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21世紀の中国 2004/11/13号
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◇◇【今日の一覧】◇◇
◆[現代中国ライブラリィ]◆
●「世界の工場」中国の前に立ちすくむ日本
経済産業省としての初の2001年版「通商白書」が5月17日に発表された。副題には
「21世紀における対外経済政策の挑戦」とある。
わが国経済及び世界経済の情勢を踏まえ、今後の対外経済政策の課題について明ら
かにしようとしているが、そこから垣間見えてくるものは、グローバリゼーションの
進展の前に立ち往生しつつある日本経済の苦境だ。
「内向き指向」では何も解決しない
通商白書は、「第1章、東アジアを舞台とした大競争時代」「第2章、IT革命と
ビジネスのダイナミズム」「第3章、グローバリゼーションの光と影」「第4章、21
世紀における対外経済政策の挑戦」などから成っている。
注目されるのは第1章である。「世界大の大競争時代に突入した1990年代の10年間
に、厳しい競争環境の中で約7%の高度成長を遂げた唯一の地域が東アジアである。
1997年以降のアジア通貨危機はいまだに人々の記憶に新しいが、その後のV字型回復
によって、再び世界の経済成長センターとして大きくその存在感を高めている。今
後、不良債権処理等の解決すべき構造問題を抱えていることは事実であるが、中長期
的に見て、東アジアが世界経済の中における重要な核となり続けることは間違いな
い」
とりわけ、中国経済の台頭が東アジア経済と通商構造を大きく変えつつある。すで
に中国は「世界の工場」としての地位を固めつつある。その成長は低賃金の労働集約
型産業からハイテクなど高度な技術集約型産業分野にまでに及んでいる。
かつてのアジア経済は「雁行型」発展といわれた。先行する日本とそれに続くNI
ES、それを追ってASEAN、中国が発展するというものだ。しかし、いまや雁行
は崩れ、各国は一直線に並び、最後尾にいた中国が先頭集団の一角へと踊り出た感が
ある。雁行型は一種の棲み分け、国際分業だが、それが崩れるということは、とりも
なおさず大競争時代へ入ったことを示している。
日本と中国の国際競争力の変化を示す出来事が、最近の農産物の暫定セーフガード
(緊急輸入制限)発動であるが、それだけではない。たとえば、日本のODA(政府
開発援助)によるタイのバンコク高架鉄道建設では、日本とタイのギクシャクした関
係が露呈した。タイは返済負担の重い日本のODAよりも、安くて工期も早い中国の
鉄道技術に関心を移しつつある。タイとは新国際空港の建設などをめぐっても問題が
伝えられている。日本のODA政策は行き詰まりつつある。
最近は、農業から機械産業関係者まで中国への視察が相次いでいるが、誰もが中国
の技術レベルは予想を超えており、このままでは日本は太刀打ちできなくなるという
危機感を持って帰ってくる。中国は生産技術だけではなく、品質管理、出荷、流通
と、あらゆる分野における改善が著しい。日本の農産物や繊維の今日の苦境は、機械
やハイテクの明日を象徴しているかのようだ。
中国経済の国際競争力の強化は、農業や繊維などの労働集約型からハイテクなどの
技術集約型まであらゆる分野に及んでいる。そのことが、日本やNIES、ASEA
Nの競争力を圧迫しつつあるといってよい。
中国は米国経済の後退による輸出減退に苦しむアジアの他国を尻目に、内需拡大も
軌道に乗りつつある。すでに固定電話は日本の2倍、携帯電話は1億1000万台(日本
の2倍弱)で年内にも米国を抜いて世界トップに踊り出る勢いである。さらに、旅行
や教育、マイホーム、インターネット・ブーム、一部の地域ではモータリゼーション
の兆候も始まっている。
外向きの中国と内向きの日本
中国は自国の発展がアジア周辺国の経済を圧迫しかねないことを十分認識してい
る。だから、周辺外交にも余念がない。余剰米に苦しむタイからはコメの輸入契約、
ベトナムやカンボジアに対する経済援助などにも積極的である。日本はタイに対する
最大のODA供与国であるが、いまでは中国の影響力が増しつつある。こまめなアジ
ア外交を展開する中国に対して、日本はここ数年タイに閣僚1人さえ行っていないの
である。
日本の内向き指向の象徴がセーフガードや輸入検疫の強化である。これらの保護主
義的な手段は、一時的には国内産業の保護に役立っても、長期的には経済の衰退につ
ながる。保護主義的な手段は限定的かつ有効的に用いるべきであり、無制限に発動す
ると「貿易立国」の足元がすくわれることになる。
日本経済の内向き指向のもう一つの象徴が、海外からの直接投資のあまりの少なさ
だ。中国の輸出額の半分近くが外資系企業が担っている。いまや中国は米国と並ぶ海
外からの直接投資の受け入れ国となっている。アジア諸国も海外からの直接投資に
よって急激な発展を遂げた。
一方、ここ数年、海外からの対日投資は対中投資の10分の1以下である。通商白書
によると、外資系企業による生産や雇用に占める割合では、日本は先進国で最低水準
となっている。それだけ日本は海外企業にとって魅力が薄いということを示してい
る。構造改革とは、海外企業に生産拠点としても市場としても日本の魅力をアピール
することでもある。白書では「重層的な対外経済政策」を目指すとしているが、先進
国、途上国を含めて海外に積極的に市場を開放していかなければならない。
日本の対外経済政策は戦後一貫して、ガット、WTO中心の多国間主義を続けてき
た。一方で、地域主義も広がりつつある。米国は4月、FTAA(米州自由貿易地
域)の創設について、中南米諸国と合意した。NAFTA(北米自由貿易協定)を拡
大する形で、2005年末までに南北アメリカを一つの自由貿易圏にすることを目指して
いる。
日本はシンガポールと自由貿易協定交渉を年末までに終えることで合意した。韓国
とも協定に向けた基礎的研究を終えている。メキシコとも研究を始めたい意向だ。多
国間主義を軸としつつも、今後は2国間による自由貿易協定も大きなテーマとなって
くるだろう。
こうした重層的な対外経済政策を保証するのが、政府のみならず、国民も含めた日
本の外向き指向だろう。しかし、セーフガードのみならず、教科書、靖国問題と、現
実は内向き指向に舵を切りつつあるようにみえる。
こうした背景には中国の台頭にどう対応するかという心理的な影響があるのだろう
が、グローバリゼーションとは、競争を通じながらも相互依存を深めることであっ
て、内に障壁を作ることではないはずだ。間もなく、中国はWTOに加入するのであ
る。(『政策フロンティア』2001年6月号)
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