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ぶんぶん便 No.10
発行日時: 2000/10/1■■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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■■■ 「ぶんぶん便」 2000/10/01 No.10
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作/者/か/ら
自分のアタマで考えるというシンプル手法を貫き、ぶんぶん頭をフル回転。
文職人JUNKOの職人芸を御賞味ください。
常識のウソ、社会の矛盾、笑いと元気と、ついでに自分も、発見しよう。
――C―o―n―t―e―n―t―s――――――――――――――――
1 JUNコラム『シドニーのグッドデザイン』
2 ぶんぶん特急『夜のひまわり』
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■1 JUNコラム/シドニーのグッドデザイン
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オリンピックをそこそこ観た。
勿論自宅で、仕事や用事を優先した上での観戦だ。
開会式は見逃した。その日は世田谷美術館で開催中のメソポタミア文明展
を観に行っていた。私の中で開会式はハンムラビ法典に負けた。
オリンピック全体を薄く観て、強く印象に残ったのは、意外にも
「日の丸って結構イケてるな」である。
かねてより国際試合は「日本人の体の貧弱さ」を思い知らされる機会だっ
た。日本人の西洋コンプレックスは、戦後進駐軍がばらまいたチョコレー
トではなく、東京オリンピック中継に始まったのではないかと思う程であ
る。
近年目覚ましく欧米化した若者の体型は大きいだけでなく、スラリとして
なかなか見栄えのよいものとなった。スタイルが欧米化して、実力も均衡
する中、日本ぽさ、は曖昧になった。貧乏たらしい体型や実直さは個性だ
ったのに、そういうしめっぽさはもうない。
虹色のマントを着た選手団は日本人に見えない。マントのせいではない。
スピリットが明るくドライになった分、表情も大陸的になったのだ。
大舞台に馴染んでいた。浮いてない。皮肉にもそれは「らしさ」を消した。
そんな中、ひときわ冴えていたのは国旗のデザインである。
所謂国旗というのはデザインの前に国家の目指す理念がある。
それによって作られるから、似たり寄ったりのデザインが多い。トップブ
ランドの国イタリア、フランスだって見分けがつかないくらい似ている。
ところが日の丸は、あれこれ意味を持たない、あっけらかんの赤い丸。
自由とか平等とか博愛なんて言わない。お日様の赤、それだけ。
ちいちゃい子でも描ける。クレヨン一本あればいい。見事なシンプルさだ。
小学生の頃、国体があると、1人1旗、日の丸を作り、沿道で小旗を振っ
た。私達の世代は日の丸を描いた経験が必ずある。そんな忘れていたこと
を思い出す。
国旗はいろいろに言われ過ぎた。
日の丸に「戦争の爪跡」や「国粋主義」を感じ、戦争被害者の気持ちを
慮って掲揚しないように心掛ける。それが知性の証しみたいな気がした。
私は現在、障害者と若干のつきあいがある。そこで感じるのは、人の苦し
みは完璧には理解できない。ということだ。大事なのはお互いに「わかっ
ていないことをわきまえる」謙虚さと「わかってもらえないことを許し、
折り合う」ことではないかと思う。
私は戦争体験がない。広島に行っても、戦争映画を観ても、日の丸を観る
だけでつらくなる人の気持ちに完全には同化できない。
国旗論争のたびに感じる「ついてけない」感じはそのあたりだ。義務化す
る必要も、排除する必要も感じない。そんなにリキむことだろうかと不思
議な気分だ。勉強不足でおこがましいが、私が小さい頃描いた日の丸は、
明るく楽しいデザインで、それを振る時、嬉しかった。それは国家のもの
ではなく自分の旗だった。その幼い私を観て、右だと騒ぐのは愚だし、教
養がないと罵るのも愚だ。日の丸は良いデザインだ。それは間違いない。
それを観て良い印象を持つ人々を増やすような国になっていけばいい。
世界の人々が明るい印象を持ってくれる国になればいい。
自分で自分を好きになれないようでは、誰にも愛されない。
過去を振り返って争うよりも、義務化しなくても掲げたくなる明るいイメ
ージを、この旗に付加していきたいものだ。
掲揚する自由としない自由と、するなら楽しく掲げる気持ちを取り戻した
い。(ぶんぶん)
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■2 ぶんぶん特急/夜のひまわり
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今はもう私の背丈を越した娘が、7歳の頃のことである。
夜中の1時頃、「眠れない」と言って私の布団を揺する。
「眠れない。ごめんなさい、眠れない」と繰り返し言う。
起こしてごめんなさいのつもりなのだろう。大丈夫、私は起きていた。
私も眠れずにいたのだ。娘が眠れない理由も、聞く必要などなかった。
私は娘の手を引いて、近くの公園に行った。
昼間の喧噪が嘘のように静かな夜だった。
バケツやシャベル、三輪車や縄跳びが雑然ところがっていた。
それは昼の残像だ。残像は私達を暖かく迎えた。
おいてけぼりだなあ。
三輪車も、私も娘も、幸せのおいてけぼりをくったみたい。
なんだか笑えた。
娘とぶらんこに乗った。すると夜空が見えた。
夏の夜空は深い藍色で、きらきらと星が賑やかだった。
地上の寂しさを笑うみたいに輝いていた。
娘は何も言わずに、きいきいと揺れた。
その頃、私達はふたりでいるのに慣れていなかった。
3人がふたりになる。それだけのことだが、勝手が違った。
当時娘は泣きもせず、何も言わず、ただ、眠れないと言って、少し痩せた。
突然娘はぶらんこを降り、たたた…と花壇に駆け寄った。
そこにひまわりが咲いていた。
「夜もいたんだね」
ちいさな発見だった。
昼間見かけたひまわりが、夜もそこにいる。
そんな当たり前のことが、私達にはひどく新鮮だった。
ひまわりは楽天的だ。昼も夜も関係ないさと、まっすぐに立っている。
太陽も似合うけど、夜の闇もよく似合う。
太陽がないのなら、太陽になってやる。そんなつもりなのだろう。
ぴかぴかしていた。
このようにありたい。私の心は方向性を見つけた。
それから毎日のように夜のひまわりを見に行った。
ふたりの公園通いは案外楽しいものだった。
秋になり、ひまわりも枯れて、娘は熟睡するようになった。(ぶんぶん)
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以上「ぶんぶん便」No.10をお届けしました。いかがでしたか。
また次回お会いしましょう!
※「ぶんぶん便」創刊以前のコラムが、奥付の連係HP
『Kazu ILLUST GALLERY』文文コーナーの文文書庫で読めます。
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「ぶんぶん便」2000/10/01 No.10
執筆者●JUNKO: RXE01422@nifty.ne.jp
発行責任者● 吉永和夫: yoshinaga@mbe.nifty.com
連係HP●『Kazu ILLUST GALLERY』 http://homepage1.nifty.com/jyk/
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