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風のまがりかど その64

発行日時: 2008/3/29

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                    風のまがりかど

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            − その64 −
                  

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また長い期間お休みしていました。

最近はブログも休眠状態なのですが、時々ミクシ(SNSというらしいです
が)に日記を書くことはあります。いろいろと手を伸ばしているうちに、そ
れぞれの役割があいまいになってしまったことも、こちらをきちんと定期的
に出せないことの理由の一つです。しかし読んでもらいたいことはまだいく
らでもありますし、書きたいことも山のようにあります。一人でも読んでも
らえる限りは出し続けたい、そのために書き続けようと思っています。不定
期で申し訳ありませんが、お付き合い願えればうれしく思います。


さて、今回は長い間私が考え続けている文学と言葉の問題について少しだけ
書いていきたいと思います。ずっと以前にオー・ヘンリーの文学に言及した
ことがありましたが、彼の遺した「The gift of Magi(賢者の贈り物)」や
「The last leaf(最後の一葉)」はいまだに英語のテキストとして中学や高
校で使われているように、親しみやすく読みやすい短編です。

この短編集をしばらく前に読み直してみました。それで少し驚いてしまった
のですが、私の思っていたのとはストーリーが少し異なっていて、しかもま
た叙述されている内容が少なかったのです。もっと登場人物たちの内面が
書き込まれていたような気がしていたのです。

それでどうしてそうなったのだろうと、考え込みました。以前読んだ本の内
容が自分が思っていたものと違う、ということはよくあります。自分が知ら
ず知らずのうちに物語の筋を記憶の中で変えてしまっていた、そんな経験は
珍しくありません。私もO.Henryの短編集を最後に読んでからもう
20年以上経っていたのです。

その間に私の中で起こっていたこととは、おそらく想像力がストーリーとし
て残り、それが印象になってしまっていた、それしかないと思うのです。そ
の印象があたかも映画のように頭の中に再現された結果、実際とは異なるス
トーリーを思い出していたということでしょう。そのことから、私はまた別
の考えを発展させました。

ということは、たとえば私がつたない文章を書き綴ったとしても、その文章
の中に読者へ伝わる強い思いが込められていれば、その文章の足らない部分
はきっと読み手の人たちが想像力で埋めてくれるのではないだろうか。だか
らこそ、とてもうまい文章だと思っていた短編が思いのほか平凡な文章で少
しがっかりしたりしたのだと思うのです。

しかし、だとしてもその短編の価値が変わるわけではありません。私が20
年を超えていまだに思いを残す物語の力が失われるわけではありません。も
しこの作者がこの物語を書かなければ、私はこの感動を得られませんでした。
いつまでも多くの人の心に残る言葉や物語というものは、普遍性を持ってい
るものです。その普遍性に触れているならば、その物語が、その音楽が、そ
の絵が時間や場所を越え、人の心に訴えかけるのだ。そういうことに違いな
いと考えるのです。

思うに、18世紀や19世紀に書かれたはるか遠くの国のドラマが自分の心
を捕らえたのは、その普遍的な真実の力あってのことです。その思いの力が
21世紀極東の国に暮らすわたしを動かす。このすばらしさがいまだに私に
文学を読ませ続けている原動力なのです。


人と人の間が疎遠になったように思われる、そう言われ始めてからもうずい
ぶんになります。みな仕事に追われて、毎日に忙殺されています。まるでミ
ヒャエル・エンデが書いた「モモ」のように、時間を片っ端から盗まれてで
もいるかのように。そうして本当の自分を動かす力を失っていく、そう思わ
れて仕方ありません。

ドイツの劇作家シラーという人は、最近はあまり日本では知られていません。
しかしドイツではゲーテ・シラーと並び称せられる偉大な存在です。彼の文
学は理想主義と呼ばれますが、私はその作品の中に未来へと向かう強靭な力
を見い出します。そしてその未来のために人々が力を合わせようとする考え、
これこそが彼の文学から学べるものだと思います。

電車の中で読まれるのは、マンガ雑誌やミステリー、実用書など読みやすい
ものや必要に迫られて読むものばかりのような気がします。最近では、音楽
で耳を塞いでしまい、人にバッグが当たっても気が付かない人ばかりになり
つつあります。こういう世の中で、一度じっくり古典と呼ばれる本を手に
取って読むことこそ、本当に大切なことなのではないかと思います。

寸断された個々はもろいものです。時を越えて残る書物から、人間の靭帯が
いかに大切なものなのか、そしてそれがない限り私たちは進歩を続けられな
いということを再認識すべきときではないか、そう最近とくに私は思います。
桜のきれいな週末ですが、もし桜の下で古典の一冊をひもとくことができれ
ば、また格別な読書が楽しめるでしょう。

(注:O.Henryの短編名は新潮文庫のものです)

>お別れの3月、出会いの4月ですが、また寒暖の差も激しいときです。
 お体大切に、お過ごしください。


 ==  ==  == * ==  ==  ==  ==  == * ==  == ==  ==  == * ==  == ==  =
 ■ 2008年3月30日(土曜)発行
 □ 発行者:街角の風   mailto:meer@aug.email.ne.jp
 ■ バックナンバー  http://www.asahi-net.or.jp/~fv2y-mrs/magarikado.htm
 □ マガジンID 『まぐまぐ』:0000135635 & melma!:m0011841

 
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