ユーラシア・ウォッチ |
この記事の発行者<<前の記事
|
次の記事>>
|
最新の記事
======================================================================
◆◆ ユーラシア・ウォッチ ◆◆
Eurasia Watch
編集・発行:秋野豊ユーラシア基金
http://www.akinoyutaka.org
----------------------------------------------------------------------
第76号 2005年11月1日
======================================================================
◇Contents◇
・文献紹介
佐藤優著(斎藤勉聞き手)『国家の自縛』(落合浩太郎)ほか
======================================================================
◆新刊書・論文紹介
冒頭の「○」は単行本や雑誌、「・」は雑誌に掲載された論文を意味します。
価格は原則として総額表示としております。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《政治・安全保障全般》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○佐藤優著(斎藤勉聞き手)『国家の自縛』産経新聞出版
2005年9月刊(\1,575)
落合浩太郎(東京工科大学助教授)
「外務省のラスプーチン」こと佐藤優氏のベスト・セラー『国家の罠』に続
く第二弾も面白い。
外務省批判はあちこちで聞かれるが、当事者の証言には説得力がある。一連
の不正以外にも金銭スキャンダルがある。出世コースを歩む条約課長が「私は
鈴木先生の出向秘書です。外交官は無税で買えますから、いいワインがあれば
お持ちします」と法律違反を何とも思わない。他にも外務公務員法に違反して
鈴木宗男議員に情報を漏らす、同議員に問い詰められて嘘がばれると「ウーッ」
と言ってじゅうたんの上にアルマジロのように丸くなったりする幹部の信じら
れない姿を証言している。
サスペンダー、カフスボタン、派手なカラーシャツ、ひげを好み、ジャーゴ
ン(仲間内でしか通用しない言葉)で一般人との違いを強調したがるのが外務
官僚だとされている。彼らの幼児性を示す象徴的エピソードは、川口前外相が
半期に一度、省員の士気を高めるために「川口賞」を設けた事件だという。
「大の大人がこんな賞もらってうれしいのか」と一般人は不思議に思う。さら
に賞品が「チャレンジ外務省」と書かれたTシャツと聞いて笑うが、それを目
指して省員が競争を始めたと知ると驚きを禁じえない。
他にも、興味深い提言は枚挙に暇がない。対中国・北朝鮮外交にモンゴルと
の友好関係を活用すべし、ロシア指導者の対中警戒感を利用せよ、日本では安
易に全面否定されがちなネオコン(思想)を正面から受け止めよ、北方領土問
題で沈黙しているためロシアに利用されている公明党・創価学会の危険性など
だ。外務省に真の知米派が欠如しているとの指摘は、学界にも当てはまる気が
する。
彼の専門であるインテリジェンスについても興味深い提案をしている。最近、
専門家の間では、対外情報庁といった独立した機関を設けるべきだというコン
センサスがうまれつつある。外務省の懇談会だけは9月に「外務大臣の下にイ
ギリスのMI6型の情報機関を新設すべし」という予想通りに自らの権限・人員
・予算を拡大できる提言を行った。しかし、佐藤氏も内閣情報官(内閣情報調
査室長)が副総理を兼任して強いリーダシップを発揮すべきだと提案する。
また仮定の話と断って、日本の北朝鮮外交はなってない、ろくな情報も来な
い、外務省を辞めてこの問題に取り組もうなどというのは、「コックが材料が
悪いからろくな料理ができない」というようなものだという。そして外務省員
なら、自分で情報を取ってくるか、公開情報をうまく料理しろと批判している。
これは『北朝鮮外交の真実』(筑摩書房)を書いた元外務省員のことに違いな
い。
このように改めて佐藤氏の異能ぶりに感心する一方で、依然として『国家の
罠』以来の二つの大きな疑問は解消されなかった。なぜ鈴木宗男議員に佐藤氏
が入れ込むのか。鈴木氏が関わったとされる数々のスキャンダルをどう説明す
るのだろうか。
『国家の罠』はベストセラーになったし、新潮ドキュメント賞の選考委員の
多くも高く評価した。しかし、委員の櫻井よしこ氏が「事実関係において間違
いの目立つ作品は相応しくない」と強硬に反対して受賞できなかった。「日露
関係の基本から現状まで、肝心の事実関係をとりまちがえてきた」との櫻井氏
の批判に同感だ。佐藤氏は「鈴木議員も私も二島返還論者ではない」と『国家
の自縛』でも繰り返し主張するが、ロシアの反応を見ても全く説得力がない。
(おちあい こうたろう)
○松村昌廣『激動する世界、翻弄される日本』研究叢書21(桃山学院大学総合
研究所、2005年9月)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《アジア》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○藤田幸一編『ミャンマー移行経済の変容−市場と統制のはざまで−』アジア
経済研究所、2005年10月刊(3900円)
○佐々木智弘編『現代中国の政治変容−構造的変化とアクターの多様化−』
アジア経済研究所、2005年10月刊(3150円)
社会の多元化、体制の安定化という構造的変化が起きている中国。その政治
過程におけるアクターの多様化を、政治、経済、外交の事例研究を通じ明らか
にした好著。編者の佐々木氏は秋野豊ユーラシア基金理事。 (編集部)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《ロシア・中央アジア諸国》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・半谷史郎・岡奈津子「旧ソ連朝鮮人研究の現状—李愛俐娥著『中央アジア
少数民族社会の変貌—カザフスタンの朝鮮人を中心に—』を読んで—」
『アジア経済』第46巻10号(2005年10月)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《ヨーロッパ》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
○『国際政治』第142号(日本国際政治学会)2005年8月
(特集 新しいヨーロッパ−拡大EUの諸相)
・羽場久美子「序論−新しいヨーロッパ」
・庄司克宏「EUにおける立憲主義と欧州憲法条約の課題」
・広瀬佳一「欧州安全保障・防衛政策の可能性−NATOとの関係を中心に−」
・六鹿茂夫「欧州近隣諸国政策と西部新独立国家」
・鶴岡路人「国際政治におけるパワーとしてのEU」
・・・・・ほか収録。
======================================================================
◆編集後記
王毅・駐日中国大使による講演会を聴く機会がありました。一昨年までの北
朝鮮をめぐる六者協議をリードしてきた前外務次官で、次の外相候補とも噂さ
れる超大物大使です。◆経済の改革開放がすすんでいるせいか、さかんにグロー
バリゼーションのメリットを強調し、相互依存の進展振りを称賛するなど、共
産主義国家の大使であることをほとんど忘れさせる話しぶりでした。また中国
の対外行動を支える理念として、儒教精神の「和」を強調したのには、聴衆が
日本人であることを意識したものであるにせよ、驚かされました。ソ連・東欧
圏の経験では、経済改革と自由化は、やがて政治的自由化の動きを引きだして
いるのですが、中国の場合はスケールがはるかに大きいだけに、今後いったい
どうなるのかとても興味があります。◆それにしても京劇の役者を思わせるよ
うな端正な顔立ち、優雅でエレガントな物腰に、やわらかい見事な日本語です
から、大使として日本各地を廻っておられるうちに、最近とみに元気がよいと
される中年女性の間でひそかなブームを巻き起こすかもしれません。政治的に
難しい課題をかかえる時期に、あえてこういう大物を大使として日本に送り込
むところに、中国外交のしたたかさをみる思いがします。◆次号は11月15日頃
配信の予定です。 (広瀬)
**********************************************************************
ユーラシア・ウォッチ 第76号(2005年11月1日発行)
発行元:秋野豊ユーラシア基金(代表 秋野洋子)
〒151-0061 渋谷区初台1-51-1 初台センタービル803
編集責任者:広瀬佳一
郵便振替02740−2−3000
★ご意見・ご感想はinfo@akinoyutaka.org までお寄せください。
★このメルマガはインターネットの本屋さん『まぐまぐ』(マガジンID:91758)
および『メルマ!』(マガジンID:m00119358) の発行システムを利用していま
す。送付先変更・配信解除は、下記のURLからいつでも可能です。
http://www.akinoyutaka.org/mailmagazine/mailmagazine.html
**********************************************************************
この記事の発行者<<前の記事
|
次の記事>>
|
最新の記事
