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秋野豊ユーラシア基金の発行するメールマガジン。ユーラシア大陸の人々の暮らしや文化、歴史、政治、経済などに関する情報、エッセイ、文献紹介、国内でのイベント情報などをお伝えします。




ユーラシア・ウォッチ 第52号【秋野豊ユーラシア基金】

発行日: 2004/10/1

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         ◆◆ ユーラシア・ウォッチ  ◆◆
              Eurasia Watch

         編集・発行:秋野豊ユーラシア基金
                     http://www.akinoyutaka.org
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 第52号                       2004年10月1日
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              ◇Contents◇

     ・エッセイ/ゆーらしあの風
       昆明からみた東南アジア(小笠原高雪)
     ・文献紹介

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■エッセイ/ゆーらしあの風■

 昆明からみた東南アジア
                    小笠原高雪(山梨学院大学教授)

 8月末から9月中旬にかけて、私はバンコク、昆明、ハノイを旅行した。この
うち昆明については若干の説明が必要だろう。昆明を中心とする雲南地方は中
国の西南にあたり、いまなお漢族以外の諸民族が3割を占める土地柄である。
「ここも中国なのか?」――文革時代、雲南への下放が決まった北京の知識青
年たちは地図を見ながらそう叫んだそうだが(陳凱歌『私の紅衛兵時代』)、
このエピソードは当時の北京や上海からみた雲南のイメージをよく表している。
一言でいえば、それは中国の「辺境」である。
 しかし雲南にはもう一つ別の顔がある。中国から大陸東南アジアやインド方
面へ抜ける陸路の「起点」としての顔である。そればかりか、昆明から香港や
上海へ行くために、鉄道でハノイ、ハイフォンへ出て、船を利用していた時代
もあったという。今日ではそのようなことはさすがにないが、昆明が中国の
「中心」から如何に遠い存在であり、大陸東南アジアに如何に近い存在である
かが判るであろう。ちなみに、上述の鉄道は二十世紀初頭にフランスが建設し
たものであるが、その後、すくなくとも二度にわたり封鎖された。一度目は日
中戦争のときであり、二度目はベトナム戦後の中越対立のときである。
 中国の中央政府と雲南省は、1980年代末以降、大陸東南アジアとの経済関係
拡大へ向けた施策を着々と実行している。なかでも重視されているのは昆明を
起点とする道路網、鉄道網、通信網の建設である。メコン河上流域の河川交通
拡大のための国際協議もそれに加わる。「西南地方を改革開放の新しい最前線
に転換する」というこの新政策は、歴史と地理の両面からみた当該地域の位置
を十分に意識したものといえる。そうした新政策がカンボジア紛争の収束、大
陸東南アジア諸国の経済開放、メコン河流域諸国の共同開発などの動きを視野
に入れたものであったことはいうまでもない。
 実際、初めて訪れた昆明は建設ラッシュの渦中にあり、立派な道路や高層ビ
ルが続々と造られていた。中央政府の支援もあるのであろうが、その勢いと明
るさは、「10年後にはバンコクのようになりますよ」という知人の言葉に一定
の説得力を与えていた。バンコク=昆明間には旅客機が毎日往来しており、私
が乗った金曜朝の便も観光や商用とみられる欧米人、中国人(華僑をふくむ)、
日本人などで満席だった。昆明=ハノイ間にも週2便が飛ぶようになった。所
要時間はどちらも2時間であるが、後者は中越国境近くの軍事施設の上空域を
迂回しないで済むようになれば1時間半に短縮される。
 こうした動きは中国西南地方から大陸東南アジアにかけての地域の将来にと
って、戦略的な重要性をもつであろう。南北に走る交通網の整備が進展すれば、
大陸東南アジアにおける中国の存在感はいやがうえにも増大しよう。中国が大
陸東南アジアをつうじて「海への出口」をもつことは、地政学的にも小さくな
い意味をもつと考えられる。また、そのような観点からみるならば、欧米諸国
や日本がミャンマーへの経済制裁を継続していることは、中国の「南下」に好
条件を提供するものであるといえる。そうした問題について米国を啓蒙してゆ
くことも、日本外交の課題であろう。
 とはいえ将来の予測は一面的であってはならない。バンコクではもちろんの
こと、ハノイにおいても、「中国との交流の増大は挑戦でもあり機会でもある。
われわれは購買力を高める中国市場への進出に本腰を入れるべきだ」という主
張を多く聞いた。その意味において、「中国に呑み込まれつつあるASEAN」と
いった捉え方は、事態の全体像を正しく伝えるものとはいえない。国際関係も
変化している。たとえばベトナムのある経済学者は、「輸出競争力を高めるた
めには日本からの直接投資が一層重要である。米国に対しても敵視の惰性をつ
づけているときではない」と力説していた。事実、米越関係はゆっくりとだが
着実に改善している。
 ユーラシア大陸の至るところで多様な変化が進行している今日、われわれは
その将来像を広い視野から考えてゆく必要がある。
                        (おがさわら たかゆき)
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◆新刊書・論文紹介
 冒頭の「○」は単行本や雑誌、「・」は雑誌に掲載された論文を意味します。
 価格は原則として総額表示としております。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《政治・安全保障全般》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○世界銀行編 (田村勝省訳)『戦乱下の開発政策:世界銀行政策研究レポート』
 シュプリンガーフェアラーク東京
   2004年8月刊(¥2,625)200頁
   ISBN: 443171121X

○白石隆『帝国とその限界−アメリカ・東アジア・日本』NTT出版
   2004年9月(\1,890)
   ISBN:4-7571-4077-0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《アジア》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○春原剛『米朝対立:核危機の10年』日本経済新聞
   2004年9月刊(\2,310)
   ISBN4-532-16482-6

○下斗米伸夫『アジア冷戦史』(中公新書1763) 中央公論新社
   2004年9月刊(¥798)viii+222頁
   ISBN: 4-12-101763-3

○ラインハルト・ドリフテ(坂井定雄訳)『冷戦後の日中安全保障:関与政策
 のダイナミクス』ミネルヴァ書房
   2004年9月刊(\5,040)
   ISBN:4-623-03971-4

○『海外事情』(拓殖大学海外事情研究所) 2004年9月号
(特集:漂流する韓国)
 ・洪ヒョン「『保守派』はどのように権力を失ったか」
 ・山本勇二「高句麗をめぐる中韓歴史論争」
 ・下川正晴「日韓特派員報道、擦れ違いの歴史」
 ・荒木和博「拉致問題が語る日朝関係の現実」
 ・吉野文雄「ASEAN・中国貿易の現状」
 ・笠井亮平「チベット問題:その構造と変容」
   ・・・などを収録。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《中 東》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・立花亨「イラク情勢:ナジャフ戦闘とその意味」
 『海外事情』2004年9月号、56〜64頁。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜《CIS・中央アジア諸国》〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

○『ロシア・東欧研究』(ロシア・東欧学会) 第32号、2004年9月刊
(特集:ロシア・東欧における社会格差・経済格差)
 ・溝端佐登史「ロシアにおける経済格差」
 ・保坂哲郎「1990年代ロシアにおける人口移動と地域格差の諸特徴」
 ・吉井昌彦「中・東欧における地域格差」
 ・六鹿茂夫「モルドヴァの社会的格差」
 ・石田信一「両大戦間期のイストリアにおけるクロアチア人問題」
 ・乾一宇「ロシアの安全保障政策決定機構:安全保障会議を中心に」
 ・後藤富士男「体制維持と改革のジレンマに直面する北朝鮮経済:対ソ連/
  ロシアおよび中国との経済関係の分析」
 ・徳永昌弘「都市と企業の市場移行:ロシアにおける企業都市の変容に関す
  る一考察」
 ・藤原克美「移行期ロシアの労働市場におけるジェンダー問題」
 ・松本かおり「現代ロシア社会の職業評定基準:モスクワとウラジオストク
  の若年層に対する調査から」
 ・村井淳「犯罪統計を通して見る現代ロシアの社会変動:ペレストロイカ期
  から2202年まで」
 ・森岡真史「初期ネップ下の提言に見るブルツクスの経済発展観」
   ・・・などを収録。

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◆編集後記
 このメルマガが配信される頃、私はウズベキスタンのタシュケントに出かけ
ています。いずれも会議や取材など短期間の滞在ですが、ユーラシアの各地を
旅していると、パソコンをとりまくお国柄もいろいろ比較できて面白いです
(といっても、私自身は必ずしもこの分野に強くありません)。◆中国・上海
で泊まったホテルではLANカードとパスワードを無料で貸してくれて、パソ
コンを持参しさえすれば簡単にメールやインターネットが使えました。バルト
諸国でもそれぞれの首都であれば、もともと理数系に強い国柄のせいか、ネッ
ト・カフェで気軽に日本語を読める環境を整えてくれます。◆これらがパソコ
ン関連サービスの先進地域であるとすれば、ロシアや中央アジアはまだまだ旅
行者に優しいとはいえないでしょう。先月泊まったある極東のホテルでは、建
物は新しく大変立派ですが、上海のようなサービスを受けることはできません。
中央アジアでも、都会ではネット・カフェが増えていますが、日本語を読める
環境にしてくれるまでに相当な交渉と時間が必要だったり、はなから「できな
い」と言われたり・・・・。技術以前に、旅行者に対してどれだけサービス精
神があるかでその国のパソコン環境も変わってくる、ということでしょうか。
◆次回は10月15日頃に配信の予定です。              (湯浅)
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ユーラシア・ウォッチ 第52号(2004年10月1日発行)
発行元:秋野豊ユーラシア基金(代表 秋野洋子)
    E-mail: info@akinoyutaka.org
    http://www.akinoyutaka.org
    〒151-0061 渋谷区初台1-51-1 初台センタービル803
郵便振替02740−2−3000
編集責任者:湯浅 剛・広瀬佳一

★このメルマガはインターネットの本屋さん『まぐまぐ』(マガジンID:91758)
 および『メルマ!』(マガジンID:m00119358) の発行システムを利用していま
 す。送付先変更・配信解除は、下記のURLからいつでも可能です。
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