秋野豊ユーラシア基金の発行するメールマガジン。ユーラシア大陸の人々の暮らしや文化、歴史、政治、経済などに関する情報、エッセイ、文献紹介、国内でのイベント情報などをお伝えします。
- 最新号:2008-10-04
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ユーラシア・ウォッチ 第109号【秋野豊ユーラシア基金】
発行日: 2007/5/1
since June 2002
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◆◆ ユーラシア・ウォッチ ◆◆
Eurasia Watch
編集・発行:秋野豊ユーラシア基金
http://www.akinoyutaka.org
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第109号 2007年5月1日
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◇Contents◇
・第9回秋野豊賞 まもなく締め切りです!
・ホームページ更新情報
・エッセイ/ゆーらしあの風
コソボ社会の「内側」〜2006年のコソボ滞在の体験を通じて〜
(その2・久保 慶一)
・文献紹介
木村汎、袴田茂樹編『アジアに接近するロシア』
ほか
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■秋野豊賞、締め切り迫る!■
ユーラシア大陸のいずれかの紛争や安全保障の問題について、調査・研究を
行う意欲を持った方に対する助成制度、第9回「秋野豊賞」の締め切りは、
2007年5月11日(金曜)午後5時
です。奮ってご応募下さい。詳細は基金ホームページをご覧下さい。
http://www.akinoyutaka.org
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■ホームページ更新情報■
ニューズレター第16号が掲載されました。恒例の秋野洋子代表による巻頭エ
ッセイをはじめ、筑波大卒業生・今井尚義さんによるリレーエッセイ「秋野豊
氏の思い出」など、盛りだくさんです。
基金ホームページからPDFファイルで読むことができます。
http://www.akinoyutaka.org
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■エッセイ/ゆーらしあの風■
コソボ社会の「内側」〜2006年のコソボ滞在の体験を通じて〜
久保 慶一(早稲田大学、第4回秋野賞受賞者)
=第2回 コソボの「パスポート」と「電話」=
白いパスポート
筆者も実物を見る機会はなかったのだが、コソボのアルバニア人たちのパス
ポートは白い(らしい)。コソボは現在もいちおう形式上はセルビアの主権下
にあるので、そのパスポートを発行する責任があるのはセルビア政府というこ
とになる。しかし、アルバニア人たちは当然「セルビア市民」としてセルビア
政府にパスポートの発行申請をするつもりは毛頭ない。そこでアルバニア人た
ちが国外に出ようとすれば、UNMIKが発行する1年間有効の白いパスポー
トを使うことになる。しかし、このパスポートで外国に入国するのは簡単では
ない。審査は厳しく、しかもコソボには諸外国の大使館は当然ないので、入国
ビザをもらうためにはマケドニアなど近隣諸国に何度も足を運ばなければなら
ない。筆者の友人も、学術会議への出席を予定し、主催者からの招待状など書
類が揃っていたにもかかわらず、結局入国ビザが下りずに出席を断念せざるを
得なかった。
コソボのアルバニア人、とくに若者たちの間には、西欧に行きたいという気
持ちが強い。カフェで話をしていると、「今のままでは、いくら西欧行きを望
んでも夢物語でしかない」とため息混じりに話す同世代の友人が少なくない。
豊かさを求めて西に行きたいのに、EUのビザ体制に行く手を阻まれていると
いう閉塞感は、じつはバルカンの若者の多くが抱えていて、コソボのアルバニ
ア人に限った話ではないのだが、彼らの場合、形式上の主権を維持するセルビ
アが自分たちの行く手を阻んでいると感じているため、閉塞感がさらに強いよ
うに感じられた。あんな貧しい地域が独立していったい何になるのかという声
は(とくにセルビア側で)よく聞かれるのだが、コソボのアルバニア人にとっ
ては、自分たちが豊かになるためには、西側へのドアが開かれる必要があり、
コソボ独立はそのための大事な(そして必要不可欠な)一歩なのである。
モナコの携帯番号
コソボのアルバニア人たちにとっても、コソボを訪問する者にとっても、携
帯電話は必須アイテムだ。形式上は今もセルビアの主権下にあるコソボの固定
電話の国番号はセルビアの+381であるが、アルバニア人たちはこれを当然
あまり使いたがらない。コソボのインフラの大部分が1998−99年の紛争
で破壊されたこともあり、アルバニア人たちは日常のコミュニケーションの大
部分をUNMIK統治下で導入されたモナコ・ナンバーの携帯電話で行ってい
るのだ。オフィスなどではセルビア・ナンバーの固定電話も使われているが、
固定電話を持たない・使わない人が多いアルバニア人との唯一の連絡手段は
(Eメールを除けば)携帯電話だ。当然、プリシュティナをはじめ、アルバニ
ア人地域には公衆電話がない。したがって自分もモナコ・ナンバーの携帯を持っ
ていないと、思うように連絡が取れないのである。
他方、ミトロビツァなどコソボ北部のセルビア人は、セルビアの携帯番号を
使う。コソボ北部では、セルビアの携帯は何の問題もなく使えるが、アルバニ
ア人が使うモナコ・ナンバーの携帯は電波が入らずほとんど使えない。困った
ことに、逆にアルバニア人が住むコソボの大半の地域では、セルビアの携帯の
ほうが使えない。プリシュティナなどの都市部でたまに電波が入るが、きわめ
て不安定で話しにくい。セルビア・ナンバーとコソボのモナコ・ナンバーの携
帯番号の間では、通話ができない(国際電話として何度か試みたことがあるが、
少なくとも筆者は成功しなかった)。アルバニア人とセルビア人の間では、日
常生活レベルで、すでにコミュニケーションはほとんど途絶えているのが実情
だ。
双方とコミュニケーションをとる必要のある人間は、携帯番号を2種類持っ
て使い分けることになるのだが、それでも解決できない問題もある。たとえば
プリシュティナからセルビア人に連絡を取るにはどうすればよいか。セルビア
の番号を持っていても、そもそも電波が入らないのだから意味がない。筆者は
プリシュティナからベオグラード行きの私有ミニバス(セルビア人が経営)の
予約をする際、この問題に直面した。知人に相談したら、ホテル・グランドの
フロントに行けば、電話できるという。そこでホテル・グランドのフロントに
行ってセルビア人の携帯番号を渡し、通話を頼んだ。見ていると、向こうのセ
ルビア人からコールバックさせ、固定電話で受信して通話が可能になっている
ようだった。
UNMIKにいる筆者の友人は、リュックにつねに大きなトランシーバーを
入れて歩いている。上のような電話事情だから、携帯電話だけでは非常事態の
際に職員との連絡が取れない可能性も高いので、コソボ全土で通信可能なトラ
ンシーバーを携帯しているというのだ。緊急事態発生の際は、職員の安否確認、
撤退の支持・手配など、このトランシーバーを通じて行われることになるとい
う。上の電話事情を知れば、さもありなんである。
コソボが独立すれば、コソボには新しい国番号が与えられ、アルバニア人た
ちは固定電話を普通に使える生活を始めることができるだろう。しかしそのと
き、コソボ北部のセルビア人たちはどうするだろうか。おそらく、あたかも自
分たちは未だにセルビアの一部に住んでいるかのように、セルビアの固定電話
と携帯電話を「国内」電話として使い続けようとするだろうし、セルビアはそ
れを支援し、アルバニア人たちがそれを阻むことは難しいだろう。仮に独立し
たとして、コソボが一つの国として存続していけるのか、電話事情一つを考え
ただけでも、暗澹たる気持ちになる。 (くぼ けいいち)
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◆新刊書・論文紹介
冒頭の「○」は単行本や雑誌、「・」は雑誌に掲載された論文を意味します。
価格は原則として総額表示としております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《政治・安全保障全般》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○『国際問題』(日本国際問題研究所) 2007年4月号
(焦点:国際刑事裁判所の課題)
・村瀬信也「(巻頭エッセイ)国際刑事裁判の難しさ」
・洪恵子「国際刑事裁判所における管轄権の構造」
・高山佳奈子「国際刑事裁判所における訴訟手続の特質」
・正木靖「国際刑事裁判所への日本の加盟と国内法整備」
・足立研幾「『新外交』による国際規範形成:国際刑事裁判所設立過程を事
例として」
(連載講座:EUの新たな挑戦[1])
・広瀬佳一「EUの安全保障・防衛政策の可能性と課題」
・・・などを収録。下記URLにて次号刊行まで一般公開。
http://www2.jiia.or.jp/ebook/
○塩川伸明・中谷和弘編『法の再構築II:国際化と法』東京大学出版会
2007年4月刊(¥5,460)xvi+322頁
・杉田敦「生権力と国家:境界線をめぐって」
・長谷部恭男「国境はなぜ、そして、いかに引かれるべきか?」
・石川健治「『国家結合の理論』と憲法学:Sezessionの可能性」
・中谷和弘「国際法における『境界』の位相」
・塩川伸明「国家の統合・分裂とシティズンシップ:ソ連解体前後における
国籍法論争を中心に」
・茂田宏「パレスチナ問題と国際法」
・元田結花「規範と実践の交錯:開発・HIV/AIDS・人権」
・宮川眞喜雄「東アジア地域統合の胎動:経済連携協定網の役割」
・松下淳一「法整備支援のあり方について:カンボディア王国民事訴訟法案
起草支援作業の経験から」
・広瀬清吾「国際移住の法システムと法政策:ドイツ法とEU法を素材として」
・・・などを収録。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《アジア》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○杉田米行編『アジア太平洋地域における平和構築:その歴史と現状分析』大
学教育出版
2007年4月刊(¥2,940)263頁
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《ロシア・CIS諸国》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○塩川伸明『ロシアの連邦制と民族問題:多民族国家ソ連の興亡III』岩波書店
2007年4月刊(¥7,560)viii+261頁
○木村汎・袴田茂樹編『アジアに接近するロシア:その実態と意味』北海道大
学出版会
2007年4月刊(¥3,360)xix+306頁
・袴田茂樹「大国主義の復活とロシアの対外政策の変化」
・P・ルットランド(皆川友香訳)「ロシアのアジアにおける役割:統合と
進化に向けて」
・浜由樹子「プーチン政権下の『ユーラシア』概念」
・石井明「中ソ関係正常化交渉に関する一考察:カンボジア問題をめぐる協
議を中心に」
・伊藤庄一「中ロエネルギー協力関係:戦略的パートナーシップと相互不信
のジレンマ」
・湯浅剛「中央アジアにおける中国ファクター」
・木村汎「プーチン政権の対日政策:八つの特徴」
・天野尚樹「ロシアにおける日ロ関係史の現在:『複数の歴史認識』に向け
て」
・安野正士「現代ロシアの対日ナショナリズム:サハリン州議会の活動を中
心に」
・L・ブシンスキー(安野・湯浅訳)「ロシアと東南アジア」
・岩下明裕「ロシアと南アジア:パワーバランスと国境ダイナミズム」
・・・などを収録。
○『ロシア・東欧研究』(ロシア・東欧学会) 第35号(2007年3月刊)
(特集:ロシア・東欧地域に働く遠心力と求心力)
・下斗米伸夫「スターリン批判の『地政学』」
・杉本侃「パイプラインが2国間・多国間関係に及ぼす影響」
・月村太郎「『東欧』の解体?:コソヴォを事例として」
(以下、特集外論文)
・青木國彦「東独出国運動とハーシュマン理論」
・石郷岡健「ウクライナの『カラー民主革命』をめぐる考察:2006年の議会
選挙の分析をもとに」
・岡田美保「ロシアの化学兵器廃棄をめぐる外交と内政」
・金野雄五「CIS経済統合の現状と展望」
・坪井宏平「チェコ共和国における『緑の党』の諸相」
・スヴェトラーナ・ヴァシリューク「1970年代日ソ関係におけるエネルギー
政治:相補性と対立」
・・・などを収録。
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◆編集後記
ニューズレター最新号の編集後記にあるように、来年は秋野豊さんの事件か
ら10年目に当たります。そこで基金では来年に向け、いくつかの記念行事・
企画を考えているところです。◆その一つに、ユーラシアの安全保障について
考察する本を出版する計画があります。執筆者の多くは、過去の秋野豊賞受賞
者となる予定ですが、その最初の打ち合わせが、先日、事務局で開かれました。
過去の受賞者の多くが一堂に会し、さながら同窓会のようでした。◆打ち合わ
せ後、近くの居酒屋で懇親会を行いました。ここにさらに数名の秋野賞OB/
OGが駆けつけてくれて、いっそうの盛り上がりを見せました(その詳細は、
ひょっとしたら、次号編集後記で広瀬事務局長が報告してくれるかもしれませ
ん??)。◆懇親会の席上、ある参加者から、最近のメルマガでは、編集担当
の二人が交互に書いている「編集後記」の特徴が重なってきている、担当者の
あいだに「なかま意識」ができ上がってきたのでは、との指摘をいただきまし
た。◆確かに、私の文章はどうしても硬くなりがちでしたが、最近は、できる
限り身近な話題も取り入れるよう、努めるようになりました。おかげで最近は
「芸風が広がった」とお褒めの言葉(?)もいただくようになりました。◆そ
れでも、まだまだ修行がたらないせいか、事務局長のダイエットの話題のよう
に、自らをさらけ出すネタを思い切って書くことはできません。実は、事務局
長と同じタイプの万歩計を愛用しているので、前号の編集後記はずいぶん共感
できたのですが(笑)。◆これからもときどき「硬い」話題にも挑戦していこ
うと思います。読者の皆様は、引き続き、試行錯誤の中で生まれる多様性をお
楽しみいただければ幸いです。◆次回は5月15日頃の配信を予定しています。
(湯浅)
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ユーラシア・ウォッチ 第109号(2007年5月1日発行)
発行元:秋野豊ユーラシア基金(代表 秋野洋子)
〒151-0061 渋谷区初台1-51-1 初台センタービル803
編集責任者:広瀬佳一・湯浅 剛
郵便振替02740−2−3000
★ご意見・ご感想はinfo@akinoyutaka.org までお寄せください。
★このメルマガはインターネットの本屋さん『まぐまぐ』(マガジンID:91758)
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す。送付先変更・配信解除は、下記のURLからいつでも可能です。
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