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ぶんぶん便 No.226

発行日時: 2004/9/14

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■■■    「ぶんぶん便」  2004/9/14  No.226
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  作/者/か/ら/


わがやの猫いなもとは、相当ヒマなようです。

夜中に障子を駆け上がります。

障子は風通しがよくなり、私の心はびりびりです。

ヒマだとグレる。じゃ、クラブ活動でもさせようってことで、
芸をしこむことにしました。

ところがいなもとは、才がないようです。

いろいろ試してみましたが、聞く耳をもちません。

娘は考えました。「名前を呼んだら来る。という芸にしよう」

芸のランクは測定不可能級に下がりました。

そもそもこれ、芸って言えます?

エチケット。じゃないですか? 

呼んだら来る猫とお暮らしのみなさま、
その幸せを心からおうらやみ申し上げます。



――C―o―n―t―e―n―t―s――――――――――――――――


■ 機種変レクイエム(今週のコラム)

□ シネマ de ぶんぶん  


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■ 機種変レクイエム

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携帯電話を機種変更した。

携帯電話を持たない人に説明します。
通信会社との契約はそのまま継続して、機器を買い替えること。
で、いいのかな?

一般に「機種変」と言われる。
電話番号は変わらないから、気軽にどんどんできる。
多機能かつ高性能の機種が次々発売されるから、
どんどん買い替えて、どんどん試してる人もいるみたい。

機種変、私は今回が初めてだ。
携帯電話については、なんどもぶんぶん便で書いている。

「便利だろうけど、必要ないから、持ってない」時期が長く、
「必要になって、持つことにしたが、しょっちゅう電源を切ってるので、
結果的に人に迷惑をかけている」時期に入り、現在に到る。

携帯を使い始めたのは3年前。
店頭にある朴訥(ぼくとつ)な顔をした機器を選び、
「これ」と言ったら「タダです」と言われた。

駅前で配られるティッシュ同様、
タダで貰われて来た朴訥くん。

老眼対応なのか、やたら字が大きい。
多機能のムコウをはる少機能で、つまり単純で、ラクちんだ。

試写室にいるときは、マナーモード(着信音が鳴らず、ぶるぶる震える)
にせず、電源を切ってしまう。

「なにか連絡が入った」と肌で感じると、落ち着かない。
気付くと確認したくなり、試写を断念して途中退室したことがある。

それは確かに急を要する電話だったが、
とり損なったって、人が迷惑するだけで、地球が滅亡するわけじゃない。

ヒトは常にスタンバっている必要はない。
留守になる権利って、大切な気がするの。

集中したい時は、電源を切る。
夜もそう。寝る前に電源を切る。

切る瞬間が好き。
「おやすみ…またあした」とつぶやきながら、
すうっと意識を失う朴訥くんを静かに看取る。

当初からかなり古い機種だった朴訥くん。
近頃、データのやりとりに不都合を生じてきた。
ひとさまの高性能機種がくりだす技に、対応できないのだ。

気のいい朴訥くんだが、あくまでも通信機器なので
通信(人とのやりとり)に不都合をきたせば、いたしかたない。
思い切って、機種変に踏み切ることにした。
朴訥くんを見限ったのだ。

新機器情報に詳しい高校生の娘にアドバイスを受けながら
「ちっちゃくって、たたまなくて済むナイスガイ」に決定。

カメラ付きだ。
ちっ、さっそく余計な機能が付いている。

タダじゃないからサービス精神旺盛だ。

多機能高性能には、それなりの脳が必要だ。
脳がそれなりではない私は、あーだこーだ小技を体得するのが
ひっじょーにうっとうしい。

「JUNKOさん、うれしくないの? せっかくの機種変なのに」
娘は口をとがらせる。
新機種がうらやましいみたい。

生まれた時から自動販売機があり、コンピュータがあり、
リモコンに慣れたこの世代は、メカ類を自分の手足のように自在に扱える。
「いろいろ設定やってあげようか」と親切にあれこれやってくれる。

私はメカ類が苦手。ファミコンなんてマザコンくらい苦手。

娘がはしゃいでる。
なのに私はゆーうつだ。ゆーうつすぎる。

「めんどくさいの。新しいものに慣れるのが」
そう言ってみたが、少し違うような気がする。

「結構、気に入ってたの、古いやつ」
そう言ってみたら、ちょっと近付いたような気がする。

思い出した。
似たような感覚を。
再婚する直前の心境だ。

別れのあとに、新しい出会いがあって、
その人との未来に明るいものを感じていた。
でも悲しかったんだ。
新たなスタートが近付けば近付くほど、どんどん悲しくなっていくんだ。

なんでって?

再婚したら、離婚がリアルになるからだ。

絶対別れたくない!という相手と別れなければならないとき、
私は心の奥で、自分にこう言い聞かせたの。

「妻ではなくなるけど、彼の元妻という事実は一生変わらないよね」

その思いを頼みに、ようやっと離婚した。
籍を抜いた後も、それを支えにしていた。

陸地の見えない大海で、モトヅマという浮き輪にしがみつき、
足はバタバタしてるんだけど、手を放して泳ぎ出せない…
そんな感じ…。そんな感じだ!

海底にすうっと吸い込まれそうになると、
「わたしは○×のモトヅマ。○×のモトヅマ」
そう自分に言い聞かせて、落ち着こうとした。

もちろん、そんなことは誰にも言えない。
言ったって、軽蔑されるだけだ。
ひとは、ひとに、潔さを求める。
そしてひとは、簡単にひとを軽蔑するものだ。

元夫が再婚しても平気。私の中で、モトヅマという事実は変わらない。
でも私自身が再婚すると、変化が起こる。

♪コレッキリコレッキリモウ、コレッキリぃですか?…はいそうです。

私にだけ見えている細い糸が切れる。
そのことが、怖かった。

明日は結婚式という日の夜。
電話が鳴った。
出ると、元夫からだ。
心臓がゴトゴトいう。

「フェレット預かってくれない?」
元夫は意外なことを言う。
「出張で、留守にするんだ。その間、そっちで預かってくれない?」

元夫は離婚した後、二匹のフェレットを飼い始めた。
娘が来る時、喜ぶからという。

私はその時、全天候型アパートに住んでいた。
大雨の日は小雨が降り、外が30度になると室内も30度になる。
そんな安普請のアパートだ。
ペットは厳禁。カメを飼うのも息をひそめているんだ。

しかも明日は結婚式である。
そしてそのことを元夫は知っている。

「フェレット、預かってほしい」
「……」

窓から星が見える。
明日はいい天気になりそうだ。

「無理だよ…預かれない」と、言ってみた。

「……。ん、わかった」電話はかちゃりと切れた。

細い糸が切れた。


「ちっちゃくって、たたまなくて済むナイスガイ」は高性能だ。
でも宝の持ち腐れなの。
彼の実力は私の脳に合わせて20%しか発揮されない。

彼は5分の1の実力で、手を抜くことなく、精一杯働く。

「ベンチがアホやから野球ができん」と、かつて阪神の江本投手はのたまった。
「持ち主がバカだから実力が発揮できん」なんて下品なことを
ナイスガイは口にしない。口が無いからだけど。エラい。

私の人生を貫く「だんだん大好き」の法則で、
私はこの「ちっちゃくってナイスガイ」がもうすでにだんだん大好き。
機種変を後悔したりはしない。
でも「やってうれしいはないちもんめ」という心境ではない。

朴訥くんとの思い出は、ふとした瞬間に頭をよぎる。
ひらべったくて、ぬるくてゆるくて、あくびみたいな関係だった。
その不器用さも、無駄な重さも、けして嫌いじゃなかったよ。

鳴ることのない朴訥くんをてのひらに乗せてみる。
ゴーヤに似た苦味がすっと口に広がる。


2ドアの冷蔵庫は超不便だ。
三菱自動車はもううんざりだ。
それでも捨てることなく、もうちょっと、もうちょっとと、使い続ける。
「体力の限界。サラバ」と彼らが力尽きるまで、
私はとことんつき合うつもり。

出会いの喜びより別れの辛さをより大きく感じてしまうんだ。
ずりずりずりずり引きずるんだ。
そうゆうのはネガティブとされ、駄目の代表みたいに言われる。

サヨナラの苦味をちゃんと覚えていよう。なんてさ。
ウェッティな女が、湿度80%な人生を、カラダじゅうカビだらけにして、
それでも結構笑いながら、…送っているんだ。



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□ シネマ de ぶんぶん  

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『僕はラジオ』アメリカ (原題:ラジオ)
 9/25〜シャンテシネ 全国順次ロードショー
http://www.sonypictures.jp/movies/radio/index.html
出演/キューバ・グッティング・ジュニア、エド・ハリス、デブラ・ウィンガー


【JUNKOの感想】

たとえばこんな映画紹介文があったらどうする?

「知的障害を持ち、学校にも行かず、ラジオだけが友だちだった
 黒人の青年が、近所の高校のアメフトチームのコーチと出会い、
 チームの世話係を頼まれる。明るく誠実な彼はみなに「ラジオ」
 と呼ばれ、やがて授業にも参加、毎年2年生に在籍することに。
 彼は今もアメフト部の名誉コーチとして、活躍している。
 この実話が映画化した」

どうどう? 見たい?

「よくある障害者ドラマね」と思い、
『忍者ハットリくん』に行っちゃう?

『忍者ハットリくん』見たいよね。私は見たいよ。

でもこれ、『僕はラジオ』はね、実はとてもいいの。
邦題はどうかと思うけど、なんといっても、しょっぱながすごいよ。

私が死ぬまでにやってみたいことベスト10のひとつを
いきなりやっちゃってくれちゃうんだから。
ベスト10だよ、死ぬまでにだよ、それをさ、
オープニングで、ぱっとやってくれちゃうの。…シツコい?

それはね…
スーパーにあるカートに乗って、坂道をずっさー、とかけ降りる。っての。

やってみたくない? やってみたいでしょ!

やるのよ、この映画。
しかも出し惜しみナシのしょっぱなで! …シツコい?

面白い映画って、しょっぱなが断然面白い!ものなの。
最初がイケてれば、最後までイケてるの。
これは予感ではなく、定理だ。
最初のシーンにどのカットを選ぶか。
その監督のセンスが自分にどんぴしゃり、ってことだもの。

映画の内容はね。
障害者に手を差し伸べる健常者のコーチが偉い。って話に見せかけて、
実はそんな、うすっぺらじゃないの。

24時間テレビで黄色いTシャツ着てぎゃあぎゃあ騒ぐのとワケが違うの。

24時間テレビ。27時間テレビ。ああゆうの、見てらんないよ。
障害者と健常者をきっぱりわけてさ。
障害者と結婚する健常者はエラい。みたいなドラマをもってきたりして。
どこがエラいの? 互いに好きで結婚するだけじゃん。

24時間も叫んでると頭がニブくなるのか?

この映画は違う。
コーチがラジオに声をかける動機が、せつなくて深い。
コーチの職を辞しても、ラジオの人生を守ろうとするが、
そうしないではいられない動機が、彼にはあるんだ。

しかもそれが「ドウダ!」じゃなくて
さりげなく後半にそっと語られる。

誰もそんなに立派じゃないんだ。
ちょっと「思い直す」だけで、ハッピーになれる。

試写を観終えて、びしょびしょ顔で、写真をもらってきた。
ぜひ読者のみなさんに、紹介したくてね。
カートに乗ってる写真じゃないのが残念だけど、
そのシーンは劇場で観てね。

写真↓
http://homepage1.nifty.com/jyk/js/31.html


デブラ・ウィンガーが出てます。
ここも、注目。
彼女は『愛と青春の旅立ち』でばりばりに有名になり、
売れてる最中に、ハリウッドの世界に疑問をもって、
「人間らしい家庭生活がしたい」と引退しちゃったの。
今は好きな作品にだけ出演してる。

自分を賞賛してくれる場所を「変な世界」と思えるとこが、スゴい。

イチローが大リーグに「こんなとこ、いられっか」なんて
言うわけないもんね。

普通生活人を経て、彼女はものすごく綺麗になってる。
彼女の顔を見ると、普通の大切さに納得がいきます。



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ご意見ご感想お待ちしてます。
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執 筆 者● 大山淳子 RXE01422@nifty.ne.jp
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