秋野豊ユーラシア基金の発行するメールマガジン。ユーラシア大陸の人々の暮らしや文化、歴史、政治、経済などに関する情報、エッセイ、文献紹介、国内でのイベント情報などをお伝えします。
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ユーラシア・ウォッチ 第102号【秋野豊ユーラシア基金】
発行日: 2007/1/15
since June 2002
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◆◆ ユーラシア・ウォッチ ◆◆
Eurasia Watch
編集・発行:秋野豊ユーラシア基金
http://www.akinoyutaka.org
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第102号 2007年1月15日
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◇Contents◇
・ホームページのトップ画面を大幅に更新しました。
・文献紹介
天児慧『中国・アジア・日本』(下山高正)ほか
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■ホームページ更新情報■
このほど秋野豊ユーラシア基金ホームページのトップ画面が一新されました。
新しいホームページでは、これまでメルマガに掲載されたエッセイ「ゆーらし
あの風」や書評などを取り込んでいます。ぜひアクセスしてみて下さい。
http://www.akinoyutaka.org
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◆新刊書・論文紹介
冒頭の「○」は単行本や雑誌、「・」は雑誌に掲載された論文を意味します。
価格は原則として総額表示としております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《政治・安全保障全般》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○日本比較政治学会編『比較政治学の将来』早稲田大学出版部
2006年11月刊(3,000円+税)vii+196頁
・フィリップ・シュミッター「比較政治学の将来とは?」
・恒川惠市「比較政治学における構成主義アプローチの可能性について」
・阪野智一「比較歴史分析の可能性:経路依存性と制度変化」
・藤原帰一「比較政治の危機」
・三上了「マクロ政治変動の帰結に対する『構造』と『行動』の影響:多項
ロジスティック回帰による経験的検証」
・岡部恭宜「経路依存性アプローチによる制度の比較歴史分析:韓国とタイ
における金融システムの発展」
・・・などを収録。
○エマニュエル・トッドほか『「帝国以後」と日本の選択』藤原書店
2006年12月(2,800円+税)338頁
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《アジア》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○天児慧『中国・アジア・日本——大国化する『巨龍』は脅威か』ちくま新書
2006年10月刊、(222頁、700円+税)
下山高正
本書は、日本有数の中国専門家が、単なる中国研究や日中二国間関係研究の
視点を超えて、「アジアからも国際社会からも一目おかれるキラリと輝く『魅
力ある日本』」を実現するための日中関係のあり方を提唱しようとした力作で
ある。
著者は、今や「責任ある大国」という自己認識を強めた中国と日本が、感情
的反発や、東アジア国際関係を巡る主導権争いを乗り越え、リーダーシップを
「分有」して、「両雄並び立つ」形で東アジア共同体を形成すべきことを提唱
する。そして、それが実現すれば、東アジアは「世界を牽引するほどのパワー」
を持てるかもしれないと期待を表明する。
現実の日中関係は、長く閉塞的状況にある。だが、著者は、1990年代末以降、
日中は、経済交流や民間交流により「切っても切れない」相互依存関係を深め、
「一方向的関係から双方向的ベクトル関係への転換」を特徴とする新段階に入っ
たという。にもかかわらず、両国民は、相手国の実情さえ依然十分に理解せず、
対立感情を相互増幅する傾向さえみられる。この状況を改善したいとの思いが、
本書には溢れている。第1章「反日・反中問題をどう捉えるか」で、近年の中
国人の対日感情と日本人の対中感情を包括的に分析した上で、第2〜4章「台頭
する中国と病める中国」、「対米外交と『和諧』戦略」、「東アジア共同体と
新国際秩序構想」は、中国の国内事情や対外戦略などの現状を詳細に説明する。
中国外交の現状を、著者は次のようにいう。江沢民時代には民族主義的大国
意識を強調した中国は、胡錦濤時代に入り、「責任ある大国」として国際社会
への参加意識を高めている。中国の軍拡や、東アジアでのプレゼンスの急拡大
は、域内諸国に不安を与えている。また、その外交は、依然として「中華民族
の偉大な復興」を目標とし、米国中心の秩序に対抗する意図や、台湾問題での
頑なさといった問題を残す。だが、中国が近年、相互依存の下でしか生きられ
ないとの認識の下に、新安全保障観を掲げ、国際協調、多国間主義、地域協力
システムの構築を唱えて、「和諧世界」の実現を目指す方向に変化してきたこ
とも確かである。中国は、そうした方針の下で、活発な近隣諸国外交により経
済、安全保障両面で東アジア共同体構想を推進し、米国、ロシア、EUなどとも
関係を強化している。
終章「日本外交をどう展望するか」で、著者は、近年の日中関係の停滞が、
中国外交の活発化の中で日本だけが取り残される事態を招き、国益を損なって
いると警鐘を鳴らす。中国のプレゼンスの急拡大を前に、アジア諸国は、域内
での日本の役割増大を望んでいる。だが、日本のプレゼンスは、対話により中
国に影響力を発揮しなければ拡大され得ない。そして、中国やアジアに影響力
を持ってこそ、日本は米国や国際社会から重視される。台頭する中国との関係
緊密化と東アジア共同体の創造こそが、日本の将来を左右する死活的課題であ
ることを明確に認識し、良好な日米関係を維持しつつも、日中間に主導権争い
を超克した安定的な相互協力関係を築かねばならない。著者は、こう提言する。
以上のように、本書は、中国の外交、内政等の分析と、それに基づく著者の
日本外交への提言により構成される。このうち、分析部分については、詳細で
理解しやすい内容に加え、著者の抑制のきいた公平な筆致を高く評価したい。
著者が、中国に対し親密な感情を抱いていることは明らかである。また、著者
は、近年の日本政府の対中姿勢へのいらだちを隠さない。しかし、本書の分析
には、親中でも反中でもない客観的な目で、中国のありのままの姿を描く姿勢
が貫かれている。日本の国益という観点からの考察も、随所に織り込まれてい
る。こうした態度が、本書の分析の説得性を大いに高めている。
提言部分についても、著者の筆致は基本的には変らない。だが、この部分で
は、中国の現実の対日姿勢に基づくというよりは、中国にかくあって欲しいと
願う著者の思いを反映した楽観的な記述もみられるように思うのは、評者の邪
推だろうか。たとえば、日本が、著者の提言に従い、日中が東アジアのリーダー
シップを「分有」する関係を良好な日米関係と両立させようと志向した場合、
中国は、果たして同様の認識や目標を持ってくれるだろうか。また、著者の提
言には、日本が、中国に「言うべきことは言う、手を握るところでは手を握る
というメリハリをつけた外交折衝をする」意思を持ち、対中姿勢を改めれば、
中国も呼応して日本を重視するようになるとの大前提があるようにみえる。だ
が、それは妥当か。実際には、中国には、大国並みの軍事力を持たない日本を
格下扱いし、特に安全保障問題では、対等の外交折衝の相手とはみなさない傾
向が強くはないだろうか。
最後に、日本が今後も従来通りの「軍事中級大国」にとどまるとすれば、中
国の提唱する米国抜きの東アジア共同体論では、安全保障面で中国の力が突出
しかねない。本書には、この点に関する考察が乏しいのも気になった。
以上のような問題点も指摘できるが、本書ほどの戦略性をもって、日本の立
場から日中関係の将来を論じた著作は稀である。今後の日本外交のあり方を考
えようとする者全てに対し、推奨したい一冊である。
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◆編集後記
新年早々嬉しいことがありました。昨年末に100号を突破した本メルマガの
ことが、学術情報関係の代表的メルマガ「アカデミック・リソース・ガイド」
(総部数4403、http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/)でとりあげられ
たのです。同メルマガは学術関係の情報のIT化を叱咤激励する老舗のメルマガ
ですが、100号を越えたことについて励ましをいただきました。もっとも5年目
になるのに読者数が当初目標の1000人に到達しないこともしっかり指摘され、
やはり継続だけでなく、さらなる内容充実を図らなければと新年の決意を新た
にした次第です。◆メルマガではないのですが、冒頭にも書きましたようにホー
ムページが一新され、情報も増えました。今年もホームページともどもメルマ
ガ「ユーラシア・ウォッチ」をよろしくお願いします。◆次号は2月1日頃配信
の予定です。 (広瀬)
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ユーラシア・ウォッチ 第102号(2007年1月15日発行)
発行元:秋野豊ユーラシア基金(代表 秋野洋子)
〒151-0061 渋谷区初台1-51-1 初台センタービル803
編集責任者:広瀬佳一・湯浅 剛
郵便振替02740−2−3000
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