蠣がおいしいと言われても
よくワカラナイんだけど、
石焼き芋の季節というのは、リアルにうれしい。
それは秋から延々と来年の春まで続くが、
私としては、なんとなく、年末が1番盛り上がる。
商店街がクリスマスケーキを売りつくすのに躍起になっている最中、
路上駐車した屋台の赤い旗を見かける。
ふだんは「やきいもォ〜」と大音響なのに
クリスマスソングに気を使って、ひっそりと煙をはいている。
小さい頃、母は厳しい顔つきでこう言った。
「お祭りの食べ物は衛生的ではない。一切食べてはいけません」
リンゴ飴もみたらし団子もカルメ焼きも見るだけで我慢した。
お祭りに厳しい母は、なぜだか日常の中で、
屋台のおでんと石焼き芋は買ってくれるのだ。
祭りのリンゴ飴と日常の石焼き芋の衛生上の違いって、何だろ?
たぶんそれは母の「気分」なのだ。
一般的に衛生観念って、気分や気休めなところがある。
三秒ルールって知ってる?
『落ちた食べ物も三秒以内に拾えば食べても大丈夫』なルール。
これ、若い人の間で浸透しているライト系ルールで、
食べ物を大切にする、なかなか美しい精神ではないか。
「石焼き芋は高い」と母はよく愚痴っていた。
「3本ください」と言うと、天井知らずなので
「500円ぶんください」と注文する。
すると1本はマトモだが、あとはカスみたいな芋が
2本ほどオマケに付いてくる。
新聞紙に包まれた焼き芋は、インク臭く、焦げ臭く、香ばしい。
母は石焼き芋を持ち帰ると、新聞紙をちゃぶ台に広げて、
あかぎれの太い指でグワシとつかみ、ガッと割る。
すると白い湯気が、わ〜っとたちのぼり、
いいようのない平和と安心が私を包む。
石焼き芋の難点は、神出鬼没という営業形態だ。
屋台の営業時間は「寒い日の夕暮れどき」であって、
場所も日程も不明確である。
「いつも夕方そこの路地に来て売ってるよ」という場合も
暗黙の了解であって、営業時間を明確に提示してるわけではない。
行き当たりばったりにしか手に入らない極めて貴重な食べ物なのだ。
松茸の土瓶蒸しなんざ、行くところに行き、
出すものさえ出せば、必ず口に入る。入ったことないけど。
石焼き芋に比べ、かなり敷居の低い食べ物と言える。
近頃は屋台ではなく、軽トラックが主流だ。
「い、も〜」という音声を聞いてすぐに家を飛び出しても、
はるか彼方に行っちゃってる場合が多い。
娘が5才の冬のこと。無性に石焼き芋が食べたくなった。
食べたいのは娘ではなく、この私だ。
女30才にして急性石焼き芋中毒になる。
家で焼くガス焼き芋ではだめなのだ。
あくまでも石焼き芋。インク臭付でなければだめ。
その時住んでいた土地では、定期的な販売ルートはなく、
ひと冬に数回、来るか来ないかの屋台を
耳を澄まして待つしかなかった。
ある寒い晩のこと。
風呂上がりにかすかに聞こえた。
「い〜し・や〜き・いっも〜。やきたてっ」
全身に鳥肌が立つ。
石焼き芋購買欲がムラムラとわく。
私は精神にハチマキをしめ、パジャマにセーターをかぶり、
娘にジャケットを羽織らせ、家を飛び出した。
「い〜し…」
声は意外と小さい。なんだかえらく遠くなったようだ。
これは手分けしないとつかまらないぞ。
街灯のある十字路に娘を立たせる。
「あっちに見えたら教えて。私はこっちからまわってみる!」
と指示して、サンダル履きで走る。
「や〜き…い…」
今度は見当違いな方向から聞こえる。
きびすを返し、反対方向へ走る。
「も…」
走り回ってるうち、とうとう何も聞こえなくなった。
がっくりして足元を見ると、サンダルから覗く足の指は
寒さで赤く腫れ、土まみれである。
ふと見ると、路地で娘がひとり寒そうに立っている。
「こっち…こなかったよ…」
けなげに報告する娘の息は白く、湯ざめした唇が紫色だ。
なにやってんだろ。あんた母親でしょ?と、自分を責める。
母として後悔するものの、買えなかった悔恨がそれを上回る。
ああもう、このシーズン石焼き芋は手に入らないかも。
娘の手を握りしめ、とぼとぼと家に向かう。
「ざんねんだったね、ママ…」
娘は母の心情を思い、歯をガチガチさせながら、なぐさめる。
私はこの時の自分の石焼き芋への執着を
「赤ちゃん返り」と分析している。
小さい頃、母が買ってくれた石焼き芋を
今さらのように、食べたかった。
平和と安心に包まれたかったのだ。
誰しも昔は子供だった。
みなちょっと背伸びして、親というものをやっている。
親稼業って、うっすらとした緊張が延々と続くものなのだ。
時にはガクンと脱力し、赤ちゃん返りしたくなる。
そんなオトナコドモの私に娘は小さな体を預けている。
つないだ小さな冷たい手が私の手の中で少しずつ暖まる。
私はオトナで、娘はコドモで、守るべき存在だと実感する。
「もういっかい、お風呂入ろうか」
娘は無言で頷いた。
近頃の私は、この時ほど石焼き芋にこだわらない。
最近は母親業も板につき、赤ちゃんに返ることはない。
ガス焼き芋でじゅうぶんだ。
家のオーブンで焼き、あかぎれのない細い指で、さくっと割る。
すると白い湯気が立ち上り、そのムコウで高校生の娘は苦笑いをする。
私も照れ笑いをする。
「大きくなったね」と私は思う。
「オトナになったね」と娘は思っている。たぶん。
あの晩食べられなかった石焼き芋。
食べられなかったから、私は今でも覚えている。
寒くて辛かったから、娘もいまだに覚えていると言う。
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□ ぶんぶん気まぐれフォトルーム
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◇本日のフォト タイトル『 パキラ三七五 』▼
http://homepage1.nifty.com/jyk/js2/bbp003.html
5年前、近所のスーパーの駐車場でひなびた鉢植え市があり、
片すみに小さなパキラがひと鉢売られていた。
パキラと言えば、観葉植物の代表選手だが、
これはちょっと違っていた。
死んだような白い切り株からぴよ〜んと1本、緑の枝が伸びている。
その先に、てのひら状の葉が一枚、パーをしている。それだけ。
切り落としたハンパもんの株を「捨てるよりマシ」と挿し木して、
売っちゃえって感じ。そんなんで商品?
375円の値札すら荷が重そうだ。
でもそのパーがね。
私に向かって手を挙げてるみたいに見えたの。
立候補するなんて、植物にしては積極的態度だ。
では積極性を買いましょう。
一週間はもつでしょ、と持ち帰った。
ところがすごいんです、こいつ。
たまに水をやるだけで、じゃんじゃん葉が茂る。
水と日光だけで5年ものあいだ成長し続けている。
もうなくてはならないわがやの一員だ。
あとから来た猫の「いなもと」もパキラには一目置いてるようで、
イタズラもせず、かしこまって隣に座る。
いなもとはむしろコンピュータにライバル心を持っているようで、
キーボードを歩いたり、先日はあろうことか、マウスパッドに
小さな池を作りやがった。ほぼいやがらせ行為だ。
いなもと1歳オス雑種。栗畑出身。
パキラ三七五(さんななご)駐車場出身に比べ、
こちらは少々手がかかる。
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