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晴れの日には雨が恋しくても、雨が降れば雨を嫌うように、つらい時を過ごすことは私たちにとって耐え難い。風が吹けば、少々なら好まれても、強いときには嫌われる。つらい時をやり過ごすためにはどうしよう?そんなことを考えながら、書いています。




風のまがりかど その19

発行日: 2005/6/5


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                   風のまがりかど

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            −その19− 
          遺伝子操作について

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かなり難しく、私としては扱うに持てあますテーマなのだけれど、先日これはと思
う文章に出会ったので、その内容を紹介しながら、この厄介なテーマについて書い
てみたい。

5月18日付けの朝日新聞夕刊に、福岡伸一という大学教授が「生命工学の現状」
という文章を書いている。その中で、筆者は現状の遺伝子の機械的な操作について
批判的な意見を述べているのだが、分子生物学の専門家としての視点からある意味
で示唆に富む遺伝子操作への疑問を投げかけていて、私はとても共感を持ったの
だった。以下に、原文を引きながら、私の意見を付加する。


かつてシェーンハイマーという科学者が、ネズミによる実験を行った。その実験と
は、食事の中に「標識」をつけたアミノ酸を入れておき、これを3日間与え続ける。
するとこの「標識」は体中に散らばり、ネズミの体内のあらゆるところでタンパク
質は半分が標識つきに置き換えられていた。つまり、私たちの生命は「絶え間ない
分解と再構成のダイナミズムの中にある」ことが証明された、と筆者は語る。

「全くの比喩ではなく生命は行く川のごとく流れの中にある。そして、さらに重要
なことは、この分子の流れは、流れながらも全体として秩序を維持するため相互に
関係性を保っているということだった。シェーンハイマーは、この生命の特異的な
在りように「動的な平衡」という素敵な名前を付けた。」

つまり、私流に解釈すると、人間は日々いろいろな色に染まりながら生きているの
であり、それは一時的であれ、全身で受け止めているということだ。そして、それ
が良いことであれ悪いことであれ、背負ってなんとかバランスをとりながら生きて
いるのだ。昨日と同じ自分というのはあり得ず、常に革新しながら生きている。止
まってではなく、動きながら。あたかも綱渡りのように、前へと歩いて行くのだ。

しかし、その後遺伝子の全貌が明らかになるにつれ、「再び、生命はミクロな分子
パーツからなる精巧なプラモデルとして捉えられ、それを操作対象として扱いうる
という考え方が支配的になっていく。」分子生物学の歴史には疎いが、確かにこん
にちでは「遺伝子の切り貼り」により生命操作が可能だという考え方が、支配的に
なっている。そして筆者は今一度、先のシェーンハイマーの動的平衡論を見直そう
と提案する。

つまり、ネズミの実験で証明されたように、身体というものは常に迅速な変換のも
とにあるわけで、そういう中で身体の一部を局所的に置き換えてみてもそれはあま
り意味のないことではないか、というわけだ。私たちはともすると身体を精密な機
械のように見なしがちだ。しかし、身体は常に動いている、停止することのない各
部からなっているわけで、その一部を取り出して変えてみても全体の平衡系をかえ
って乱すことになるのではないか、と筆者は言う。

ここから思いつくのは、例えば収量を増やすために品種改良をしたところが、以前
の種が持っていた病気への耐性を失ってしまい、結局失敗してしまうというような
例である。自然が全体として実に精巧なシステムの上に築かれているのは、ようや
く最近わかってきたことだが、あらゆる生命体がそのバランスの取れた関係の上に
あり、またそれ自体が常に動いているわけだ。だから、幼稚園か小学校でやったモ
ビールのように、はしっこの小さなやつを取るだけで、全体のバランスが一瞬にし
て失われてしまう。

または、河の流れの中で、一箇所だけ1メートルの底上げをしても、遡上する魚が
上がれなくなり、産卵することが出来なくなる。それはあるときは種の絶滅を意味
する。または、山で1本樹を切っただけで、あたりの生態系は変わり、下手をする
と一帯が森でなくなったりする。こういう失敗を、私たちはこれまで幾度も繰り返
して来たのではないだろうか。自然の持つ精妙なシステムについて、私たちはまだ
ほとんど何も理解していないといっていい。

エイズウィルスのように、一度拡がるともはや手遅れになるものはいくらでもある。
例えばAとBという部分を持った遺伝子は、各々だけでは問題はないが、一つの個
体に一緒に入った場合には深刻な病気を引き起こす、といったケースは十分考えら
れる。人為的に作られた遺伝子Bは知らないうちに拡散し、やがてAに出会って発
症する。すると、今度は発症しないようにAを遺伝子操作する。こうして、どんど
ん本来の遺伝子から遠ざかる、ということは起きないのか。

角を矯めて牛を殺す、ということわざがある。大部分完成した絵なのに、一箇所塗
り変えたため全体がおかしくなった、という経験はないだろうか。良いところだけ
を残して、悪いものを駆逐する、というと聞こえはいいが、何が良いもので何が悪
いものかは、状況により変化する。コレステロールだって、しばらく前までは目の
かたきにされていたではないか。十分な研究があり、徹底した討議のあとにしか、
遺伝子の操作のような重要事は許されるべきではない、と私は思う。

臓器移植やクローン羊がうまくいかないことを引いて著者は言う。
「これらの事例はバイオテクノロジーがまだ発展途上だからうまくいかないという
技術レベルの過渡期性を意味しているのではなく、むしろ動的な平衡系としての生
命を機械論的に操作するという営為自体の本質的な不可能性を証明しているように
私には思えてならない。」
これは、野放図な現状に対する強い警告に他ならない。

直せないものを分解したり組み立てたりすること自体、問題ではないだろうか。誰
かがそれを悪用したりしないとも限らない。原子爆弾にしても本来兵器を開発しよ
うとして生まれたのではなかったのだ。

自分の周りは日々変わらない情景があり、同じような毎日が過ぎていく。しかし、
その一方である日それを突然一変させるような出来事が静かに進行している。そう
いうことに対して、もっと私たちは発言すべきではないだろうか。もっと自覚的に
なるべきではないだろうか。最近、そう思うことが多くなった。


< ことしも梅雨か・・・

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 ■ 2005年6月5日(日曜)発行
 □ 発行者:街角の風   mailto:meer@aug.email.ne.jp
 ■ バックナンバー  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2y-mrs/magarikado.htm
 □ マガジンID 『まぐまぐ』:0000135635 & melma!:m00118412
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