ユーラシア・ウォッチ 第125号【秋野豊ユーラシア基金】
発行日時: 2008/2/4======================================================================
■第10回秋野豊賞、募集中■
このほど第10回秋野豊賞の募集要項が発表されました。「秋野豊賞」は、
欧州からアジアまでユーラシア大陸のいずれかの紛争や安全保障の問題に
ついて、調査・研究を行う意欲を持った方に対する助成制度です。応募の
締め切りは2008年5月9日(金曜)ですので、奮ってご応募下さい。詳細は
基金ホームページをご覧下さい。http://www.akinoyutaka.org
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◆新刊書・論文紹介
冒頭の「○」は単行本や雑誌、「・」は雑誌に掲載された論文を意味します。
価格は原則として総額表示としております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《政治・安全保障全般》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○ジョナサン・ハスラム (角田史幸ほか訳)『誠実という悪徳 E.H.カー 1892-
1982』現代思潮新社、2007年11月刊(¥6,720)
○『海外事情』(拓殖大学海外事情研究所) 2008年1月号
(特集:アメリカ政治の展望)
・森本敏「アフガン・テロ作戦と日本の貢献」
・鈴木祐二「戦後日本の『国連中心主義』の含意」
・・・などを収録。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《アジア》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○進藤榮一・水戸考道編『戦後日本政治と平和外交:21世紀アジア共生時代の
視座』法律文化社、2007年12月刊(¥2,415)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《ロシア・CIS諸国》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(最近のA.ブラウンの冷戦終結論とその反論について)
・Archie Brown, "Perestroika and the End of the Cold War," Cold War
History, Vol.7, No.1, February 2007, pp. 1-17.
・Robert G. Patman, "Some Reflections on Archie Brown and the End of
the Cold War," Cold War History, Vol.7, No.3, August 2007, pp. 439-
445.
・Stephen G. Brooks and William C. Wohlforth, "Clarigying the End of
Cold War Debate," Cold War History, Vol.7, No.3, August 2007, pp.
447-454.
『ゴルバチョフ・ファクター』刊行から10年あまり。その著者であるブラウ
ンは、未刊行のゴルバチョフ著作などを含めた新史料を渉猟し、決定版ともい
うべき『世界を変えた7年間:大局的にみたペレストロイカ』を昨年新たに世
に問うた。
同書は、ブラウンによるペレストロイカ研究の到達点であり、別の機会に改
めて論じてみたい。ここで紹介したいのは、同書の刊行と並行してイギリスの
研究者が中心になって刊行されている雑誌『冷戦史』(Cold War History)に発
表されたブラウンの論文と、それに対するいくつかの反論である。昨年の同誌
第1号の巻頭論文で、ブラウンは、近刊の自著の議論を要約し、新しい指導者
や理念の登場、長年にわたって培われてきたソ連の制度的権力の相互作用こそ
が冷戦終結の主たる要因であったと強調する。ソ連内部の自由化・部分的民主
化の直接的な結果こそ冷戦の終結であった、というのである。
ブラウンが「レーガン・ファクター」ともいうべき1980年代を通じたアメリ
カ政府からソ連への圧力を軽視している、と批判するのはパットマンである。
パットマンは、ソ連で政治的な新思考が始まったのはゴルバチョフが党書記長
になる1985年より前に遡ることができること、また、戦略防衛構想(SDI)
など第1期レーガン政権が打ち出した対ソ政策がソ連に与えた衝撃を重視すべ
きことを指摘し、ひとりゴルバチョフのみに冷戦終結の主要因を帰すことを問
題視している。
また、ブラウンによって「国際関係論における現実主義者あるいはネオ現実
主義者」として(批判的に)引用されたブルックスらも、自分達の分析上の関
心は「ソ連の直面していた経済的な制約が、冷戦の最終段階でどのように変化
したのか、また、それらの具体的な圧力がソ連の対外政策にどのような影響を
与えたか」という点にあったとして、「ゴルバチョフ・ファクター」を追求す
るブラウンの関心とは異なっていることを強調している。「あるいはわれわれ
は、共に同じ事象を説明しようとしているのかもしれない。とすれば(ブラウ
ンと自分たちとの)真の論争はまだ始まっていない」と締めくくっている。
(湯浅 剛)
○北海道大学スラブ研究センター監修、家田修編『講座スラブ・ユーラシア学
1 開かれた地域研究へ:中域圏と地球化』講談社
2008年1月刊(¥2,100)
・家田修「中域圏:地球化時代の新しい地域研究」
・松里公孝「空間の科学:政治研究のツールとしての中域圏概念」
・林忠行「戦略としての地域:世界戦争と東欧認識をめぐって」
・篠原琢「地域概念の構築性:中央ヨーロッパ論の構造」
・三谷惠子「地域研究と言語学:Balkanの用法からバルカンを探る」
・前田弘毅「歴史の中のコーカサス『中域圏』:革新される自己意識と閉ざ
される自己意識」
・岩下明裕「ユーラシアとアジアの様々な三角形:国境政治学試論」
・田畑伸一郎「地球化と地域経済統合:CISを中心として」
・山村理人「スラブ・ユーラシアにおける農業問題と地球化:旧ソ連諸国の
WTO加盟問題をめぐって」
・・・を収録。
○木村汎『プーチンのエネルギー戦略』北星堂
2008年1月刊(¥1,995)
○ロイ・メドヴェージェフ (海野幸男訳)『スターリンと日本』現代思潮新社
2007年12月刊(¥2,520)
・岡奈津子「2007年カザフスタン下院選挙:大統領与党による『一党独裁』の
成立」『現代の中東』(アジア経済研究所) 第44号、2008年1月、28〜36頁。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《中 東》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○鈴木董『ナショナリズムとイスラム的共存』千倉書房
2007年12月刊(¥2,940)
・酒井紫帆「イラク難民・国内避難民問題」
『現代の中東』第44号、2008年1月、2〜27頁。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《ヨーロッパ》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○『アステイオン67』阪急コミュニケーションズ
2007年11月刊(¥1,000)
(特集:新しいヨーロッパ)
・猪木武徳「新しい『国家』EUの動き」
・田所昌幸「イギリスはヨーロッパか」
・上原良子「ニコラ・サルコジ:グローバリゼーションへのフランスの闘い」
・鈴木董「トルコのEU加盟」
・ヴォルフ・レペニース「ヨーロッパとアメリカの展望」
・・・などを収録。
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◆編集後記
諸般の事情で、配信が数日遅くなりました。お詫び申し上げます。◆昨年暮
れ、ロシアの書籍・定期刊行物を扱っている某代理店から購読中の週刊紙『モ
スクワ・ニュース』(MN)が休刊される、との連絡をもらいました。にわかに信
じがたい話でした。何よりも1930年創刊(当初は外国人向けの英文紙)以来の
伝統があり、2006年に『独立新聞』で辣腕を振るっていたV.トレチャコフが編
集長に就任してからは、紙面改革も進み、評判は悪くないと思っていたからで
す。また、ロシアでは普通半年に一度、前払いで新聞や雑誌の定期購読の予約
をしますが、MN紙でも既に2008年前半期の購読予約を呼びかける告知を行って
いたからです。◆しかし、代理店の予告どおり、2007年末で休刊となりました。
最終号でMN紙のオーナーが休刊の挨拶を寄せ「現代はビジネスの法則の独裁下
にある」と経営難による苦渋の決断であったことを述べています。また、同号
の最後の頁では、2008年1月からの休刊に伴い、前払いされた購読料の払い戻
しについて告知されていました。一部報道では、2008年中に紙面を一新して復
刊するとありますが、果たしてどうなるか。トレチャコフ氏自身はこの新聞と
並行して月刊誌の編集長をつとめるなど、発言の場は他にも確保しており、痛
手は少ないのかもしれません。◆ゴルバチョフ時代には、言論の自由や情報の
公開を推進した「グラースノスチ」政策を担った代表紙として知られました。
論説ページ「三人の著者」は、名物コーナーとして長く続きました。このコー
ナーで各界の論客が時の内政・外交などについて持論を述べた記事は、大学生
の私にとって、ロシア語の授業一回分で読みきるのにちょうどよい分量でした。
その当時のさまざまなトピックを端的に取り上げてくれて面白かったものです。
◆よくよく見ると、発行部数は2002年当時の約12万部から5万部弱へと急激に
落ち込んでいました。もともと都市部のインテリが主な購読者層で部数は少な
かったのですが、この層の関心からMN紙の内容がずれてきたのでしょう。MN紙
の結末は、ビジネス中心に回るロシア社会のめまぐるしい変化をあらわしてい
るようにも感じられます。◆次回の配信は2月15日頃を予定しています。
(湯浅)
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ユーラシア・ウォッチ 第125号(2007年2月4日発行)
発行元:秋野豊ユーラシア基金(代表 秋野洋子)
〒151-0061 渋谷区初台1-51-1 初台センタービル803
編集責任者:広瀬佳一・湯浅 剛
郵便振替02740−2−3000
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