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晴れの日には雨が恋しくても、雨が降れば雨を嫌うように、つらい時を過ごすことは私たちにとって耐え難い。風が吹けば、少々なら好まれても、強いときには嫌われる。つらい時をやり過ごすためにはどうしよう?そんなことを考えながら、書いています。




風のまがりかど その15

発行日: 2005/3/27

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                   風のまがりかど

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        −その15− わたしたちに必要なもの

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最初に、私の勘違いで一週遅れてしまったことをお詫びしておきます。本来は20
日が発行日でした。で次号ですが、前号でお知らせしましたように、4月の初めか
ら日本を離れますので、その間もし発行できる環境と時間があれば、発行したいと
思っています。しかし、恐らくは難しいと思いますので、次回は24日になる予定
です。風は少しの間、向こうの角を曲がってきますので、よろしくお願いします。

で、今週は「わたしたちに今必要なものについて」です。
こんにち、わたしたちの社会では日進月歩で技術が進んでいて、少しテレビや新聞
などメディア(媒体)から遠ざかっていると、知らないうちに取り巻く環境が一変し
ていたりします。

もし、浦島太郎のように下界から隔絶したところに3年行っていたとすると、恐ら
く戻ってきてしばらくはその環境に慣れるのに苦労することでしょう。特に、ここ
数年は電子機器の進歩と情報の伝達ネットワークが発達して、携帯電話やパソコン
で地球のほとんどのところで連絡を取り合うことができるようになっています。


私たちは、「車」という全能感をもたらす乗り物を手に入れ、雨に濡れず風も受け
ずにどこへでもいけるようになりました。この移動手段は画期的だったと思います。それに加えて、肉体を伴わない移動、つまり通信というバーチャルな移動をさらに手に入れたことで、ますます便利に、つまり動かずになんでもできる環境を作
り出しました。

パソコンの前に座っていれば、お金をあっちの銀行からこちらの郵便局に移したり、ショッピングモールで遠く離れたところの商品を手に入れたりできます。友人
とは電子メールで連絡を取り合ったり、掲示板でひとつのことについてみんなで話
あったりもできます。


車や飛行機は私たちの肉体をどんどん制約から解放して、私たちがどこへでも行く
ことを可能にしました。山や海を越えて、世界のどこへでも行くことを可能にした
のです。それに続いて、電子的なネットワーク環境は肉体を使わずに、脳だけであ
らゆるところへ一瞬の内に行ける、情報を手に入れることを可能にしています。し
かし、それで便利になった分、私たちは何か得をしたといえるのでしょうか?

確かに、離れた故郷の両親、また子供と簡単に話ができるようになり、最近では顔
を見て話をすることもできるようになっています。また、仕事では大量のデータを
輸送手段を使わずにインターネット経由で送信することができます。しかしその反
面、誰ともわからない人間から詐欺メールが送られてきたり、個人情報が漏洩した
りもしています。

そして何よりも懸念をいだくのは、顔を見て一緒に話すとか、食事をしながら雑談
することがなくなっていくのではないか、ということです。私たちは、コミュニ
ケーションをするときに、向かい合っている相手のいろいろなところから情報を得
ていて、それが人間の関係で微妙な部分をつくりだしている、と私は思っています。

養老孟司という人が書いた「唯脳論」という本がベストセラーになっていますが、
このままでは本当に人間はパソコンの前に座ったままですべてを行うことができ、
肉体が不要なものになっていきかねません。しかし、脳は脳として独立しているの
ではなく、実は肉体を動かさなければ、脳は鍛えられないのだそうです。

実際にあって話をする、これを繰り返して対人関係の複雑さや楽しさを学んでいく
ことが出来るのに、それを避けてメールやチャット、電話で代用することで、脳は
きわめて限られた範囲でしか刺激を受けないのです。そうなると、人間として得ら
れる楽しみの多くの部分を失うことになってしまう、私はそう感じています。

テレビ電話の向こうにいる恋人が、涙を流しています。しかし、いくら鮮明に涙が
映し出されても、あなたはその手を握ることさえできません。離れていても感
情の伝達ができるとすれば、それはいつも直接会って、気持ちをわかりあっている
からに他ならないのです。あくまで、補助的な手段なのです。


人間という動物は、泣いたり笑ったりしながら生きてきました。そこに基本を置い
て、暮らしていかなければなりません。なのに、それを忘れることがあたかも文明
の進歩かのように錯覚し、無表情でクールに(!)ふるまう、それを目指しているよ
うに思われます。

病院で寝たままの状態にあるなら、ネットに掲載された桜の写真を見て楽しむこ
ともしかたありません。しかし、桜の咲くところまで行ける手段があるのならば、
やはり桜の木の下で、見上げて楽しむことが一番です。時間がないとか、近くにな
いなど事情はいろいろありますが、それでも、街角に咲く小さな枝にふと目を留め
る余裕、その美しさを楽しむこころの動きが、きっといつかあなたに必要なときが
くると思います。

それを失ってしまうと、単に機械と競い、争う脳と化してしまいます。その冷たい
無表情からは、生きていくことの楽しさや苦しさは失われ、生命と根源的なところ
でのつながりを見失うことになります。花屋さんの店頭にある一輪の花、その美し
さにすべてを忘れて見入ってしまう、我を忘れてしまえる力、それこそがこの電脳
の社会にいっそう大切なものなのだと、最近わたしは思っています。



<次回はいつだ?

 ==  ==  == * ==  ==  ==  ==  == * ==  == ==  ==  == * ==  == ==  = 
 ■ 2005年3月27日(日曜)発行
 □ 発行者:街角の風   mailto:meer@aug.email.ne.jp
 ■ バックナンバー  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2y-mrs/magarikado.htm
 □ マガジンID 『まぐまぐ』:0000135635 & melma!:m00118412
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