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ぶんぶん便 No.44

発行日時: 2001/8/7

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■■■    「ぶんぶん便」  2001/8/7 No.44
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 作/者/か/ら/
8月になりました。あとひと月で夏とおサラバなんて、寂しい。
私は夏が大好きです。変人?
暑くて暑くて、気が遠くなる日は、「タダでサウナとはラッキー」と思っ
たりして。
太陽電池のごとくパワーを充電。チカラいっぱい文造りに励みます。
文職人JUNKOのくり出す元気、よろしくお受け取りください。

――C―o―n―t―e―n―t―s――――――――――――――――

1 JUNコラム『くるくるぱーが怖くて』
2 ぶんぶん特急『瀕死のちょうちょ』

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■1 JUNコラム/くるくるぱーが怖くて
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子どもって、やたら怖がりである。
暗がりを怖がったり、オカアサンの姿が見えないだけで、泣いたりする。
ま、それはハタから見ててもわかりやすい恐怖だ。
妙なことに怯える子もいる。
それは私。
子どもの頃、常に恐れていたのは「自分がくるくるぱーになっちゃう」
ことなの。

くるくるぱーとは、ワケがわからなくなる状態を指す。
今ではちょっと抵抗感のある言葉だけど、昔は「お前のかーちゃんでべそ」
くらいノーマルな幼児語だった。

病気ではなく、突然頭が真っ白になる。
言葉もわからない、計算もできない、自分が誰かもわからん。
そうなっちゃう自分が怖かった。

頭を強く打つとくるくるぱーになる。
どこかで誰かに言われたらしい。
物心つく頃に固く信じていた。
人一倍運動神経がにぶい私は、よく転んで頭を打った。
鬼ごっこして、鉄棒の下をくぐり、くぐり抜けたと思って上体を起こす。
で、鉄棒に自ら頭突き。なんてことも。馬鹿だよね。痛いのよ、これ。
ドッジボールを、キャッチしそこねて頭に激突、なんてのもある。
どこにぶつけたらどんな痛みを感じるか、ソラんじられるくらい。
やたらめったら頭を打った。
痛みのソムリエだ、まるで。

そこで私は確かめる。
「くるくるぱー」になってないか、自分で検査をするのだ。
1+1=2。
よっしゃ。これができたらもう安心。
くるくるぱーへの恐怖をこうやって排除した。

転ぶたびに1+1=2。
ぶつかるたびに1+1=2。
5歳の私がそれを「ぱーじゃない」メドにするのはわかる。
中学生になっても1+1=2。
できたからって安心して大丈夫?
2次方程式くらい解かないと、マズイんじゃないの?

イエイエ、これはオマジナイなんだ。
痛いの痛いのとんでいけ、みたいなもの。
今でもゴチンとすると、発作的に1+1=2。とつぶやいてる。
あと30年もすれば、ボケ進行検査となるだろう。
1+1=2。が言える限り、降りる駅を忘れても、孫の顔忘れても
住所がわからなくなっちゃっても、「私は大丈夫」と思ってしまうんだ。
しあわせなお婆さんになれそう。

私が恐れていることの本質は何だろう。
自分ひとり、皆の話がわからない。
皆がすることが理解できない。そこにある「孤独」が恐いのだ。

それは現実的な孤独だ。
多くの人々が「コレはコウ」とする常識が、時に、全く理解できなくなる。
株の売買がわからない。
人気爆発小泉総理の「痛みを伴う改革」もわからない。
デフレがそんなに悪いこととも思えない。
先進国である必要も、金メダルの「数」の意味も、わからない。
便利が良い、早いは偉い。という基本がもう、わからないのだ。

街の中で突然、私は孤独になる。
車やカーナビや携帯電話やシャネルや核兵器が頭の上をぐるぐる回って
それらすべてが理解できない存在になって、泣きたくなる。
とうとう、くるくるぱーになっちゃったんだ。と思う。
1+1=2。
ああ、まだ大丈夫。私は気を取り直して、歩き始める。
すべてをわかったオトナの顔をして、大都会を皆と同じ早さで歩いていく。
横にいる颯爽としたその人も、2×3=6。
なんてつぶやいているのかもしれない。と思いながら。  (ぶんぶん)
                            
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■2 ぶんぶん特急/瀕死のちょうちょ
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朝、駅の昇りエスカレーターに乗っていた。
すると背後から声をかけられる。
「これ、直していいかしら?」
振り向くと銀髪の婦人が私の腰を指差している。

その日私はデニムのロングスカートを履いていた。
ウエストでヒモをきゅっとしぼり、後ろで蝶結びをするデザイン。
その蝶が立て結びになっているのだ。
エスカレーター下段にいた婦人の、ちょうど鼻先に瀕死の蝶がいるわけ。
直したくもなるよね。

「お願いします!」と言って、神妙に前を向いた。
婦人はさささ、きゅきゅきゅ、しゅしゅっと手早く蝶結びをこさえた。
見事な手さばきだ。女のプロ、て感じだ。
「ありがとうございます」お礼を言うと、婦人はニヤリと笑った。

幼い頃、夏になると、母に金魚模様の浴衣を着せてもらった。
仕上げに赤いへこ帯を結んで貰う。
その時の神妙な気分を思い出す。
お礼も言わずに飛び出して、庭をかけまわったっけ。
かけまわるうちにほどけて、半べそかきながら母のもとへ走り、
結び直してもらう。
あの時はできなくて当然だった蝶結び。今もできないとは何事か。

そう。
たまたまこの朝、失敗したわけじゃないの。
私はいまだに蝶結びがうまくできない女なの。

蝶結びって、出番が多い。
友人へのプレゼントのリボンとか。
必ず失敗して、結び直すのだけど、うまく結べなくて、
何度かやるうちに、偶然、できちゃう。
その偶然の産物が友人宅へ届いてるわけ。
「いつかちゃんと結び方を理解したいものだ」と思いつつ、
棚上げにしてこの歳になってしまい、もう聞くのも今さらだし、
このままにしちゃおうと思っている。

蝶結びには因縁が有る。
あれは幼稚園に入る前のこと。知能検査を受けさせられた。
入園テストみたいなものだろう。
丸を描いたり、数をかぞえたり、絵を見て「チューリップ」と答えたり。
4月生まれの私はその学齢にしてはサカシゲで、できないものはない。
最後、男の人4人の前に呼ばれ、1本のヒモを渡され
「蝶結びをやってごらん」と言われた。
しまった。できないよ。しかたない。
「蝶結びはできません」と答えた。
蝶結びという言葉を知っていて、それができないという認識が有り、
オトナに伝えることができる。それだけで十分だったようだ。
「いいよ」と言って帰された。入園テストは合格だ。
誰も落ちない近所の幼稚園だけどね。

蝶結びはできなくても許される。心にしっかりと刻まれた。
あれから35年も立つのに、未だにできないとは、自分ながらあきれる。
できなくて、何度もやり直す時、あの時の声が聞こえてくる。
「いいよ」
あ、そう?「いいかあ」と思う。
おそらく、ほとんどの日本人はできる。
私ひとりできなくても世の中は困らないだろう、と思う。

きっと、ものの2分で覚えられる他愛のない結び方だ。
ものの2分を棚上げにし続ける私の根性って、すごい。
根性が腐りきっている、との表現を借りれば、もはや発酵して、
うまいものに変化してるかもしれない。
2分をケチって、35年。気が短いんだか長いんだか、わからない。  
                           (ぶんぶん)
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以上「ぶんぶん便」No.44をお届けしました。いかがでしたか。
また次回お会いしましょう!

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「ぶんぶん便」2001/8/7 No.44
執筆者●JUNKO: RXE01422@nifty.ne.jp
発行責任者● 吉永和夫: yoshinaga@mbe.nifty.com
連係HP●『ぶんぶん館』 http://homepage1.nifty.com/jyk/

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