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ぶんぶん便 No.9

発行日時: 2000/9/21

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■■■    「ぶんぶん便」 2000/09/21 No.9
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   作/者/か/ら 
自分のアタマで考えるというシンプル手法を貫き、ぶんぶん頭をフル回転。
文職人JUNKOの職人芸を御賞味ください。
常識のウソ、社会の矛盾、笑いと元気と、ついでに自分も、発見しよう。

――C―o―n―t―e―n―t―s――――――――――――――――

1 JUNコラム『子宮にこもるオトナたち』
2 ぶんぶん特急『私のメンタルリクエスト』

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■1 JUNコラム/子宮にこもるオトナたち
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まれに、なのだが、オカアサン…とつぶやく時がある。
すごく困ったり、すごく疲れたり、心配で胸がふさがれる時。
心の中でオカアサン、とつぶやいている自分にはっとする。
それは具体的に私の母を呼んでいるのではない。
母なるもの、大きくて暖かくて絶対的なものへの漠とした希求である。
クリスチャンならさしずめ「Oh,my God!」とくるところ、無宗教な私は
オカアサンとなる。

子宮回帰願望というのは、こういうことなのかもしれない。
暖かいゆるゆるした空間に身を委ね、くるりと背中を丸め、目をつぶって、
休みたい。外界の音は聞こえない。自分の発する心音と、寝返りを打つ音
くらいしかそこにはない。
誰も私に文句を言わない。注文をつけない。「こうでなければ」がない。
ただそこに存在するだけを許されている。そんなあまやかな時間が、無性
に恋しくなる。
それを望むのは一瞬で、すぐに私は思考し、言語を発し、外界に立ち向か
う。もうオトナなのだから。
子宮を卒業し、コドモを卒業し、私はヒトとしてちゃんと社会に存在しな
くてはいけない。

疑似体験はできる。
たったひとり、部屋で布団にくるまって、背をまるめて膝をかかえて、ま
る虫になって寝る。するとやすらかな空間が味わえる。
あるいはプールに行き、潜る。どんなに人がいようが、瞬時にそこは自分
の吐息だけの世界になる。
成人の私はこのように子宮回帰願望をインスタントに処理している。

本当に久し振りに、そうやって子宮布団にくるまっていると、ふと、世間
で言う引きこもり、ってこういうことかなと思う。
誰も自分の存在に気付かない、安らかな空間。
わずらわされない。人に期待されない、そして自分も期待しない。
そんな限り無くゼロに近い世界で、心を守っているのではないか。
引きこもりの部屋は、子宮なのではないか。

人間は実際の子宮から出た時、ぎゃあぎゃあ泣く。
産声といって珍重される、肺の機能を活動させるためという医学的理論も
勿論有るが、私はあれが外界におけるストレスの始まりの雄叫びに聞こえ
る。子宮内はストレスのない世界だ。その楽園から出て、おぎゃあと泣く。
それから気の遠くなる程の無責任なコドモ時間を過ごし、やっと人はオト
ナになる。ストレスに耐えられるだけの人間力がつくのだ。

コドモの時に、コドモでいられなかったら、オトナになっても子宮が恋し
くなるのではないか。無責任なコドモ時間は、オトナになるために必要な
のではないか。ノルマのない、時計の不要な、ひらべったい贅沢な時間。

私は、そういう時間を過ごすことのできた最後の世代かもしれない。
世の中は既に騒がしかったけれど、親がぼうっとしていたので、かろうじ
てそういう時間を持つことができた。のかもしれない。
時々まる虫になってコドモ時間を回帰したがる、できそこないのオトナで
しかないけれど、ひきこもりにならずに済んだ。長居するには、私には子
宮は退屈すぎる。

贅沢なコドモ時間を過ごせているコドモは、今、日本にどれくらいいるだ
ろう。(ぶんぶん)

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■2 ぶんぶん特急/私のメンタルリクエスト
―――――――――――――――――――――――――――――――――
その時1mくらいムコウにいた。近いのに遠くて、それはブラウン管を通
して観る感覚と大差なかった。実際彼は黒とエンジのセーターにジーパン
という、ラフでもオシャレでもないノーマルな格好で、テレビとの落差が
全くない。キラキラものはつけてないし、髪も「母親が息子にさせたい」
定番の、スタイルだ。質問にきちりきちりと答え、律儀な印象だった。

シングル、マキシ、ミニアルバム、ベスト、…。
今歌謡界はCD大放出の時代を迎えている。レンタル産業も普及して、採算
とるには量産主義。とみた。
そんな中、「どんどん出さない主義」がいる。
出して出して。と頼んでも、まあだだよ。と雲隠れ。
そろそろ稼いでくれよという事務所の思惑からだろうか、去年暮れ、ツナ
ギ的にベスト盤が出た。
ソレは事務所の方針であって、自分ら知らんかった。オレたちの主義じゃ
ない。だからせめてタイトルは『リサイクル』だって。
全部昔の。使い回し。皆さん買う時は注意してね、って感じだ。

ベストはらしくないなと思ったけど、やはり買いました私。
CDを次々出さないミュージシャンだから、貧乏人でも全部買える。
スピッツ。メロディー武器のロックバンドなんて言われるけど、私の解釈
は少し違う。詩と声が命だ。
心がざわざわして、心拍数が乱れる時、ボーカル草野マサムネ氏の声を聴
くと正常値に戻る。自律神経に触れる歌だ。
一緒に暮らしていたら健康は約束される。が、そうもいかないのでCDを聴
いている。

スピッツがブレイクしたのはデビューから5年目の95年。
ミスチルが華々しく活躍する年、アイドル性も、ファッション性も、奇抜
さもないスピッツが現れた。
小さい男の子が淡々と歌う。大袈裟なアクションはない。ミスチルの桜井
サンみたいな男っぷりもない。
飾り気のないシャツにジーンズ姿で、淡々と、とうとうと、歌っている。
詩の朗読のように静か。ゆらゆら浮遊するような旋律。それが非常に心地
よい。魂にしみ込む感じだ。

ポカリスエットがボディリクエストなら、スピッツは私のメンタルリクエ
スト。いいもの見ーつけた、って感じ。
これを聞くと落ち着く、という歌があるだけで。人間随分救われる。

いろいろ楽しくない事情があって、私は30歳過ぎて専門学校へ通った。
周囲は就職活動中の大学生や仕事のレベルアップを計る若いOLたち。希望
で目がキラキラしている。一番年長で定職のない私は居心地の悪さなんて
感じる余裕もないほど必死に勉強していた。
そこへ、ブレイクしたばかりの草野氏がやってきた。
『涙がキラリ☆』(シングル大ヒット)の頃だ。
インタビュー実習という講議に「取材される有名人」という設定で現れた。
本物の有名人だなんて、随分贅沢な授業だ。もともとファンだった私は張
り切って一番前に陣取った。

インタビューはプロのライターが行う。
我々生徒はそれを記憶し、文章に起こすという演習だ。
草野氏の静かな受け答えを聞き、勝手な印象だが、随分本を読んでいると
感じた。おしゃべりではないのに、言葉が豊かだからだ。
ずっとライブ活動をやっていたこと、バンドで食うと魂を売ることになる、
趣味でやることで自分の世界を守ろうと思っていたこと、好きにやらせて
くれるという事務所と出会って、メジャーデビューに踏み切ったこと…。

大ブレイクについての感慨は「ちょっとイキスギた。20世紀人口爆発みた
いな感じ。贅沢は死ぬまでやっちゃいけないと思ってる」
舞い上がってない。かといってポーカーフェイスを気取るわけでもない。
彼の芯は別のところにあり、ひどく強情なのだと感じる。
静かな彼の主張は「言葉を伝えたい」だ。

リズム先行、ノリ先行の歌謡界の中で、思いを伝える歌を作るという思い。
それは一貫して彼の作る歌、彼の歌う姿勢に現れている。野心ではなく好
奇心が創作の源なのだろう。多くの人がオトナになると卒業しちゃうスキ
ナコト。彼は好きなものはずっと好き、な人であるらしい。

自分の主張が貨幣価値になって食べていくことに繋がる。それはヒトの基
本的な欲求であり、私の夢でもあるのだが、このような頑固が通じる世の
中は捨てたものじゃないと思う。

やっと出ました久々のオリジナルアルバム『ハヤブサ』、あの時のその思
いはそのままだ。サウンドにこだわった、よりライブの生演奏に近付いた
などとちまたの評価は高いが、ヤマハオルガン教室卒(6才時)の音楽歴
の私には、その当たりの違い、ワカリマセン。
「好きな部分が健在」なのは確か。それでもう充分なのだ。
ありがとう、スピッツ。お陰様で医者要らず。(ぶんぶん)

勝手にイチオシ ………………………………………………………………
今一番好きな歌を選ぶとしたら、91年発売のセカンドアルバム「名前をつ
けてやる」に収録されている『プール』。これを聴いていると、生きてい
ることが嬉しくなる。嬉しすぎて、苦しいような悲しいような気分になっ
て、涙ぐんでしまう。詩は難解のようで明解。深く考えないで楽しみたい。
好きな歌はその時々で変わる。私のその時に合わせていろいろに変わる。

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以上「ぶんぶん便」No.9をお届けしました。いかがでしたか。
また次回お会いしましょう!
※「ぶんぶん便」創刊以前のコラムが、奥付の連係HP
 『Kazu ILLUST GALLERY』文文コーナーの文文書庫で読めます。
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「ぶんぶん便」2000/09/21 No.9
執筆者●JUNKO: RXE01422@nifty.ne.jp
発行責任者● 吉永和夫: yoshinaga@mbe.nifty.com
連係HP●『Kazu ILLUST GALLERY』 http://homepage1.nifty.com/jyk/
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