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ぶんぶん便 No.73

発行日時: 2001/12/22

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■■■    「ぶんぶん便」  2001/12/22 No.73
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 作/者/か/ら/

子どもの頃、雨が好きでした。
足が遅い私は運動会が嫌いで、前の晩は必ず雨乞いをしました。
にもかかわらず運動会はいつも晴れです。不思議です。
雨は忘れた頃に突然やってきて、そんな日は外に遊びにも行けず、
ざあざあという音を聞きながら、ひとり本を読みました。

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■ 本と私

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文章を書く事は天職だ。と思っている。
ハタから見れば勘違いかもしれないが、自分はそう信じてる。
あまったるくてヒットしなかったバレエダンサーの映画
『センターステージ』(ビデオレンタル中)、
ひとつだけ心に残るシーンがある。
天才少女がバレエをやめる時、母親に言うの。
「私は得意なことをしたいんじゃないの。好きなことをしたいの」
名言である。
彼女は天分のあるバレエをやめ、女の子に戻る。
一方、私は好きだから書く。天分がなくても書く。
文章力なんてサ、後から付いて来い。てなもんだ。

書くことが好きだから読むことも好きだ。
が、今まで「本」について書いたことがない。
書評を書いたことがない。
私と本との関係はちょっと変則的だ。

幼い頃、両親が買い与えた絵本を兄は開くこともせず、積み木で遊んだ。
私がその本をかすめ取り、しつこく母にせがみ読んでもらった。
何度も何度も読んでもらった。
鉄腕アトムの絵本で、ひらがなの「そ」の字の表記が他の本と違っていて
いつもそこにひっかかって「これもそ。これもそ?」とぶつぶつ言ってい
たという。

妙なことにひっかかるクセがある。
例えば「先(さき)」という言葉に疑問を持った。
物語の先を読み進む、という場合の「先」はラストを指すし
先に読むのは始めのページである。
先という言葉はベクトルによりものごとの始まりも終焉も表す。
という大人の判断を下せない幼稚園児の私は、矛盾に頭がクラクラして、
さめざめと泣いた。変なこどもだ。

小学生になると、「月1冊好きな本を買ってあげる」と母に言われた。
貴重な1冊である。私は本屋で一番重たい本を選んだ。
世界児童文学全集の類いで、4段組で字が小さく、物語がいっぱい詰って
いる。最初にページをめくる時、ぺりっと、真新しい紙の匂いがした。
小公女、アイバンホー、家なき子などをわくわくしながら読んだ。
すぐに読んでしまって、1ヶ月間、何度も読み返した。
毎月全集を1冊、予約購入してもらった。
小学4年生の時、本屋が「今月はこれです」と差し出したのは
『潮騒』(三島由起夫)と『しろばんば』(井上靖)のカップリングだ。
母が「潮騒はちょっと、子どもに早すぎませんか?」と言うと
「一応、児童文学全集に入ってるんですから」と店員は答えた。
『潮騒』は、ぴんとこなかった。今でもぴんとこない。
『しろばんば』に強く惹かれた。
それから明治、大正、昭和初期の日本文学にのめり込んだ。

中学時代は、志賀直哉、芥川龍之介、夏目漱石、森鴎外、ほか
童話も漫画も読んだし、小林秀雄、江藤淳の評論も読んだ。
部活動の帰り道、町の本屋の灯りに吸い込まれるように立ち寄り、
気の向くままタイトルで選んだ。
疲れた体に、頭の疲れを追い付かせるみたいに、読んだ。

私の文学の原点はそこらへんにぼんやり、ある。
井上靖の『しろばんば』、『夏草冬涛』、『北の海』の三部作は
何度も読み返した。
モンゴメリの『赤毛のアン』は、セリフをすらすら言えるくらいだし、
特に最後の十話『アンの娘リラ』が好きだ。
どれも偶然出会った本である。ナンタラ推薦図書なんて、知らない。

私は現在ベストセラーになっているものをこれほどには読まない。
読むことは読むが、一回切りで、読み返しはしない。
時間を気分よく消費するだけで、記憶に残らない。
私にとって「読んだ」と思えるのは
何度も読み返して、その空気を吸って、その匂いを覚えている状態だ。

今売れ筋の小説の多くがミステリー仕立になっており、
たちあがりに人や物が消失し、それを探す。
探しながら人と出会い、異次元的な体験もちょっとあったりして
謎解きのラストへ突入する。という仕掛だ。
頭の良い人が書いている。設計図が必要な小説である。
「あっ」と思わせたり、「なるほど!」と手を打つようにできている。
読んでる間は楽しめる。そのようにできている。エンターテインメントだ。

私は文学に設計図を求めていない。
仕掛のサービスなんて要らないのだ。
あるがままのアナタを読みたい、と思う。
寄り添うのは私。あなたは好きなようにしていて。
そんなにアレコレ御馳走を用意しなくても、
最後までつき合うからさ。これが私と本との関係である。

私は作家の造り出す心象風景に溶け込み、息をし、感じ取りたいのだ。
作者が考察すると、私も考察する。
作者が「ある感じ」に落ち着くと、私もそうしてみる。
作家の目線で物事を見て、経験を共有する。
読者の意向など気にせず、書きたいことを書いてるものほど面白い。

志賀直哉や井上靖はそういう傾向だと思う。
自意識が強いがための自然体の文章で、好きだ。
芥川は綿密な設計図による小説で文壇に登場したが
自殺する直前は疲れたのか策を弄せず、かえって面白い作品が多い。

雑草は見てて楽しい。
勝手に生えて、好きなように伸びてる。その様は盆栽より価値がある。

私には本の善し悪しがわからない。
好き嫌いしかわからない。
どの小説もあっていいと思うし、人の書いた文章すべて
どういう文もアリと思う。
文章がうまくなくても、それが味だったり、
私にとって読み難くても、好きな人はいるだろう。と思う。
そもそも文章の上手下手が判断できない。

離婚して職探ししていた頃、友人の紹介で
子どもの通信教育の添削をする仕事に応募した。
国語教師の免許があるので、それが活かせると聞いた。
採用試験は「こどもの作文を添削する」課題だ。
困った。
その作文のどこを直せばいいのか、全くわからないのだ。
子どもらしい文だった。言いたいことは伝わってくる。
そのままでいいと思う。
文のクセもあればあるだけ、かえって良く思えてくる。
結局漢字の間違いしかただせず、仕事は不採用に終わった。

小説も作文もゼロから作られる。まずそこに私は価値を見る。
できた作品を読んで、悪いとケナすのはたやすい。
でも本当に悪い文ってあるのか。
つまらない、読み難い、というのはあっても、
それが絶対評価になるとは思えない。

だから私は書評が書けない。評するなんて私には無理なんだ。
読書感想文なら書ける。感想ならヘリコプターで撒くほどにある。

時々書く映画紹介文も、映画評というより、感想文に過ぎない。
つまらない映画はあるが、個人的感覚でつまらないと思うのであって
それ自体に意味のない作品なんて、この世に存在しないと思う。

『ハリー・ポッター』もぶんぶん便も、存在するからには意味がある。
そこに意味を見い出す人とそうでない人がいる。それだけの話だ…。
                           (ぶんぶん)
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以上「ぶんぶん便」No.73をお届けしました。いかがでしたか。
また次回お会いしましょう!

※バックナンバーは下記URLでご覧になれます。
          http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000037573

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              http://homepage1.nifty.com/jyk/syoko.html

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「ぶんぶん便」2001/12/22 No.73
執筆者●JUNKO RXE01422@nifty.ne.jp
発行責任者● 吉永和夫 yoshinaga@mbe.nifty.com
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